令和2〜6年度の60大問で、型8(熱化学)が主役になった回はゼロ。しかし「まず反応熱を出す」最初の一手として、従で7回出ています(6回は型9の燃焼・爆発、1回はアレニウスの式の問題)。型9とセットで練習する型です。
- 計算は Σ生成物 − Σ反応物 の1本だけ
- 総発熱量と真発熱量の差 = 水の蒸発潜熱(記述で2回出た)
- H₂O が (g) か (l) かで答えが変わる ── 最頻出の失点
型9は型9|燃焼・爆発の計算、型別の全体像は計算10の型を参照してください。
従として7回、記述として2回

| 年度・ルート・問 | どこで使われたか |
|---|---|
| R2 国試 問5 | 硝酸エチルの爆発熱(ベンソン法)→ TNT換算 |
| R4 国試 問5 | メチルアミンの生成・燃焼エンタルピー → TNT換算 |
| R6 国試 問5 | プロパンの燃焼熱 → バージェス・ホイーラー |
| R2 検定 問3 | 反応の ΔH → アレニウス |
| R3 検定 問4 | アセトアルデヒドの爆発熱 → TNT換算 |
| R4 検定 問4 | プロパン・ブタンの燃焼熱 → 断熱火炎温度 |
| R5 検定 問4 | 水素・エタンの燃焼熱 → 断熱火炎温度 |
| R6 国試 問6(2) | 総発熱量と真発熱量の違い(記述) |
| R6 検定 問6(3) | 真発熱量と総発熱量(記述) |
計算の入口として7回、記述として2回。 出題頻度は決して低くありません。
| 使う式 | 中身 |
|---|---|
| ① 反応エンタルピー(ヘスの法則) | ΔH = Σ(生成物のΔHf°) − Σ(反応物のΔHf°)。単体の ΔHf° は 0(O₂・N₂・H₂・C(黒鉛) など) |
| ② 燃焼熱 | Qc = −ΔH(発熱反応の ΔH は負) |
| ③ 総発熱量と真発熱量 | 総発熱量(高位)= 真発熱量(低位)+ 水の蒸発潜熱 |
ヘスの法則 ── 生成物マイナス反応物は、単体を経由する遠回り

反応熱は始めと終わりの状態だけで決まり、途中の経路によらない(エンタルピーが状態量だから)。反応物をいったん単体に戻し(−Σ反応物のΔHf)、単体から生成物を作る(+Σ生成物のΔHf)と考えれば、「生成物マイナス反応物」の順番で符号を間違えません。
令和6年度 国家試験 問5(1) で確認する
プロパンの燃焼熱を求めよ。標準生成エンタルピーは プロパン −104.7、CO₂ −393.5、H₂O(g) −241.8[kJ/mol]
- 反応式:C₃H₈ + 5 O₂ → 3 CO₂ + 4 H₂O
- Σ生成物 − Σ反応物
- 燃焼熱に直す:Qc = 2,043 kJ/mol
ΔH = [3×(−393.5) + 4×(−241.8)] − [(−104.7) + 5×0]
= [−1,180.5 − 967.2] + 104.7
= −2,147.7 + 104.7 = −2,043 kJ/mol
- O₂ の項は 5×0 = 0(単体だから)。書き落としても答えは合いますが、答案に 「単体のΔHf°は0」 と明記しておくと減点されません
- 符号のチェック:燃焼は必ず発熱なので ΔH は負、Qc は正。 逆になったら計算ミス
反応式の係数合わせ ── C → H → O の順
ここで間違えると全部間違えます。 C を合わせて CO₂ の係数、H を合わせて H₂O の係数を決め、最後に O を数えて O₂ の係数を決めます。
| 物質 | 反応式 |
|---|---|
| メタン CH₄ | CH₄ + 2 O₂ → CO₂ + 2 H₂O |
| エタン C₂H₆ | C₂H₆ + 3.5 O₂ → 2 CO₂ + 3 H₂O |
| プロパン C₃H₈ | C₃H₈ + 5 O₂ → 3 CO₂ + 4 H₂O |
| ブタン C₄H₁₀ | C₄H₁₀ + 6.5 O₂ → 4 CO₂ + 5 H₂O |
| 水素 H₂ | H₂ + 0.5 O₂ → H₂O |
| メタノール CH₃OH | CH₃OH + 1.5 O₂ → CO₂ + 2 H₂O |
燃料の係数を1にしておくと、1 mol あたりの燃焼熱が速く出ます。メタノールで O₂ が1.5 なのは、分子内にすでに O が1つあるからで、含酸素化合物は要注意です。
総発熱量と真発熱量 ── 差は水の蒸発潜熱(記述で2回)

総発熱量のほうが大きい。 水蒸気が凝縮するときに放出される潜熱の分だけ上乗せになり、差 = 水の蒸発潜熱です。
| 区分 | 基準 |
|---|---|
| 総発熱量(高位発熱量、HHV) | 生成した水が液体になるまでの熱量 |
| 真発熱量(低位発熱量、LHV) | 生成した水が気体のままの熱量 |
HHV = LHV + n_H₂O × ΔH_vap、水の蒸発潜熱 ΔH_vap ≒ 44 kJ/mol(25℃)
例:プロパン1 molを燃やすと H₂O が4 mol できる。H₂O(g)基準の燃焼熱が2,043 kJ/mol のとき、H₂O(l)基準では?
HHV = 2,043 + 4 × 44 = 2,043 + 176 = 2,219 kJ/mol(差は約8.6%)
1割近く違うので、問題文の H₂O(g)/(l) は必ず確認してください。 H₂O(g) は −241.8、H₂O(l) は −285.8 kJ/mol で、差の44.0が蒸発潜熱そのものです。与えられた値がどちらかを見れば、答えの基準が分かります。
実務では、排ガスの凝縮潜熱は回収できないので通常は真発熱量(LHV)を使います。潜熱回収型(エコジョーズ等)の効率が100%を超えて見えるのは、LHV 基準で表示しているからです。
記述の答案例 ──「蒸発潜熱」が採点の核
燃料の燃焼により生成した水が液体として存在する状態を基準とした発熱量を総発熱量(高位発熱量)、気体(水蒸気)のまま存在する状態を基準とした発熱量を真発熱量(低位発熱量)という。両者の差は生成した水の蒸発潜熱に等しく、総発熱量のほうが大きい。実際の燃焼設備では排ガス中の水は水蒸気のまま排出され潜熱を回収できないため、熱効率の評価には通常真発熱量が用いられる。
詳しくはヘスの法則と生成エンタルピーで扱います。
ベンソン法による推算 ── 10回中1回(R2国試問5)

| 問われ方 | やること |
|---|---|
| ① 与えられた結合の寄与値から ΔHf° を求めよ | 分子を結合に分け(結合の加成性則=一次)、ΔHf° = Σ(結合の本数×寄与値) |
| ② そこから爆発熱(または燃焼熱)を求めよ | Σ生成物 − Σ反応物 |
| ③ TNT換算して影響を評価せよ | 型9 |
寄与の値は問題文に与えられます。 ①は足し算だけなので、確実に取れます。
生成エンタルピーが与えられていない物質(硝酸エチル C₂H₅ONO₂ など)の爆発熱を出すために使われました。TNT換算は型9|燃焼・爆発の計算/TNT換算とホプキンソンの三乗根法則を参照してください。
本番前の確認 ── よくある失点と練習の順
| 失点 | 対策 |
|---|---|
| H₂O が (g) か (l) かを確認しない | 問題文の記号を丸で囲む |
| 単体の ΔHf° を0でないと思う | O₂・N₂・H₂・C(黒鉛) はすべて0 |
| 生成物と反応物を逆にする | 「単体に戻してから作る」経路で覚える |
| 符号を間違える | 燃焼は発熱 → ΔH は負、Qc は正 |
| 反応式の係数を間違える | C → H → O の順で合わせる |
| 含酸素化合物で O₂ を数え間違える | 分子内の O も勘定に入れる |
練習は、6物質の反応式(10分)→ Σ生成物 − Σ反応物で燃焼熱(プロパンで1回)→ H₂O(g) と (l) の差を1回計算 → 総発熱量と真発熱量の説明を150字程度で書く、の順です。あとは型9の練習の中で自然に身につきます。
次は型10です。→ 型10|流動・伝熱・材料力学
学識全体の攻略は学識の出題マップへ。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』。令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に分けて集計しました。問題文は転載せず、要約して解説しています。
この試験は、机に向かえる時間だけでは足りません。通勤・昼休み・移動中のすきま時間を使えるように、iPhoneアプリを3本作りました。ダウンロード無料でお試しできます。
いずれも私が個人で作って売っているもので、高圧ガス保安協会とは無関係の非公式アプリです。受験にあたっては必ず公式テキストで確認してください。
PLANT NEWS ON NOTE
化学プラントニュース
化学・石油プラントの重要ニュースを、毎週の週報と事故速報でお届けします。現場で押さえたい動きを、わかりやすく整理します。
noteで最新ニュースを読む ↗
化学プラント大全 

