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爆燃と爆轟の違い|配管の中で、爆燃は爆轟に変わる(DDT)

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同じ「爆発」でも、圧力の上がり方には桁の違いがあります。

片方は、耐圧設計でなんとか持ちこたえられるかもしれない。もう片方は、配管をバナナのように引き裂きます。

分かれ目は、火炎が音速を超えるかどうかです。この記事では、爆燃と爆轟の違いと、なぜ配管の中でその転移が起きるのかを整理します。

この記事の要点

  • 爆燃は火炎が拡散で伝わる。音速以下。密閉容器での圧力上昇はおおむね初圧の8倍程度
  • 爆轟は衝撃波が先行する。音速超。圧力は桁違いに高く、反射でさらに上がる
  • 配管の中では火炎が加速し、途中で爆轟に転移する(DDT)
  • だから長い配管ほど危ない。エルボや障害物が加速を助ける
  • 爆燃用アレスタと爆轟用アレスタは別物。取り違えると止まらない

1. 何が違うのか ― 伝わり方が違う

可燃性ガスに火がついたとき、火炎は周りの未燃ガスへ広がっていきます。その広がり方に、2つの様式があります。

爆燃(デフラグレーション)

火炎の熱が、隣の未燃ガスを温めて着火させる。熱と物質の拡散によって、じわじわ伝わっていきます。

伝わる速さは音速より遅い。だから、火炎が来る前に圧力波が先回りします。未燃ガスは押し出され、動きます。

爆轟(デトネーション)

こちらは仕組みがまったく違います。先頭にあるのは火炎ではなく、衝撃波です。

衝撃波が未燃ガスを圧縮する。圧縮されたガスは温度が上がり、自己着火します。その燃焼が衝撃波を後ろから押し、衝撃波は減衰せずに進み続ける。

この結合により、伝播速度は音速を大きく超えます。炭化水素と空気の混合気では、毎秒1,500〜2,500m程度に達するとされます。

爆燃爆轟
先頭にあるもの火炎衝撃波
伝わる仕組み熱と物質の拡散衝撃圧縮による自己着火
伝播速度音速以下
(数m/s〜数百m/s)
音速超
(1,500〜2,500 m/s程度)
未燃ガス火炎の前で押し出されて動く動く前に衝撃波が到達
密閉容器の最大圧力おおむね初圧の8倍程度それより大幅に高い
反射・重合影響は限定的端部の反射でさらに跳ね上がる
圧力の立ち上がり比較的ゆるやかほぼ瞬時

「圧力の立ち上がりが速い」ことの意味を押さえてください。爆燃なら、ベント(放爆口)を開けて圧力を逃がす時間があります。爆轟では、その時間がありません。放爆設計が成立するかどうかが、ここで分かれます。

2. 配管の中で、爆燃は爆轟に変わる

ここが、この記事で最も重要な部分です。

爆燃と爆轟は、別々の現象として存在するのではありません。爆燃として始まったものが、途中で爆轟に変わります。これをDDT(Deflagration to Detonation Transition:爆燃から爆轟への転移)と呼びます。

なぜ加速するのか

開放空間なら、火炎は球状に広がって減速します。しかし配管の中では、逃げ場がありません。

  • 燃焼で膨張したガスが、未燃ガスを前方へ押し出す
  • 押し出された流れが乱流になる
  • 乱流は火炎の表面積を増やし、燃焼速度を上げる
  • 燃焼が速くなると、さらに強く押し出す ―― 正のフィードバック

この加速が続き、ある距離を走ったところで衝撃波が形成され、爆轟へ転移します。

加速を助けるもの

要素なぜ加速するか
配管が長い加速する距離が長いほど、転移に到達しやすい
エルボ・分岐流れをかき乱し、乱流を強める
オリフィス・弁絞りが強い乱流を生む
内面の粗さ壁面での乱れが火炎を加速させる
細い管同じ長さでも、直径に対して長いほど加速しやすい

実務での含意はこうです。

「短い配管なら爆燃で済むかもしれない。しかし長い配管では爆轟になり得る」。同じ混合気でも、配管の形で結果が変わります。

3. 2023年、火炎は配管を15m伝わった

この現象が実際に起きた例が、2023年のダウ・ケミカル ルイジアナ工場の事故です。

金属片で破裂板が貫通され、エチレンオキサイドが圧力放出配管へ流れ込みました。その配管は漏れによって窒素シールを失い、空気で満たされていました。

可燃性混合気ができ、着火。CSBの報告書によれば、火炎は約50フィート(約15m)の配管の中を伝播し、安全弁に到達しています。そして安全弁が開いたことで、火炎は還流ドラムの気相部へ入りました。

ドラム内のエチレンオキサイドは加熱され、分解を始め、圧力上昇でドラムは破局的に破壊されました。

放出系の配管は、火炎が伝わる経路になります。平常時は流れがなく、空気が入り込みやすい。そして系全体がつながっている。フレアヘッダーのパージとシールが「地味だが重要」なのは、この経路を断つためです。

4. 設計への影響

耐爆設計の考え方

密閉容器内の爆燃であれば、最大圧力はおおむね初圧の8倍程度とされます。運転圧が常圧なら、絶対圧で8気圧ほど。これを設計圧に織り込めば、容器は持ちこたえられる可能性があります。

一方、爆轟になると話が変わります。圧力は大幅に高くなり、さらに配管の閉端やエルボで反射すると、局所的にもっと跳ね上がります。耐圧で受け止める設計は、現実的でなくなります。

だから設計の方針は、こう分かれます。

方針中身
可燃性混合気を作らない不活性化(窒素シール)、酸素濃度管理。最も確実
着火源をなくす防爆、静電気対策、火気管理
伝播を止めるフレームアレスタ、水シール、緩衝タンク
圧力を逃がす放爆口(爆燃には有効、爆轟には間に合わない)
耐圧で受ける爆燃なら成立し得る。爆轟では現実的でない

順序は本質安全設計と同じです。まず「そもそも燃える混合気を作らない」から考えます。

フレームアレスタは、2種類ある

実務で取り違えが起きやすいのが、ここです。

爆燃用
(デフラグレーション・アレスタ)
爆轟用
(デトネーション・アレスタ)
止められるもの爆燃の火炎爆轟波と、それに伴う火炎
設置位置着火源に近い側/タンク開口部など。転移する前に止める配管の途中でも使える
構造比較的軽量衝撃圧に耐える頑丈な構造
取り違えると爆燃用を長い配管の途中に置くと、爆轟が来たときに破壊されて通過する

アレスタの選定は「型式」だけでなく「どこに付けるか」とセットです。爆燃用アレスタには、着火源からの許容距離が定められています。その距離を超えた位置に付ければ、火炎は到達までに加速し、アレスタの想定を超えます。

加えて、アレスタは詰まると通気を妨げます。タンクの呼吸を妨げれば、負圧でタンクが潰れることもあります。点検周期の管理が要る部品です。

5. 開放空間での爆発は、また別

ここまでは、配管や容器の中の話でした。屋外に漏れた可燃性ガスが着火する場合は、条件が変わります。

開放空間では、火炎は球状に広がり、燃焼ガスは自由に膨張できます。だから、単純に着火しただけでは強い圧力波は出ません。ゆっくり燃えるだけで終わることもあります。

しかし1974年のフリックスボローでは、蒸気雲が激しい爆発を起こしました。差を生むのは「閉塞(コンファインメント)」と「障害物」です。

  • 配管ラック、構造物、機器が密集していると、火炎が乱流化して加速する
  • 建屋や壁があると、膨張が妨げられて圧力が上がる
  • つまりプラントの中は、開放空間ではない

この「屋外に漏れた蒸気雲が爆発する」現象(UVCE)は、それ自体で1本必要な主題です。ここでは、閉塞と障害物が爆発の強さを決めるという点だけ押さえておきます。

6. 自分の職場で確かめる6つのこと

  • 可燃性ガスが通る長い配管はどこですか。その中に空気が入り得ますか
  • 放出系・ベント系のパージは効いていますか。流量を監視していますか
  • フレームアレスタは、爆燃用ですか爆轟用ですか。設置位置は仕様の範囲内ですか
  • アレスタの点検周期は決まっていますか。詰まれば通気も止まります
  • 放爆口を設けている設備は、爆燃を前提にしていますか。爆轟には間に合いません
  • 屋外の装置は、どれくらい密集していますか。閉塞が強いほど、漏えい時の爆発は強くなります

3番目は、図面と現物の両方を見ないと分かりません。アレスタは外から見ても型式が判別しにくい部品です。

まとめ

  • 爆燃は火炎が拡散で伝わる。音速以下。密閉容器でおおむね初圧の8倍程度
  • 爆轟は衝撃波が先行し、圧縮で自己着火する。音速超で、圧力は桁違い
  • 配管内では火炎が加速し、ある距離を超えると爆轟へ転移する(DDT)
  • だから長い配管・エルボ・絞りが危険。同じ混合気でも配管の形で結果が変わる
  • 爆燃用と爆轟用のアレスタは別物。設置位置とセットで選ぶ

爆燃と爆轟を区別する意味は、「耐圧で受け止められるかどうか」の分かれ目だからです。爆轟が起き得る系では、圧力で戦う設計は成立しません。混合気を作らないことに戻るしかありません。

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火災・爆発の型を全体として見分ける地図は、こちらにまとめています。

参考文献

※圧力比・伝播速度・転移距離の値は、物質・混合比・初期条件・配管形状によって大きく変わります。本記事の数値は現象の桁を示す目安であり、設計値ではありません。実設計では該当規格と専門解析を用いてください。