学識は記述式で範囲も広く見えますが、大問6題の構成が毎年固定されています。令和2〜6年度の5年分を、検定試験・国家試験それぞれ大問ごとに並べました。
- 学識は大問6題(問1〜問6)・120分・100点満点。どの問に何が出るかは毎年同じ
- 検定と国試では、ガス各論と燃焼計算の順番と配点が入れ替わる
- 国試は問5+問6の35点が燃焼・爆発。ガス各論20点と合わせて55点
学識の15本を大問6題に対応させた一覧は学識の記事マップにあります。
検定と国試の違い ── ガス各論と燃焼計算が入れ替わる

ガス各論と燃焼計算の「順番と配点」が入れ替わっています。 問6も、検定は4つから3つ選べますが、国試は2問必答で、中身は9割が燃焼・爆発です。
| 問4 | 問5 | 問6 | |
|---|---|---|---|
| 検定試験 | 燃焼計算・爆発範囲[20点] | ガス各論[20点] | 記述[15点] 4つから3つ選択 |
| 国家試験 | ガス各論[20点] | 燃焼計算[15点] | 記述[20点] 2問必答・ほぼ燃焼爆発 |
- 形式:記述式(計算式・導出も自力で書く)。合格基準は60%程度
- 配点の6割前後(国試60点・検定65点)は計算・熱力学が中心の大問
- 国試のガス各論20点+記述20点は暗記・記述で取れるが、記述の実体は燃焼・爆発。「暗記だけで40点」ではない
- 国試は問1のKayの方法、問3の定常状態近似のように、検定より一段深い応用が出る(→ 国家試験一発ルート)
学識は、論述側(暗記で固まる)と計算側(「型」の訓練で固まる)を分けて扱います。
【検定試験】学識の大問別マップ ── 問5のガス各論が20点
| 問 | テーマ | 配点 |
|---|---|---|
| 問1 | 気液平衡・状態方程式・分圧計算 | 15点 |
| 問2 | 熱力学変化・化学平衡・実在気体のフガシティー | 15点 |
| 問3 | 反応速度論・平衡反応の温度依存性 | 15点 |
| 問4 | 燃焼計算・安全工学・爆発範囲 | 20点 |
| 問5 | ガス各論 | 20点 |
| 問6 | 基本用語・原理の記述(4つから3つ選択) | 15点 |
問5のガス各論は、最も暗記の精度が問われる、最大の得点源かつ落とし穴です。
問1:気液平衡・状態方程式・分圧計算[15点]
- 出題実績:アントワン式の変形、定容モル熱容量(マイヤーの関係)、ヘンリーの法則による物質量
- 対策:「気相の圧力=その温度の飽和蒸気圧」を正確に使う
問2:熱力学変化・化学平衡・実在気体のフガシティー[15点]
「可逆断熱変化」と「ギブズエネルギー・フガシティーを用いた平衡」がほぼ隔年で交互に出ます。
- 出題実績:水性ガスシフト反応・アンモニア合成の平衡定数、フガシティー係数、可逆断熱膨張の内部エネルギー変化と絶対仕事
- 対策:pVγ=一定の指数計算を対数表で速く解く
問3:反応速度論・平衡反応の温度依存性[15点]
- 出題実績:1次・2次反応の速度式と転化率、ファントホッフの式、アレニウスプロットからの活性化エネルギー
- 対策:1次・2次反応の積分は自力で導出する。活性化エネルギーの計算は確実に取る定番
→ 計算の型7/アレニウスの式、アレニウスプロットとは・活性化エネルギーとは
問4:燃焼計算・安全工学・爆発範囲[20点]
- 出題実績:真発熱量・断熱火炎温度、三角図(爆発範囲・限界酸素濃度)、ホプキンソンの三乗根法則
- 対策:生成する水が気体なら真発熱量(低位)、液体なら総発熱量(高位)
→ 計算の型8・型9/爆発限界混合ガス三角図の読み方・爆発範囲(LEL・UEL)の読み方
問5:ガス各論[20点]
- 前半(詳細記述):シアン化水素・塩化ビニル・二酸化硫黄などの性質・用途・工業的製造法
- 後半(選定):水素・酸化エチレン・ホスフィン・フッ化水素などの説明文から、ガス名と化学式を選ぶ
→ ガス各論①・ガス各論②。移動時間には、音声とドリルで復習できます。
読み上げはAzure AI Speechによる合成音声です。高圧ガス保安協会とは無関係の非公式アプリなので、受験にあたっては必ず公式テキストで確認してください。
問6:基本用語・原理の記述(4つから3つ選択)[15点]
国家試験の問6(2問必答・20点)とは別物です。
| 年度 | 提示された4つ |
|---|---|
| 令和2年 | (1)分圧・全圧の定義とドルトンの法則 (2)ラウールの法則 (3)自然発火と連鎖発火理論 (4)多孔質膜によるガス分離 |
| 令和3年 | (1)ファン・デル・ワールス式と2つの補正項 (2)発火温度と引火点 (3)消炎距離 (4)空気中のアルゴンの分離精製 |
| 令和4年 | (1)理想気体 (2)閉じた系と熱力学第一法則 (3)爆発限界 (4)ガスの吸着分離におけるPSAとTSA |
| 令和5年 | (1)純物質のp-V線図 (2)可逆カルノーサイクルと効率式 (3)完全燃焼と不完全燃焼 (4)気体の溶解度とガス吸収法 |
| 令和6年 | (1)モル熱容量とマイヤーの関係 (2)蒸気爆発と蒸気雲爆発 (3)真発熱量と総発熱量 (4)非多孔質膜の透過・分離機構 |
5年で20項目、重複はゼロです。 過去問の用語の暗記より、熱力学・燃焼・分離の基本用語を広く1〜2行で説明できるほうが効きます。
【国家試験】学識の大問別マップ ── 燃焼・爆発が35点
| 問 | テーマ | 配点 |
|---|---|---|
| 問1 | 気相状態方程式・気液平衡・分圧計算 | 15点 |
| 問2 | 気体の性質・熱力学(状態変化・サイクル) | 15点 |
| 問3 | 反応速度論・化学平衡・ギブズエネルギー | 15点 |
| 問4 | 高圧ガス各論 | 20点 |
| 問5 | 燃焼・爆発の安全工学計算 | 15点 |
| 問6 | 記述問題(2問必答)── 9/10設問が燃焼・爆発 | 20点 |
問5(燃焼・爆発の計算15点)+問6(燃焼・爆発の記述20点)=35点が燃焼・爆発。 ガス各論20点と合わせると、この2分野だけで55点になります。
問1:気相状態方程式・気液平衡・分圧計算[15点]
| 年度 | 出題内容 |
|---|---|
| 令和2年 | ヘンリーの法則(p=Hx)で、酸素の飽和水溶液中の酸素質量分率と質量 |
| 令和3年 | 気体(分子量44)を取り出した後の圧力変化(Δp)から、容器容積Vと初期充填質量 |
| 令和4年 | メタンとプロパンの混合気体。Kayの方法で仮臨界値 → 対臨界値 → 一般化圧縮係数線図(内挿)→ 実在気体の質量 |
| 令和5年 | 液化ガスの過充填の危険性(体膨張係数と圧縮率の比)、液圧増加(3.00MPa)時の温度上昇Δt |
| 令和6年 | 混合気体の密度から平均モル質量、充填時の全圧とモル分率 |
Kayの方法(モル分率による臨界定数の加重平均)と一般化圧縮係数図の読み取りは超頻出です。
問2:気体の性質・熱力学(状態変化・サイクル)[15点]
| 年度 | 出題内容 |
|---|---|
| 令和2年 | 窒素と水素(体積比3:1)の平均モル質量、標準状態の密度、充填量 |
| 令和3年 | 空気の可逆断熱変化(pV1.4=一定)。初期体積・圧力と対数計算 |
| 令和4年 | 水蒸気が飽和した空気の冷却(一部凝縮)。乾燥空気の物質量、冷却後のモル分率 |
| 令和5年 | 定容加熱。マイヤーの関係でモル質量を求め、熱量Q=m cv Δt を計算 |
| 令和6年 | 逆カルノーサイクルのT-S線図。各過程と、仕事W=Q₂−Q₁がT-S図の囲む面積に等しいことの説明 |
pVγ=一定、TVγ−1=一定 の指数計算を、添付の常用対数表で迅速に処理できるよう訓練します。
問3:反応速度論・化学平衡・ギブズエネルギー[15点]
| 年度 | 出題内容 |
|---|---|
| 令和2年 | 固体触媒反応(表面反応律速)。被覆率θA=KpA/(1+KpA)の導出、吸着が弱い(1次)/強い(0次)場合の反応次数 |
| 令和3年 | 逐次反応(A→B→C)。速度式、[A]の時間変化、定常状態近似によるB・Cの濃度変化式、経時変化グラフ |
| 令和4年 | N₂O₄ ⇄ 2NO₂。転化率αによるKpの式と計算 |
| 令和5年 | 二次反応(2A→B)。積分による転化率xの時間変化式、アレニウスの式からEa |
| 令和6年 | メタノール合成(CO+2H₂ ⇄ CH₃OH)。298Kの反応エンタルピー・ギブズエネルギー・エントロピー、平衡定数K、K=1の温度、収率を上げる温度・圧力 |
1次反応・2次反応の速度微分方程式の積分導出は、自力で書けるようにします。私が国家試験で完全に手が止まったのはここです。
問4:高圧ガス各論[20点]
前半(10点)は指定ガスの「性質・危険性」「用途」「工業的製造法(原料、触媒、化学反応式、プロセスの特徴など)」の詳細記述、後半(10点)は5〜6個の短い説明文からガス名と化学式を答えます。
| 年度 | 前半で指定されたガス |
|---|---|
| 令和2年 | 塩化ビニル、ブタジエン |
| 令和3年 | エチレン、二酸化硫黄 |
| 令和4年 | ブテン、塩素 |
| 令和5年 | ブタン、窒素 |
| 令和6年 | アセトアルデヒド、亜酸化窒素 |
後半の主な出題ガス:水素、二酸化炭素、ブタジエン、酸化エチレン、亜酸化窒素、ホスフィン、フッ化水素、アクリロニトリル、ヘリウム、アセチレン、三フッ化窒素、アルシン など。
用途・触媒名・反応温度と圧力・危険性を整理して覚えます。この20点は、努力が最も素直に点になる場所です。
問5:燃焼・爆発の安全工学計算[15点]
| 年度 | 出題内容 |
|---|---|
| 令和2年 | 硝酸エチル。ベンソン法による標準生成エンタルピー、燃焼エンタルピー、分解反応熱、100kg爆発時のTNT換算量 |
| 令和3年 | セメノフの熱発火理論。発熱速度q₁と放熱速度q₂のバランス、3つの壁温での現象 |
| 令和4年 | メチルアミン。生成・燃焼エンタルピー、TNT換算、三乗根法則 |
| 令和5年 | 水素-空気-不活性ガスの三角図。点Xの組成、化学量論組成(水素30vol%)、爆発範囲外にする酸素組成、窒素とCO₂の違い(CO₂のほうが熱容量が大きいため爆発範囲が狭い) |
| 令和6年 | プロパンの燃焼熱、バージェス・ホイーラーの法則で爆発下限界(2.1vol%)、エタン・プロパン混合の下限界をル・シャトリエの式で(2.5vol%) |
生成・燃焼エンタルピー→TNT換算の計算と、ホプキンソンの三乗根法則・ル・シャトリエの法則を演習します。令和6年の出題は、そのまま爆発範囲(LEL・UEL)の読み方の内容です。
問6:記述問題(2問必答)[20点]
検定の「4つから3つ選ぶ・15点」と違い、(1)(2)の2問必答・20点で選択の余地がありません。10設問のうち9設問が燃焼・爆発で、例外は令和2年の(1)ファン・デル・ワールス式だけです。
| 年度 | (1) | (2) |
|---|---|---|
| 令和2年 | ファン・デル・ワールス式を「分子間力」「排除体積」の2語で説明 | アセチレンが分解爆発する理由を「生成エンタルピー」で説明 |
| 令和3年 | 爆ごうへの転移過程(DDT)の説明 | 発火に必要なエネルギーとガス組成の関係(U字曲線・化学量論組成で最小) |
| 令和4年 | 不活性ガス希釈で爆発を防止できる理由(「酸素濃度」「熱容量」の2語で) | 拡散燃焼と予混合燃焼の違い |
| 令和5年 | 消炎距離(電極間隔と最小発火エネルギー、絶縁フランジ) | バージェス・ホイーラーの法則からル・シャトリエの式を導出 |
| 令和6年 | 爆ごうと爆燃の違い | 総発熱量(高位)と真発熱量(低位)の違い |
「◯◯と△△の2つの用語を使って説明せよ」という指定が繰り返し使われます。指定語を必ず本文に入れて2〜3行で書く練習をしてください。
実務側は爆燃と爆轟の違い|DDT・最小着火エネルギー(MIE)と消炎距離・引火点・燃焼点・発火点の違いへ。
6割を取る3つの戦略 ── 白紙で出さない

| 戦略 | やること |
|---|---|
| 途中式を残して部分点 | pV=nRT のような定義式を書いた時点で点が動く。白紙で出さない(→ 計算10の型の「記述式の部分点戦略」) |
| ガス各論と問6の記述で35〜40点分を確保 | 製法(触媒・反応式)と頻出の用語定義は暗記で取れる。計算が苦手な人ほど最優先(→ ガス各論の暗記順・学識 問6の記述問題) |
| 計算は「型」で拾う | 出題分野は7つ、解法パターンは10個しかない |
初めから捨てる問題を作らない。 出題パターンが固定されているので、解き方のプロセスを体に覚えさせれば、難しそうな問題も得点源になります。
私が検定試験を突破したときの手順です。
- 過去問を1周して全体像をつかむ
- 『よくわかる計算問題の解き方』の「例題」と「検定試験に出た問題」だけを1周する
- 過去問題集に戻り、2〜3周繰り返す
学識の詳細記事は次のとおりです。
全体の地図に戻る場合は高圧ガス甲種化学の勉強法 完全ガイドへ。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』。令和2〜6年度の出題を筆者が分析しました。問題文は転載せず、要約して解説しています。
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いずれも私が個人で作って売っているもので、高圧ガス保安協会とは無関係の非公式アプリです。受験にあたっては必ず公式テキストで確認してください。
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