※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。
差圧伝送器や圧力伝送器は、プロセスの圧力を「導圧管」という細い配管で受け取ります。伝送器の指示が狂う原因の大半は、伝送器本体ではなくこの導圧管にあります。液を測る管に気体が溜まる、気体を測る管に液が溜まる、凍る、詰まる。どれも指示を狂わせます。
導圧管の引き回しには、メーカーの実務書がまとめた明快なルールがあります。取出し角度、伝送器の高さ、勾配、凍結防止の4つです。
この記事では、その4つのルール、気体・液体・蒸気での違い、密閉タンクのレベル計で使うドライレグとウェットレグ、導圧管を使わないダイアフラムシールの注意点、そして現場で見る場所を説明します。
この記事の結論
- 取出し角度:気体は配管の上(垂直から 45° 以内)、液体は横(水平から下 45° 以内)、蒸気は横(水平から上 45° 以内)
- 伝送器の高さ:気体は取出し部より上、液体・蒸気は取出し部より下。導圧管に溜まったドレンや気泡がプロセス側へ戻る向き
- 勾配:昇りか下りだけ。水平に見える部分でも 1/10 以上の勾配。ドレンや気泡を途中に溜めない
- 凍結防止:凍るおそれがあればスチームジャケットかヒータで保温
- 密閉タンクのレベル計は、低圧側の導圧管を乾いたままにするドライレグか、あらかじめ液で満たすウェットレグ。蒸気が凝縮する系はウェットレグ
- ダイアフラムシールは導圧管が要らないが、封入液の高低差 1 m で約 10 kPa がゼロ点に加わる。キャピラリは短く、束ねて断熱する
1. なぜ導圧管が狂いの元になるか
導圧管は、プロセス配管から伝送器まで、細い管で圧力を伝えます。管の中が測りたい流体で一様に満たされていれば、プロセスの圧力がそのまま伝わります。ところが実際には、次のことが起きます。
- 気体を測る管に、凝縮した液が溜まる:液柱の高さ分だけ圧力が上乗せされ、指示が高く出る
- 液体を測る管に、気泡が入る:気泡が動くたびに指示が振れる。気泡が溜まると液柱が減って指示が低く出る
- 凍る:冬に水分を含む管が凍り、圧力が伝わらず指示が固まる
- 詰まる:固形物や析出物で管が塞がる。差圧式流量計のトラブルの大半がこれ
実務書は「プロセス配管内のドレン、ガス、沈殿物等が導圧管内に流入した場合は、測定圧力に誤差を生じる要因となる」と書き、これを防ぐための取出し角度と配管方法を定めています。
2. ルール1|取出し角度は流体で変わる
水平配管から圧力を取り出すとき、どの方向に取出し管を付けるかは、流体で決まります。

| 流体 | 取出し方向 | 理由 |
| 気体 | 垂直上方向、または上方から 45° 以内 | 配管内のドレンや沈殿物が入らないように |
| 液体 | 水平、または水平から下方 45° 以内 | 配管上部の気泡が入らず、底の沈殿物も入らない |
| 蒸気 | 水平、または水平から上方 45° 以内 | 凝縮水が入りにくく、底のドレンも入らない |
液体なのに配管の真上から取り出すと、気泡がそこに集まって導圧管へ入ります。気体なのに真下から取り出すと、ドレンがそこに溜まります。取出し口の位置を見れば、その導圧管に何が溜まりやすいかが分かります。
3. ルール2|伝送器の高さ
導圧管に溜まったドレンや気泡は、抜く操作をすると測定圧力に一時的な外乱を与えます。だから実務書は、溜まったものがプロセス配管へ自然に戻る配管にするよう求め、伝送器の位置を次のように定めています。
- 気体:伝送器は取出し部より高い位置に。導圧管に凝縮した液は下へ流れてプロセスへ戻る
- 液体・蒸気:伝送器は取出し部より低い位置に。導圧管に入った気泡は上へ抜けてプロセスへ戻る
「気体は上、液体は下」と覚えます。逆にすると、溜まったものが伝送器側に集まります。
4. ルール3|勾配は 1/10 以上
導圧管は、昇りか下りのどちらかの勾配だけで引きます。途中に山や谷があると、そこにドレンや気泡が溜まります。水平に見える区間でも、1/10 以上の勾配(1 m 進んで 10 cm 上がるか下がる)を付けます。
現場で「導圧管が水平に長く引かれている」「途中で上下している」のを見たら、そこが溜まり場です。
5. ルール4|凍結防止と施工の注意
凍るおそれがある流体は、伝送器と導圧管をスチームジャケットやヒータで保温します。冬に指示が固まったら、まず凍結を疑います。
実務書は施工上の注意も挙げています。
- 導圧管が長い場合は支柱に固定して振れを防ぐ
- 導圧管はプロセスの圧力・温度に見合った材質・肉厚のものを使う
- 元弁は接続形式(フランジ・ねじ・溶接)と構造(グローブ・ゲート・ボール)を流体条件で選ぶ
6. 密閉タンクのレベル計|ドライレグとウェットレグ
タンクの液位を差圧伝送器で測るとき、開放タンクなら低圧側を大気に開放するだけです。密閉タンクでは、タンク内の気相の圧力を低圧側にも導いて相殺する必要があり、その導圧管の扱いが2通りあります。

| 方式 | 低圧側の導圧管 | 使う場面 | 注意 |
| ドライレグ | 乾いたまま(気体だけ) | 気相が凝縮しにくい | 凝縮した液が溜まると誤差。ドレンポットを付けて抜く |
| ウェットレグ | あらかじめ液で満たす | 気相が凝縮しやすい(蒸気、高温) | 液柱の分だけ差圧が変わるので、計算に入れる。高温高圧では凝結槽(コンデンスポット) |
計装の教科書は、ウェットレグの差圧を「高圧側の液柱−低圧側の液柱」の式で示しています。低圧側の液の高さと密度を設計に入れないと、ゼロ点がずれます。ゼロ点の計算は差圧式レベル計のゼロ点で説明しています。ボイラの飽和水のレベル計は、ウェットレグの典型です。
タンク内の液の密度が変わると、どちらの方式でも正しい液位になりません。密度が大きく変わる系では密度補正が要ります。
7. ダイアフラムシール|導圧管を無くす代わりの注意
腐食性、スラリー、固化するおそれ、極低温などで導圧管が使えないとき、プロセス側に薄いダイアフラムを置き、封入液のキャピラリで圧力を伝えるダイアフラムシール形にします。導圧管の詰まりや漏れは無くなりますが、実務書が挙げる注意点があります。

- タンクのレベル計では、最低液位(ゼロ点)を高圧側シールの中心より 50 mm 以上高く設定する
- HIGH と LOW のラベルどおりに取り付ける
- 高圧側と低圧側のキャピラリは一緒に束ね、風や振動で動かないように固定する(周囲温度差の影響を減らす)
- 取付作業中に封入液のヘッド圧をかけない。接液ダイアフラム面(約 1 mm 凸)に傷を付けない
- キャピラリをつぶさない、ねじらない
- 高温なら断熱する
- 封入液がシリコーンオイルなら比重約 1。取付高さの差 1 m 当たり約 10 kPa の差圧がゼロ点に加わるので、伝送器の選定時にゼロ点遷移量として考慮する
- キャピラリは短いほうがよい。長いと応答が悪く、温度と静圧の影響を受けやすい
- 伝送器本体は高圧側シール部よりできるだけ下方に。タンクが真空のときは特に
小口径のシール(40A、50A)は温度の影響を強く受けます。実務書のデータでは、日向と日陰でキャピラリに 10℃ の温度差がつくと、80A では −2% 程度のゼロ点誤差が、40A では −16% にもなります。朝夕や季節で指示が周期的に動くレベル計は、キャピラリの温度差を疑い、断熱材を巻きます。
8. 現場で見る場所
- 取出し口の向き:流体の種類と合っているか
- 伝送器の高さ:気体は取出し部より上、液体・蒸気は下か
- 導圧管の途中の山谷と水平区間:溜まり場になっていないか
- ドレン弁・ベント弁の位置:何が溜まるはずで、どこで抜くか。抜いたあと閉め忘れていないか
- 保温・ヒータ:冬に凍る系で、トレースが生きているか
- ダイアフラムシールのキャピラリ:束ねて固定され、断熱されているか。本体は高圧側シールより下か
9. 先輩に聞かれたら答えられる3問
- 液体の圧力を水平配管から取り出すとき、取出し管はどの方向に付けますか。
- 気体を測る伝送器は、取出し部より上と下のどちらに置きますか。
- ダイアフラムシールで、封入液の取付高さの差 1 m は差圧いくらに相当しますか。
答えは順に、水平または水平から下方 45° 以内/上/約 10 kPa(シリコーンオイルの場合)、です。
まとめ
伝送器の指示が狂う原因の大半は導圧管側にあります。取出し角度は気体が上・液体が横下・蒸気が横上、伝送器の高さは気体が上・液体と蒸気が下、勾配は 1/10 以上、凍結はトレースで防ぐ、が4つのルールです。
密閉タンクのレベル計はドライレグかウェットレグで、蒸気が凝縮する系はウェットレグにして液柱を計算に入れます。ダイアフラムシールは導圧管を無くす代わりに、封入液の高低差(1 m で約 10 kPa)とキャピラリの温度差に注意し、短く、束ねて、断熱してください。
関連記事
- 計装・制御の完全ガイド:計装の記事全体の地図と、今日の疑問からの入口
この章(計測機器)の記事 カテゴリの一覧
- 温度計の種類と選び方:熱電対と測温抵抗体はどう違うか、保護管と応答の遅れ
- 熱電対・測温抵抗体の配線とトラブル:補償導線・3線式、断線したら指示はどこへ行くか
- 圧力計と圧力伝送器:ゲージ圧・絶対圧・差圧、ブルドン管とダイアフラム、なぜ MPaG と書くか
- レベル計の種類と選び方:差圧式・ディスプレーサ・静電容量・レーダ・ガラス、密度が変わるとどうなるか
- 差圧式レベル計のゼロ点:ドライレグ・ウェットレグ・密閉タンク、ゼロ抑制とゼロ上昇の計算
- 工業用分析計の基礎:pH・導電率・酸素・ガス分析計、サンプリング系が遅れの原因
- 計器のトラブルはなぜ起こる:センサ起因・システム起因・プロセス起因の切り分け手順
参考文献
- 横河電機編『計装メーカが書いた フィールド機器・虎の巻』工業技術社, Ⅱ 5「差圧伝送器の導圧管設置」、5.5「ダイアフラムシールの設置上の注意」、7.1(5)「小口径伝送器の温度変化による影響」
- 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 2.4.2「液圧式レベル計」 Amazonで見る
- 化学工学協会編『化学プラント建設技術(下)』, 10・3・2「導圧配管」
PLANT NEWS ON NOTE
化学プラントニュース
化学・石油プラントの重要ニュースを、毎週の週報と事故速報でお届けします。現場で押さえたい動きを、わかりやすく整理します。
noteで最新ニュースを読む ↗
化学プラント大全 
