学識の問6は、国試と検定で形式がまったく違います。過去5年の全設問と答案の骨組みです。
- 国試の問6は(1)(2)の2問必答・20点。「4つから3つ」ではない
- 国試は5年10設問のうち9設問が燃焼・爆発
- 検定の問6は4つから3つ選択・15点。(4)は5年とも分離技術
学識全体の構成は学識の出題マップ、ルート選択は検定と国家試験の比較を参照してください。
問6は国試と検定で別物 ──「4つから3つ選ぶ」は検定の形式

よく見る「4つの用語から3つを選んで説明する形式」は技術検定の問6です。国家試験の問6は「次の問に答えよ。(20点)」で、(1)(2)の2問必答です。
| 国試 問6 | 検定 問6 | |
|---|---|---|
| 配点 | 20点(2問必答) | 15点(4問から3問) |
| 1問あたり | 10点 | 5点 |
| 目安字数 | 150〜250字 | 100〜150字 |
| 目安時間 | 1問7〜8分 | 1問4〜5分 |
長く書けばいいわけではありません。 キーワードが入っていることが重要です。
国家試験の問6 ── 5年10設問のうち9設問が燃焼・爆発
| 年度 | (1) | (2) |
|---|---|---|
| R2 | vdW式を分子間力と排除体積で説明 | アセチレンの分解爆発を生成エンタルピーで説明 |
| R3 | 爆ごうへの転移過程(DDT) | 最小発火エネルギーとガス組成(U字曲線) |
| R4 | 不活性ガス希釈で爆発を防げる理由 | 拡散燃焼と予混合燃焼の違い |
| R5 | 消炎距離(電極間隔と最小発火エネルギー) | バージェス・ホイーラーからル・シャトリエを導出 |
| R6 | 爆ごうと爆燃の違い | 総発熱量と真発熱量の違い |
10設問中9設問が燃焼・爆発。 例外はR2(1)のファン・デル・ワールス式だけです。
国試の学識は問5(計算15点)+問6(記述20点)=35点が燃焼・爆発。問4のガス各論20点を足すと2分野で55点(100点満点中、合格ライン60%)です。
技術検定の問6 ── 4つから3つ選択、(4)は5年とも分離技術
| 年度 | (1) | (2) | (3) | (4) |
|---|---|---|---|---|
| R2 | 分圧・全圧とドルトン | ラウール | 自然発火と連鎖発火理論 | 多孔質膜のガス分離 |
| R3 | vdW式と2つの補正項 | 発火温度と引火点 | 消炎距離 | アルゴンの分離精製 |
| R4 | 理想気体 | 閉じた系と熱力学第一法則 | 爆発限界 | PSAとTSA |
| R5 | 純物質のp-V線図 | 可逆カルノーサイクルと効率式 | 完全燃焼と不完全燃焼 | 気体の溶解度とガス吸収法 |
| R6 | モル熱容量とマイヤーの関係 | 蒸気爆発と蒸気雲爆発 | 真発熱量と総発熱量 | 非多孔質膜の透過・分離 |
毎年ほぼ (1) 熱力学・物理化学の基礎/(2) 熱力学 or 燃焼の基礎/(3) 燃焼・爆発/(4) 分離技術 の構成です。4つから3つ選べるので、苦手な1つは捨てられます。
戦略は、(3)燃焼・爆発は必ず取る(国試の対策と共通)、(4)分離技術を準備して確実に1問、残りは(1)(2)の熱力学から書けるほうを選ぶ、です。
「違いを述べよ」の燃焼テーマ ── 爆燃と爆ごうは音速で分ける

「音速以下/以上」「熱伝導/衝撃波」の2点が採点の核です。
① 爆ごうと爆燃の違い(R3・R6 国試)
| 爆燃(デフラグレーション) | 爆ごう(デトネーション) | |
|---|---|---|
| 伝わり方 | 火炎が熱伝導と拡散によって未燃部へ伝わる | 衝撃波によって未燃部が断熱圧縮され着火する |
| 伝播速度 | 音速以下(代表的には数 m/s〜数十 m/s) | 音速を超える(約1,000〜3,500 m/s) |
| 圧力上昇 | 緩やか | 急峻で、破壊力が桁違いに大きい |
爆燃から爆ごうへの移行をDDT(爆ごうへの転移)といい、長い配管、障害物、乱れがあると起こりやすい。→ 爆燃と爆轟の詳細
② 拡散燃焼と予混合燃焼の違い(R4 国試)
| 拡散燃焼 | 予混合燃焼 | |
|---|---|---|
| 混合 | 燃料と空気があらかじめ混合されておらず、拡散しながら接触した部分で燃える | 燃料と空気をあらかじめ混合してから燃やす |
| 長所 | 火炎は安定し、逆火の危険がない(ろうそく・フレアスタック) | 完全燃焼しやすく高温(ブンゼンバーナーの青い炎) |
| 短所 | 不完全燃焼を起こしやすくすすが出る | 混合気が爆発範囲内にあり、逆火や爆発の危険 |
⑥ 発火温度と引火点の違い(R3 検定)
| 引火点 | 発火温度(発火点) | |
|---|---|---|
| 定義 | 液面上の蒸気が爆発下限界に達する液温。点火源があれば引火する最低温度 | 点火源がなくても、加熱だけで自然に発火する温度 |
| 決まるもの | 液体の性質(蒸気圧) | 容器の形状・材質・滞留時間に依存する |
発火温度のほうが高いのが一般的。→ 引火点・発火点・発火温度
⑦ 蒸気爆発と蒸気雲爆発の違い(R6 検定)
| 蒸気爆発 | 蒸気雲爆発(UVCE) | |
|---|---|---|
| 何が起きるか | 高温の物質と低沸点の液体(多くは水)が接触し、液体が瞬間的に気化して急膨張する(溶融金属と水など) | 可燃性ガス・液体が大量に漏えいして大気中で可燃性の蒸気雲を形成し、着火して爆発する |
| 種類 | 物理的な爆発。相変化のみで化学反応(燃焼)は伴わない | 化学的な爆発。燃焼反応を伴う |
⑨ 自然発火と連鎖発火理論(R2 検定)
| 熱発火理論(セメノフ) | 連鎖発火理論 | |
|---|---|---|
| 考え方 | 発熱速度が放熱速度を上回ると温度が上昇し続け、発火に至る | ラジカル(連鎖担体)が分岐反応で増殖し、生成速度が消滅速度を上回ると反応が加速して発火に至る |
| 着目点 | 熱の収支。発熱(指数関数的)と放熱(直線的)が接する点が臨界条件 | ラジカルの収支 |
⑧ 総発熱量と真発熱量(R6 国試・R6 検定)
R6は国試と検定の両方で出ました。要点は「差=水の蒸発潜熱」「総>真」「実務では真を使う」。答案例は型8|熱化学にあります。
「理由を述べよ」の燃焼テーマ ── 消炎距離・MIE・不活性ガス

狭い隙間では火炎から壁への熱損失が発生熱を上回り、火炎が維持できません。実務への応用(耐圧防爆構造のすきま・フレームアレスタ)まで書けると強い答案になります。
④ 消炎距離(R3 検定・R5 国試)
- 消炎距離とは、これ以下の間隔では火炎が伝播できなくなる限界の距離をいう
- 最小発火エネルギーの測定では、電極間隔を狭めていくと必要エネルギーが下がるが、消炎距離以下では着火しなくなる。したがって最小発火エネルギーは消炎距離付近の電極間隔で測定した値となる
⑤ 最小発火エネルギーとガス組成(R3 国試)

- 最小発火エネルギー(MIE)を可燃性ガス濃度に対してプロットすると、下に凸のU字曲線になる
- 爆発下限界・上限界に近づくほど MIE は急激に大きくなる。最小値をとるのは、化学量論組成付近である
- 最小発火エネルギーは圧力が高いほど、温度が高いほど小さくなる
③ 不活性ガス希釈で爆発を防げる理由(R4 国試)
- 酸素濃度の低下:燃焼に必要な酸素が不足し、限界酸素濃度を下回ると燃焼が継続できない
- 熱容量の増加:不活性ガスが燃焼熱を吸収するため火炎温度が下がり、未燃部を着火温度まで加熱できなくなって火炎が伝播しない
②の効果は種類で異なり、熱容量の大きい CO₂ のほうが N₂ より少ない量で消火できる。②を書き落とすと減点されます。
⑩ 分離技術 ── 検定の(4)は5年連続

| 方式 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 多孔質膜 | 細孔を通る。孔より小さい分子が通る分子ふるい流や、毛管凝縮流・クヌーセン流れで分ける | 孔より大きい分子は通れない |
| 非多孔質膜 | 膜に溶解して拡散する。溶解度と拡散係数の積で決まる | 気体の分離ではふつうこちら。分離係数=透過係数の比 |
| PSA | 圧力を変えて吸着・脱着 | 切替えが短い。速いサイクルで多量のガスを処理できる |
| TSA | 温度を変えて吸着・脱着 | 切替えが長い。不純物の少ない精製に使うことが多い |
膜・PSA/TSA・吸収・深冷分離から毎年1問。検定を受けるなら、準備しておくと確実に1問取れます。
記述の書き方 ── 3つの型。いちばん多いのは「違い」
| 型 | 書く順 |
|---|---|
| A:違いを説明せよ | ① 一方の定義 → ② 他方の定義 → ③ 両者を分ける決定的な観点を1文で |
| B:理由を説明せよ | ① 結論(○○だから)→ ② メカニズムを段階を追って → ③ できれば数式または実務での現れ方 |
| C:式・図を説明せよ | ① 式(図)が何を表しているか → ② 各項(各軸)の意味 → ③ どういう場合に使うか |
採点はキーワードベースです。「排除体積」「分子間力」「音速」「蒸発潜熱」のような語を確実に入れてください。
やってはいけないこと:
- 設問に答えず、関連する知識を並べる(「違いを述べよ」に片方だけ書く)
- 用語を言い換えただけで終わる
- 白紙にする(キーワードが1つでも合っていれば点が入る)
本番前の確認 ── キーワード一覧
| テーマ | 必ず入れる語 |
|---|---|
| 爆燃と爆ごう | 熱伝導・拡散/衝撃波、音速以下/音速超、DDT |
| 拡散燃焼と予混合燃焼 | あらかじめ混合、逆火、不完全燃焼 |
| 不活性ガス希釈 | 酸素濃度の低下、熱容量の増加(2つ) |
| 消炎距離 | 壁への熱損失、火炎防止器、耐圧防爆 |
| MIEとU字曲線 | U字、化学量論組成付近で最小 |
| 引火点と発火温度 | 点火源の有無 |
| 蒸気爆発とUVCE | 物理的/化学的、相変化のみ/燃焼反応 |
| 総発熱量と真発熱量 | 蒸発潜熱、総>真、実務では真 |
| 熱発火と連鎖発火 | 熱の収支/ラジカルの収支、接する点が臨界 |
| vdW式 | 排除体積、分子間力 |
| Cp−Cv=R | 定圧では膨張仕事の分だけ余分 |
| PSA/TSA | 圧力/温度を変えて脱着 |
| 多孔質/非多孔質膜 | 細孔を通る(分子ふるい流など)/溶解拡散 |
国試なら燃焼・爆発だけ、検定なら(3)と(4)を仕上げ、10テーマの答案を自分の言葉で1回、手で書く(各5分・計50分)。
ガス各論の暗記は暗記の優先順位、型の全体像は計算10の型を参照してください。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』。令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が整理しました。問題文と解答例は転載せず、要約して解説しています。
この試験は、机に向かえる時間だけでは足りません。通勤・昼休み・移動中のすきま時間を使えるように、iPhoneアプリを3本作りました。ダウンロード無料でお試しできます。
いずれも私が個人で作って売っているもので、高圧ガス保安協会とは無関係の非公式アプリです。受験にあたっては必ず公式テキストで確認してください。
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