令和2〜6年度の60大問で、型10(流動・伝熱・材料力学)は主としても従としても0回でした。学識の対策としては最後でよい型ですが、保安管理技術では毎年出ます。
- 学識では5年間・60大問で出題ゼロ。優先度は最下位
- 捨てる型ではない。保安管理技術の問6〜問8で「何に比例するか」が毎年問われる
- 薄肉円筒の周方向応力は軸方向の2倍(縦割れの理由)
学識では出ない ── 出るのは保安管理技術
| 科目 | 問 | 内容 |
|---|---|---|
| 保安管理技術(国試) | 問6 | 圧縮機・ポンプ |
| 問7 | 流動・伝熱・分離 | |
| 問8 | 漏えい防止(シール・ガスケット) | |
| 保安管理技術(検定) | 問6・問12 | 漏えい(ピンホールからの漏えい量)・運転管理(ウォータハンマ) |
学識では計算できることが求められるが、5年間出ていない。保安管理技術では関係の方向が言えれば取れ、毎年出るので必須です。
- 保安管理技術では択一の定性的な知識として問われる。「レイノルズ数が大きいと乱流」「層流の管摩擦係数はレイノルズ数に反比例」程度が言えれば取れる
- 学識の優先順は、型9 → 型6 → 型7 → 型3 → 型4 → 型1 → 型2 → 型8 → 型5 → 型10 で構わない
型別の全体像は計算10の型、優先順位は学識の出題マップ、保安管理技術の全体像は保安管理技術の攻略へ。
流動 ── 流速2倍で圧損約4倍、管径半分で約32倍

「何に比例するか」だけ押さえてください。 数値計算は保安管理技術では出ません。
| 問われ方 | 答え |
|---|---|
| 流速を2倍にすると圧力損失は | 約4倍(乱流では u² にほぼ比例。層流なら約2倍) |
| 管径を半分にすると圧力損失は | 約32倍(流量一定のとき、乱流(λ 一定)は Δp ∝ 1/D⁵ で約32倍、層流は 1/D⁴ で約16倍) |
| 粘度が上がると Re は | 下がる(層流側へ) |
| キャビテーションが起きる条件 | 吸込側の圧力が飽和蒸気圧を下回る |
| 式 | 内容 |
|---|---|
| レイノルズ数 | Re = Duρ/μ(D:管内径、u:平均流速、ρ:密度、μ:粘度)。Re < 約2,100 で層流/Re > 約4,000 で乱流 |
| ベルヌーイの定理 | p/(ρg) + u²/(2g) + z = 一定。各項の単位はすべて長さ(m)(ヘッド表示) |
| 圧力損失(ダルシー・ワイスバッハ) | Δp = λ × (L/D) × (ρu²/2)。層流なら λ = 64/Re |
| ポンプの理論動力 | P = ρgQH(Q:流量 m³/s、H:全揚程 m)。軸動力は効率ηで割る:P_shaft = ρgQH/η |
Re は無次元数なので、単位が揃っていれば必ず無次元になり、検算に使えます。
→ 配管の圧力損失/管摩擦係数/NPSHとキャビテーション/ポンプの選定
伝熱 ── 向流のほうが伝熱面積が小さくて済む

向流は ΔT_lm が大きいので、伝熱面積が小さくて済みます。 向流の ΔT₁・ΔT₂ は「入口 vs 出口」の組み合わせで取ります。
| 問われ方 | 答え |
|---|---|
| 向流と並流、伝熱面積が小さくて済むのは | 向流(ΔT_lm が大きい) |
| 並流で到達できない条件 | 低温側出口 > 高温側出口にはできない |
| 汚れが付くと総括伝熱係数 U は | 下がる(熱抵抗が増える) |
| 熱伝達を支配するのは | 最も熱抵抗が大きい側(境膜) |
| 式 | 内容 |
|---|---|
| 熱伝導(平板) | Q = λAΔT/L。多層壁は熱抵抗(L/λ)の直列和 |
| 熱貫流 | Q = KAΔT、1/K = 1/h₁ + L/λ + 1/h₂ + 汚れ係数 |
| 熱交換器 | Q = UAΔT_lm、ΔT_lm = (ΔT₁ − ΔT₂) / ln(ΔT₁/ΔT₂)(対数平均温度差) |
対数平均温度差のミニ例題
向流熱交換器で高温側 90→50℃、低温側 20→40℃。ΔT_lm は?
〔解答〕
- ΔT₁ = 90 − 40 = 50 K(高温側入口 vs 低温側出口)
- ΔT₂ = 50 − 20 = 30 K(高温側出口 vs 低温側入口)
- ΔT_lm = (50 − 30) / ln(50/30) = 20 / 0.511 = 39.1 K
ln(50/30) も対数表で求めます。log(5/3) = 0.699 − 0.477 = 0.222 → ×2.303 = 0.511。
→ 伝熱の3形態/総括伝熱係数/伝熱面積の計算/熱交換器の完全ガイド
材料力学 ── 周方向応力は軸方向の2倍、だから縦割れ

内圧を受ける薄肉円筒(内径D、板厚t)では、周方向応力 σ_θ = pD/(2t) が軸方向応力 σ_z = pD/(4t) の2倍。 最も大きい応力に直交する向きに裂けるので、圧力容器の破裂は「縦割れ」になります。
| 向き | 内圧が押す面積 | 受け持つ断面積 | 釣り合い |
|---|---|---|---|
| 周方向 | D × L(縦に切った投影) | 2 × t × L(2箇所の板厚) | p × D × L = σ_θ × 2tL → σ_θ = pD/(2t) |
| 軸方向 | πD²/4(鏡板) | πD × t(円周の板厚) | p × πD²/4 = σ_z × πDt → σ_z = pD/(4t) |
釣り合いを取る断面積が違うので2倍になります。導出は覚えなくて構いません。
ミニ例題:内径1.0 m、板厚10 mm の薄肉円筒に内圧2.0 MPa。周方向応力は?
〔解答〕 σ_θ = pD/(2t) = (2.0 × 1.0) / (2 × 0.010) = 100 MPa。単位を m で揃えるのがポイントで、板厚を mm のまま入れると1000倍ずれます。
熱応力 ── 拘束されたまま温度が変わると降伏する
拘束された棒では σ = EαΔT(E:ヤング率、α:線膨張係数)。だから配管には伸縮継手やループ配管が必要です。
例:炭素鋼(E = 200 GPa、α = 12×10⁻⁶ /K)が100 K 昇温して完全拘束されたら?
〔解答〕 σ = 200×10⁹ × 12×10⁻⁶ × 100 = 240 MPa。炭素鋼の降伏点(約240 MPa)に達します。100℃の温度変化だけで降伏するので、熱膨張を逃がす設計が必須です。
本番前の確認 ── 押さえるのはこの5つ
| 優先 | 押さえること |
|---|---|
| 1 | 薄肉円筒:周方向が2倍、だから縦割れ(甲種化学の過去5年には出ていないが、設計の基礎として) |
| 2 | 向流のほうが伝熱面積が小さくて済む |
| 3 | Re < 2,100 で層流 |
| 4 | キャビテーション = 飽和蒸気圧を下回る |
| 5 | 熱応力 σ = EαΔT(拘束は危険) |
学識対策としては1回読むだけでよく、演習は不要です。もし学識に出ても基礎式レベルで、機械の深い内容は甲種機械の範囲です。その時間を型9(燃焼・爆発)に回すほうが、期待値ははるかに高いです。→ 型9|燃焼・爆発の計算
次は学識の記述問題(問6)です。→ 学識 問6の記述問題
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』。令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に分けて集計しました。問題文は転載せず、要約して解説しています。
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