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ガス検知警報設備の選定と設置|検知方式と、比重で決まる取り付け高さ

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困っている人
困っている人

検知器の設置場所を「なんとなく漏れそうな場所」で決めていないか不安。

接触燃焼式と半導体式、どちらを選べばいいのか根拠を持って説明したい。

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

可燃性は爆発下限界の1/4以下、毒性は許容濃度以下で警報

設置高さはガスの比重で決まる ── ただし温度も見る

接触燃焼式は酸素が要る/半導体式は不活性ガスを検知できない

被毒で検知できなくなる ── 定期校正が必須の理由

検知器は「あるだけ」では機能しません。方式・位置・設定値・校正の4点で決まります。

現場で、検知器が問題になる場面

場面起きること
設置場所の決定漏えい源と滞留場所を読み違えると検知できない
誤警報が多い設定値が低すぎる/他ガスに反応している
漏れたのに鳴らなかった被毒/位置が悪い/風で流された
校正が面倒頻度と方法の妥当性
法定検査応答時間・精度の確認

「鳴らなかった」が最も怖い。しかも点検しない限り気づけません。

検知器は「壊れたことが分からない機器」です。だから定期的な作動確認が制度化されています。

フェイルセーフ設計保安管理技術|防災設備

検知方式 ── 原理で選ぶ

方式原理対象制約
接触燃焼式触媒上で燃焼させ、抵抗変化を測る可燃性ガス酸素が必要被毒する/高濃度で焼損
半導体式金属酸化物の抵抗変化還元性・酸化性ガス不活性ガスは不可/選択性が低い/湿度の影響
隔膜電極式電気化学反応の電流毒性ガス(CO・H₂S・Cl₂等)寿命がある(1〜2年)/干渉ガス
赤外線式特定波長の吸収CO₂・炭化水素酸素不要・被毒しないH₂は不可/高価
光波干渉式屈折率の差可燃性ガス酸素不要/選択性なし
ガルバニ電池式電気化学反応酸素寿命がある

「何を検知したいか」と「酸素があるか」で大きく分かれます。

接触燃焼式 ── 最も一般的、ただし弱点も多い

原理

白金線コイルに触媒を担持したセンサを加熱しておく

→ 可燃性ガスが来ると触媒上で燃焼する

→ 温度が上がる → 白金の電気抵抗が増える

→ ブリッジ回路で検出

長所短所
安価酸素が必要(不活性雰囲気では使えない)
直線性が良い(0〜100%LEL)被毒する(シリコン・硫黄・鉛・ハロゲン)
ガス種によらず反応選択性がない(他の可燃性ガスにも反応)
応答が速い高濃度で焼損する

被毒が最大の問題です。触媒が失活すると、漏れても鳴りません。

被毒物質

シリコン系(シリコーンオイル・シール材・撥水剤)── 最も多い

硫黄化合物(H₂S・SO₂・メルカプタン)

鉛化合物(有鉛ガソリン)

ハロゲン化合物(フロン・塩素系溶剤)

シリコン系は決定的です。シリコーン系のシール材やスプレーを近くで使っただけで失活します。

だから校正で「実ガスを流して応答を確認する」ことが必須になります。

半導体式 ── 高感度だが選択性が低い

原理

n型金属酸化物(SnO₂など)を加熱する

→ 空気中では表面に酸素が吸着して電子が奪われ、抵抗が高い

還元性ガスが来ると吸着酸素と反応して電子が戻る

抵抗が下がる

だから還元性ガス(H₂・CO・炭化水素)の検知に有利です。

不活性ガス(N₂・Ar)は化学反応しないので、原理的に検知できません。

選択性が低いので、他のガスにも反応します。誤警報の原因になりやすい。

高感度(ppmオーダー)なので、微量漏えいの検知には有利。

赤外線式 ── 被毒しない

原理

ガス分子は特定の波長の赤外線を吸収する

→ 吸収量から濃度を求める

長所短所
酸素不要(不活性雰囲気で使える)高価
被毒しないH₂・O₂・N₂は検知できない(赤外を吸収しない)
高濃度でも壊れないレンズの汚れ・結露の影響
長寿命──

水素は赤外線を吸収しません。 等核二原子分子(H₂・N₂・O₂)は原理的に検知できない。

水素の検知には接触燃焼式か半導体式を使います。

不活性雰囲気(窒素シール下)での炭化水素検知には赤外線式が唯一の選択肢になることがあります。

設置場所 ── 漏えい源と滞留場所

高さはガスの比重で決める

比重ガスの例設置高さ
空気より軽い(0.8未満)水素(0.07)・メタン(0.55)・アンモニア(0.6)天井付近(頂部から30cm以内)
ほぼ同じ(0.8〜1.2)CO(0.97)・エチレン(0.97)・N₂(0.97)漏えい源の高さ/呼吸域
空気より重い(1.2超)プロパン(1.6)・LPG・塩素(2.5)・SO₂(2.3)床面付近(床から30cm以内)

ただし比重だけでは決まりません。 温度と放出条件が効きます。

温度で挙動が変わる

液化ガスが気化した直後

気化熱で−40℃以下になることがある

→ 密度が大きくなる(理想気体なら絶対温度に反比例)

比重が1未満のガスでも、床を這う

ガス常温での比重冷えたときの挙動
アンモニア0.6(軽い)−33℃で気化すると床を這う
メタン(LNG)0.55(軽い)−162℃で気化すると床を這う/温まると上昇

LNGの漏えいでは、最初は床を這い、周囲から熱をもらって上昇に転じます。

だからLNG設備では上下両方に検知器を置くことがあります。

ガス拡散の評価理想気体(密度と温度)

設置場所の考え方

優先順位

漏えいの可能性が高い箇所(フランジ・シール部・バルブ・サンプリング点)

ガスが滞留しやすい場所(ピット・くぼみ・風通しの悪い箇所)

人がいる場所への流入経路(計器室の吸気口・出入口)

着火源の近く(加熱炉・電気室の周囲)

①は「出る場所」、②は「溜まる場所」です。両方に置くのが基本。

屋外では風で流されます。 卓越風向を考慮して風下側にも配置します。

ピットやトレンチは最も危険です。重いガスが溜まり、換気されない。入槽事故の温床。

酸素欠乏と入槽作業

法令上の設置要件

可燃性ガス・毒性ガスの製造施設には、漏えいしたガスが滞留するおそれのある場所に設置が義務づけられています。

酸素は検知警報設備の対象外です(漏れても爆発も中毒も直接起こさないため)。

ただし防消火設備では酸素も対象になります。号ごとに対象ガスが違う。

製造の技術上の基準

警報設定値 ── 1/4という数字の意味

基準

可燃性ガス:爆発下限界(LEL)の1/4以下

毒性ガス:許容濃度(TLV-TWA)以下

実務では2段設定

段階設定値の目安アクション
第1警報25%LEL(=LELの1/4)警報・現場確認
第2警報50%LEL緊急停止・遮断・散水など

メタン(LEL 5.0 vol%)なら 1.25 vol% で第1警報、2.5 vol% で第2警報

「%LEL」という表記に注意してください。100%LEL = 爆発下限界そのもの。

なぜ1/4なのか

余裕の理由

検知器は点で測る。空間全体が均一とは限らない

局所的には既に爆発範囲かもしれない

対応の時間が要る

→ 4倍の余裕を持たせる

下限界に達してから警報を出しても、すでに手遅れです。

毒性ガスの許容濃度(覚えておく値)

ガス許容濃度(TLV-TWA)備考
塩素0.5 ppm極めて低い
ホスゲン0.1 ppm最も厳しい部類
硫化水素5 ppm高濃度で嗅覚麻痺
アンモニア25 ppm刺激臭で気づける
一酸化炭素50 ppm無臭
シアン化水素5 ppm作用が速い

ホスゲンと塩素は桁違いに低いです。検知器の感度もそれに合わせる必要があります。

硫化水素は100 ppm以上で嗅覚が麻痺します。「臭いがしなくなった=安全」ではありません。

毒性の指標ガス各論①

実務での失敗例

失敗例①:シリコーン系のシール材を近くで使う

接触燃焼式が一発で失活します。しかも見た目には分かりません。

何が起きるか

シリコーンが触媒表面でSiO₂になって被覆する

→ ガスが触媒に届かなくなる

感度が下がる/まったく反応しなくなる

不可逆(回復しない)

撥水スプレー・シリコーンオイル・一部のシール材が原因になります。

検知器の近くでは使用を禁止するのがルールです。

校正時に実ガスで応答を確認すれば発見できます。ゼロ点チェックだけでは分かりません。

失敗例②:校正をゼロ点だけで済ませる

校正で確認すべきこと

ゼロ点(清浄空気での指示)

スパン(感度)── 標準ガスを流して指示値を確認

応答時間

警報動作(実際に鳴るか、連動が働くか)

ゼロ点だけでは、被毒して感度がゼロでも「正常」に見えます。

法定の作動検査では、警報設定値の1.6倍の濃度で30秒以内に発信することを確認します。

保安管理技術|設備管理と検査

失敗例③:干渉ガスを考慮しない

方式干渉されるもの
接触燃焼式他の可燃性ガス全般(選択性なし)
半導体式アルコール・溶剤蒸気・湿度
隔膜電極式(CO)H₂・H₂S
隔膜電極式(H₂S)SO₂・NO₂

「なぜか鳴る」の原因は、たいてい干渉ガスです。

塗装作業・洗浄作業で溶剤を使うと、半導体式が誤警報することがあります。

誤警報が続くと、現場が警報を信用しなくなるのが最大の問題です。

失敗例④:換気の良い場所に設置する

換気が良い=ガスが滞留しない=検知できないということです。

検知器は「溜まる場所」に置きます。 風通しの良い場所では意味がない。

ただし漏えい源の直近には置く価値があります。早期に検知できるので。

「出る場所」と「溜まる場所」の両方、が答えです。

失敗例⑤:可搬式で入槽前チェックだけして終わる

連続監視が必要な理由

吸着していたガスが後から脱着してくる

残液が徐々に気化する

作業(グラインダ等)で新たに発生する

換気が止まると濃度が戻る

入槽作業中は連続監視が原則です。1回測って終わりではありません。

入槽作業の安全置換・パージの実務

甲種化学ではこう出ます

国試の問12・検定の問11(防災設備)で毎年出ます。

最頻出の論点

可燃性ガスの警報設定値は爆発下限界の1/4以下

半導体式は不活性ガスを検知できない

半導体式は還元性ガスの検知に有利

ポンプ吸引型は拡散型より応答が速い

作動検査:警報設定値の1.6倍の濃度で30秒以内

法令では設置義務と対象ガスが問われます。

漏えい検知警報設備は可燃性・毒性ガスが対象で、酸素は対象外です。

解き方と過去問は保安管理技術|防災設備、法令は製造の技術上の基準にまとめています。

まとめ

  • 可燃性は爆発下限界の1/4以下、毒性は許容濃度以下で警報
  • 実務では25%LEL で警報、50%LEL で緊急停止の2段設定
  • 接触燃焼式は酸素が必要で、被毒する(特にシリコン系)
  • 半導体式は不活性ガスを検知できず、還元性ガスに有利
  • 赤外線式は被毒しないが、H₂・O₂・N₂は検知できない
  • 設置高さは比重で決める。ただし冷たいガスは重くなる
  • 「出る場所」と「溜まる場所」の両方に置く
  • 校正はスパン(実ガス)まで行う。ゼロ点だけでは被毒が分からない
  • 干渉ガスが誤警報の主因
  • 入槽作業中は連続監視

除害設備は除害設備の設計、置換は置換・パージの実務へ。

実務側はガス拡散被害局限措置入槽作業の安全を参照してください。