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除害設備の方式が何を根拠に決まっているのか、説明できない。
「除害」と「希釈放出」の違いを、はっきり言えるようにしたい。
そんな悩みを解決します。
方式はガスの化学的性質で決まる(酸性か塩基性か、可燃性か)
溶解度(ヘンリー定数)が水洗の可否を決める
希釈は除害ではない ── 総量は変わらない
処理量は最大想定漏えい量から逆算する

毒性ガスを扱う設備では、除害設備が最後の砦です。設計の考え方を整理します。
現場で、除害設備はどこにあるか
| 設置場所 | 何を処理するか |
|---|---|
| 安全弁・破裂板の出口 | 異常時の放出ガス |
| ベントライン | 通常運転の排ガス |
| 容器交換時のパージガス | 残ガス |
| サンプリング点 | 少量の漏えい |
| 局所排気(フード) | 作業時の発散ガス |
| 建屋全体の緊急吸引 | 大量漏えい時 |
安全弁の出口を除害設備につなぐ場合、背圧の増加が問題になります。
圧力損失が大きすぎると、安全弁の吹出量が確保できません。
方式の選定 ── ガスの性質で決まる
| ガスの性質 | ガスの例 | 方式 | 除害剤 |
|---|---|---|---|
| 酸性ガス | Cl₂・HCl・SO₂・H₂S・HF・COCl₂ | アルカリ吸収 | NaOH水溶液・消石灰 |
| 塩基性ガス | NH₃・メチルアミン | 水洗または酸吸収 | 水・希硫酸 |
| 可燃性ガス | 炭化水素・H₂ | 燃焼 | フレア・除害燃焼装置 |
| 還元性ガス | シラン系・PH₃・AsH₃・B₂H₆ | 燃焼または酸化剤 | 除害燃焼/酸化剤/乾式吸着 |
| 酸化性ガス | F₂・NOₓ | 還元剤 | チオ硫酸ナトリウム・アルカリ |
| 低濃度・多成分 | VOC・臭気 | 吸着 | 活性炭 |
水洗が効くかどうかは溶解度で決まる
| ガス | ヘンリー定数 H[MPa] | 水洗の可否 |
|---|---|---|
| NH₃ | 0.1未満 | 極めて有効 |
| HCl | 極小 | 極めて有効 |
| SO₂ | 小さい | 有効 |
| H₂S | 約55 | やや有効(アルカリ併用が確実) |
| Cl₂ | 中程度(加水分解する) | アルカリ必須 |
| CO₂ | 約165 | アルカリ併用 |
| CH₄・H₂・N₂ | 4,000以上 | 水洗では取れない |
H が小さいほど溶けやすい(p = Hx の定義のとき)。
逆に炭化水素・水素は水洗では取れません。 燃焼するしかない。
塩素の除害 ── アルカリ吸収の代表
Cl₂ + 2NaOH → NaCl + NaClO + H₂O
→ 次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)になる
水だけでは不十分です。塩素の溶解度はそこまで大きくなく、加水分解も平衡で止まります。
NaOH濃度の管理(消費されると除害できなくなる)
pHの連続監視
循環ポンプの信頼性(停止すると機能しない)
生成した次亜塩素酸の処理
pH計とアルカリ濃度計の設置、定期的な液の更新が必須です。
シラン系の除害 ── 燃焼が基本
モノシラン等は自然発火性
→ 水に接触させても反応せず、そのまま燃える
→ 制御された条件で燃やすのが最も確実
→ 生成するSiO₂の粉を後段でスクラビング
除害燃焼装置(バーナ式)+湿式スクラバという2段構成が標準です。
SiO₂の粉が配管を詰まらせるので、その対策も要ります。
乾式除害(吸着剤との反応)もあります。半導体工場で多用。
処理量の決め方 ── 最大想定漏えい量から
何を想定するか
① 安全弁の全開放出(規定吹出量)
② 配管の破断(最大口径 or 一定径)
③ 容器交換時の残ガス
④ 通常運転のベント
「配管が全周破断したら」まで想定するかどうかで、設備規模が桁で変わります。
漏えい量の計算
q = C A √(2gh)(トリチェリの定理)
→ 断面積に比例、圧力差の平方根に比例
下流圧が上流圧の約0.5倍以下になると音速に達する
→ それ以上は下流圧を下げても流量が増えない(チョーク流)
→ 上流圧と穴の面積だけで決まる
高圧ガスの漏えいはほぼ臨界流になります。計算が簡単になる反面、流量は大きい。
必要な除害剤の量
塩素1 kg(=14.1 mol)を除害するには
Cl₂ + 2NaOH → … より NaOH が 28.2 mol = 1.13 kg
10%NaOH水溶液なら 11.3 kg
→ 実際は過剰率2〜3倍を見る
接触時間・気液比・充填材の高さが除害率を決めます。
除害率の考え方
1段で90%除去できるなら
2段で 99%、3段で 99.9%
→ 高い除害率が必要なら多段化する
1段で99.9%を狙うより、90%を3段のほうが確実で経済的なことが多い。
ガス吸収塔の設計では、平衡線と操作線の距離が推進力になります。
方式の比較 ── 長所と短所
| 方式 | 長所 | 短所 | 適用 |
|---|---|---|---|
| 水洗 | 単純・安価/即応性 | 水溶性ガスのみ/排水処理が要る | NH₃・HCl |
| アルカリ吸収 | 酸性ガスに確実 | 薬液の管理/消費される | Cl₂・SO₂・H₂S |
| 吸着 | 低濃度に強い/薬液不要 | 破過する/再生・交換が要る | VOC・臭気・微量 |
| 燃焼 | 完全に分解できる | 燃料が要る/NOx・SOx生成 | 可燃性・還元性 |
| 触媒分解 | 低温で分解できる | 触媒被毒/高価 | NOx・特殊材料ガス |
| 乾式吸着(反応) | 薬液不要/廃液が出ない | 使い切り/高価 | 特殊材料ガス |
希釈は除害ではない
総量が変わらない
→ 気象条件(逆転層・無風)が変われば高濃度で着地する
→ 設計時の仮定に依存しすぎる
毒性ガスは「化学的に処理してから放出する」のが原則です。
不活性ガスなら希釈放出でよい(そもそも除害の必要がない)。
実務での失敗例
失敗例①:除害液が消費されていた
微量の漏えいが続いていた
→ 気づかないうちにNaOHが中和されて消費
→ いざというとき除害できない
pH計・濃度計の連続監視と、定期的な液交換が必須です。
失敗例②:循環ポンプが動かなかった
湿式スクラバは液を循環させないと機能しません。
ポンプの多重化(予備機・自動切替)
非常用電源への接続
流量計・圧力計での監視
定期的な試運転
非常時にこそ電源が失われるので、除害設備を非常用電源に含めるのは基本です。
→ 非常用電源の容量
失敗例③:安全弁の背圧を考慮しない
安全弁の出口を除害設備につなぐ
→ 除害設備の圧力損失が背圧になる
→ 背圧が高いと安全弁の吹出量が減る
→ 規定吹出量が確保できない
従来型(コンベンショナル)の安全弁は背圧に弱いです(設定圧の10%程度まで)。
背圧が大きいならバランス型かパイロット式を選びます。
失敗例④:吸着塔の破過を見逃す
活性炭は必ず破過します。 交換時期の管理が命。
出口濃度を監視する(最も確実)
積算処理量で管理する(吸着容量から計算)
差圧を監視する(粉化・目詰まりの指標)
活性炭は自然発火することがあります(特にケトン類を吸着したとき)。
温度監視と、再生後の十分な冷却が必要です。
失敗例⑤:排水・廃棄物の処理を考えていない
| 方式 | 出るもの | 処理 |
|---|---|---|
| 水洗(NH₃) | アンモニア水 | 生物処理・アンモニアストリッピング |
| アルカリ吸収(Cl₂) | 次亜塩素酸ナトリウム | 還元処理(チオ硫酸ナトリウム) |
| アルカリ吸収(H₂S) | 硫化ナトリウム | 酸化処理 |
| 吸着(活性炭) | 使用済み活性炭 | 産業廃棄物/再生 |
| 燃焼 | SOx・NOx・HCl | 後段のスクラバ |
次亜塩素酸をそのまま排水すると環境汚染になります。
甲種化学ではこう出ます
国試の問12・検定の問11(防災設備)で出ます。
毒性ガスは除害したのち放出する(希釈放出では不可)
酸性ガスにはアルカリ(塩素の除害はNaOH水溶液)
アンモニアは水によく溶ける
法令では除害設備の設置義務が問われます。
毒性ガスの製造施設には除害設備が必要で、可燃性ガスとは別の規定です。
解き方と過去問は保安管理技術|防災設備、法令は製造の技術上の基準にまとめています。
検定の学識問6(4)では、5年連続で分離技術が出ています。吸収法・吸着法の原理は吸着によるガス分離・学識 問6の記述問題へ。
まとめ
- 方式はガスの化学的性質で決まる(中和が基本原理)
- 酸性ガス→アルカリ/塩基性ガス→水か酸/可燃性・還元性→燃焼
- 水洗の可否はヘンリー定数で決まる(NH₃・HClは有効、CH₄・H₂は不可)
- 塩素は Cl₂ + 2NaOH → NaCl + NaClO + H₂O
- シラン系は燃焼+スクラビング
- 希釈は除害ではない(総量が変わらない)
- 除害剤は使わなくても消費される。pH・濃度の監視が必須
- 循環ポンプは非常用電源に接続する
- 安全弁の背圧が吹出量を減らさないか確認する
- 高い除害率は多段化で(1段90%×3段=99.9%)
- 排水・廃棄物の処理まで設計に含める
検知はガス検知警報設備の選定と設置、吸着の原理は吸着によるガス分離へ。
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