保安管理技術の防災設備と除害の論点を並べた記事です。見出しが論点名なので、目次から引いてください。全体像は保安管理技術15問の攻略へ。
目次
- ガス漏えい検知警報設備(方式・警報値・設置高さ) ── 可燃性ガスは爆発下限界の1/4以下で警報
- フレアスタックとベントスタック ── 遅いと逆火、速すぎると吹き消え
- 除害設備と毒性ガスの処理 ── 希釈は除害ではない。ガスに合う除害剤で吸収・中和する
- 漏えいの拡大防止(スチームカーテン・防液堤) ── 蒸気の幕で遮断・希釈し、防液堤の排水弁は閉めておく
- 防消火設備・防火壁・耐火断熱 ── 防火壁は高さ2m以上・迂回8m以上、断熱材は熱伝導率が小さいもの
- 保護具 ── 送気式は時間の制約が小さく、空気呼吸器は動きやすいが時間が限られる
- 計装用空気・保安電力と地震対策 ── 露点は最低気温より10℃以上低く、落球型は揺れの検知だけ
ガス漏えい検知警報設備(方式・警報値・設置高さ) ── 可燃性ガスは爆発下限界の1/4以下で警報

警報設定値は可燃性ガスが爆発下限界の1/4以下、毒性ガスが許容濃度以下、酸素が25%です。下限界に達してから鳴らしても、もう爆発しうる濃度です。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 可燃性ガスの警報は、爆発下限界と同じ濃度で鳴ればよい | × | 爆発下限界の1/4以下で警報 |
| 半導体式は、窒素などの不活性ガスの漏えい検知にも使える | × | 不活性ガスは検知できない。空気中では還元性ガスの検知に有利 |
| 不活性ガス中の可燃性ガスを接触燃焼式で測るときは、空気を混ぜる | ○ | 燃焼に酸素が要る(エアーミキサを付ける) |
| ポンプ吸引型は、拡散型より検知の遅れが小さい | ○ | 漏れやすいシール部まで導管を引いて吸引すると確実 |
| 室内をガスの侵入を防ぐ圧力に保つ計器室では、室内の検出端部を省略できる | ○ | 扉を閉めておくだけでは省略できない |
出題:国試16記述・検定9記述(平成28〜令和7年度)
方式は「何を測るか」で見分ける
| 方式 | 原理 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 接触燃焼式 | 触媒上でガスを燃やし、白金線コイルの抵抗増加をブリッジで検出 | 可燃性ガス(燃焼用の酸素が要る) |
| 半導体式 | 加熱した金属酸化物の抵抗変化 | 可燃性・毒性ガスのほとんど。不活性ガスは不可 |
| 定電位電解式 | 作用電極での酸化反応による電流 | 一酸化炭素・硫化水素などの毒性ガス |
| 電量式 | 電解液とガスの反応で流れる電流 | 塩素などの毒性ガス |
| 隔膜イオン電極式 | 内部液に溶けたガスのイオンによる起電力 | アンモニア・シアン化水素など水に溶ける毒性ガス |
| ガルバニ電池式 | 溶けた酸素が還元されて流れる電流 | 酸素 |
- 拡散型は自然拡散でガスが届くのを待つので、風向・風速しだいで遅れる。吸引型はポンプやエゼクタで引き込む
- 警報を出したあとは、原則として、濃度が下がっても確認や対策をするまで警報を続ける
- 毒性ガスの警報値は許容濃度以下が原則。アンモニア・塩素など試験用の標準ガスを作りにくいものは許容濃度の2倍以下
検出端部の高さは、ガスの比重で決める

高さはガスの比重、周囲の状況、設備の高さで決めます。センサは水を嫌うので、雨水やスチームを受ける場所は避けます。
関連:ガス検知警報設備の選定と設置/爆発範囲(LEL・UEL)
フレアスタックとベントスタック ── 遅いと逆火、速すぎると吹き消え

ガス流速が燃焼速度を下回ると逆火、燃焼速度に比べて過大になると吹き消えです。安定燃焼には、流速を燃焼速度より大きく、マッハ数0.2程度に設計します。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| フレアーのガス流速が燃焼速度を上回ると逆火が起こる | × | 逆火は下回ったとき。過大になると吹き消え |
| 炭化水素に水素を少し加えると、火炎の安定域は狭くなる | × | 浮上り速度の増え方が逆火速度より大きく、広がる |
| スチームノズルのマフラは、脈動燃焼の低周波騒音を抑える | × | マフラは高周波騒音の対策 |
| フレアー系のシールドラムは、火炎が上流の設備へ伝わるのを防ぐ | ○ | 水封で上流と下流を仕切る |
| 黒煙・明るさ・騒音が問題になりやすいのはグランドフレアー | × | 高所で燃えるエレベーテッドフレアー |
出題:国試8記述・検定7記述(平成28〜令和7年度)
- スチーム吹込み:空気を吸引して混合をよくし、水性ガス反応も使って黒煙を抑える。多すぎると火炎が息つぎする脈動燃焼(低周波騒音)になるので、ガス流量に見合う量へ自動調節する
- 逆火防止:ドライシール、水封(シールドラム)、不活性ガスによるパージ。燃焼速度の大きい水素やアセチレンは逆火のおそれが大きい
- パイロットバーナは消してはならない。燃焼用ガスが途切れないようバックアップを確保する
- 毒性ガスをフレアーで燃やせるのは、燃焼で無害化されるものに限る
緊急用ベントスタックの決まり
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 可燃性ガス | 着地濃度が爆発下限界未満になる高さ。静電気・落雷による着火の防止と、着火したときの消火の措置 |
| 毒性ガス | 除害の措置に基づいて放出し、着地濃度を許容濃度以下に |
| 放出口の位置 | 作業員が定常作業をする場所・通常通行する場所の直下と、そこから10m以内を避ける |
| 液化ガスが同伴するおそれ | 高圧ガス設備の近くに気液分離器 |
除害設備と毒性ガスの処理 ── 希釈は除害ではない。ガスに合う除害剤で吸収・中和する

毒性ガスは除害したのち、安全に放出します。窒素で薄めても総量は変わらず、条件しだいで高濃度で着地します。除害剤はガスごとに決まっています。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 漏えいした塩素は、不活性ガスで十分に薄めれば除害せずに放出できる | × | 吸収塔(カセイソーダ・石灰乳)や消石灰の散布で除害してから |
| 毒性ガスを緊急用ベントスタックから放出するときも、除害の措置に基づいて行う | ○ | 着地濃度を許容濃度以下に |
| 硫化水素と亜硫酸ガスには、カセイソーダ水溶液か炭酸ソーダ水溶液を使える | ○ | 酸性のガスをアルカリで吸収 |
| アンモニア・亜硫酸ガス・酸化エチレン・クロルメチルは、大量の水で除害できる | ○ | 塩素・ホスゲンはアルカリ |
| 水溶性の毒性液化ガスに水を加えると、蒸気圧が上がって逆効果 | × | 薄めると蒸気圧が下がり、蒸発・拡散を抑える |
出題:国試9記述・検定15記述(平成28〜令和7年度)
除害剤の組合せ
| 毒性ガス | 除害剤 |
|---|---|
| 塩素 | カセイソーダ水溶液・炭酸ソーダ水溶液・石灰乳(消石灰) |
| ホスゲン | カセイソーダ水溶液・石灰乳(消石灰) |
| 硫化水素 | カセイソーダ水溶液・炭酸ソーダ水溶液 |
| シアン化水素 | カセイソーダ水溶液(燃焼設備で燃やす方法も) |
| 亜硫酸ガス | カセイソーダ水溶液・炭酸ソーダ水溶液・大量の水 |
| アンモニア・酸化エチレン・クロルメチル | 大量の水 |
- 除害措置:水・吸収剤・中和剤で吸収・中和、吸着剤で吸着、集液溝やピットに回収した液化ガスをポンプで製造設備へ返送。アンモニアとシアン化水素は燃焼設備(フレアースタック・ボイラなど)で燃やせる
- 漏れた毒性液化ガスは自然蒸発に任せない。防液堤・集液溝で広がりを止め、回収して他の貯槽や処理設備へ移す
- 水に溶けるガスを水で薄めると、液中の濃度が下がって蒸気圧も下がる(→ ヘンリーの法則とガスの溶解度)
- 毒性ガスの施設には、ガス名の識別標識と危険標識を現場に掲げる。台帳への記録では代えられない(→ 識別措置と危険標識)
漏えいの拡大防止(スチームカーテン・防液堤) ── 蒸気の幕で遮断・希釈し、防液堤の排水弁は閉めておく

| 設備 | 働き | 押さえる点 |
|---|---|---|
| スチームカーテン | 蒸気などの幕で漏えいガスを加熱炉などの火気から遮断し、希釈し、上空へ拡散させる | 噴出に伴う静電気の除去が必要 |
| 防液堤 | 漏えいした液化ガスを貯槽の周囲に留める | 液密。出入口は全周で2箇所以上を分散 |
| 防液堤の排水 | 堤内の雨水を外へ出す | 堤外で操作でき、排水時以外は閉止 |
| 防火壁 | 漏えいガスが火気へ流れるのを防ぐ | 次の章 |
スチームカーテンは遮断・希釈・上空への拡散を兼ねる防火設備で、噴出管には静電気対策が要ります。防液堤は漏れた液を堤内に留める設備なので、排水弁を開けたままにしません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 加熱炉へ漏えいガスが流れ込むのを、蒸気の幕で遮りながら薄める設備がある | ○ | スチームカーテン |
| スチームカーテンは着火を防ぐ設備なので、噴出に伴う静電気は考えなくてよい | × | 静電気の除去措置が必要 |
| 防液堤の周長が50m以下なら、出入口は1箇所でよい | × | 全周で2箇所以上 |
| 防液堤の排水弁は堤外で操作でき、通常は閉じておく | ○ | 開けたままだと漏れた液が流れ出る |
出題:国試4記述・検定5記述(平成28〜令和7年度)
- スチームカーテンは蒸気の代わりに窒素・水・空気を使うこともある。多量の蒸気が要るので、ボイラ容量や他の防消火の必要量から噴射量を決める
- 防液堤の出入口は周長50mにつき1箇所。1箇所だけだと、その側が炎やガスでふさがれたとき避難も消防活動もできない
- 防液堤の付近を、可燃性物質や器材の置場にしない
防消火設備・防火壁・耐火断熱 ── 防火壁は高さ2m以上・迂回8m以上、断熱材は熱伝導率が小さいもの

可燃性ガスの製造設備と火気の間に8mとれないときは、高さ2m以上の防火壁で迂回水平距離を8m以上にする方法があります。貯槽の温度上昇は、散水・水噴霧か、熱伝導率が小さく吸湿しにくい不燃性の断熱材で防ぎます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 8mとれないので高さ1mの防火壁を設け、迂回距離を10mとした | × | 高さ2m以上が要る |
| 防火設備とは防液堤のことで、散水設備や消火栓は含まない | × | 散水設備・放水装置・消火栓・スチームカーテンなど |
| 高さ1m以上の貯槽の支柱を散水で冷やせないときは、厚さ50mm以上の耐火コンクリートで覆う | ○ | 支柱に放水できる散水装置・消火栓があれば代えられる |
| 貯槽の断熱材は、熱伝導率が大きく、吸湿性が小さく、不燃性のものを選ぶ | × | 熱伝導率は小さいもの |
出題:国試0記述・検定7記述(平成28〜令和7年度)
防火設備と消火設備
| 区分 | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| 防火設備 | 火災の予防と類焼の防止 | 散水設備、放水装置(固定式・移動式放水銃、放水砲、消火栓)、スチームカーテン |
| 消火設備 | 火災を直接消す | 粉末消火器、不活性ガスなどによる拡散設備 |
- ガス火災は噴出を止めない限り再着火や爆発が起こりうるので、加熱される装置を注水冷却して破壊と類焼を防ぐ
- 炭素鋼の引張強さは300℃付近から急に下がり、600℃では常温の約1/3。火災で加熱された液化ガス貯槽は、頂部から破裂してBLEVEになることがある
- 断熱材の条件:熱伝導率が小さい、吸湿性が小さく腐食性が少ない、老化・変形が少ない、漏れた流体と反応しない、施工しやすい、強度があり不燃性。吸湿は保温材の下の腐食の原因にもなる(→ 保温材下腐食/腐食と防食)
- 火気との8mは法令の規定(→ 火気との距離(8m))
関連:被害局限措置
保護具 ── 送気式は時間の制約が小さく、空気呼吸器は動きやすいが時間が限られる

送気式マスクはホースで空気を送り続けるので使用時間の制約は小さいが、ホースの届く範囲しか動けません。空気呼吸器は比較的自由に動けますが、ボンベの空気量で使える時間が決まります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 長時間の作業では、送気式マスクは空気呼吸器より動きにくいが、時間の制約は受けにくい | ○ | 外から連続して送気 |
| 送気式マスクは行動範囲が自由だが、使用時間に制約がある | × | 逆。行動範囲に制約、時間の制約は小さい |
| 空気呼吸器は送気式より動きやすいが、ボンベの空気量で使用時間が限られる | ○ | |
| 隔離式防毒マスクは、ガスの濃度によらず同じ時間使える | × | 吸着剤が破過するまでの時間は濃度で変わり、高濃度では使えないこともある |
出題:国試2記述・検定1記述(平成28〜令和7年度)
- 毒性ガスの施設に備えるもの:空気呼吸器・送気式マスク・酸素呼吸器(いずれも全面形)、隔離式防毒マスク(全面高濃度形)、保護手袋・保護長靴・保護衣(ゴム製か合成樹脂製)
- 保管場所は、漏えいのおそれのある場所に近く、緊急時に毒性ガスに触れずに取り出せる所。点検・更新・補充と装着訓練を行い、記録を残す
- 隔離式防毒マスクは吸着剤でガスを除くだけで、酸素は補えない。酸素が足りないおそれのある場所では空気呼吸器か送気式マスクを使う(→ 入槽と酸素欠乏の防止)
計装用空気・保安電力と地震対策 ── 露点は最低気温より10℃以上低く、落球型は揺れの検知だけ

| 設備 | 押さえる点 |
|---|---|
| 計装用空気 | 無給油の圧縮機で油を入れず、露点は最低気温より10℃以上低く |
| エアレシーバ | 脈動の緩衝、凝縮水の除去、供給が止まっても安全に停止できるだけの空気の貯蔵 |
| 保安電力など | 停電時に直ちに切り替えられる方式。保安上重要な計装は無停電電源装置(UPS)で30分以上 |
| 落球型感震器 | 設定値以上の揺れを簡便に検知して警報・停止信号を出す |
| サーボ型地震計 | 地震動を精密に計測する |
計装用空気が止まったり、配管の中で水分が凝縮・凍結したりすると、空気式の調節弁や緊急遮断弁が動かず制御できなくなります。だから油と水を入れず、レシーバに安全停止までの空気を蓄えます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 計装用空気の露点は、その地域の最低気温と同じにすれば十分 | × | 最低気温より10℃以上低く |
| 自動制御・緊急遮断の計装空気系には、安全停止に要る空気を蓄えるレシーバを設ける | ○ | 脈動の緩衝・凝縮水の除去も |
| 地震加速度を精密に測るには、サーボ型より落球型感震器が向く | × | 落球型は簡易検知、精密計測はサーボ型 |
出題:国試2記述・検定6記述(平成28〜令和7年度)
- 計装用空気の圧縮機は、駆動源の違う自動起動の予備機を持つと安定して供給できる
- 地震計と連動して製造施設を止めるシステムは、地震計を複数置いて誤停止を避け(冗長化)、電源・駆動空気の信頼性を確保し、運転中に機能を確かめられるようにする
関連:非常用電源と電気計画
出典:高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』ほか。平成28〜令和7年度の国家試験・技術検定の出題を論点ごとに整理しました。
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