熱交換器の伝熱面積の求め方【熱交換器の計算例】

熱交換器の伝熱面積はどうやって計算したらいいだろうか。

そんな悩みを解決します。

当記事の内容

・熱交換器の伝熱面積の求め方(基本的な理論)

・具体的な計算例

ヤマト
ヤマト

私は大学で化学工学を学び、化学メーカーで6年間設計の仕事をしてきました。
熱交換器の伝熱面積を求める基本をなるべくわかりやすく、図も用いて解説していきます。

熱交換器の伝熱面積Aの求め方

微小交換熱量dQを伝達するのに必要は伝熱面積dAは

$$dA=\frac{dQ}{UΔT}・・・①$$

全交換熱量Qを伝達するのに必要は伝熱面積Aは

$$A=\int_0^Q\frac{dQ}{UΔT}・・・②$$

伝熱面の場所によって総括伝熱係数Uが変わる場合、伝熱面を細分化して、分割した伝熱面におけるUと温度差ΔTを用いて②式を積分してAを求めます。

全伝熱面で総括伝熱係数Uが一定の場合、平均温度差Tmを用いて次の式からAを求められます。

$$A=\frac{Q}{UΔTm}・・・③$$

ヤマト
ヤマト

赤字はよく使う重要な式だから覚えてね

記号

A:伝熱面積[m2]

Q:全交換熱量[W]

ΔT:温度差[K]

ΔTm:平均温度差[K]

ヤマト
ヤマト

これから平均温度差ΔTm、総括伝熱係数U、全交換熱量Qの求め方を説明していくよ

平均温度差ΔTmの求め方

高温流体と低温流体間の温度差ΔTは、伝熱面の場所によって変化します。

熱交換器の伝熱条件により3パターンの求め方があります。

①総括伝熱係数U一定のとき

完全な向流または並流のとき、対数平均温度差ΔTimを用います。

$$ΔTm=ΔTim・・・④$$

$$ΔTim=\frac{ΔT1-ΔT2}{\ln(ΔT1/ΔT2)}・・・⑤$$

向流のとき

$$ΔT1=Th.out−Tc.in・・・⑥$$

$$ΔT2=Th.in−Tc.out・・・⑦$$

並流のとき

$$ΔT1=Th.in−Tc.in・・・⑧$$

$$ΔT2=Th.out−Tc.out・・・⑨$$

②総括伝熱係数Uが温度差ΔTに比例するとき

UとΔTの積の対数を用います。

$$(UΔT)m=\frac{U2ΔT1−U1ΔT2}{\ln\frac{U2ΔT1}{U1ΔT2}}・・・⑩$$

③流れが完全な向流や並流でないとき(多パス形やクロス型)

温度差の分布が複雑なため補正係数Fを用います。

$$ΔTm=ΔTimF・・・⑪$$

※ΔTimは向流で計算

補正係数Fは流れの形態ごとに求められているが、多数のパターンがあるためここでは割愛します。

総括伝熱係数Uの求め方

総括伝熱係数Uは以下の式から求めます。

$$U=\frac{1}{\frac{1}{h1}+γ1+\frac{lw}{λw}+γ2\frac{1}{h2}}・・・⑫$$

※総括伝熱係数は熱交換器の型式および流体ごとに目安のとなる総括伝熱係数があるため、必ずしも求めなければならないわけではない。
これは化学工学便覧などで調べることができます。

記号

h1:低温流体側熱伝達係数[W/m2・K]

h2:高温流体側熱伝達係数[W/m2・K]

lw:壁厚さ[m]

λw:壁の熱伝導率[W/m・K]

γ1:低温流体側汚れ係数[m2・K/W]

γ2:高温流体側汚れ係数[m2・K/W]

全交換熱量Qの求め方

全交換熱量Qは以下の式から求められます。

低温流体を加熱する目的のとき

$$Q=mCp(Tc.out−Tc.in)・・・⑬$$

高温流体を冷却する目的のとき

$$Q=mCp(Th.in−Th.out)・・・⑭$$

記号

m:質量流量[kg/s]

Cp:定圧比熱[J/kg・K]

ヤマト
ヤマト

これから実際に計算してみるよ

計算例:80℃の温水を50℃に冷却する

流量m=100kg/sの温水を℃Th.in=80℃から℃Th.out=50℃に冷却するのに必要な概算の伝熱面積を求める。冷却水の入口温度は℃Tc.in=30℃です。全伝熱面積で総括伝熱係数Uは一定、完全向流の流れとします。

手順1:全交換熱量Qを求める

使う式

$$Q=mCp(Th.in−Th.out)・・・⑭$$

温水の比熱を調べると・

$$Cp=4184J/kg・K$$

$$Q=100kg/s×4184J/kg・K×{(273+80)K−(273+50)K}$$

$$Q=12552×10^3W$$

Memo

ワットW=J/s

手順2:対数平均温度差ΔTimを求める

使う式

$$ΔTim=ΔT1−ΔT2ln(ΔT1/ΔT2)・・・⑤$$

$$ΔT1=Th.out−Tc.in・・・⑥$$

$$ΔT2=Th.in−Tc.out・・・⑦$$

ここでは冷却水は十分な流量があるとして、出口温度℃Tc.out=35℃とします。

⑥式より

$$ΔT1=(273+50)−(273+30)$$

$$ΔT1=20K$$

⑦式より

$$ΔT2=(273+80)-(273+35)$$

$$ΔT2=45K$$

⑤式より

$$ΔTim=\frac{20K−45K}{ln(20K/45K)}$$

$$ΔTim=32.3℃$$

手順3:総括伝熱係数Uを調べる

化学工学便覧などで総括伝熱係数を調べることができます。

調べた結果、

$$U=1000W/m2・K$$

手順4:必要伝熱面積Aを求める

使う式

$$A=\frac{Q}{UΔTm}・・・③$$

③式に手順1~3で求めた値を代入します。

$$A=\frac{12552×10^3W}{1000W/m2・K×32.3K}$$

$$A=388.6m2$$

必要伝熱面積を求めることができました。

応用するには

計算を簡単にするため、今回は以下の条件を付けました。

条件1:全伝熱面積で総括伝熱係数Uは一定
条件2:完全向流の流れ
条件3:総括伝熱係数は化学工学便覧等で調べる

条件1が満たされないときは、伝熱面を細分化して積分。実際にはEXCELなどを使って逐次計算をすることで求められます。

条件2が満たされないときは、対数平均温度差を補正係数Fを用いて補正することで求められます。

条件3について

企業で熱交換器の伝熱面積を求める場合、総括伝熱係数を計算して求めることは少ないです。

理由は企業で使用する熱交換器は多管式やスパイラル式など構造が複雑であり、計算で総括伝熱係数を求めるのは難しく、化学工学便覧などに参考値が載っているからです。

しかし、大学などの授業では総括伝熱係数は計算して求めることが多いですね。

自分で求めたいときは、熱伝達係数h、汚れ係数γ、壁厚さlw、壁熱伝導率λwを代入して求めます。

総括伝熱係数は1度自分で計算してみると意味が分かってきますよ。

総括伝熱係数とは?求め方と計算例

まとめ

熱交換器の伝熱面積の求め方を解説しました。

今回の内容を理解できれば、伝熱面積の計算の基礎はバッチリです。

あとは熱交換器や流体の種類に応じて、補正係数を用いたり、総括伝熱係数を修正すれば様々な熱交換器に応用できます。

伝熱工学をもっと勉強したい方は、参考書で体系的に学ぶのがおすすめです。

初学者におすすめの伝熱工学の参考書6選!