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学識・型10|流動・伝熱・材料力学は学識では5年間ゼロだった|では何に効くのか【甲種化学】

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この記事の内容

学識では5年間・60大問で出題ゼロだった(集計結果)

捨てる型ではない ── 保安管理技術の問6〜問8で毎年出る

学識で出るとしたら基礎式レベル。深追いは不要

薄肉円筒の 周方向応力は軸方向の2倍(縦割れの理由)

この記事の結論は「学識対策としては最後でいい。ただし保安管理技術の知識としては必須」です。

まず、集計結果をそのまま出します。

令和2〜6年度・国家試験5回+技術検定5回=60大問

型10(流動・伝熱・材料力学)が主として出た回:0

従として出た回:0

5年間、学識の大問には1度も出ていません。

市販の教材には「頻度は落ちるがコスパは悪くない」と書かれていることがあります。しかし令和2〜6年度に限れば、学識では出ていないというのが集計の結果です。

だから学識の対策としては、優先度は最下位です。 型9 → 型6 → 型7 → 型3 → 型4 → 型1 → 型2 → 型8 → 型5 → 型10 の順で構いません。

型別の全体像は計算10の型、優先順位は学識の出題マップを参照してください。

では、この分野はどこで出るのか

保安管理技術です。

科目内容
保安管理技術(国試)問6圧縮機・ポンプ
問7流動・伝熱・分離
問8漏えい防止(シール・ガスケット)
保安管理技術(検定)問3〜問5高圧装置・材料

択一形式で毎年出ています。 計算ではなく、定性的な知識として問われます。

だから対策の形が変わります。

学識と保安管理技術での必要レベルの違い

学識:計算できること(→ 5年間出ていないので優先度最下位)

保安管理技術関係の方向が言えること(→ 毎年出るので必須)

例:「レイノルズ数が大きいと乱流」「対数平均温度差を使う」「周方向応力のほうが大きい」── この程度が言えれば保安管理技術では取れます。

保安管理技術の全体像は保安管理技術の攻略を参照してください。

流動 ── これだけ

レイノルズ数

Re = Duρ/μ

D:管内径、u:平均流速、ρ:密度、μ:粘度

Re < 約2,100 で層流/Re > 約4,000 で乱流

「流れの状態を判別せよ」が定番の問われ方です。

Re は無次元数です。単位が揃っていれば必ず無次元になる ── 検算に使えます。

ベルヌーイの定理

p/(ρg) + u²/(2g) + z = 一定

各項の単位はすべて長さ(m)(ヘッド表示)

圧力損失(ダルシー・ワイスバッハ)

Δp = λ × (L/D) × (ρu²/2)

λ:管摩擦係数(層流なら λ = 64/Re

ポンプの理論動力

P = ρgQH(Q:流量 m³/s、H:全揚程 m)

軸動力は効率ηで割る:P_shaft = ρgQH/η

保安管理技術で問われる方向

問われ方答え
流速を2倍にすると圧力損失は約4倍(u²に比例)
管径を半分にすると圧力損失は約32倍(Δp ∝ 1/D⁵、流量一定のとき)
粘度が上がると Re は下がる(層流側へ)
キャビテーションが起きる条件吸込側の圧力が飽和蒸気圧を下回る

「何に比例するか」だけ押さえてください。 数値計算は保安管理技術では出ません。

詳しくは配管の圧力損失管摩擦係数NPSHとキャビテーションポンプの選定を参照してください。

伝熱 ── これだけ

熱伝導(平板)

Q = λAΔT/L

多層壁は熱抵抗(L/λ)の直列和

熱貫流

Q = KAΔT

1/K = 1/h₁ + L/λ + 1/h₂ + 汚れ係数

熱交換器

Q = UAΔT_lm

ΔT_lm = (ΔT₁ − ΔT₂) / ln(ΔT₁/ΔT₂)(対数平均温度差)

対数平均温度差のミニ例題

向流熱交換器で高温側 90→50℃、低温側 20→40℃。ΔT_lm は?

〔解答〕

ΔT₁ = 90 − 40 = 50 K(高温側入口 vs 低温側出口)

ΔT₂ = 50 − 20 = 30 K(高温側出口 vs 低温側入口)

ΔT_lm = (50 − 30) / ln(50/30) = 20 / 0.511 = 39.1 K

向流と並流で ΔT₁・ΔT₂ の取り方が違います。 向流は「入口 vs 出口」の組み合わせ。

ln(50/30) の計算も対数表です。log(5/3) = 0.699 − 0.477 = 0.222 → ×2.303 = 0.511。

保安管理技術で問われる方向

問われ方答え
向流と並流、伝熱面積が小さくて済むのは向流(ΔT_lm が大きい)
並流で到達できない条件低温側出口 > 高温側出口にはできない
汚れが付くと総括伝熱係数 U は下がる(熱抵抗が増える)
熱伝達を支配するのは最も熱抵抗が大きい側(境膜)

詳しくは伝熱の3形態総括伝熱係数伝熱面積の計算熱交換器の完全ガイドへ。

材料力学 ── 薄肉円筒だけは押さえる

基本

応力 σ = 荷重/断面積

ひずみ ε = 伸び/元の長さ

フックの法則 σ = Eε

内圧を受ける薄肉円筒(内径D、板厚t)

周方向応力(フープ応力)σ_θ = pD/(2t)

軸方向応力 σ_z = pD/(4t)

周方向が軸方向の2倍

だから圧力容器の破裂は「縦割れ」になります。 最も大きい応力に直交する向きに裂けるからです。

なぜ2倍なのか

力の釣り合いを取る断面積が違うからです。

向き内圧が押す面積受け持つ断面積
周方向D × L(縦に切った投影)2 × t × L(2箇所の板厚)
軸方向πD²/4(鏡板)πD × t(円周の板厚)
周方向の釣り合い

p × D × L = σ_θ × 2tL

σ_θ = pD/(2t)

軸方向の釣り合い

p × πD²/4 = σ_z × πDt

σ_z = pD/(4t)

この導出は覚えなくて構いません。 「周方向が2倍、だから縦割れ」だけで十分です。

ミニ例題

内径1.0 m、板厚10 mm の薄肉円筒に内圧2.0 MPa。周方向応力は?

〔解答〕

σ_θ = pD/(2t) = (2.0 × 1.0) / (2 × 0.010) = 100 MPa

単位を m で揃えるのがポイントです。板厚を mm のまま入れると1000倍ずれます。

熱応力

拘束された棒の温度変化

σ = EαΔT

E:ヤング率、α:線膨張係数

配管が拘束されたまま温度が変わると、大きな応力が出ます。 これが伸縮継手やループ配管が必要な理由です。

炭素鋼(E = 200 GPa、α = 12×10⁻⁶ /K)が100 K 昇温して完全拘束されたら?

〔解答〕

σ = 200×10⁹ × 12×10⁻⁶ × 100 = 240 MPa

→ 炭素鋼の降伏点(約240 MPa)に達する

100℃の温度変化だけで降伏します。 熱膨張を逃がす設計が必須である理由がこれです。

材料の基礎は材料の劣化耐食材料の選定、設備の健全性は設備健全性管理へ。

結局、この型にどれだけ時間を使うか

推奨

学識対策としては、この記事を1回読むだけでよい

5年間出ていないので、演習は不要

ただし保安管理技術の対策として、方向だけは押さえる

押さえる優先順位

  1. 薄肉円筒:周方向が2倍、だから縦割れ(保安管理技術で頻出)
  2. 向流のほうが伝熱面積が小さくて済む
  3. Re < 2,100 で層流
  4. キャビテーション = 飽和蒸気圧を下回る
  5. 熱応力 σ = EαΔT(拘束は危険)

この5つだけで、保安管理技術の該当箇所はかなり拾えます。

もし学識に出たら

基礎式レベルしか出ません。 甲種化学は化学系の資格であって、機械工学の資格ではないからです。

機械の深い内容は甲種機械の範囲です。化学を受けるなら、そこに時間を使う必要はありません。

その時間を型9(燃焼・爆発)に回すほうが、期待値ははるかに高い。

型9|燃焼・爆発の計算

暗記カードにするならこれだけ

流動

Re = Duρ/μ 層流 <2,100 / 乱流 >4,000

Δp = λ(L/D)(ρu²/2) 流速2倍で圧損4倍

P = ρgQH(軸動力は ÷η)

キャビテーション=吸込圧 < 飽和蒸気圧

伝熱

Q = UAΔT_lm

ΔT_lm = (ΔT₁−ΔT₂)/ln(ΔT₁/ΔT₂)

向流のほうが ΔT_lm が大きい=伝熱面積が小さくて済む

1/K = 境膜+壁+境膜+汚れ(直列和

材料力学

σ_θ = pD/(2t)(周方向)

σ_z = pD/(4t)(軸方向)

周方向が2倍 → 破裂は縦割れ

熱応力 σ = EαΔT(炭素鋼100Kで約240 MPa=降伏点)

まとめ

  • 型10は学識の60大問で出題ゼロ(令和2〜6年度)
  • 学識対策としては最後でよい。演習は不要
  • ただし保安管理技術の問6〜問8で毎年出るので捨てない
  • 保安管理技術では「何に比例するか」の方向が言えれば取れる
  • 薄肉円筒の周方向応力は軸方向の2倍。だから破裂は縦割れ
  • 向流のほうが伝熱面積が小さくて済む
  • 熱応力は σ = EαΔT。炭素鋼なら100 Kで降伏点に達する
  • 浮いた時間は型9に回すほうが期待値が高い

次は学識の記述問題(問6)です。国試と検定で形式がまったく違います。→ 学識 問6の記述問題

型の全体像は計算10の型、学識全体の攻略は学識の出題マップへ。

出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に仕分けして独自に行ったものです。設問の要約と解法の解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。