※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。
配管の口径を決めるとき、「標準流速の範囲に入ったから大丈夫」とは限りません。流体を必要な流量で運ぶには、配管、継手、弁、機器で失われるエネルギーを供給側の圧力やポンプ揚程でまかなえることを確認する必要があります。
この記事では、液体の直管を中心に、Darcy-Weisbach(ダルシー・ワイスバッハ)式を実務で使う手順を説明します。式の意味から、間違えやすい摩擦係数の定義、物性値、内径、運転ケースまで扱います。
局部損失(エルボ・ティー・弁)は「エルボ・ティー・バルブの圧力損失」、密度変化を無視できないガス・蒸気は「ガス・蒸気配管の圧力損失」で扱います。
まず結論:圧力損失は「使える差圧」の範囲内に収める
圧力損失計算の目的は、式へ数値を代入することではありません。次の問いに答えることです。
- 最大流量のケースでも、使える差圧の範囲で流せるか
- 末端で必要な圧力を確保できるか
- ポンプや圧縮機の能力が不足しないか
- 調節弁や流量計に必要な差圧を残せるか
- 最小流量から最大流量まで運転点が成立するか
設計では、供給側と受入側の圧力差、位置の高低差、ポンプが加えるエネルギーを「使える側」として整理します。直管、継手、弁、機器、流量計などの損失は「消費する側」です。両者の収支が合わなければ、口径、ルート、機器、ポンプ仕様を見直します。

圧力損失の正体は、流れの機械エネルギーが熱へ変わること
実際の流体には粘性があり、管壁では流速がほぼゼロ、管の中央で最大になります。この速度差によるせん断と、乱流の渦や混合によって、流れの機械エネルギーの一部が熱へ変わります。管が上がって増えた位置エネルギーは損失ではありません。摩擦や渦で回収できない形へ変わった分だけが、圧力損失です。

圧力損失・静圧・位置水頭を分けて考える
液体配管では、エネルギーを「液柱の高さ」で表すと理解しやすくなります。単位重量あたりのエネルギーは、主に次の4項で整理できます。
- 位置水頭 z:基準面からの高さ
- 圧力水頭 p/(ρg):静圧に相当する高さ
- 速度水頭 v²/(2g):流速が持つ運動エネルギー
- 損失水頭 hL:摩擦や渦で失われた分
同じ内径の水平な直管では、損失水頭の増加がそのまま静圧の低下として現れます。上り配管では、静圧の低下に位置水頭の増加も含まれます。エネルギー収支では、位置差と摩擦損失を別項目にしてください。

Darcy-Weisbach式を読む
円形直管の摩擦による圧力損失は、Darcy-Weisbach式で表せます。
Δpf = fD × (L/D) × (ρv²/2)
損失水頭で表す場合は、次の形です。
hf = fD × (L/D) × {v²/(2g)}
液体ではポンプ揚程と比べやすい損失水頭[m]を使い、圧力損失とは Δp=ρg h で換算します。
記号は次のとおりです。
- Δpf:直管摩擦による圧力損失[Pa]
- hf:直管摩擦による損失水頭[m]
- fD:Darcyの管摩擦係数[-]
- L:直管長さ[m]
- D:管内径[m]
- ρ:運転状態の流体密度[kg/m³]
- v:断面平均流速[m/s]
- g:重力加速度[m/s²]

式から分かる圧力損失の傾向
ほかの条件が同じなら、直管損失は管長L、密度ρ、fDに比例し、流速vの2乗に比例します。流量Qを固定すると v=4Q/(πD²) なので、fDの変化を無視すれば損失は内径Dの5乗に反比例します。
口径を一段小さくしただけで損失が大きく増えるのはこのためです。実際にはDを変えるとReと相対粗さも変わるので、5乗則は感度をつかむ近似として使ってください。
レイノルズ数で層流・遷移域・乱流を判定する
管摩擦係数fDは一定値ではありません。まずレイノルズ数Reを求め、流れの状態を判断します。
Re = ρvD/μ = vD/ν
- μ:粘性係数[Pa·s]
- ν:動粘性係数[m²/s]
円管内流れでは、一般に次を目安にします。
- Re ≦ 2,300:層流
- 2,300 < Re ≦ 4,000:遷移域
- Re > 4,000:乱流
遷移域は、わずかな振動、入口条件、管内面状態によって層流にも乱流にも変わる不安定な領域です。設計点が遷移域へ入るときは、層流の式と乱流の式の両方で損失を出し、大きいほうで余裕を確かめます。

管摩擦係数はReと相対粗さから求める
層流では、管内面粗さの影響を受けず、次式で求めます。
fD = 64/Re
乱流では、レイノルズ数Reに加えて相対粗さε/Dが必要です。εは管内面の絶対粗さです。
Colebrook式は、乱流域の代表的な関係式です。
1/√fD = -2 log10 { ε/(3.7D) + 2.51/(Re√fD) }
fDが式の両辺にあるため、表計算やプログラムでは反復計算します。手計算や概算では、ムーディ線図か、次のHaaland式のような陽形式の近似式を使います。
1/√fD = -1.8 log10 { [(ε/D)/3.7]^1.11 + 6.9/Re }

絶対粗さは材料名だけで固定しない
新しい市販鋼管の概算値として、絶対粗さ0.05 mmが広く使われます。ただし腐食、スケール、ライニング、使用年数で有効な粗さは変わります。既設配管の能力評価では、実測の流量・差圧、内部状態、会社標準の粗さを確かめます。
計算例:50A Sch40の水配管
25 ℃の水を、50A Sch40の鋼管で50 m輸送する例を計算します。ここでは直管摩擦だけを対象とします。
設計条件
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 体積流量Q | 0.20 m³/min |
| 管内径D | 52.7 mm |
| 直管長さL | 50 m |
| 密度ρ | 997.0 kg/m³ |
| 粘性係数μ | 0.90 mPa·s |
| 絶対粗さε | 0.05 mm |
物性値は運転温度に合わせます。呼び径50Aや外径60.5 mmをDへ入れず、スケジュール番号から求めた内径52.7 mmを使います。
1. 流量をSI単位へ直す
Q = 0.20/60 = 0.00333 m³/s
2. 断面積と平均流速を求める
A = πD²/4 = 0.00218 m²
v = Q/A = 1.53 m/s
3. レイノルズ数と相対粗さを求める
Re = ρvD/μ = 8.92×10⁴
ε/D = 0.00005/0.0527 = 9.49×10⁻⁴
Reは4,000を超えるため乱流です。
4. Darcy摩擦係数を求める
Haaland式を使うと fD ≒ 0.0220 です。ムーディ線図で読んでも、有効数字2桁程度で同じ値になります。
5. 損失水頭と圧力損失を求める
hf = fD(L/D)v²/(2g) = 2.49 m
Δpf = ρg hf = 24.3 kPa
したがって、この50 mの直管だけで約24 kPaを消費します。実際の配管系では、エルボ、ティー、弁、ストレーナ、流量計、熱交換器などの損失を別途加えます。

抵抗曲線とポンプ運転点|最小・通常・最大流量で確認する
乱流で摩擦係数の変化が小さい範囲では、圧力損失はおおむね流量の2乗に比例します。通常流量だけで成立しても、最大流量で流量が1.5倍になれば、直管損失は概ね2.25倍になります。
設計表では、最小・通常・最大流量のケースを横に並べて比べます。
| ケース | そろえる値 | 主に確かめること |
|---|---|---|
| 最小流量 | 温度・密度・粘度、内径と流速、Re・ε/D・fD | 調節弁の開度、流量計の測定下限、固形物の沈降、気液の滞留 |
| 通常流量 | 同上 | 直管・局部・機器の損失と、高低差・末端必要圧力の合計 |
| 最大流量 | 同上 | 供給圧力またはポンプ揚程との余裕(損失は流量の2乗で増える) |

ポンプ系では、必要全揚程を次の3項に分けます。
必要全揚程 = 実揚程 Ha + 吸込側損失 Δhs + 吐出し側損失 Δhd
- 実揚程:液面差と、容器の圧力差を液柱へ換算した項。流量によらず一定
- 吸込側損失:吸込タンクからポンプ入口まで。NPSHaも減らすため、小さく抑える
- 吐出し側損失:ポンプ出口から末端までの直管・継手・弁・流量計・機器の損失。末端の出口損失(大気へ放流するなら管端に残る速度水頭)も含める
流量ごとに必要全揚程を並べた曲線が、配管の抵抗曲線です。ポンプのH-Q曲線と抵抗曲線の交点が、実際の運転点になります。計算した設計流量だけを見るのではなく、この交点が要求範囲に入るかを確認します。
弁を絞ると損失係数が増えて抵抗曲線が急になり、交点は左上へ移ります。流量は減り、吐出圧力は上がります。運転点の動き方は「ポンプの性能曲線の読み方」で詳しく扱います。
計算シミュレーター|配管条件から損失と運転点を確認する
流量・口径・長さ・継手の数・実揚程を入れると、損失ヘッドと必要全揚程を計算し、抵抗曲線をポンプの性能曲線に重ねて運転点を出します。調節弁の開度を動かすと、放物線が立ち上がって交点が動くのが見えます。
| 設計流量での流速 v | – |
| 速度ヘッド v²/2g | – |
| 直管の係数 λL/d / 継手・弁の Σζ(入口0.5・出口1.0を含む) | – |
| 設計流量での損失ヘッド h | – |
| 設計流量で必要な全揚程(Ha+h) | – |
| 運転点(ポンプ曲線との交点) | – |
| 判定 | – |
損失 h=(λL/d+Σζ)·v²/2g。ζの代表値は目安(エルボ1.0は小曲率の曲がりの値で、大曲率のベンドは0.2〜0.3程度。逆止弁2.5は全開時の代表値0.6〜1.5より大きめで、リフト逆止弁など損失の大きい形式を想定)。調節弁のζは全開6、開度xで 6·(100/x)² とした。ポンプ曲線は H=H₀−k·Q² の典型形(筆者モデル)。吸込側の損失は別途(NPSHの記事)。
やってみてほしいこと:
- 口径を 80A→65A→50A と落とす。流速が上がり、損失が2乗で増える。ポンプは同じなのに運転点の流量が落ちる
- 調節弁の開度を 100%→50%→30% と絞る。ζ が増えて放物線が立ち、流量が減り揚程(吐出圧力)が上がる
現場での読み方|流量が出ない原因を抵抗曲線から切り分ける
計算は設計のためだけのものではありません。運転中に流量が落ちたとき、この式の中の何が変わったかを考えると原因が絞れます。

| 現象 | 式の中で変わったもの | 疑う場所 |
| 弁を触っていないのに流量が減り、吐出圧力が上がった | Σζ が増えた(抵抗曲線が立った) | 吐出し側のストレーナの目詰まり、吐出し配管内のスケール・異物、調節弁の閉じ側での固着、逆止弁の半開 |
| 流量が減り、吐出圧力も下がった | ポンプ側の曲線が下がった | 羽根車の摩耗、ライナリングのすき間、回転数低下、空気吸込み、キャビテーション |
| 流量が減り、吸込圧力が下がった | 吸込側の損失が増えた、または実揚程が増えた | 吸込ストレーナ、タンク液面の低下、吸込弁の開度 |
| 冬場だけ流量が落ちる | λ が増えた(粘度上昇で Re が下がる) | 液の粘度。保温・加温の確認 |
損失の式は「抵抗曲線がどちらに動いたか」を読むための道具です。圧力計2つ(吸込・吐出)と流量計の3つの値があれば、ポンプ側の問題か配管側の問題かはかなり切り分けられます。
よくある間違い
化学工学の資料ではFanningの摩擦係数fFを使うことがあり、両者には fD=4fF の関係があります。Darcy-Weisbach式へFanning係数をそのまま入れると、摩擦損失を4分の1に見積もります。本記事では一貫してDarcy係数fDを使っています。

| 間違い | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| Darcy係数とFanning係数を混同する | 損失を1/4に見積もる | 式・線図・ソフトがどちらの係数かを確かめる |
| 呼び径や外径を内径Dへ入れる | 流速、Re、L/Dがすべてずれる | Schごとの実内径を配管規格表で確かめる |
| 常温の物性値を高温・低温の液に使う | 粘度が変わり、ReとfDがずれる | 運転ケースごとに密度・粘度を設定する。濃度依存の大きい液や非ニュートン流体は水で代用しない |
| 直管長だけを数えて終える | 局部損失と機器損失が抜ける | 継手・弁はK値または相当長さ、機器はメーカー値で足す。K値法と相当長さ法を同じ部品に重ねると二重計上になる |
| 1本の線で物性と内径を平均する | 口径・温度・相が変わる区間で損失を誤る | 区間に分け、v、Re、ε/D、fD、Δpを求めて合計する |

この記事で扱わない範囲と関連記事
本記事の手順は、定常な単相流が対象です。次の場合は別の検討が必要です。
- ガス・蒸気で密度変化が無視できない、チョーク流れが起こり得る:ガス・蒸気配管の圧力損失
- 気液二相流、スラリーの沈降・堆積・非ニュートン性:二相流・スラリー配管の設計入門
- 脈動流やウォーターハンマーなどの非定常現象:ポンプ停止時のウォーターハンマー
- 極端に短い助走区間や特殊な流路断面
口径と流速の決め方は「配管口径はこう決める」「配管流速の決め方」、継手・弁の局部損失は「エルボ・ティー・バルブの圧力損失」で扱います。
まとめ
圧力損失計算は、口径選定、ポンプ仕様、調節弁差圧、流量計選定をつなぐ計算です。式を一度解くだけでなく、運転ケースと配管区間を変えて成立範囲を確認してください。
この記事の内容を現場で使えるように、iPhoneアプリ「ポンプ 3D図鑑」を作りました。10形式の選定、揚程・NPSH・動力など12項目の計算、10形式の3D図鑑、トラブル早見・軸封の選び方などの資料を1本にまとめています。800円の買い切りで、広告・追加課金はありません。
計算と選定の結果は構想段階の概算で、保証計算ではありません。必要NPSHの概算や比速度からの羽根車の形は目安です。3Dは代表構造の教育用モデルで、特定の機種の寸法・形状とは一致しません。実機の選定・発注・安全判断は、メーカーの性能曲線と仕様書、適用規格で確認してください。
参考文献
- 西野悠司『配管設計実用ノート』(ベルヌーイ式、水力勾配線、Re、Darcy-Weisbach式、ムーディ線図) Amazonで見る
- 西野悠司『絵とき「配管技術」基礎のきそ』(Darcy-Weisbach式、Re、摩擦係数、Fanning係数、計算例) Amazonで見る
- 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』(Fanning係数とDarcy係数の関係、摩擦係数線図)
- 日本機械学会『流体力学』第6章(円管内流れ、管摩擦損失、ムーディ線図) Amazonで見る
- 高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』理工学社, 1・6「流れとエネルギー損失」(直管の損失ヘッド、各種の損失ヘッド、管路の総損失、流速の目安) Amazonで見る
- 松村正夫『入門 新ポンプ技術』丸善, 5.2「ポンプの運転点の決定」(システムカーブ=配管損失+バルブ損失+実揚程) Amazonで見る
- 外山幸雄『ポンプの選定とトラブル対策』日刊工業新聞社, 2・15「性能曲線と運転点の関係」(配置図、配管抵抗曲線) Amazonで見る
- 化学工学会編『化学工学便覧 改訂五版』丸善, 第5章「流動」5・6 流体輸送機器と計画(管径の選定、流速の目安) 最新版をAmazonで見る
設備技術は、回転機械・静機器・配管・計装・設備信頼性の12の記事マップで案内しています。
PLANT NEWS ON NOTE
化学プラントニュース
化学・石油プラントの重要ニュースを、毎週の週報と事故速報でお届けします。現場で押さえたい動きを、わかりやすく整理します。
noteで最新ニュースを読む ↗
化学プラント大全 


