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圧縮係数の問題で、対臨界温度と対臨界圧力をどう使うのか分からない。
ファン・デル・ワールス式の a と b が、それぞれ何の補正なのか説明できない。
そんな悩みを解決します。
a は分子間力、b は分子自身の体積 ── 記述で3回出た
圧縮係数の手順は対臨界に直して図表を引くだけ
混合気体はKayの方法(モル分率で加重平均)
計算は1回だけだが、記述では常連の型

計算問題としては10回中1回ですが、記述問題では繰り返し出ています。理屈で押さえる型です。
この型には、他と違う特徴があります。
R2国試問6(1)「vdW式を分子間力と排除体積で説明せよ」、R3検定問6(1)「vdW式と2つの補正項」、R4検定問6(1)「理想気体」── 説明できるかどうかが問われています。
型別の全体像は学識の計算は「10の型」しか出ないを参照してください。
計算1回・記述3回
| 年度・ルート・問 | テーマ | 形 |
|---|---|---|
| R4 国試 問1 | Kayの方法・対臨界・圧縮係数 | 計算(主) |
| R4 検定 問2 | フガシティー・活量(メタン水蒸気改質) | 計算(従) |
| R6 検定 問2 | フガシティー・活量(アンモニア合成) | 計算(従) |
| R2 国試 問6(1) | vdW式を分子間力と排除体積で説明 | 記述 |
| R3 検定 問6(1) | vdW式と2つの補正項 | 記述 |
| R4 検定 問6(1) | 理想気体(とは何か) | 記述 |
使う式は4つ
(p + a n²/V²)(V − nb) = nRT
1 mol あたりなら (p + a/Vm²)(Vm − b) = RT
Z = pV / (nRT)
→ pV = ZnRT(理想気体は Z = 1)
Tr = T / Tc(対臨界温度)
pr = p / pc(対臨界圧力)
Tc,mix = Σ(yᵢ Tc,ᵢ)
pc,mix = Σ(yᵢ pc,ᵢ)
ファン・デル・ワールス式 ── 2つの補正項を説明できるか
記述で3回出ています。 ここは文章で書けるようにしてください。
① 分子自身の体積はゼロ(大きさのない点)
② 分子間に力が働かない
→ この2つを外したのがファン・デル・ワールスの式
b ── 分子自身の体積(排除体積)
分子には大きさがある
→ 分子が動き回れる空間は、容器の体積よりnb だけ小さい
→ 体積を V − nb に補正する
b は「1 mol の分子が占める実効的な体積」です。分子が大きいほど b は大きい。
a ── 分子間力
分子どうしは引き合っている
→ 壁にぶつかろうとする分子は、後ろの分子に引き戻される
→ 実測圧力は本来より低く出る
→ その分を a n²/V² だけ足して補正する
a は分子間力の強さです。極性が強い分子、分子量が大きい分子ほど a は大きい。
2つの効果は逆向き
| 条件 | 支配的な効果 | Z は |
|---|---|---|
| 低温・中圧 | 分子間力(a)が支配 | Z < 1(理想より縮む) |
| 高圧 | 分子体積(b)が支配 | Z > 1(理想より縮まない) |
| 高温・低圧 | どちらも小さい | Z ≒ 1(理想気体に近い) |
記述の答案例
「vdW式の2つの補正項について説明せよ」への解答例
理想気体では、分子自身の体積をゼロ、分子間力を無視すると仮定している。実在気体ではこの2つが無視できないため、次のように補正する。
体積の補正 (V − nb):分子には大きさがあるため、分子が実際に動ける空間は容器の体積より nb だけ小さい。b は分子自身の体積に相当する定数(排除体積)である。
圧力の補正 (p + an²/V²):分子間には引力が働くため、壁に衝突しようとする分子は内側の分子に引き戻され、測定される圧力は本来より低くなる。a は分子間力の強さを表す定数である。
「排除体積」「分子間力」という語を必ず入れてください。 採点のキーワードです。
実在気体の詳細は実在気体|vdW式・圧縮係数・対臨界状態で扱います。
圧縮係数と対臨界状態 ── 図表を引くための座標
Z = pV / (nRT)
→ pV = ZnRT
理想気体からのズレを表す1つの数です。Z = 1 なら理想気体。
なぜ対臨界状態を使うのか
ガスの種類が違っても、対臨界温度と対臨界圧力が同じなら Z がほぼ同じになるからです(対応状態の原理)。
① Tr = T/Tc、pr = p/pc を計算する
② 図表の Tr の曲線を選ぶ
③ pr の位置で縦軸の Z を読む
④ pV = ZnRT に代入する
臨界定数 Tc・pc は問題文に与えられます。 覚える必要はありません。
令和4年度 国家試験 問1 の流れ
設問(要約)
(1) 混合気体の仮臨界圧力 pc,mix と仮臨界温度 Tc,mix を、Kayの方法により求めよ
(2) 仮臨界定数から対臨界温度 Tr と対臨界圧力 pr を計算し、表を使って圧縮係数 Z を求めよ
(3) (2)で求めた Z を用いて混合気体の質量を求めよ
設問がそのまま手順になっています。 (1)→(2)→(3) を順に追えば解けます。
Kayの方法 ── モル分率で加重平均するだけ
Tc,mix = Σ(yᵢ Tc,ᵢ)
pc,mix = Σ(yᵢ pc,ᵢ)
メタン(Tc=190.6 K、pc=4.60 MPa)70 mol%、
エタン(Tc=305.4 K、pc=4.88 MPa)30 mol% の混合気体。
温度250 K、圧力6.0 MPa のときの Z を求める座標は?
〔解答〕
Tc,mix = 0.70×190.6 + 0.30×305.4 = 133.4 + 91.6 = 225.0 K
pc,mix = 0.70×4.60 + 0.30×4.88 = 3.22 + 1.46 = 4.68 MPa
Tr = 250 / 225.0 = 1.11
pr = 6.0 / 4.68 = 1.28
→ この座標で図表を引く(この付近なら Z ≒ 0.7 前後)
なお、Kayの方法は近似です。成分の性質が大きく違うと誤差が出ます。記述で問われたら「簡便な近似法である」と添えてください。
質量を出すところまで
n = pV / (ZRT)
m = n × M̄(M̄ はKayではなく Σ(yᵢMᵢ))
これが実務的に重要な点です。高圧容器の充填量を理想気体で計算すると、実際より少なく見積もってしまいます。
フガシティーは「補正された圧力」
検定の問2で2回出ています(→ 型6|化学平衡でも扱いました)。
f = φ p(φ:フガシティー係数)
理想気体なら φ = 1、つまり f = p
Z と φ の関係
どちらも理想気体からのズレを表す量ですが、見ているものが違います。
| 圧縮係数 Z | フガシティー係数 φ | |
|---|---|---|
| 補正の対象 | 体積(状態方程式) | 圧力(化学ポテンシャル) |
| 使う場面 | 充填量・密度の計算 | 平衡定数の計算 |
| 理想気体 | Z = 1 | φ = 1 |
φ は Z から積分で導けますが、甲種化学ではそこまで問われません。 定義と意味が言えれば十分です。
この型の練習のしかた
- vdW式の2つの補正項を、文章で説明する練習(記述で3回出た)
- Z < 1 と Z > 1 になる条件を説明できるようにする
- Kayの方法 → 対臨界 → Z → 質量の流れを1回通す
- Z で割るのを忘れないを意識する
よくある失点
| 失点 | 対策 |
|---|---|
| a と b を逆に説明する | a は圧力側、b は体積側。式の位置で覚える |
| 対臨界を計算せず、生の T・p で図表を引く | 必ず Tc・pc で割る |
| Kayの方法で質量分率を使う | モル分率 |
| Z で割り忘れる | n = pV/(ZRT)。分母にZ |
| Z と φ を混同する | Z は体積、φ は圧力(化学ポテンシャル)の補正 |
暗記カードにするならこれだけ
(p + an²/V²)(V − nb) = nRT
b = 分子自身の体積(排除体積) → 体積を小さく補正
a = 分子間力 → 圧力を大きく補正
記述では「排除体積」「分子間力」を必ず書く
Z = pV/(nRT) → pV = ZnRT
低温・中圧 → Z < 1(分子間力が支配)
高圧 → Z > 1(分子体積が支配)
高温・低圧 → Z ≒ 1
Tr = T/Tc、pr = p/pc
Tc,mix = Σ(yᵢTc,ᵢ)、pc,mix = Σ(yᵢpc,ᵢ)(Kayの方法)
手順:Kay → 対臨界 → 図表で Z → n = pV/(ZRT)
f = φp、理想気体なら φ = 1
Z は体積の補正、φ は圧力(化学ポテンシャル)の補正
まとめ
- 型2は計算1回・記述3回。書けることが得点になる型
- b は分子自身の体積(排除体積)、a は分子間力
- 2つの効果は逆向き。だからZ対pのグラフは下がってから上がる
- 圧縮係数は対臨界(Tr・pr)に直して図表を引く
- 混合気体はKayの方法(モル分率で加重平均、近似であることも押さえる)
- n = pV/(ZRT)。Zで割るのを忘れない
- Z < 1 なら理想気体の計算より多く入る
次は型5(圧縮機の理論動力と冷凍サイクル)です。→ 型5|圧縮機動力と冷凍サイクル
型の全体像は計算10の型、学識全体の攻略は学識の出題マップへ。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に仕分けして独自に行ったものです。設問の要約と解法の解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。
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