配管圧力損失の求め方と計算例

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配管の圧力損失ってどうやって計算するの?

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

・圧力損失の求め方

・圧力損失の計算例

私は大学で化学工学を学び、化学メーカーで6年間設計の仕事をしてきました。
配管の圧力損失を求める基本をなるべくわかりやすく、図も用いて解説していきます。

配管の圧力損失の計算方法

全圧力損失 = 直管の圧力損失 + 様々な抵抗による圧力損失

配管の全圧力損失を求めるには、直管の圧力損失と様々な抵抗による圧力損失の2つを求める必要があります。

様々な抵抗とは、急拡大・急縮小・エルボ・バルブなどの抵抗のことです。

直管の圧力損失

直管の圧力損失は以下の式で求められます。

ファニングの式

$$ΔP=4f(\frac{ρu^2}{2g})(\frac{l}{D})・・①$$

ΔP:吸込み液面上の圧力[Pa]

f:管摩擦係数

ρ:流体密度[kg/m3]

u:流速[m/s]

g:重力加速度[m/s2]

l:管長[m]

D:管内径[m]

ここで管摩擦係数は

層流の時、壁の粗さには無関係に

$$F=16/Re$$

乱流の時、平滑管についてBLasiusの式が有名です。

$$f=0.00791Re^{−0.25}$$

$$3×10^3<Re<10^5$$

詳細はこちら

管摩擦係数の求め方【ムーディー線図、実験式を用いる】

管路の様々な抵抗

管路の様々な抵抗は以下に分類されます。

  • 急拡大
  • 急縮小
  • 入口管
  • オリフィス
  • 管挿入物

それぞれ求め方を紹介していきます。

急拡大

配管断面積が急拡大する場合の圧力損失は

$$ΔP=\frac{ρ(u_1^2−u_2^2)}{2}・・②$$

u1:上流の流速[m/s]

u2:下流の流速[m/s]

拡大前と拡大後の運動エネルギーの差という意味ですね。

急縮小

配管断面積が急縮小する場合の圧力損失は

$$ΔP=\frac{ζρu_2^2}{2}=\frac{(1/Cc−1)^2ρu_2^2/2}{2}・・③$$

ζ:係数

Cc:縮流係数

係数ζと縮流係数Ccは上流と下流の断面積比から表により求めます。

S 2 / S 10.10.20.30.40.50.60.70.80.91.0
C c0.610.620.630.650.670.700.730.770.841.00
ζ0.410.380.340.290.240.180.140.0890.0360

管入口

管入り口の圧力損失は

$$ΔP=ζρu_2^2/2・・④$$

管の入口一例を示します。

オリフィス

オリフィスの圧力損失は

$$ΔP=ζ_0ρu_2^2/2・・⑤$$

ζ0は以下の表より読み取ります。

水の場合

S 0 / S0.1.0.20.30.40.50.60.70.80.91.0
ζ 022647.817.57.83.751.800.800.290.060.00

管挿入物

継手や弁などによる圧力損失は、その形状ごとに管長さに換算した相当長さL0で表す。

①式のLの代わりに

L0を用いることで継手や弁の圧力損失を求められる。

例を表に示します。

挿入物L 0 / d
45°エルボ15
90°エルボ15
T字管40~80
仕切弁(全開)0.7

配管圧力損失の計算例

実際に計算してみましょう。

手順は以下となります。

  1. レイノルズ数Reを求める
  2. 管摩擦係数を求める
  3. 管挿入物の相当長を求める
  4. 全圧力損失を求める

計算条件は以下とします。

  • 流体:水
  • 流体温度:30℃
  • 配管径:2B(50A)
  • 配管長:100m
  • 流量:10m3/hr
  • 90°エルボ6カ所
  • T字管2カ所

手順1:レイノルズ数Reを求める

管摩擦係数fを求めるためにレイノルズ数Reを計算します。

$$Re=\frac{Duρ}{μ}$$

2B配管の内径D=54.1mm、

流速u=1.2m/s(流量10m3/hrを配管断面積で割る)、

密度ρ=1000kg/m3、

粘度μ=0.797×10−3Pa・s

④式に代入して

$$Re=\frac{51.4×10^{−3}×1.2×1000}{0.797×10^{−3}}$$

$$Re=77390$$

手順2:管摩擦係数を求める

乱流のため管摩擦係数はBlasius(ブラジウ)の式を用いて算出します。

$$f=0.0791Re^{−0.25}(Re<10^5)$$

$$f=0.0791×77390^{−0.25}$$

$$f=4.742×10^{−3}$$

手順3:管挿入物の相当長を求める

90°エルボ6個の相当長は

$$90°エルボ相当長=L_0/d×d×個数$$

L0/dを表から読み取り

$$90°エルボ相当長=15×54.1×10^{−3}×6$$

$$=4.9m$$

T字管2カ所の相当長は

$$ボール弁相当長=80×54.1×10^{−3}×2$$

$$=8.7m$$

手順4:全圧力損失を求める

ファニングの①式を用いて圧力損失を求めます。

ファニングの式

$$ΔP=4f(\frac{ρu^2}{2g})(\frac{l}{D})・・①$$

ΔP:吸込み液面上の圧力[Pa]

f:管摩擦係数

ρ:流体密度[kg/m3]

u:流速[m/s]

g:重力加速度[m/s2]

l:管長[m]

D:管内径[m]

ここで配管長Lは

$$L=直管長さ+管挿入物の相当長さ$$

$$=100m+4.9m+8.7m$$

$$L=113.6m$$

①式に代入して$$

$$ΔPf=4×4.742×10^{−3}(\frac{1000×1.2^2}{2×9.81})(\frac{113.6}{54.1×10^{−3})

$$ΔPf=2919.5Pa$$

全圧力損失が求められました。

まとめ

圧力損失の基本的な計算方法と計算例を解説しました。

状況に応じて管摩擦係数と管路の様々な抵抗を求めれば、様々な配管の圧力損失を求めることができますよ。

一度手計算してみると理論が理解できるので、是非チャレンジしてみてください。

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