国試5回・検定5回の計10回を型別に数えると、型9(燃焼・爆発)だけが10回すべてに出ています(国試は問5、検定は問4)。型9を落とすと、そこだけで15〜20点が飛びます。
- 出る形は5つだけ(三角図3・TNT換算3・断熱火炎温度2・ル・シャトリエ1・セメノフ1)
- 計算の形(断熱火炎温度・TNT換算・下限界の推算)は最初の一手が同じ ── 反応式を書いて燃焼熱を出す
- 本番は四則電卓のみ。立方根は常用対数表で出す
型別の全体像は学識の計算は「10の型」しか出ない、出題マップは学識の出題マップへ。
型9は、出る形が5つしかない

| 形 | 5年10回で出た回 | 年度・問 |
|---|---|---|
| ① 三角図(爆発範囲図) | 3 | R5国試問5/R2検定問4/R6検定問4 |
| ② 断熱火炎温度 | 2 | R4検定問4/R5検定問4 |
| ③ TNT換算・爆風過圧 | 3 | R2国試問5/R4国試問5/R3検定問4 |
| ④ ル・シャトリエ/バージェス・ホイーラー | 1 | R6国試問5 |
| ⑤ セメノフの熱発火理論 | 1 | R3国試問5 |
5つのうち①②③で8回。ここを固めれば、型9の8割はカバーできます。
②③④の入口は反応式を書く → 生成エンタルピーから燃焼熱を出す(=型8)→ それぞれの式に流し込む、で共通です(①三角図と⑤セメノフは燃焼熱を使いません)。だから型8(熱化学)は単独の大問にならず、型9とセットで練習するほうが実戦的です。→ 型8|ヘスの法則と生成エンタルピー/ヘスの法則と総発熱量・真発熱量
使う式は6つ ── これ以上は出ていない
| 式 | 中身 | 注意 |
|---|---|---|
| ① 燃焼熱 | ΔH = Σ(生成物のΔHf) − Σ(反応物のΔHf) | 燃焼熱は符号を反転した Qc = −ΔH(正の値) |
| ② ル・シャトリエ | 100 / L = Σ(cᵢ / Lᵢ) | cᵢ:各可燃性ガスの vol%(可燃分の中での割合で入れると、L も可燃分中の値になる)。Lᵢ:各成分単独の爆発限界 |
| ③ バージェス・ホイーラー | L × Qc ≒ 一定(飽和炭化水素) | 既知のガスから未知のガスの L を推算 |
| ④ 断熱火炎温度 | Qc = Σ(nᵢ × Cp,ᵢ) × (T − T₀) | 発熱がすべて排ガスの昇温に使われるとした温度 |
| ⑤ TNT換算 | W_TNT = (物質の爆発熱 × 質量) / 4,190[kg] | 4,190 kJ/kg = TNTの爆発熱 |
| ⑥ 三乗根法則(換算距離) | Z = R / W_TNT^(1/3) | Z から図表を引いてピーク過圧を求める |
6つを紙に書き出せるようにしてください。関数電卓は禁止なので、立方根は常用対数表で処理します(③の章)。
令和6年度 国家試験 問5 ── 燃焼熱→バージェス・ホイーラー→ル・シャトリエ

| 小問 | 与えられた値 | 答え |
|---|---|---|
| (1) プロパンの燃焼熱 | 標準生成エンタルピー:プロパン −104.7、CO₂ −393.5、H₂O(g) −241.8[kJ/mol] | 2,043 kJ/mol |
| (2) 25℃空気中でのプロパンの爆発下限界(有効数字2桁) | エタンの燃焼熱 1,428 kJ/mol、爆発下限界 3.0 vol%。L × Qc = K を使う | 2.1 vol% |
| (3) エタン50 vol%、プロパン50 vol% の混合気体の爆発下限界(有効数字2桁) | ── | 2.5 vol% |
型9の3層構造がそのまま出た年です。表の形④はこの章で扱います。
(1) 燃焼熱 ── 反応式を書かずに数字を触らない
C₃H₈ + 5 O₂ → 3 CO₂ + 4 H₂O(Cが3個 → CO₂が3、Hが8個 → H₂Oが4、Oは右辺に 3×2+4×1=10 個 → O₂が5)
ΔH = 3×(−393.5) + 4×(−241.8) − (−104.7)
= −1,180.5 − 967.2 + 104.7
= −2,043 kJ/mol
→ 燃焼熱 Qc = 2,043 kJ/mol
- O₂の生成エンタルピーは0(単体はゼロ。毎年使う)
- H₂O が (g) である点に注意。 (l) なら −285.8 で答えが変わる。この差が総発熱量と真発熱量の差(→ ヘスの法則と発熱量)
(2) バージェス・ホイーラー
L_プロパン × 2,043 = 3.0 × 1,428
L_プロパン = 4,284 / 2,043 = 2.097
→ 2.1 vol%
燃焼熱が大きいガスほど、爆発下限界は低い(少量でも大きな熱を出すので、薄くても燃え広がる)。→ 爆発範囲(LEL・UEL)
(3) ル・シャトリエ
100/L = 50/3.0 + 50/2.1
= 16.67 + 23.81 = 40.48
L = 100 / 40.48 = 2.47
→ 2.5 vol%
今回は可燃分だけの混合(50+50=100)なので、そのまま代入できます。
不活性ガスが混ざる例
例:メタン30 vol%、プロパン20 vol%、窒素50 vol% の混合ガスの爆発下限界は?(LEL:メタン5.0、プロパン2.1 vol%)
可燃分は 30+20=50 vol%。これを100%に直す。
メタン:30/50×100 = 60 vol%/プロパン:20/50×100 = 40 vol%
100/L = 60/5.0 + 40/2.1 = 12.0 + 19.05 = 31.05
L = 3.2 vol%(可燃分中の値)
混合ガス全体(窒素を含む)に戻すと 3.2 ÷ 0.50 ≒ 6.4 vol%(0.50 は可燃分の割合)
30 と 20 をそのまま代入しても 100/L = 30/5.0 + 20/2.1 = 15.52、L = 6.4 vol% で、全体の値は同じです。設問が「可燃分中の下限界」(3.2)を問うか「混合ガス全体の下限界」(6.4)を問うかを先に確かめます。
① 三角図 ── 10回中3回。読み方だけで解ける

頂点がその成分の100%、向かい側の辺が0%。 濃度は向かい側の辺に平行な線をたどって読み、3つを足して100%になれば正しく読めています。
出題:R5国試問5(水素-空気-不活性ガス)、R2検定問4(HFC-134a-酸素-窒素)、R6検定問4(水素-酸素-窒素)。可燃性ガス・空気(または酸素)・不活性ガスの濃度は合計がいつも100%なので、組成を三角形の中の1点で表せます。目盛の数字がどの辺に付いているかは図によって違うので、迷ったら「頂点が100%」に戻り、数字が増える向きを確かめます。
窒素を足すと、点は窒素の頂点へまっすぐ動く

窒素を足すと、可燃性ガスと空気の比は変わらないまま薄まるので、点は窒素の頂点へ引いた直線の上を動きます。「窒素を何%以上にすれば爆発範囲の外へ出せるか」は、この直線が爆発範囲の境界を横切る点の窒素濃度を読めば解けます。空気や可燃性ガスを足す場合も、足したガスを表す点に向かって、まっすぐ動く。
図は2種類ある ── 頂点が酸素の図と、空気の図


最初に、どちらの図かを確かめてください。 頂点が空気の図では、空気に含まれる窒素は「空気」の側に数え、図の「窒素」は空気とは別に足した窒素です。頂点が酸素の図では、空気は底辺の上の1点(酸素21%・窒素79%)です。
| 量 | 酸素が頂点の図 | 空気が頂点の図 |
|---|---|---|
| 爆発下限界(LEL) | 可燃性ガスの頂点Aと空気の点(酸素21%・窒素79%)を結ぶ空気線が爆発範囲を横切る2点のうち、可燃性ガス濃度の低いほう | 可燃性ガス−空気の辺(不活性ガス0%)の上で、爆発範囲の可燃性ガス濃度の低いほうの端 |
| 爆発上限界(UEL) | 同じ2点のうち、可燃性ガス濃度の高いほう | 同じ辺の上で、可燃性ガス濃度の高いほうの端 |
| 限界酸素濃度(LOC / MOC) | 爆発範囲の「鼻先」の酸素濃度をそのまま読む | 鼻先(または設問が指定する点)の空気濃度を読み、×0.21で酸素濃度にする |
| 最小不活性ガス濃度 | 鼻先を通る不活性ガス線の値 | 同左 |
試験で問われるのはほぼ限界酸素濃度です。R5国試問5は空気が頂点の図で、空気25 vol%から酸素濃度 25×0.21≒5.3 vol% を出す形でした。
解く手順と、不活性ガス希釈の理由
- 混合ガスの組成から図上の点を打つ
- 点が爆発範囲の内か外かを判定する
- 「安全にするには何を何%加えるか」なら、点を動かして範囲の外へ出す
計算はほとんど不要です。ここは確実に取ってください。
R4国試の問6では、不活性ガス希釈で爆発を防げる理由が記述で出ました。2つ目を書き落とすと減点されます。
- 酸素濃度が下がる → 反応に必要な酸素が足りなくなる
- 熱容量が増える → 温度が上がりにくくなり、火炎が伝播しない(だから熱容量の大きい CO₂ のほうが N₂ より少ない量で消せる)
→ 三角図(三角座標)の読み方/不活性化とパージ/爆燃と爆轟
② 断熱火炎温度 ── 10回中2回。窒素を数え忘れない

空気で燃やすと O₂ 1 mol に N₂ が 3.76 mol 付いてきます(79/21 ≒ 3.76)。反応しませんが一緒に温められるので、落とすとしたら窒素の数え忘れです。
出題:R4検定問4(プロパン・ブタン)、R5検定問4(水素・エタン)。燃焼で出た熱がすべて排ガスの昇温に使われるとして、T = T₀ + Qc / Σ(nᵢ × Cp,ᵢ)。
- 反応式を書く(過剰空気があれば、余った O₂ と N₂ も右辺に残す)
- 燃焼熱 Qc を出す(=型8)
- 排ガスの物質量 nᵢ を数える ── CO₂・H₂O・N₂・余剰O₂
- Σ(nᵢCp,ᵢ) で割る
C₃H₈ + 5 O₂ + 5×3.76 N₂ → 3 CO₂ + 4 H₂O + 18.8 N₂
排ガス合計 = 3 + 4 + 18.8 = 25.8 mol、うち73%が窒素
窒素を落とすと Σ(nᵢCp,ᵢ) が 957 から 337 J/K に減り、温度上昇が約2.8倍に跳ね上がります。
ミニ例題
例:プロパン1 molを理論空気量で完全燃焼させた。断熱火炎温度を求めよ。Qc = 2,043 kJ/mol(H₂Oは気体)、初期温度 25℃。平均モル熱容量 Cp:CO₂ 55、H₂O 43、N₂ 33[J/(mol·K)]とする。
Σ(nᵢCp,ᵢ) = 3×55 + 4×43 + 18.8×33
= 165 + 172 + 620 = 957 J/K
ΔT = 2,043×10³ / 957 = 2,135 K
T = 25 + 2,135 = 約2,160 ℃
実際のプロパン火炎は約1,980℃です。断熱火炎温度が実測より高くなるのは放熱と解離(CO₂→CO+O など)を無視しているからで、記述でも問われます。→ 断熱火炎温度の計算
③ TNT換算・爆風過圧 ── 10回中3回。立方根は対数で

立方根は「対数を取って3で割って、逆引き」。関数電卓は使えないので、ここが本番の山場です。
出題:R2国試問5(硝酸エチル:ベンソン法・燃焼熱・TNT換算)、R4国試問5(メチルアミン:燃焼エンタルピー・TNT換算・三乗根法則)、R3検定問4(アセトアルデヒド:TNT換算・爆風ピーク過圧)。
- 物質の爆発熱[kJ/kg]を出す(生成エンタルピー、またはベンソン法で推算)
- W_TNT = 爆発熱 × 質量 / 4,190
- 換算距離 Z = R / W_TNT^(1/3)
- Z から図表でピーク過圧を読む
W = 1,000 kg のとき:log 1,000 = 3.000 → 3.000 ÷ 3 = 1.000 → 10^1.000 = 10
W = 250 kg のとき:log 250 = log 2.50 + 2 = 0.398 + 2 = 2.398 → 2.398 ÷ 3 = 0.799 → 表で 0.799 に近い値を逆引き → 真数 6.30
対数の公式(積・商・べき乗と ln x = 2.303 log x)と表の引き方は型7|反応速度とアレニウス式にあります。
4,190 kJ/kg(TNT 1 kg の爆発エネルギー)は問題文に与えられます。プロパンの燃焼熱は約46,000 kJ/kg でTNTの11倍。TNTが強いのは反応速度であって、総エネルギーではありません。 この違いが爆燃と爆轟の差です。実務はTNT換算とホプキンソンの三乗根法則、蒸気雲爆発へ。
⑤ セメノフの熱発火理論 ── 発熱と放熱の線が接すると臨界

q₁ と q₂ が接する点が発火の臨界条件。 ここを境に、系は安定から暴走へ切り替わります。
R3国試問5で出ました(記述でも出る)。q₁(発熱速度)は温度に対して指数関数的(アレニウス型)、q₂(放熱速度)は直線的(ニュートン冷却)に増えます。
| 2本の関係 | 何が起きるか |
|---|---|
| q₂ が q₁ より上(交点2つ) | 低温側の交点で安定。発火しない |
| q₁ と q₂ が接する | 発火の臨界条件 |
| q₁ が q₂ より上(交点なし) | 温度が上がり続ける → 発火 |
- 放熱を増やす(q₂ の傾きを上げる)── 容器を小さく、表面積を大きく、冷却を強く
- 周囲温度を下げる(q₂ を左へずらす)
- 発熱を減らす(q₁ を下げる)── 濃度を下げる、希釈する
容器が大きいほど発火しやすいのは、体積(発熱)が3乗、表面積(放熱)が2乗で増えるからです。→ 暴走反応とSADT/自然発火
本番前の確認 ── よくある失点と練習の順
| 失点 | 対策 |
|---|---|
| H₂O が (g) か (l) かを取り違える | 問題文の指定を丸で囲む |
| ル・シャトリエで可燃分中の値と全体の値を取り違える | 設問がどちらを問うか確かめる。可燃分中なら100%に規格化 |
| 断熱火炎温度でN₂を数え忘れる | O₂ 1 molに N₂ 3.76 mol。反応式に書き込む |
| 単体の生成エンタルピーを0でないと思う | O₂・N₂・C(黒鉛)・H₂ はすべて0 |
| 立方根が出せない | log を取って3で割り、逆引き |
| 不活性ガス希釈の理由を1つしか書かない | ①酸素濃度の低下 ②熱容量の増加 |
練習は、①反応式(プロパン・ブタン・エタン・水素・メタノール・アセトアルデヒド)→ ②その6物質の燃焼熱 → ③三角図 → 断熱火炎温度 → TNT換算の過去問を1題ずつ → ④常用対数表での立方根を3回、の順です。
次は型6(化学平衡)です。10回中5回(7題)、モル収支表を書けば作業になります。→ 型6|化学平衡
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』。令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に分けて集計しました。問題文は転載せず、要約して解説しています。
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