※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。
直管の圧力損失を計算しても、実際の配管系の損失計算は終わりません。配管にはエルボ、ティー、レジューサ、弁、入口、出口などがあり、流れの向きや断面積が変わるたびに渦や剥離が生じます。
これらをまとめて「局部損失」と呼び、一般に損失係数Kまたは相当長さLeで評価します。ただし、表から数字を拾って足すだけでは不十分です。どの流速を基準にしたKか、弁は全開か、ティーは分岐か合流か、相当長さ表がどの摩擦係数を前提にしているかを確認しなければなりません。
この記事では、液体の定常単相流を中心に、K値法と相当長さ法の意味、計算手順、設計上の落とし穴を説明します。直管摩擦とDarcy摩擦係数の求め方は「管摩擦係数の求め方」、圧縮性を無視できないガス・蒸気は「ガス・蒸気配管の圧力損失」で扱います。
まず結論:全損失は直管・局部・機器に分けて足す
配管系の損失は、少なくとも次の3つに分けて集計します。
- 直管損失:管壁摩擦による損失
- 局部損失:エルボ、ティー、レジューサ、弁、入口、出口などの損失
- 機器損失:ストレーナ、流量計、熱交換器など、機器固有の損失
同じ内径で流速が一定の区間なら、損失水頭は次式でまとめられます。
hL = {fD(L/D) + ΣK} × v²/(2g)
圧力損失で表す場合は、
ΔpL = {fD(L/D) + ΣK} × ρv²/2
です。
ここで、fDはDarcy摩擦係数、Lは直管長さ、Dは管内径、Kは各配管要素の損失係数です。
ただし、途中で口径が変わる場合や、ティーで流量が分かれる場合は、1つのvでΣKをまとめてはいけません。各要素が定義された参照流速で個別に損失を求め、最後に圧力または水頭で合計します。

局部損失の正体は、渦・剥離・流れの混合
エルボや弁の前後で静圧が下がるのは、部品が流体から圧力を「吸い取る」からではありません。流れの向きや断面積が急に変わると、流体が壁面に沿いきれず、剥離、逆流、渦、二次流れが発生します。整った主流の機械エネルギーが、不規則な流れを経て熱へ散逸します。
代表例は次のとおりです。
- エルボ:曲がり外側と内側に圧力差が生じ、断面内に二次流れができる
- 急拡大:下流の角部で流れが剥離し、大きな循環渦ができる
- 急縮小:最小断面までいったん収縮した後に再拡大し、その部分で損失する
- ティー:分岐・合流によって主流と枝流が衝突、混合する
- 弁:狭い流路、急な方向転換、弁体後流によって渦が生じる
同じ呼び径でも、流路が直線に近いほど損失は小さく、急な曲がりや障害物が多いほど損失は大きくなるのが基本です。

K値法と相当長さ法は、同じ損失の別表現
K値法
損失係数Kを使うと、局部損失は次式で表せます。
hL = K × vref²/(2g)
ΔpL = K × ρvref²/2
- hL:局部損失水頭[m]
- ΔpL:局部圧力損失[Pa]
- K:損失係数[-]
- vref:K値が定義された参照流速[m/s]
- ρ:運転状態の流体密度[kg/m³]
Kは無次元ですが、部品だけで決まる普遍定数ではありません。形状、曲率、弁開度、レイノルズ数、流量分配、前後の配管条件によって変わります。
相当長さ法
相当長さLeは、「その部品と同じ損失を生じる同一内径の直管長さ」です。
hL = fD × (Le/D) × v²/(2g)
したがって、同じ摩擦係数の定義と同じ参照流速を使うなら、
K = fD × Le/D
と換算できます。

どちらを使うか
K値法は、口径が変わる部品、入口・出口、ティーの分岐・合流など、参照流速を明確にして要素ごとに計算するときに向きます。
相当長さ法は、同じ口径のエルボや全開弁が多数あり、直管長へ換算して概算するときに便利です。レイアウト初期に、エルボや弁の数量から概算配管長を作る用途にも使えます。
ただし、資料によっては相当長さ比Le/DからKへ換算するときに、運転時のfDではなく完全乱流域の摩擦係数fTを使うよう定義されています。Darcy係数とFanning係数の違いもあります。表の数字だけを別の式へ移さず、元資料の定義を一緒に確認してください。
K値を使う前に「どの流速が基準か」を確認する
局部損失式のvrefは、いつも同じ場所の流速ではありません。
同じ内径のエルボや全開弁なら、上流と下流の流速が等しいため迷いません。レジューサ、入口、出口、ティーでは、上流側、下流側、主管、枝管のどの流速を使うかによって計算結果が変わります。
設計では、K値の出典ごとに次を確認します。
- 基準断面は上流側か下流側か
- 基準流速は主管か枝管か
- 分岐前流量か分岐後流量か
- 内径はどの区間の値か
- K値に入口、出口、レジューサなど別の要素が含まれていないか
異なる基準流速のKを、そのまま一つのΣKへ足してはいけません。各要素をΔpまたはhへ変換してから合計します。
エルボは、曲がり半径と曲がり角度で損失が変わる
エルボでは流れが急に向きを変えます。曲がり外側の圧力が内側より高くなり、断面内に一対の二次流れが生じます。曲がり半径が小さいほど剥離と渦が強くなり、一般に損失は大きくなります。
『「配管設計」実用ノート』では、ロングエルボの相当長さ比Le/Dの例として14、ショートエルボの例として20が示されています。別の資料では90°エルボを曲率別に細分しており、数値が同じではありません。これは誤差ではなく、形状区分とデータの定義が違うためです。
設計時は、単に「90°エルボ」と入力せず、少なくとも次を区別します。
- ロングエルボかショートエルボか
- 45°か90°か
- エルボか大きな曲率半径のベンドか
- マイタベンドか
- 曲率半径Rと内径Dの比R/D
- 前後の直管長と、近接する別のエルボの影響
初期計画では代表値で概算できますが、ポンプ吸込、高流速、大口径、低差圧系では、採用品の寸法と適用データへ戻って確認します。

ティーのK値は、分岐・合流と流量比で変わる
ティーは、1個につき1つのKを入れれば終わる部品ではありません。
同じT字形でも、次の流れ方があります。
- 主管から主管へ直進し、一部が枝管へ分岐する
- 主管から枝管へ90°曲がって分岐する
- 主管と枝管から流入し、合流する
- 枝管から入り、主管の左右へ分かれる
さらに、分岐前流量に対する枝流量の比によって、主管側と枝管側のKが変わります。日本機械学会『流体力学』でも、分岐・合流の損失係数は流量比の関数として示されています。
圧力回復の取り方によっては、ある経路のKが負に見える場合があります。これはティーがエネルギーを作ったという意味ではありません。基準断面間で速度エネルギーが静圧へ回復した影響を、損失係数の定義に含めた結果です。系全体のエネルギー損失が負になるわけではありません。
相当長さ表の「T型継手40~80D」のような代表値は、概算には使えます。ただし、流量分配や圧力バランスが重要な管路網では、直進側と枝側を分け、流量比に対応したK値を使います。

バルブ損失は、弁形式よりも開度で急変することがある
全開時の流路が直線に近い仕切弁やフルボアボール弁は、局部損失が比較的小さい形式です。玉形弁は弁内で流れが大きく曲がるため、全開でも損失が大きくなります。
さらに重要なのが開度です。日本機械学会『流体力学』に示された代表例では、仕切弁のKは全開0.13、3/4開0.80、1/2開3.8、1/4開15です。玉形の止め弁は全開でもK=9で、1/4開ではK=110まで増えます。
これらは特定形状の代表値であり、すべての製品へ固定して使う値ではありません。しかし、「弁を少し閉めても損失は少し増えるだけ」という考えが危険であることは分かります。

遮断用の仕切弁を中間開度で常用すると、圧力損失だけでなく、弁体の振動や弁座損傷も問題になります。流量調整が目的なら、「玉形弁(グローブ弁)」や「調節弁の選定とサイジング」へ進みます。
ボール弁はフルボアかレデュースドボアか、バタフライ弁は弁体とシート形状、逆止弁は形式と開き量によって損失が変わります。メーカーのCv値、K値、圧力損失曲線がある場合は、一般表より採用品データを優先します。
計算例:直管30m、エルボ4個、弁1個の水配管
日本機械学会『流体力学』の例題条件を基に、局部損失だけを分けて確認します。
計算条件
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 流体 | 20℃の水 |
| 体積流量Q | 0.60 m³/min |
| 管内径D | 75 mm |
| 直管長L | 30 m |
| 密度ρ | 998 kg/m³ |
| Darcy摩擦係数fD | 0.0159 |
| エルボ | 4個、K=1.1/個 |
| 弁 | 1個、K=0.2 |
ここで使うKは、例題として与えた計算条件です。一般的なエルボ・弁の固定値として転用しません。
1. 流速を求める
Q = 0.60/60 = 0.0100 m³/s
v = Q/(πD²/4) = 2.26 m/s
速度水頭は、
v²/(2g) = 0.261 m
です。
2. 局部損失を求める
ΣK = 4×1.1 + 0.2 = 4.6
hlocal = 4.6×0.261 = 1.20 m
Δplocal = ρg hlocal = 11.8 kPa
3. 直管損失を求める
hpipe = 0.0159×(30/0.075)×0.261 = 1.66 m
Δppipe = 16.3 kPa
4. 合計する
hpipe + hlocal = 2.86 m
Δppipe + Δplocal = 28.0 kPa
この例では、局部損失11.8 kPaは直管損失16.3 kPaの約72%です。直管長だけを計算すると、配管部分の損失を約4割過小評価します。
5. 相当長さへ換算する
同じfDを用いてKから相当長さへ換算すると、
Le = (ΣK/fD)D = (4.6/0.0159)×0.075 = 21.7 m
です。
直管30mへ21.7mを加えた有効長51.7mでDarcy-Weisbach式を解いても、直管+局部損失と同じ2.86mになります。これがK値法と相当長さ法の対応です。

口径が変わる系は、区間ごとに損失を計算する
レジューサの前後やティーの枝管では、口径と流量が変わるため流速も変わります。流量が同じでも、内径が小さい区間ほど流速と速度水頭が大きくなります。
計算は次の順で区間分割します。
- 同じ流量、内径、物性を持つ区間へ分ける
- 各区間でv、Re、fD、直管損失を求める
- 各局部要素についてKの参照断面を確認する
- 要素ごとにK vref²/(2g)を求める
- 全区間の損失水頭または圧力損失を合計する
たとえば、D1からD2へ縮小するレジューサでは、上流速度v1と下流速度v2が異なります。使用するKが下流速度基準なら、v2を使います。Kの出典が上流基準なのにv2を使うと、口径比の4乗に相当する大きな誤差が生じます。

設計レビューで確認すること
- 各部品の形式、個数、開度は実際のP&ID・レイアウトと一致しているか
- K値またはLe/Dの出典、適用形状、レイノルズ数範囲は明記されているか。出典の摩擦係数はDarcy係数かFanning係数(fD=4fF)か
- 参照流速と参照内径は明記されているか
- 異なる口径・流量の区間を分割したか
- ティーは分岐・合流、直進・枝側、流量比を区別したか
- K値法と相当長さ法を二重計上していないか
- 弁は通常・最大・最小流量で必要な開度を反映したか。局部損失は流量の概ね2乗で増えることを最大流量で確認したか
- ストレーナ汚れ、機器差圧、入口・出口損失を漏らしていないか
- 高低差を局部損失へ混ぜていないか
- 計算した全損失が供給可能差圧の範囲内か
初期レイアウトでは概算値を使い、配管ルートと機器が固まった段階で数量と採用品データを更新します。完成図書のラインリスト、P&ID、配管アイソメ、バルブデータシート、機器データシートを相互に照合してください。
まとめ
局部損失は「小さな部品の補正」ではありません。短い配管、低差圧系、多数の弁を持つ配管では、直管損失と同程度か、それ以上になることがあります。部品の数量だけでなく、参照流速、弁開度、分岐流量比まで計算モデルへ反映してください。
関連記事
- 配管口径はこう決める|流速・圧損・経済性の3段階
- 配管流速の決め方|液・ガス・蒸気・スラリーで基準が違う理由
- 配管の圧力損失計算|Darcy-Weisbach式・抵抗曲線・運転点
- ガス・蒸気配管の圧力損失|圧縮性を無視できる範囲
- 玉形弁(グローブ弁)|絞れる理由と圧力損失
- 調節弁の選定とサイジング|Cv値・流量特性・許容差圧・異常現象
- 管摩擦係数の求め方|Darcy係数とFanning係数、ムーディ線図の読み方
- 仕切弁(ゲート弁)|中間開度が不向きな理由
参考文献
- 西野悠司『絵とき「配管技術」基礎のきそ』(局部損失、K値、相当長さ、複数口径) Amazonで見る
- 西野悠司『プラント配管の原理としくみ』(相当管長比と計算例) Amazonで見る
- 西野悠司『配管設計実用ノート』(管継手・バルブの損失計算) Amazonで見る
- 日本機械学会『流体力学』(管路の諸損失、エルボ、ティー、弁開度、計算例) Amazonで見る
- 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』(断面変化と管挿入物の相当長さ)
設備技術は、回転機械・静機器・配管・計装・設備信頼性の12の記事マップで案内しています。
PLANT NEWS ON NOTE
化学プラントニュース
化学・石油プラントの重要ニュースを、毎週の週報と事故速報でお届けします。現場で押さえたい動きを、わかりやすく整理します。
noteで最新ニュースを読む ↗
化学プラント大全 
