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重力流れ・低差圧配管の設計|総圧損だけでは決まらない

重力流れ・低差圧配管の設計|総圧損だけでは決まらない

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

上流槽と下流槽の液面差が、計算した圧力損失より大きければ流れる——そう考えて配管ルートを決めていないでしょうか。

重力流れや低差圧配管では、系全体のエネルギー収支が成立していても、配管途中の高点で負圧になり、空気や蒸気が溜まって流量が落ちることがあります。飽和温度に近い液体なら、途中で静圧が飽和蒸気圧を下回ってフラッシュすることもあります。反対に、気体配管の低点へ液が溜まれば、液封が流れを止めます。

この記事では、重力流れ・低差圧配管を「全体の利用可能水頭」と「途中の局所圧力」の二つに分けて設計する方法を説明します。直管と局部損失の計算はPIP-16とPIP-17、水力条件を含むレイアウト全体の考え方はPIP-21を正本とします。

まず結論:全体の水頭と途中の静圧を別々に確認する

重力流れ・低差圧配管では、次の二つの確認が必要です。

  1. 全体確認:上流から下流までの利用可能水頭で、必要流量の損失水頭を賄えるか
  2. 局所確認:水力勾配線を配管ルートへ重ね、高点、絞り、弁、レジューサ付近の静圧が危険域へ入らないか

全体確認だけでは、「目的の流量が出るか」は分かっても、「途中で負圧、気相滞留、フラッシュが起きないか」は分かりません。反対に、局所圧力だけを見ても、下流槽まで流量を運べるかは判断できません。

確認対象主な問い見落としたときの現象
利用可能水頭液面差と槽内圧力差で必要損失を賄えるか流量不足、液位変動で流れない、下流圧上昇で停止
水力勾配線配管途中の静圧はどこまで下がるか負圧、空気吸込み、溶存ガスの析出
飽和蒸気圧局所絶対圧力が液温の飽和蒸気圧を上回るかフラッシュ、二相化、振動、騒音
高点・低点気相または液相が閉じ込められないかベーパーポケット、ドレンポケット、液封
ベント・バランス移動した体積に見合う気相の出入りがあるか上流側の負圧化、下流側の昇圧、間欠流
重力流れ配管を上流下流間の利用可能水頭と配管途中の水力勾配線による局所圧力の二段階で確認する図
重力流れ配管を上流下流間の利用可能水頭と配管途中の水力勾配線による局所圧力の二段階で確認する図(一次資料を参考に当サイト作成)

利用可能水頭は液面差だけでは決まらない

流線上の位置1と位置2について、損失を含むベルヌーイ式は次のように書けます。

z1 + p1/(ρg) + v1²/(2g) = z2 + p2/(ρg) + v2²/(2g) + hL

  • z:基準面からの高さ、位置水頭[m]
  • p:圧力[Pa]
  • ρ:液密度[kg/m³]
  • g:重力加速度[m/s²]
  • v:平均流速[m/s]
  • hL:位置1から2までの損失水頭[m]

上流槽と下流槽の液面を結び、両槽内の液面速度を無視できる場合、利用可能水頭H_availableは、

H_available = (z1 – z2) + (p1 – p2)/(ρg)

です。定常状態では、この利用可能水頭が配管、継手、弁、機器の損失水頭と釣り合う流量へ落ち着きます。

したがって、重力流れは「ポンプがないから圧力差を使わない流れ」ではありません。液面差による位置水頭と、上流・下流槽の気相圧力差を合わせて使う流れです。大気開放槽同士なら圧力水頭差は0ですが、密閉槽同士では数kPaの槽内圧差が、数十cmの液面差に相当することがあります。

低差圧系では、次の変化が利用可能水頭の大きな割合を奪います。

  • 上流槽の最低液位
  • 下流槽の最高液位
  • 下流槽の気相圧力上昇
  • 上流槽のベント不良による負圧化
  • 液密度の変化
  • ストレーナ閉塞、弁開度、汚れによる損失増加

設計流量は通常液位ではなく、上流最低液位、下流最高液位、最小の槽内圧力差を組み合わせた最も厳しい定常条件で確認します。起動時に配管が空、気相を含む、弁が部分開度という条件も別ケースです。

上流槽と下流槽の液面差による位置水頭と槽内圧力差による圧力水頭を合計し、配管損失へ割り当てる図
上流槽と下流槽の液面差による位置水頭と槽内圧力差による圧力水頭を合計し、配管損失へ割り当てる図(一次資料を参考に当サイト作成)

水力勾配線を配管プロフィールへ重ねる

水力勾配線は、配管の各位置における位置水頭と圧力水頭の合計を結んだ線です。

HGL = z + p/(ρg)

水力勾配線に速度水頭を加えた線がエネルギー勾配線です。

EGL = z + p/(ρg) + v²/(2g)

一定内径の満管流では速度水頭がほぼ一定なので、水力勾配線とエネルギー勾配線はおおむね平行に下がります。弁やオリフィスでは損失により両線が大きく低下します。レジューサや拡大管では、流速変化によって速度水頭と圧力水頭が相互に変換されるため、水力勾配線は局所的に上り下りします。一方、損失を含むエネルギー勾配線は流れ方向へ上昇しません。

ゲージ圧を使って水力勾配線を描いた場合、水力勾配線と管中心高さの差が、その位置の圧力水頭です。

  • 水力勾配線が管中心より上:正のゲージ圧
  • 水力勾配線が管中心と一致:ゲージ圧0
  • 水力勾配線が管中心より下:負のゲージ圧

平面図だけでは高点と低点が見えません。重力流れ、飽和液、ポンプ吸込、サイフォン、低差圧配管では、側面プロフィールへ管中心EL、槽液位、機器ノズルEL、弁・絞り位置を入れ、水力勾配線を重ねます。

上流槽から下流槽へ向かう液体配管の側面プロフィールに水力勾配線とエネルギー勾配線を重ね、圧力水頭と速度水頭を示す図
上流槽から下流槽へ向かう液体配管の側面プロフィールに水力勾配線とエネルギー勾配線を重ね、圧力水頭と速度水頭を示す図(一次資料を参考に当サイト作成)

負圧とフラッシュは同じではない

水力勾配線が配管より下へ来ると、その部分は負のゲージ圧です。しかし、負圧になった瞬間に液体が沸騰するわけではありません。

フラッシュの判定は、局所の絶対圧力p_local,absと、その液体・温度の飽和蒸気圧p_vaporを比較します。

p_local,abs ≤ p_vapor(T)

となれば、減圧によって液体の一部が蒸発します。

負圧からフラッシュまでの間にも問題は起こります。水に溶けていた空気が気泡として析出し、高点へ集まることがあります。フランジ、グランド、計器接続などの微小な漏れから外気を吸い込む可能性も高まります。気相が高点に滞留すると有効流路が狭まり、流量低下と圧力変動を起こします。

局所静圧の確認順は次のとおりです。

  1. 水力勾配線から局所ゲージ圧を読む
  2. 大気圧を加えて絶対圧力へ直す
  3. 最も高い液温に対応する飽和蒸気圧と比較する
  4. 溶存ガス析出、空気吸込み、機器の許容負圧も確認する

飽和温度に近い温水や飽和液では、最初から圧力余裕が小さいため、わずかな損失でもフラッシュへ達します。容器を出た直後に配管を下げると、位置水頭を圧力水頭へ変換して局所静圧の余裕を作れます。これは総エネルギーを増やす操作ではなく、配管途中の圧力分布を安全側へ変えるレイアウトです。

飽和液配管で容器出口と同じ高さを長く通すルートは途中でフラッシュし、出口直後に配管を下げるルートは位置水頭を圧力水頭へ変えてフラッシュを避ける比較図
飽和液配管で容器出口と同じ高さを長く通すルートは途中でフラッシュし、出口直後に配管を下げるルートは位置水頭を圧力水頭へ変えてフラッシュを避ける比較図(一次資料を参考に当サイト作成)

満管流・開水路・サイフォンを混同しない

「自然流下」と呼ばれる配管でも、実際の流れ方は一つではありません。

満管の重力流れ

管断面が液で満たされ、自由表面を持たない流れです。この記事のDarcy-Weisbach式による計算は、原則としてこの状態を前提とします。管内の気相を排出し、上流・下流の圧力条件を明確にする必要があります。

自由表面を持つ流れ

管内の一部に気相があり、液面を持つ流れです。開水路に近い扱いとなり、管径いっぱいを使う満管流の流速・損失式をそのまま適用できません。過大口径、ベント不良、流量変動によって、満管流のつもりだった配管が部分充満流になることがあります。

サイフォン流れ

配管の高点が上流液面より高くても、管内が液で満たされ、高点の絶対圧力が飽和蒸気圧より十分高く、空気侵入がなければ流れ得ます。ただし、起動時の呼び液、気相排出、漏れ、液温変化、高点圧力を管理しなければなりません。

「高点があるから必ず流れない」でも、「下流が低いから必ず流れる」でもありません。どの流動状態を前提にし、その状態を起動から停止まで維持できるかを設計します。

配管のアップ・ダウンが気溜まりと液封をつくる

液体配管の不要な高点はベーパーポケット、気体配管の不要な低点はドレンポケットになります。

液体配管の高点

高点の静圧が下がると、溶存ガス、流入空気、蒸発した液が集まります。気相は圧縮性を持つため、流量や圧力が変動し、実質的な流路断面も小さくなります。低差圧系では、わずかな気相滞留でも残りの駆動水頭を失います。

気体配管の低点

凝縮液や同伴液が低点へ溜まると、気体は液柱を押し上げるまで通過できません。圧力が上がると液を吹き飛ばし、圧力が下がると再び溜まるため、間欠流、振動、ウォータハンマ、下流への液キャリーオーバーを起こします。

飽和液・二相流のアップダウン

高点のベーパーポケットと低点のドレンポケットが連続すると、液相と気相が交互に動く不安定流動になりやすくなります。PIP-20で二相流として詳しく扱いますが、単相流のつもりで引いた配管がアップダウンによって二相化する点は、PIP-19の段階で確認します。

液体配管の高点に気相が溜まるベーパーポケットと、気体配管の低点に液が溜まるドレンポケットを左右比較した図
液体配管の高点に気相が溜まるベーパーポケットと、気体配管の低点に液が溜まるドレンポケットを左右比較した図(一次資料を参考に当サイト作成)

ベントとバランス管は流れの一部として設計する

上流槽から下流槽へ液体が移ると、上流槽の気相容積は増え、下流槽の気相容積は減ります。密閉槽間で気相の出入りがなければ、上流槽は負圧側、下流槽は正圧側へ動き、液を流す差圧を自分で打ち消します。

この場合、両槽の気相部をつなぐバランス管、または適切なベント・ブリーザが必要です。

バランス管を設計するときは、次を確認します。

  • 移送液量に見合う気相流量を通せる内径か
  • 液、凝縮液、雨水が溜まって液封しないルートか
  • 高点の気相と確実につながっているか
  • 可燃性・有毒ガスを大気へ放出しない接続先か
  • 圧力制御、窒素シール、蒸気回収系と競合しないか
  • 逆流時の汚染、液移送、火炎伝播を評価したか

ベント管を付けること自体が目的ではありません。必要な気相が、運転・起動・停止・排水時のすべてで行き来できる経路を作ることが目的です。ベント管が細い、弁が閉じている、凝縮液で塞がっている、接続位置が液に浸かっている場合は、図面上に存在しても機能しません。

上流槽から下流槽へ液体を重力移送するとき、両槽気相部をバランス管でつないで圧力差の消失を防ぐ図
上流槽から下流槽へ液体を重力移送するとき、両槽気相部をバランス管でつないで圧力差の消失を防ぐ図(一次資料を参考に当サイト作成)

液封は邪魔にも機能にもなる

液封は、配管内の液柱が気体の通路を遮る状態です。意図しない低点の液封は流れを妨げますが、適切に設計した液封は圧力差を保ちながら液を排出する装置になります。

代表例が、負圧の熱交換器や凝縮器から大気圧のドレンタンクへ液を連続排出するU字管です。必要な液柱高さhは、基本的に圧力差を液柱へ換算して求めます。

h = Δp/(ρg)

例えば密度998.2 kg/m³の水で50 kPaの圧力差を支える理論液柱高さは、

h = 50000/(998.2×9.80665) = 5.11 m

です。

ただし、実設備の必要高さを5.11 mちょうどにはしません。少なくとも次を加味します。

  • 配管と継手の損失水頭
  • 上下流圧力の変動
  • 液密度と温度の変化
  • 気泡・蒸気の混入による見掛け密度低下
  • 起動時に液封を形成する方法
  • 停止時の逆流、サイフォン切れ、ドレン残留

液封の左右脚の水頭差が圧力差と釣り合うこと、ベントやサイフォンブレーカが必要か、下流槽液位が変動しても成立するかを確認します。

負圧の熱交換器から大気圧のドレンタンクへU字管の液柱で圧力差を支えながら液を排出する仕組み
負圧の熱交換器から大気圧のドレンタンクへU字管の液柱で圧力差を支えながら液を排出する仕組み(一次資料を参考に当サイト作成)

設計計算は最小の利用可能水頭から始める

重力流れ・低差圧配管の計算は、次の順で進めます。

  1. 流体、温度、密度、粘度、飽和蒸気圧をそろえる
  2. 上流最低液位、下流最高液位、両槽の気相圧力範囲を決める
  3. 利用可能水頭H_availableを求める
  4. 内径、長さ、粗さ、継手、弁、機器の損失を整理する
  5. 目的流量で必要な損失水頭hLを計算する
  6. H_availableとhLを比較し、必要流量が成立するか確認する
  7. 配管プロフィールに累積損失を割り付け、水力勾配線を描く
  8. 高点、絞り、弁、レジューサ、機器入口の局所絶対圧力を確認する
  9. 負圧、飽和蒸気圧、許容圧力、空気侵入、気相排出を確認する
  10. 起動、停止、空配管、ベント閉、ストレーナ汚れ、下流背圧上昇を別ケースで確認する

一定内径の満管流で、Darcy摩擦係数fDを仮定できる予備計算なら、

hL = {fD(L/D) + ΣK} × v²/(2g)

Q = Av

から流量を求められます。整理すると、

Q = A√[2gH_available / {fD(L/D) + ΣK}]

です。ただしfDはRe数に依存するため、実計算では流量とfDを反復します。部分充満流、二相流、フラッシュ、開水路、非ニュートン性スラリーへこの式をそのまま使いません。

上流下流条件から利用可能水頭を求め、損失計算、水力勾配線、局所圧力、ベントと異常ケースを順に確認する設計フロー
上流下流条件から利用可能水頭を求め、損失計算、水力勾配線、局所圧力、ベントと異常ケースを順に確認する設計フロー(一次資料を参考に当サイト作成)

計算例:5 kPaの背圧上昇で流量が約19%低下する

二つの槽を水の満管重力流れ配管でつなぐ例を計算します。流量変化の考え方を示すため、Darcy摩擦係数は一定と仮定します。

条件

項目
流体水、20℃
密度ρ998.2 kg/m³
上流最低液位と下流最高液位の差1.50 m
初期の槽内圧力両槽とも大気圧
管内径D52.9 mm
直管長L30 m
Darcy摩擦係数fD0.022
局部損失係数ΣK4.0

断面積Aは0.002198 m²、抵抗係数の合計は、

fD(L/D) + ΣK = 0.022×30/0.0529 + 4.0 = 16.48

です。

両槽が大気圧の場合

利用可能水頭は1.50 mです。

v = √(2×9.80665×1.50/16.48) = 1.34 m/s

Q = Av = 10.57 m³/h

となります。

下流槽圧力が5 kPaだけ上がった場合

5 kPaを水頭へ換算すると、

Δp/(ρg) = 5000/(998.2×9.80665) = 0.511 m

です。利用可能水頭は、

H_available = 1.50 – 0.511 = 0.989 m

へ減ります。同じ抵抗係数を仮定すると、

Q = 8.59 m³/h

となり、両槽が大気圧の場合より約19%低下します。

5 kPaは一般の加圧配管では小さく見えますが、1.50 mの落差しかない重力流れでは利用可能水頭の約34%です。低差圧系では、圧力をkPaのまま眺めず、対象液の水頭へ換算して予算に入れます。

この計算は全体流量の確認です。実設計では、同じ条件で配管プロフィールへ水力勾配線を描き、高点の負圧と飽和蒸気圧も別に確認します。

液面差1.50mの水重力流れで両槽大気圧時と下流背圧5kPa時の利用可能水頭と流量を比較した計算図
液面差1.50mの水重力流れで両槽大気圧時と下流背圧5kPa時の利用可能水頭と流量を比較した計算図(一次資料を参考に当サイト作成)

製造・保全で流量不足を切り分ける

重力流れ配管の流量が落ちたとき、配管口径や弁だけを疑うと原因を外します。次の順で現場状態を確認します。

  1. 上流実液位と下流実液位を同時刻で確認する
  2. 両槽の気相圧力とベント・ブリーザの差圧を確認する
  3. 高点から気相が抜けるか、低点に液が溜まっていないか確認する
  4. ストレーナ差圧、弁開度、逆止弁、オリフィス、機器差圧を確認する
  5. 温度変化、フラッシュ音、振動、間欠流、流量計指示の周期性を確認する

特に、運転開始直後は流れるが徐々に止まる場合は、槽内圧力のアンバランスや気相滞留を疑います。圧力が周期的に上がって一気に流れ、その後また止まる場合は、液封やポケットに蓄えられた圧力が断続的に解放されている可能性があります。

ベント弁を安易に開放する前に、流体の毒性、可燃性、温度、圧力、放出先を確認します。運転中のラインへ仮設ベントを追加する行為は、別の漏えい・着火・吸込みリスクを作ります。

よくある間違い

液面差だけで利用可能水頭を決める

密閉槽では気相圧力差も駆動力または抵抗になります。上流最低液位、下流最高液位、両槽圧力を組み合わせます。

総圧損が落差未満だから安全と判断する

総量が成立しても、高点や絞り部の局所静圧は飽和蒸気圧以下になることがあります。水力勾配線を配管プロフィールへ重ねます。

負圧とフラッシュを同じ意味で使う

負圧は大気圧より低い状態、フラッシュは絶対圧力が飽和蒸気圧以下になって液が蒸発する現象です。判定基準が違います。

管径を大きくすれば必ず安定すると考える

管径を大きくすると摩擦損失は減りますが、部分充満、気相排出不足、低流速による滞留が起こる場合があります。想定する流動状態を確認します。

ベント管が図面にあれば機能すると考える

細すぎる、長すぎる、液が溜まる、弁が閉じている、接続点が液没しているベントは機能しません。気相流量とルートを確認します。

サイフォンを通常の下り勾配配管として扱う

サイフォンは液張り、高点の絶対圧力、空気侵入、サイフォン切れを管理する必要があります。起動方法まで含めます。

U字管の高さを理論値ちょうどにする

理論液柱高さに、圧力変動、損失、密度変化、気泡混入、液位変動の余裕を加えます。起動時の液封形成も確認します。

設計レビューで確認したい5項目

  1. 上流最低液位、下流最高液位、両槽圧力の最悪組合せで利用可能水頭を求めたか
  2. 配管の側面プロフィールへ水力勾配線を描き、高点と絞り部の局所圧力を確認したか
  3. 局所絶対圧力を最高液温の飽和蒸気圧と比較したか
  4. 満管、部分充満、サイフォン、二相流のどの状態を前提にしたか
  5. ベント、バランス管、液封が起動・定常・停止時に機能するか

製造・保全で確認したい5項目

  1. 実液位と槽内圧力が設計条件から外れていないか
  2. ベント、ブリーザ、バランス管に閉止、閉塞、凝縮液の滞留がないか
  3. 高点の気溜まり、低点の液溜まり、配管の沈下による新しいポケットがないか
  4. フラッシュ音、振動、流量指示の周期変動、配管表面温度の急変がないか
  5. ストレーナ、弁、逆止弁、機器の差圧が増えていないか

まとめ

  • 重力流れ・低差圧配管は、全体の利用可能水頭と途中の局所圧力を分けて確認する
  • 利用可能水頭は液面差だけでなく、上流・下流槽の気相圧力差を含む
  • 水力勾配線が配管より下なら負のゲージ圧だが、フラッシュ判定は絶対圧力と飽和蒸気圧で行う
  • 飽和液は容器出口と同じ高さを長く通さず、先に下げて圧力水頭の余裕を作る
  • 液体配管の高点はベーパーポケット、気体配管の低点はドレンポケットになる
  • 密閉槽間の重力移送では、ベントまたはバランス管が流れの成立条件になる
  • U字液封は圧力差を液柱で支えるが、理論高さに変動と損失の余裕を加える
  • 低差圧系では数kPaの背圧変化でも、利用可能水頭と流量へ大きく効く

配管の入口と出口だけを見れば、エネルギー収支は一つの数字にまとまります。しかし、実際の流体は途中の高点、低点、弁、絞りを通ります。総圧損の計算を終点にせず、水力勾配線を配管プロフィールへ重ねて初めて、流れる配管になっているかを判断できます。

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参考文献

  • 西野悠司『配管設計実用ノート』PDF p.25-27(ベルヌーイ式、水力勾配線、負圧、飽和水の移送ルート) Amazonで見る
  • 西野悠司『配管設計実用ノート』PDF p.44-47(配管のアップ・ダウン、重力流れ、ベント、バランス管、液封) Amazonで見る
  • 西野悠司『プラント配管の原理としくみ』PDF p.52、p.64-66(水力勾配線、飽和水配管のフラッシュ、ルート比較) Amazonで見る
  • 西野悠司『絵とき「配管技術」基礎のきそ』PDF p.72-74(ベルヌーイ式、水力勾配線、エネルギー勾配線、負圧) Amazonで見る