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伝導・対流・ふく射って何が違うの?
プラントではどれが効くの?
そんな悩みを解決します。
・伝熱の3形態と、それぞれの支配式
・ふく射が効き始める温度(数字で確認)
・化学プラントのどこでどれが効くか

私の仕事は化学プラントの設計です。
伝熱を学ぶ最初の一歩を、実務の視点で整理します。
熱の伝わり方には伝導・対流・ふく射の3つがあります。教科書の最初に出てくる分類ですが、実務では「どれを計算に入れ、どれを無視してよいか」を判断するために使います。
熱交換器の設計で扱うのは主に伝導と対流です。しかし加熱炉や保温、高温配管の放熱を考えるときは、ふく射を無視できません。
・伝導は物質の中を、対流は流体の移動とともに、ふく射は電磁波として熱が伝わります。
・熱交換器の設計は、伝導と対流の組合せで組み立てます。
・ふく射は絶対温度の4乗に比例するため、高温になるほど急激に効いてきます。
・表面温度200℃前後で、ふく射は自然対流と同程度。400℃を超えるとふく射が主役になります。
・常温付近でも、ふく射は放熱の4割程度を占めます。「無視できる」わけではありません。
伝導 ― 物質の中を伝わる
物質が動かないまま、分子や自由電子のやりとりで熱が伝わる形態です。固体の中、そして静止した液体・気体の中で起きます。
$$Q=λA\frac{T_1−T_2}{δ}$$
λ:熱伝導率[W/(m・K)]── 物質固有の物性値
A:伝熱面積[m2]
δ:厚さ[m]
プラントでどこに効くか
・熱交換器の伝熱管の壁(ただし熱抵抗としては数%しかない)
・保温材(熱を通さないために使う。伝導の応用)
・汚れの層(これも伝導。性能低下の主因)
・炉壁、耐火物
対流 ― 流体の移動とともに伝わる
流体が動くことで熱が運ばれる形態です。厳密には、壁のごく近くでは流体が動けないため伝導が起き、その外側で流体の移動が熱を運びます。この一連をまとめて対流と呼びます。
$$Q=hA(T_w−T_f)$$
h:熱伝達率[W/(m2・K)]── 物性値ではない。流れの状態と形状で決まる
自然対流と強制対流
| 自然対流 | 強制対流 | |
|---|---|---|
| 駆動力 | 温度差による密度差(浮力) | ポンプ・ファン・撹拌 |
| 熱伝達率 | 小さい | 大きい |
| プラントでの例 | タンク表面からの放熱、静置した液 | 熱交換器、配管内流れ |
ふく射 ― 電磁波として伝わる
物体はその温度に応じて電磁波(赤外線など)を出しています。間に何もなくても伝わる点が、伝導・対流と決定的に違います。真空中でも成立します。
$$Q=εσA(T_1^4−T_2^4)$$
ε:放射率[−](0〜1)。黒い粗い面ほど大きい
σ:ステファン・ボルツマン定数 = 5.67×10−8 W/(m2・K4)
T:絶対温度[K](℃ではない)
放射率の目安
| 表面 | 放射率 ε |
|---|---|
| 磨いたアルミ・ステンレス | 0.05 〜 0.2 |
| 酸化した鋼 | 0.7 〜 0.9 |
| 塗装面(色によらず) | 0.85 〜 0.95 |
| 耐火物・レンガ | 0.8 〜 0.95 |
| すす・黒体に近い面 | 0.95 〜 1.0 |
金属光沢のある面は放射率が小さく、酸化したり塗装したりすると大きくなります。保温材の外装に光沢のあるアルミ板を使うのは、ふく射による放熱を抑えるためです。
どの温度からふく射が効くのか ― 数字で確認
表面が周囲(20℃)に放熱する場合を計算してみます。放射率 ε = 0.9、面積 1 m2 あたりです。
| 表面温度 | ふく射 | 自然対流 | ふく射の割合 |
|---|---|---|---|
| 50℃ | 180 W | 240 W | 43% |
| 100℃ | 613 W | 800 W | 43% |
| 200℃ | 2,181 W | 2,160 W | 50% |
| 400℃ | 10,101 W | 5,700 W | 64% |
| 600℃ | 29,284 W | 10,440 W | 74% |
読み取れること
・常温付近でも、ふく射は放熱の4割程度を占める。完全には無視できない
・200℃前後で自然対流と同程度になる
・400℃を超えるとふく射が主役。加熱炉の伝熱がふく射主体なのはこのため
等価熱伝達率で捉える
ふく射を対流と同じ土俵で比べるため、等価的な熱伝達率 hr に直すと分かりやすくなります。
| 表面温度 | 等価ふく射熱伝達率 hr[W/(m2・K)] |
|---|---|
| 50℃ | 6.0 |
| 100℃ | 7.7 |
| 200℃ | 12.1 |
| 400℃ | 26.6 |
プラントでの効き方の整理
| 場面 | 支配的な形態 | 備考 |
|---|---|---|
| 熱交換器 | 対流+伝導 | ふく射はほぼ無視できる |
| 加熱炉・ボイラの炉内 | ふく射 | 高温火炎からのふく射が主体 |
| 保温・保冷 | 伝導(保温材)+対流・ふく射(外表面) | 外装の放射率が効く |
| 高温配管の放熱 | 対流+ふく射 | 両方を足して計算する |
| タンクの自然放熱 | 自然対流+ふく射 | 同上 |
| 火災時の輻射熱 | ふく射 | 離隔距離の設計根拠になる |
熱交換器の設計でふく射を無視できるのは、伝熱面の温度差がせいぜい数十Kで、しかも対流の h が数百〜数千と大きいからです。hr が10前後では相手になりません。
逆に、対流が弱い場面(静止した空気に面している)ではふく射が効いてきます。保温や放熱の計算で無視すると、放熱量を4割ほど過小評価することになります。
3形態の比較まとめ
| 伝導 | 対流 | ふく射 | |
|---|---|---|---|
| 媒体 | 必要(物質の中) | 必要(流体) | 不要(真空でも伝わる) |
| 支配する量 | λ(物性値) | h(流れで決まる) | ε と絶対温度 |
| 温度依存 | 1乗(温度差に比例) | 1乗 | 4乗 |
| 熱交換器での役割 | 管壁・汚れ | 主役 | ほぼ無視 |
| 高温での役割 | 炉壁 | ─ | 主役 |
まとめ
・伝導は物質の中を、対流は流体の移動とともに、ふく射は電磁波として熱が伝わります。
・熱交換器の設計は伝導と対流の組合せ。ふく射はほぼ無視できます。
・ふく射は絶対温度の4乗に比例します。200℃前後で自然対流と同程度、400℃を超えると主役になります。
・常温付近でも、ふく射は放熱の4割程度を占めます。保温の計算で無視すると過小評価になります。
・熱交換器で本当に問題になる「伝導」は、金属の壁ではなく汚れの層です。
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