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配管トラブルの逆引き|流れない・漏れる・揺れる・音がする

配管トラブルの逆引きのアイキャッチ

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

夜勤の巡回で、ポンプの吐出流量がいつもより少ない。フランジの下に液の跡がある。ラックの配管が小刻みに揺れている。蒸気を通したら配管から「カン」と音がした。どれも製造現場では珍しくない症状ですが、最初の数分で何を確かめるかによって、原因にたどり着く速さと安全が大きく変わります。

配管のトラブルは、原因がたくさんあるように見えます。しかし実際には、症状ごとに疑う場所と確かめる順番はほぼ決まっています。 流れないなら抵抗が増えた区間、漏れるなら漏れた場所の構造、揺れる・音がするなら「いつ、どう出るか」を見れば、原因候補は数個に絞れます。

この記事では、配管のトラブルを症状から逆引きできるように、すぐ止めるべき症状、計器の異常と現物の異常の見分け方、症状ごとの確認手順と原因候補、専門部署へ伝える情報を整理します。各症状の説明は要点だけにして、詳しい仕組みはそれぞれの記事へ案内します。

この記事の結論

  • 症状を見たら、原因を探す前に「止める・隔離する必要があるか」を判断します。可燃性・毒性・高温の流体の漏れ、繰り返す打撃音、増えていく漏れや揺れは、すぐ運転責任者へ連絡します。
  • 次に、計器の異常か現物の異常かを分けます。指示だけが変わり、音・温度・振動・現場の圧力計に変化がなければ、計器側を先に疑います。
  • 「いつから・何をした後か・何と一緒に出たか」で候補を絞ります。急に出たなら直前の操作や工事、少しずつなら詰まり・摩耗・腐食を疑います。
  • 流れないときは、圧力を上流から順に読みます。通常より圧力の落ち方が大きい区間に、詰まりや抵抗があります。
  • 加圧したままフランジを増し締めしない、ばねハンガを現場判断で回さない、ハンマが出ている系の弁を急に操作しない。
  • 専門部署へは、場所・時刻・運転条件・変化の経過・写真と数値を、時系列でそろえて渡します。

1. まず結論:4つの問いで症状を絞る

配管のトラブルに出会ったら、次の4つを順に問います。

  1. 止めるべきか:漏れている流体、症状が増えているか、人や周囲に危険が及ぶかを見る
  2. 計器か現物か:指示計だけがおかしいのか、音・温度・振動・現場計器も変わっているのか
  3. いつから、何の後か:急に出たのか少しずつか、直前に弁操作・切替え・工事・立上げがなかったか
  4. どこか:どの区間、どの部品の近くで起きているか

4番目の「どこか」は、配管の構造を知っていると一気に絞れます。症状と、その症状が出やすい場所、最初に疑う原因の対応を表にまとめます。

症状まず確かめること主な原因候補詳しい記事
流れない・流量が足りない流量計の指示と、ポンプ吐出圧・電流・現場の圧力計が同じ向きに変わったかストレーナの詰まり、弁が開いていない、高点の気溜まり、吸込側の負圧・空気の吸込み配管の圧力損失計算、ベント・ドレン・勾配の設計
漏れる流体の危険性、漏れた場所(フランジ・弁の軸・溶接部・小口径分岐・保温の下)ガスケット・締付け・外力、パッキンの摩耗、腐食・減肉・割れ、振動ガスケット選定とボルト締付け、配管の腐食メカニズムと防食設計
揺れる回転機を止めたら止まるか、流量や開度で変わるか、支持の外れ・緩み回転機・圧力脈動からの強制振動、絞りや渦による振動、支持の不足配管サポートの選び方
音がする操作と同時の単発音か、流している間ずっとか、周期的かウォータハンマ・スチームハンマ、絞りでのキャビテーション、脈動ポンプ停止時のウォーターハンマ、蒸気・ドレン配管とスチームトラップ
熱い・冷たい・凍る閉じているはずの弁の前後、トラップの前後、保温の傷み、外気温弁座からの通り抜け、ドレンの滞留、保温・トレースの不良、凍結蒸気・ドレン配管とスチームトラップ
圧力・流量の指示が合わない現場の圧力計や前後の計器と比べる、導圧管の元弁・詰まり・液溜まり導圧管の詰まり・漏れ・凍結、計器の零点、測る位置の違い計器のトラブルはなぜ起こる、導圧管の正しい引き回し
症状が出やすい場所は決まっている|まずその場所を見に行く

この表は、原因を決めるためのものではなく、最初に見に行く場所と、次に読む記事を決めるためのものです。1つの原因が複数の症状を出すこともよくあります。たとえばウォータハンマは音と揺れを出し、繰り返せばガスケットやパッキンからの漏れにつながります。

2. すぐ止める・隔離する症状と、やってはいけない初動

原因を調べる前に、止める・隔離する判断が必要な症状があります。高圧ガスの保安の教科書は、現場で見つけた小さな異常でも、拡大を防ぐために直ちに運転責任者へ連絡し、現場確認のうえで応急措置・点検・修理依頼などをとるよう求めています。「様子を見てから報告する」ではなく、「見つけたら連絡し、止めるかどうかを一緒に判断する」が基本です。

特に急ぐのは次の症状です。

症状なぜ急ぐか
可燃性・毒性・腐食性・高温の流体の漏れ量が少なくても火災・中毒・薬傷につながる。漏れの場所へ近づく前に、風向きと保護具を確かめる
漏れや揺れが時間とともに増えている割れや緩みが進んでいる可能性がある。小さいうちに隔離できる手順を確かめる
打撃音(ハンマ)が繰り返す瞬間的に大きな圧力が出て、ガスケットやパッキンからの漏れ、継手の抜けを起こすことがある
小口径の分岐や計器配管が大きく揺れている小口径配管は外力で破損して漏れることがある。振動が続けば疲労で割れるおそれがある
圧力・温度が設計の上限に近い、安全弁が吹いた異常な圧力や温度の上昇は、配管や機器の破壊につながる
弁や配管が凍っている水は凍ると膨張し、弁本体や配管を割ることがある。凍ったまま無理に操作しない

止める・隔離する操作そのものは、設備ごとの運転手順と運転責任者の判断に従います。ここで覚えておきたいのは、よかれと思ってやった初動が、トラブルを大きくすることがあるという点です。

  • 加圧したままフランジを増し締めしない:片締めになり、ボルトが伸びたりガスケットを傷めたりして、かえって漏れが増えることがある。大気圧まで下げ、ガスケットとフランジ面を点検してから締め直すのが原則
  • ばねハンガやコンスタントハンガのナットを現場判断で回さない:1か所を合わせると、隣の支持や機器ノズルに荷重が移る(スプリングハンガ・コンスタントハンガ)
  • ハンマが出ている系の弁を急に閉めたり開けたりしない:弁の開閉は「ゆっくり」が基本で、急な操作そのものがハンマの原因になる

3. 流れない・流量が足りない

まず計器を疑う

流量計の指示が下がっても、流れが本当に減ったとは限りません。差圧式流量計のトラブルの多くは、差圧を伝送器へ導く導圧管に原因があるといわれます。流量の指示が下がったら、ポンプの吐出圧力・電流、現場の圧力計、受入れ側の液面の変化など、別の指示と同じ向きに動いているかを確かめます。 流量の指示だけが動いていれば、計器側(8章)を先に調べます。

ポンプ側か配管側か

流れが本当に減っているなら、ポンプの能力が落ちたのか、配管の抵抗が増えたのかを分けます。目安は吐出圧力です。

  • 吐出圧力が上がって流量が減った:下流の抵抗が増えている。弁の開度、ストレーナや機器の詰まり、下流の圧力上昇を疑う
  • 吐出圧力も流量も下がった:ポンプ側、または吸込側の問題を疑う。吸込ストレーナの詰まり、吸込弁の半開、液面の低下、吸込配管の気溜まり、空気の吸込み、回転数や回転方向

ポンプの教科書の不具合一覧でも、吐出量不足の原因の筆頭には、吸込配管の損失が予想以上に大きい、吸込配管にガス溜まりがある、吸込弁が半開か閉じている、といった配管側の項目が並んでいます。ポンプ本体を疑う前に、配管と弁を見に行く価値があります。ポンプ側の切り分けはポンプのトラブル診断早見、吸込配管の考え方はポンプまわりの配管レイアウトにまとめています。

圧力を上流から順に読む

配管の抵抗がどこで増えたかは、圧力計を上流から順に読み、通常運転の値と比べると分かります。配管の中の圧力は、流れに沿って摩擦や弁・継手の損失の分だけ下がっていきます。詰まった区間では、その区間だけ圧力の落ち方が大きくなります。

圧力を上流から順に読むと、詰まった区間が分かる

図の例は、ポンプから受入れ槽へ送るラインの途中にストレーナがある場合です。通常は、ストレーナの前後差は 0.05 MPa でした。ストレーナにごみが溜まって流量が通常の80%まで落ちると、各点の圧力は次のようになります(数値は説明用の例)。

圧力計通常流量が80%に落ちた今
A ポンプ吐出0.80 MPa0.85 MPa
B ストレーナ入口0.70 MPa0.79 MPa
C ストレーナ出口0.65 MPa0.56 MPa
D 受入れ槽の手前0.55 MPa0.50 MPa
受入れ槽0.40 MPa0.40 MPa

読み方の要点は3つです。

  • B と C の差が 0.05 MPa から 0.23 MPa に増えた:損失が増えたのはこの区間で、ストレーナが原因候補になる
  • A から B、C から D の差は、流量が減った分だけ小さくなっている:ほかの区間には異常がない
  • A の吐出圧力は下がらずに少し上がっている:ポンプが弱ったのではなく、下流の抵抗が増えた

ストレーナは、差圧が増えると流量が落ちるだけでなく、吸込側ならポンプ入口の圧力が下がってキャビテーションを起こし、差圧がスクリーンの強度を超えると破れて下流へ異物を流すことがあります。ストレーナの前後には圧力計か差圧計を付け、清掃する差圧を決めて監視します。

圧力計がない区間は、弁の開度、保温の外から分かる温度差、配管のたわみや仮設品の有無など、ほかの手がかりで補います。普段から主要な圧力計の通常値を記録しておくと、この比較がすぐにできます。 圧力の下がり方の計算は配管の圧力損失計算、弁や継手ごとの損失はエルボ・ティー・バルブの圧力損失で説明しています。

気溜まりと負圧

圧力の読みが大きく変わらないのに流れが不安定なら、気体を疑います。配管の途中で圧力が大気圧より下がると、水に溶けている空気が気泡になり、上に凸の高い所に溜まります。溜まった気体は流路を狭めて流量不足を起こし、気体の圧縮性のために流れを不安定にします。負圧になった区間では、フランジや弁の軸封から空気を吸い込むこともあります。

高い所の気溜まりはベントで抜けるか、低い所の液溜まりはドレンで抜けるかを確かめ、抜けない配管形状なら設計側へ戻します(ベント・ドレン・勾配の設計)。落差で流す配管や、差圧の小さい配管では、この問題が特に起きやすくなります(重力流れ・低差圧配管の設計)。スラリーや気液が混ざる流れでは、沈降や閉塞も候補に入ります(二相流・スラリー配管の設計入門)。

4. 漏れる

漏れの原因は、大きく分けると次の5つです。高圧ガスの保安の教科書の整理に、配管の場所を対応させるとこうなります。

漏れの原因配管で現れやすい場所
腐食・減肉・割れ曲がり、絞りの下流、溶接部、保温の下、支持部との接触面
異常な圧力・温度による破壊閉じ込められた配管、急な昇温・昇圧を受ける区間
接続部の気密の低下フランジのガスケット、弁や回転機の軸封(パッキン)
運転操作に起因する漏れ閉止が不十分な弁、異物をかみ込んだ弁座
小口径配管の外力による破損計器・ベント・ドレンの枝管、足場や人が触れる所
漏れた場所で、疑う原因が変わる

つまり、漏れた場所を正確に特定すれば、疑う原因の系統がほぼ決まります。 場所ごとの見方は次のとおりです。

  • フランジ:フランジ面の傷や付着物、ガスケットの材質・形状、ボルトの締付けの不均一、配管の心ずれや振動を確かめる。昇温の過程で漏れ始めたなら、温度変化によるボルトの緩みを疑う(ガスケット選定とボルト締付け、フランジの規格と呼び圧力)
  • 弁の軸(グランド):パッキンの摩耗や劣化。ポンプのグランドパッキンのように、滴下を前提に管理するものもあるので、通常の滴下量と比べる(グランドパッキンの締め方と漏らし方)
  • 溶接部・曲がり・母材:腐食、減肉、割れ。漏れが出た時点で肉厚が残っていない可能性があるので、近くの同じ条件の箇所も検査の対象にする(配管の腐食メカニズムと防食設計、管継手と配管溶接)
  • 小口径の分岐・ねじ込み部:振動と外力。本管の揺れや、人・足場が触れる外力で破損しやすい(配管の接続方法)
  • 保温の下:保温外装の継ぎ目や、ハンガ・サポート・弁・フランジ・計器の取付部から雨水が入り、見えない所で外面腐食が進む。保温材の下の腐食は、漏れ出してから気づくことが多い

もう1つ、外へ出ない漏れもあります。閉じたはずの弁の下流で流れや圧力・温度が残っていたら、弁座からの通り抜けを疑います。 閉止の不十分と、固形物の弁座へのかみ込みが代表的な原因です。

5. 揺れる

配管が揺れるとき、最初に確かめたいのは揺れの原因が外から来ているのか、流れの中で生まれているのかです。配管振動の教科書は、振動を次の3つに分けています。

種類何が揺らしているか見分ける手がかり
強制振動回転機からの伝達、圧力脈動、気液二相流、流れの乱れ外からの刺激が止めば止む。回転機を切り替える・止めると揺れが消える
流体励起振動温度計ウェルのような突起の後ろにできる渦、くぼみで生まれる流れの振動渦などの振動数が配管や部品の固有振動数に近いと、共振して大きくなる
自励振動流れをエネルギー源に、配管や弁が自分で振動を作る微開の弁の弁体、全開のバタフライ弁のフラッタなど。固有振動数で振れるので、支持を変えても振動数を変えて続くことがある

現場で確かめる順番は次のとおりです。

  1. 揺れ方を記録する:どの方向に、どのくらいの幅で、どの範囲が揺れているか。動画を撮る
  2. 何と一緒に変わるかを見る:ポンプや圧縮機の切替え・停止、流量、弁の開度で揺れが変わるか
  3. 支持を見る:サポートのボルトの緩み、シューの外れ、ガイドのすき間、ばねハンガの指示位置、支持の撤去や追加
  4. 近くの小口径配管と計器を見る:揺れで割れやすいのは、揺れている本管より、本管に付いた小口径の枝管のほうです

揺れを見て「とりあえずサポートを足す」のは危険です。熱で伸びる配管を拘束すると、別の所に大きな熱応力や機器ノズルの荷重を生みます。振動を止めるための支持と、熱膨張を逃がすための支持は、両方の条件を満たすように決めます(配管サポートの選び方、配管フレキシビリティ)。揺れと音は出方で分けると整理しやすいので、次章の図もあわせて見てください。

6. 音がする

音は、いつ鳴るかで原因が大きく分かれます。

音と揺れは、いつ・どう出るかで分ける

弁の操作やポンプの停止と同時に「ガン」と鳴る

操作と同時の単発の打撃音は、ウォータハンマを疑います。連続して流れている流体に急な閉止などの変化を加えると、非常に大きな圧力変動が起き、配管をハンマで叩いたような衝撃音や異常振動が出ます。その値は常用圧力の10倍から数十倍に達することがあるとされ、ガスケットやパッキンからの漏れ、継手の抜けの原因になります。

蒸気を通したとき、蒸気配管で「カン」「ドン」と鳴る

蒸気配管のハンマは、配管に溜まったドレン(凝縮水)が原因です。ドレンが溜まった所へ蒸気が流れ込むとドレンが波立ち、蒸気のポケットが冷やされて一気に潰れると、ドレンどうしがぶつかってハンマが起きます。ドレンがある状態で弁を急に開けると、機器を壊すことがあります。

蒸気の弁は、まず微開にして配管を暖め(暖機)、ドレンを抜いてから徐々に開けます。 音がしたら、ドレン抜きとスチームトラップが働いているか、ドレンが溜まる低い所がないかを確かめます(蒸気・ドレン配管とスチームトラップ)。

流している間ずっと「ザー」「ガラガラ」と鳴る

弁や絞りの下流で連続して鳴る音は、キャビテーションを疑います。流体を極端に絞ると、圧力が下がった所で気泡ができて潰れ、騒音と振動を出し、弁や下流の配管をエロージョンで傷めます。絞りの開度を変えると音の強さが変わるなら、その弁が音源の候補です。 極端に小さい開度での使用を避け、差圧やサイジングを見直します(調節弁の選定とサイジング、玉形弁)。仕切弁は中間開度での絞りには使えません(仕切弁)。

ポンプの吸込側でキャビテーションが起きている場合は、ポンプ本体から音がします(ポンプのキャビテーション)。

一定の周期で「ウォンウォン」と鳴る

回転機の回転や往復動の圧力脈動と同じ周期で鳴る音や揺れは、強制振動を疑います。回転機を切り替える・止めると止むかで確かめます。

7. 熱い・冷たい・凍る

保温した配管の温度は、中で何が起きているかの手がかりになります。

  • 閉じたはずの弁の下流が熱い(または冷たい):流体が通り抜けている。弁座の漏れ、閉止の不十分、異物のかみ込みを疑う
  • スチームトラップの手前が冷えている、装置の加熱が遅い:ドレンが抜けずに溜まっている可能性がある。ドレンの滞留は加熱不足やハンマにつながる
  • トラップの出口側が連続して熱い:生蒸気の漏れの可能性がある。ただし高負荷の連続排出やフラッシュ蒸気でも出口は熱くなる。トラップの良否は温度だけで断定せず、形式・負荷・差圧とあわせて判断します
  • 保温の外装が局部的に熱い、または濡れている・結露している:保温の傷み、雨水の浸入。保温の下の外面腐食につながる
  • 冬に弁や配管が凍った:水は凍ると膨張し、弁や配管の内部で異常な圧力を生んで本体を割ることがある。水抜き、流し放し、凍結防止ヒータなど、凍結を防ぐ措置は配管全体で考えます。

放射温度計で比べるときは、表面の色や材質で読みが変わるので、同じ点を同じ方法で比べます。 数値だけで決めず、音や流れの有無とあわせて判断します。

8. 圧力・流量の指示が合わない

指示計の値がおかしいとき、配管と計器のどちらに原因があるかを先に分けます。同じ流れを別の計器や現場の圧力計で確かめ、指示どうしが食い違っているなら、計器側を疑います。

計器側で多いのは次の原因です。

  • 導圧管の元弁が閉じている、半開のまま
  • 導圧管の詰まり、液溜まり、ガス溜まり、凍結
  • 導圧管や継手からの漏れ
  • 伝送器の零点のずれ、設定レンジの変更

導圧管の勾配や液溜まりの考え方は導圧管の正しい引き回し、センサ・システム・プロセスのどこに原因があるかの切り分けは計器のトラブルはなぜ起こるで説明しています。流量計の上流にエルボや弁が近いと、流れの偏りで指示がずれることもあります(流量計の設置と直管長)。

逆に、計器どうしが一致していて、なお値が設計と違うなら、それはプロセス側の実際の変化です。 3章に戻り、圧力を上流から読みます。

9. 工事・立上げの後に出たトラブル

改造工事、定期修理、新設ラインの立上げの直後に出たトラブルは、直前に何が変わったかから疑うと早く絞れます。

  • 仮設品が残っていないか:仮設のストレーナ、閉止板、試験用の仮設配管
  • 弁の向きと開閉状態:逆止弁や玉形弁の流れの向き、ラインアップ(弁の開閉の並び)が図面どおりか
  • 支持の状態:ばねハンガのロックの解除忘れ、サポートの撤去・未復旧(スプリングハンガ・コンスタントハンガ)
  • 昇温・昇圧の途中の漏れ:温度が上がる過程でフランジが緩むことがある。温度の上がり幅が大きいフランジでは、昇温の過程で行う増し締め(ホットボルティング)を、手順としてあらかじめ計画しておくことがある。漏れを見つけてから加圧下で締めるのとは別の作業である
  • 異物:溶接の玉やスケールが流れて、ストレーナや弁、計器を詰まらせる

高圧ガスの保安の教科書も、複雑な構造の設備は適正に組み立て、検査で機能を確かめてから運転すること、運転条件を変えるときは材質や温度の設計条件と照らし合わせることを求めています。工事の後のトラブルは、図面と現物の照合で見つかることが多いと覚えておくとよいでしょう(配管図面の読み方)。

10. 専門部署へ伝える情報

現場で原因を決めきれないときは、保全や設計、計装の担当に引き継ぎます。このとき、伝える情報の質で、原因にたどり着く速さが決まります。 事故調査の方法論では、事実を「なぜ、いつ、どこで、だれが、なにを、どのように」の5W1Hでとらえ、時系列に並べ、客観的に簡潔に表すことを求めています。トラブルの報告も同じです。

伝える項目具体的に書くこと
場所ライン番号、機器番号、弁・計器のタグ、高さや方向(ポンプ側から何本目のフランジ、など)。写真に目印を入れる
時刻最初に気づいた時刻と、トレンドで変化が始まった時刻。両者は違うことが多い
運転条件流量、圧力、温度、負荷、運転中の機器、切替え中かどうか
変化の経過急に出たか少しずつか。直前に行った操作、工事、原料や運転条件の変更
写真・動画漏れの状態、揺れの範囲。音と揺れは動画で残す
数値現場の圧力計・温度計の読み、通常値との差、漏れの量(1分に何滴、など)
実施した処置連絡した相手、閉めた弁、止めた機器、立入り制限の範囲と時刻

例えば、次のように書きます。

「9月27日 2時10分、巡回で P-101 吐出ラインの FE-101 下流側のフランジ(地上2m、ポンプから2つ目)に、1分に約5滴の液の漏れを発見。流体は○○、運転圧力 0.8 MPa、温度 60℃。1時30分に P-101 から P-102 へ切り替えた後。2時15分に運転責任者へ連絡、2時40分に系統を隔離。写真3枚、動画1本あり。」

「漏れている」だけでなく、どこで、いつから、どの条件で、何の後に、どれだけ、を1回で渡せるように書きます。 ライン番号とタグの読み方はP&IDとライン番号の読み方を参照してください。

小さな異常を報告することには、もう1つ意味があります。報告された小さな異常は職場の共通の危険認識になり、事故の前兆として次のトラブルを防ぎます。異常に気づいていながら、その危険を読めなかった事故の例は東ソー南陽事業所の爆発火災で紹介しています。

11. 設計へ戻す:レビューで聞く5問

同じトラブルを繰り返さないためには、現場の症状を設計の条件へ戻します。設計レビューでは、次の5つを聞きます。

  1. ストレーナや詰まりやすい機器の前後に、差圧を監視できる計器と、清掃のための隔離弁・バイパスがあるか
  2. 高い所にベント、低い所にドレンがあり、気溜まり・液溜まり・蒸気配管のドレンポケットを作っていないか
  3. 急閉の弁、ポンプの停止、逆止弁の閉止で、ハンマが起きないか確かめたか
  4. 回転機の近くや絞りの下流にある小口径の枝管が、振動で揺れない支持になっているか
  5. フランジ、弁のグランド、ストレーナなど、漏れやすく点検が要る所に、人が近づいて作業できる空間があるか

保全のしやすさを設計の段階で確かめることは、配管の設計の教科書でも、区分テストのための弁や、閉塞しやすい場所の洗浄用ノズル、フランジを締めるときのレンチの作業空間などとして挙げられています(バルブ・計器の操作性とメンテナンス空間)。

12. 製造・保全で確認する5点

  1. 主要な圧力計・温度計の通常値を、流量とあわせて記録している(異常のときの比較の基準になる)
  2. ストレーナの差圧、スチームトラップの作動、ベント・ドレンの状態を定期的に見ている
  3. フランジ、弁のグランド、小口径の枝管、保温の継ぎ目を、巡回で目と耳で確かめている
  4. 弁の開閉はゆっくり行い、蒸気の弁は暖機してから開けている
  5. 小さな異常でも、場所・時刻・条件・経過・数値をそろえて報告している

まとめ

  • 症状を見たら、まず止める・隔離する必要があるかを判断します。 危険な流体の漏れ、増えていく漏れや揺れ、繰り返す打撃音は、すぐ運転責任者へ連絡します。
  • 計器か現物かを分けます。 指示だけが変わっていれば、導圧管と計器を先に調べます。
  • 流れないときは、圧力を上流から順に読みます。 通常より圧力の落ち方が大きい区間に詰まりがあり、吐出圧力の動きでポンプ側か配管側かが分かります。
  • 漏れは、漏れた場所で疑う原因が決まります。 フランジ、弁の軸、溶接部、小口径の枝管、保温の下を区別し、加圧したまま増し締めしません。
  • 揺れと音は、いつ・どう出るかで分けます。 操作と同時の打撃はハンマ、流している間の連続音は絞り、周期的なら回転機や脈動を疑います。
  • 専門部署へは、場所・時刻・運転条件・変化の経過・写真と数値を時系列で渡します。 そして症状を設計の条件へ戻し、同じトラブルを繰り返さないようにします。

配管の設計から施工・運転・保全までの全体像は配管の完全ガイドを参照してください。

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参考文献

  • 西野悠司『そうか!わかった!プラント配管の原理としくみ』第3章 3.3「損失水頭の展開」(図3-13 水力勾配線とその効用) Amazonで見る
  • 西野悠司『絵とき「配管技術」基礎のきそ』第5章「配管の振動」(図5-24 凝縮ハンマの起こるステップ)、第11章「ストレーナの運用」 Amazonで見る
  • 西野悠司『「配管設計」実用ノート』8.1「どんな配管振動があるか」(表8.1.1 配管に関連する振動の分類)、9.7「保温材下で起こる配管外部腐食(CUI)」(図9.7.2) Amazonで見る
  • 小岩井隆『絵とき「バルブ」基礎のきそ』第9章「バルブの管理・メンテナンス」(ウォータ/スチームハンマ、凍結、流体の絞りに関するトラブル) Amazonで見る
  • 松村正夫『入門 新ポンプ技術』第7章「ポンプ運転のトラブルと対策」(表7.1 不具合現象とその原因および対策) Amazonで見る
  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』3「運転管理」3.3.5 d)「小さな異常の報告」、3.4「漏えいの防止」(3.4.1 漏えいの原因、3.4.2 気密性能保持の方法、3.4.3 増し締めの危険)
  • 化学工学協会編『化学プラント安全対策技術4 事故災害事例と対策』5「事故災害調査方法論」
  • 化学工学協会編『プロセス機器構造設計シリーズ3 配管』6.4「配管図の点検」(保全上適切な設計かどうか)
  • 佐鳥聡夫「流量のお話 差圧式流量計」(差圧式の欠点:導圧管が詰まりやすい)
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