配管の圧力損失ってどうやって計算するの?
そんな悩みを解決します。
・圧力損失の求め方
・圧力損失の計算例
私は大学で化学工学を学び、化学メーカーでプラント設計の仕事をしてきました。
配管の圧力損失を求める基本をなるべくわかりやすく、図も用いて解説していきます。
配管の圧力損失の計算方法
全圧力損失 = 直管の圧力損失 + 様々な抵抗による圧力損失
配管の全圧力損失を求めるには、直管の圧力損失と様々な抵抗による圧力損失の2つを求める必要があります。
様々な抵抗とは、急拡大・急縮小・エルボ・バルブなどの抵抗のことです。
直管の圧力損失
直管の圧力損失は以下の式で求められます。
$$ΔP=4f(\frac{ρu^2}{2g})(\frac{l}{D})・・①$$
ΔP:吸込み液面上の圧力[Pa]
f:管摩擦係数
ρ:流体密度[kg/m3]
u:流速[m/s]
g:重力加速度[m/s2]
l:管長[m]
D:管内径[m]
ここで管摩擦係数は
層流の時、壁の粗さには無関係に
$$F=16/Re$$
乱流の時、平滑管についてBLasiusの式が有名です。
$$f=0.00791Re^{−0.25}$$
$$3×10^3<Re<10^5$$
詳細はこちら
管摩擦係数の求め方【ムーディー線図、実験式を用いる】
管路の様々な抵抗
管路の様々な抵抗は以下に分類されます。
- 急拡大
- 急縮小
- 入口管
- オリフィス
- 管挿入物
それぞれ求め方を紹介していきます。
配管断面積が急拡大する場合の圧力損失は
$$ΔP=\frac{ρ(u_1^2−u_2^2)}{2}・・②$$
u1:上流の流速[m/s]
u2:下流の流速[m/s]
拡大前と拡大後の運動エネルギーの差という意味ですね。
配管断面積が急縮小する場合の圧力損失は
$$ΔP=\frac{ζρu_2^2}{2}=\frac{(1/Cc−1)^2ρu_2^2/2}{2}・・③$$
ζ:係数
Cc:縮流係数
係数ζと縮流係数Ccは上流と下流の断面積比から表により求めます。
S 2 / S 1 | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.8 | 0.9 | 1.0 |
C c | 0.61 | 0.62 | 0.63 | 0.65 | 0.67 | 0.70 | 0.73 | 0.77 | 0.84 | 1.00 |
ζ | 0.41 | 0.38 | 0.34 | 0.29 | 0.24 | 0.18 | 0.14 | 0.089 | 0.036 | 0 |
管入り口の圧力損失は
$$ΔP=ζρu_2^2/2・・④$$
管の入口一例を示します。
オリフィスの圧力損失は
$$ΔP=ζ_0ρu_2^2/2・・⑤$$
ζ0は以下の表より読み取ります。
水の場合
S 0 / S | 0.1 | .0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.8 | 0.9 | 1.0 |
ζ 0 | 226 | 47.8 | 17.5 | 7.8 | 3.75 | 1.80 | 0.80 | 0.29 | 0.06 | 0.00 |
継手や弁などによる圧力損失は、その形状ごとに管長さに換算した相当長さL0で表す。
①式のLの代わりに
L0を用いることで継手や弁の圧力損失を求められる。
例を表に示します。
挿入物 | L 0 / d |
45°エルボ | 15 |
90°エルボ | 15 |
T字管 | 40~80 |
仕切弁(全開) | 0.7 |
配管圧力損失の計算例
実際に計算してみましょう。
手順は以下となります。
- レイノルズ数Reを求める
- 管摩擦係数を求める
- 管挿入物の相当長を求める
- 全圧力損失を求める
計算条件は以下とします。
- 流体:水
- 流体温度:30℃
- 配管径:2B(50A)
- 配管長:100m
- 流量:10m3/hr
- 90°エルボ6カ所
- T字管2カ所
手順1:レイノルズ数Reを求める
管摩擦係数fを求めるためにレイノルズ数Reを計算します。
$$Re=\frac{Duρ}{μ}$$
2B配管の内径D=54.1mm、
流速u=1.2m/s(流量10m3/hrを配管断面積で割る)、
密度ρ=1000kg/m3、
粘度μ=0.797×10−3Pa・s
④式に代入して
$$Re=\frac{51.4×10^{−3}×1.2×1000}{0.797×10^{−3}}$$
$$Re=77390$$
手順2:管摩擦係数を求める
乱流のため管摩擦係数はBlasius(ブラジウ)の式を用いて算出します。
$$f=0.0791Re^{−0.25}(Re<10^5)$$
$$f=0.0791×77390^{−0.25}$$
$$f=4.742×10^{−3}$$
手順3:管挿入物の相当長を求める
90°エルボ6個の相当長は
$$90°エルボ相当長=L_0/d×d×個数$$
L0/dを表から読み取り
$$90°エルボ相当長=15×54.1×10^{−3}×6$$
$$=4.9m$$
T字管2カ所の相当長は
$$ボール弁相当長=80×54.1×10^{−3}×2$$
$$=8.7m$$
手順4:全圧力損失を求める
ファニングの①式を用いて圧力損失を求めます。
$$ΔP=4f(\frac{ρu^2}{2g})(\frac{l}{D})・・①$$
ΔP:吸込み液面上の圧力[Pa]
f:管摩擦係数
ρ:流体密度[kg/m3]
u:流速[m/s]
g:重力加速度[m/s2]
l:管長[m]
D:管内径[m]
ここで配管長Lは
$$L=直管長さ+管挿入物の相当長さ$$
$$=100m+4.9m+8.7m$$
$$L=113.6m$$
①式に代入して$$
$$ΔPf=4×4.742×10^{−3}(\frac{1000×1.2^2}{2×9.81})(\frac{113.6}{54.1×10^{−3})
$$ΔPf=2919.5Pa$$
全圧力損失が求められました。
まとめ
圧力損失の基本的な計算方法と計算例を解説しました。
状況に応じて管摩擦係数と管路の様々な抵抗を求めれば、様々な配管の圧力損失を求めることができますよ。
一度手計算してみると理論が理解できるので、是非チャレンジしてみてください。
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