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過去問の解説を読めばその問題は解ける。でも少し形が変わると、また手が止まる。
記述式の計算が怖くて、いつも後回しにしてしまう。
そんな悩みを解決します。
計算の出所は7分野・10の型しかないという話
型ごとに「使う式・解く手順・例題・落とし穴」
四則電卓と対数表だけで指数計算を処理する方法
記述式で部分点を取る答案の書き方

私が国家試験に落ちた原因は計算です。反応速度論の積分で完全に手が止まりました。それが変わったのは、計算を「型」として捉え直したときでした。
過去問の解説を読めば、その問題は解けるようになる。でも少し形が変わるとまた解けない。 断片的にしか身についていなかったのです。
それが変わったのは、計算を「型」として捉え直したときでした。
学識の配点の50〜60%は計算です。そして過去の出題を分類すると、計算の出所は7分野・10の型に収まります。無限に見えていた計算問題が、10個の宿題になる。
この記事では、その10の型すべてに「使う式・解く手順・例題・落とし穴」を付けて並べます。長いので、ブックマークして1日1型ずつ手を動かしてください。
目次
出題マップ:計算はこの7分野からしか出ない
| 分野 | 中身 | 型 |
|---|---|---|
| A 気体の性質 | 状態方程式、混合気体、実在気体、蒸気圧・気液平衡 | 型1〜3 |
| B 熱力学 | 状態変化の仕事と熱、圧縮機の動力 | 型4〜5 |
| C 化学反応 | 化学平衡、反応速度、熱化学 | 型6〜8 |
| D 燃焼・爆発 | 爆発限界、TNT換算 | 型9 |
| E 流動 | ベルヌーイ、圧力損失、ポンプ動力 | 型10 |
| F 伝熱 | 熱伝導、熱貫流、熱交換器 | 型10 |
| G 材料力学 | 応力・ひずみ、薄肉円筒 | 型10 |
甲種化学の主戦場はA〜Dです。E〜Gは基礎レベルの出題にとどまります。
最初に固定する「3つの定数と1つの習慣」
すべての型に共通する土台です。最初に体に入れてください。
- 気体定数 R=8.314 J/(mol・K)(=8.314 Pa・m³/(mol・K))
- 標準状態(0℃、0.1013MPa)で1molの気体は22.4L(0.0224m³)
- 熱力学温度 T=t+273(℃のまま代入したら、その瞬間に全滅)
そして1つの習慣。
- MPa → Pa は 106 倍
- L → m³ は 10−3 倍
計算ミスの大半は立式ではなく、この換算で起きます。 ここを機械的にやるだけで正答率が上がります。
型1|理想気体の状態方程式・混合気体【最頻出・絶対に落とさない】
使う式
- pV=nRT、n=m/M(m:質量、M:モル質量)
- 混合気体:分圧=全圧×モル分率、平均分子量=Σ(Mi×yi)
解く手順
- 全変数をSIに直す(MPa→Pa、℃→K、L→m³)
- pV=nRT に代入してnを出す
- 質量が欲しければ m=nM
例題
内容積0.040m³の容器に、二酸化炭素(M=44g/mol)が温度27℃、圧力2.0MPaで充填されている。質量はおよそ何kgか。
〔解答〕
n=pV/(RT)=(2.0×106×0.040)/(8.314×300)=32.1 mol
m=32.1×44=1411 g ≒ 1.4 kg
頻出の応用形:「取り出し問題」
「気体を一部取り出したら圧力がこうなった。内容積は?」という形が定番です。
定石は1つ。取り出し前と後で状態方程式を2本立てて、引き算する。 温度一定ならRTが共通因子になり、差分がそのまま取り出した物質量に対応します。
落とし穴
- 27℃を「27」のまま代入(正しくは300K)
- 2.0MPaを「2.0」のまま代入(正しくは2.0×106 Pa)
- g/molとkg/molの混同で答えが1000倍ずれる
分圧とモル分率の関係はドルトンの法則とラウールの法則の関係で、シミュレーターを動かしながら確認できます。
型2|実在気体(ファン・デル・ワールス式、圧縮係数)
使う式
- ファン・デル・ワールス式:(p+a(n/V)²)(V−nb)=nRT ※式は問題で与えられることが多い
- 圧縮係数:pV=znRT(zは線図から読む)
- 混合気体はケイ(Kay)の方法:擬臨界温度・圧力をモル分率の加重平均で作る
解く手順
- 対臨界温度 Tr=T/Tc、対臨界圧力 pr=p/pc を計算
- z線図からzを読み取る
- pV=znRT に代入(あとは型1と同じ)
落とし穴
- vdW式は「与えられた式に正しく代入できるか」の勝負。a・bの単位を確認してから代入する
- zの読み取り値は多少ずれてよい(記述式なので、過程が合っていれば減点は小さい)
型3|蒸気圧・気液平衡
使う式
- ラウールの法則:pi=Pi°xi(Pi°:純成分の蒸気圧、xi:液相モル分率)
- ヘンリーの法則:p=Hx(難溶性ガスの溶解)
- 全圧=Σpi
解く手順
- 液相組成xを確認
- 各成分の分圧 pi=Pi°xi を計算
- 気相組成は yi=pi/全圧
落とし穴
- ラウール(溶媒側・理想溶液)とヘンリー(溶質側・難溶ガス)の適用場面の混同
- 「凝縮が始まる温度・圧力」を問う問題は、逆算(気相組成から露点を求める)に読み替える
ラウールの法則がどういう場面で成り立つのかはドルトンの法則とラウールの法則の関係を見てください。
型4|熱力学の状態変化【「何がゼロか」で9割決まる】
使う式 ── まずこの表を丸ごと覚えます
| 変化 | ゼロになる量 | 式 |
|---|---|---|
| 等温変化 | ΔU=0 | Q=W=nRT ln(V₂/V₁)=nRT ln(p₁/p₂) |
| 定圧変化 | — | W=pΔV、Q=nCpΔT |
| 定容変化 | W=0 | Q=ΔU=nCvΔT |
| 断熱変化 | Q=0 | W=−ΔU、pVγ=一定、T₂=T₁(p₂/p₁)(γ−1)/γ |
そしてマイヤーの関係:Cp−Cv=R、比熱比 γ=Cp/Cv
解く手順
- 「どの変化か」を問題文から特定する(等温/定圧/定容/断熱)
- その変化でゼロになる量を書く(ここが部分点になります)
- 表の式に代入する
例題
300K、0.10MPaの空気(γ=1.4)を1.0MPaまで断熱圧縮した。圧縮後の温度はおよそ何Kか。
〔解答〕
T₂=T₁(p₂/p₁)(γ−1)/γ=300×100.4/1.4=300×100.286
常用対数表で 100.286=1.93
T₂=300×1.93=579 K(約306℃)
落とし穴
- 絶対仕事(閉じた系のpdV仕事)と工業仕事(開いた系の−Vdp仕事)の区別。圧縮機は開いた系=工業仕事
- 「膨張で気体がする仕事」と「圧縮で気体がされる仕事」の符号
型5|圧縮機の理論動力・冷凍サイクル
使う式
- 等温圧縮動力:W=nRT ln(p₂/p₁)
- 断熱圧縮動力:W=(γ/(γ−1))nRT₁×[(p₂/p₁)(γ−1)/γ−1]
- 多段圧縮の最適中間圧:p中間=√(p₁×p₂)(各段の圧縮比を等しくする)
- 逆カルノーサイクルの成績係数:COP(冷凍)=T低/(T高−T低)
例題
0.10MPaの気体を1.6MPaまで2段圧縮する。各段の圧縮比を等しくするとき、中間圧力はいくらか。
〔解答〕 p中間=√(0.10×1.6)=√0.16=0.40 MPa
落とし穴
- 断熱圧縮動力の式は長いですが、指数部が型4の温度比の式と同じ形であることに気づくと覚えやすい
- COPの温度は必ずK。「−20℃の冷凍室」なら253K
実機の圧縮機で何が起きるかはブロワーの種類・構造・使い分けが参考になります。
型6|化学平衡【モル収支表を書けば作業になる】
使う式
- 圧平衡定数:Kp=Π(piνi)(生成系/原系)
- 分圧 pi=全圧×モル分率
- 温度と平衡定数:ln(K₂/K₁)=−(ΔH°/R)(1/T₂−1/T₁)(ファントホッフ式)
解く手順 ── どんな反応でもこの3行から外れません
- 「反応前/変化量/平衡時」のモル収支表を書く
- 平衡時の全モル数を出し、各成分のモル分率→分圧を計算する
- Kpの定義式に代入する
例題(式の導出型)
N₂O₄ ⇄ 2NO₂。初めN₂O₄が1mol、解離度をα、全圧をpとするとき、Kpをαとpで表せ。
〔解答〕
収支表:N₂O₄=1−α、NO₂=2α、全モル=1+α
分圧:p(N₂O₄)=p(1−α)/(1+α)、p(NO₂)=2αp/(1+α)
Kp=p(NO₂)²/p(N₂O₄)=4α²p/(1−α²)
頻出の聞かれ方
- 「全圧を上げると平衡はどちらへ動くか、式で示せ」→ 上の結果で全圧pが分子にある=pを上げるとαが下がる(体積減少側へ移動)。ル・シャトリエを“式で”言えると、学識の論述で強い
- アンモニア合成(N₂+3H₂ ⇄ 2NH₃)が高圧有利な理由も同じ論法です(ハーバー・ボッシュ法はガス各論とつながります)
落とし穴
- 係数νを収支表に反映し忘れる(2NO₂の「2」)
- Kpに代入する圧力の単位(問題の指定に従う。指定がなければ一貫していれば可)
平衡定数とギブズエネルギーの関係はギブスエネルギーとは。化学平衡の仕組みで解説しています。
型7|反応速度・アレニウス式
使う式
- 1次反応:ln(C₀/C)=kt、半減期 t1/2=0.693/k
- アレニウス式:k=A exp(−E/RT)
- 2温度間の比較:ln(k₂/k₁)=(E/R)(1/T₁−1/T₂)
解く手順
- 反応次数を確認(甲種化学はほぼ1次)
- 与えられた転化率・時間から k を出す
- 求めたい時間・濃度・温度に代入する
例題
ある1次反応は30分で原料の50%が消費される。90%が消費されるまでの時間はおよそ何分か。
〔解答〕
半減期30分より k=0.693/30=0.0231 min−1
90%消費=C₀/C=10 → t=ln10/k=2.303/0.0231=99.7 ≒ 100分
対数表との付き合い方
自然対数lnは表にありません。 ln x=2.303 log x で常用対数に変換してから表を引きます。この2.303の変換は本番で必ず1回は使うと思ってください。
落とし穴
- 「50%が2回で75%」のような半減期の性質と、任意の転化率の計算(ln計算)を混同しない
- アレニウスの2点式は 1/T の引き算の順序で符号が決まる。E>0になる向きが正しい
アレニウスプロットの読み方と活性化エネルギーの意味は、アレニウスの式、アレニウスプロットとは・活性化エネルギーとは【衝突理論で解説】に書いています。
型8|熱化学(生成エンタルピー・反応熱)
使う式
- ヘスの法則:ΔH°(反応)=Σ ΔHf°(生成物)−Σ ΔHf°(反応物)
- 結合の加成性則:ΔHf°を結合ごとの寄与値の和で推算(寄与値は問題で与えられる)
- TNT換算(型9とセット):TNT当量=(物質の爆発熱×質量)/ TNTの爆発熱(4190 kJ/kg)
例題
メタンの完全燃焼 CH₄+2O₂ → CO₂+2H₂O(g) の標準反応エンタルピーを求めよ。ΔHf°:CH₄=−74.9、CO₂=−393.5、H₂O(g)=−241.8(各kJ/mol)
〔解答〕
ΔH°=[−393.5+2×(−241.8)]−[−74.9]=−877.1+74.9=−802.2 kJ/mol(発熱)
落とし穴
- 符号ミスがすべて。「生成物−反応物」の順を機械的に守る
- H₂Oが気体(g)か液体(l)かで数値が違う(凝縮潜熱の分)。問題の指定を必ず確認
- 単体(O₂など)のΔHf°=0
型9|燃焼・爆発の計算【甲種化学の名物】
使う式
- 混合ガスの爆発下限界(ル・シャトリエの式):100/L=Σ(ci/Li)(ci:各可燃性ガスのvol%、Li:各成分の下限界)
- バージェス・ホイーラーの法則:下限界×モル燃焼熱 ≒ 一定(下限界の推算に使う)
- 爆発の影響:三乗根法則(換算距離)、TNT換算、ピーク過圧
解く手順(ル・シャトリエ)
- 可燃性成分だけを取り出し、可燃分中の組成ci(合計100%)に直す
- 100/L=Σ(ci/Li) に代入
- 逆数からLを出す
例題
メタン60vol%、プロパン40vol%の混合可燃性ガスの爆発下限界を求めよ。下限界はメタン5.0vol%、プロパン2.1vol%とする。
〔解答〕
100/L=60/5.0+40/2.1=12.0+19.0=31.0
L=100/31.0=3.2 vol%
落とし穴
- ciは「可燃分の中での割合」。 混合ガス中に不活性ガスが入っている問題では、先に可燃分だけで100%に規格化する
- 不活性ガス希釈・限界酸素濃度の問題は三角図(爆発範囲図)の読み取りとセットで出ます。図の軸(可燃性ガス%・酸素%・不活性ガス%)の意味を先に確認しておく
型10|流動・伝熱・材料力学【拾えると差がつく】
出題頻度は型1〜9より下がりますが、出たときに基礎式だけで解ける問題が多く、コスパは悪くありません。 各分野「これだけ」に絞ります。
流動:これだけ
- レイノルズ数:Re=Duρ/μ(Re<約2100で層流、>約4000で乱流)→「流れの状態を判別せよ」が定番
- ベルヌーイの定理:(p/ρg)+(u²/2g)+z=一定
- ポンプの理論動力:P=ρgQH(Q:流量m³/s、H:全揚程m)。軸動力は効率ηで割る
- キャビテーション:飽和蒸気圧との比較で「揚液できる温度・流量」を判定
→ 管摩擦係数の求め方、現場で使える圧力損失計算、NPSH計算完全ガイド。
伝熱:これだけ
- 平板の熱伝導:Q=λAΔT/L。多層壁は熱抵抗(L/λ)の直列和
- 熱貫流:Q=KAΔT(Kは境膜と壁の抵抗の合成)
- 熱交換器:Q=UAΔTlm、対数平均温度差 ΔTlm=(ΔT₁−ΔT₂)/ln(ΔT₁/ΔT₂)
〔ミニ例題〕向流熱交換器で高温側90→50℃、低温側20→40℃のとき
ΔT₁=90−40=50K、ΔT₂=50−20=30K
ΔTlm=(50−30)/ln(50/30)=20/0.511=39.1K
→ あとは Q=UAΔTlm に代入して伝熱面積Aを求める、が定番の流れ
→ 伝熱の3形態、総括伝熱係数Uとは、熱交換器の伝熱面積の求め方。
材料力学:これだけ
- 応力σ=荷重/断面積、ひずみε=伸び/元の長さ、フックの法則 σ=Eε
- 内圧pを受ける薄肉円筒(内径D、板厚t):周方向応力 σ=pD/(2t)、軸方向応力 σ=pD/(4t)
→ 周方向が2倍大きい。だから破裂は縦割れになる - 熱応力:σ=EαΔT(拘束された棒の温度変化)
〔ミニ例題〕内径1.0m、板厚10mmの薄肉円筒に内圧2.0MPa。周方向応力は?
σ=pD/(2t)=(2.0×1.0)/(2×0.010)=100 MPa
対数表の実戦テクニック
本番は四則電卓のみ(関数電卓禁止)。指数・対数は問題添付の常用対数表で処理します。使うのは実質4つだけです。
- log(xy)=log x+log y
- log(x/y)=log x−log y
- log xn=n log x
- ln x=2.303 log x(自然対数の変換)
表の使い方は「往復」
- 順引き:log 5.02 → 表から 0.701
- 逆引き:100.286 → 表の中から0.286に近い値を探し、真数1.93を得る
指数計算(断熱圧縮の温度、アレニウス)は必ずこの「逆引き」を使います。型4の例題を対数表だけで再現できたら仕上がりです。
練習ルール
記述式の部分点戦略
学識は記述式です。採点者に「分かっている」と伝わる答案の書き方で、同じ実力でも点が変わります。
- 書く順序を固定する:①使う式 → ②単位換算 → ③代入 → ④答え(単位付き・有効数字2〜3桁)
- 「どの変化か」「何がゼロか」を言葉で1行書く(型4)——これ自体が採点対象になります
- 答えが割り切れなくても捨てない。「≒」でまとめて単位を付ける
- 完答できない問題も、Step1の立式と単位換算までは必ず書く。白紙が最悪
演習の回し方
- 1周目:型1〜9を1日1型、この記事の例題を「手で」解く(読むだけは効果半減)
- 2周目:過去問5年分を型に仕分けしながら解く。「これは型6だ」と言えるようになれば勝ち
- 3周目:間違えた型だけ戻る。型10は2周目以降の余力で
- 検定(講習ルート)の学識も出題傾向は共通です。検定過去問も同じ型仕分けで使えます
どの型が、どの大問で出るかは学識の出題マップで確認できます。
まとめ
- 計算の出所は7分野・10の型。主戦場はA〜D(型1〜9)
- R=8.314/T=t+273/SI換算を機械的にやる。ミスの大半はここ
- 型4は「何がゼロか」を書くだけで部分点が入る
- 型6はモル収支表を書けば作業になる
- 型9は可燃分だけで100%に規格化してからル・シャトリエ
- ln x=2.303 log x。対数表の「逆引き」を練習する
- 練習でも関数電卓を使わない
- 立式と単位換算だけでも書く。白紙が最悪
次はこの試験の最後の山、ガス各論です。→ ガス各論①:水素・酸素・炭化水素・硫黄化合物系
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