※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

問14〜20の事業所例が、毎回まぐれ当たりになる。
酸素は対象なのか対象外なのか、窒素はどうなのか、条文ごとに違って覚えきれない。
そんな悩みを解決します。
号ごとに対象ガスが違う ── これがこの分野の正体
10年で最も出た13の号を対象ガス表にまとめる
覚えるのではなくガスの性質から導く
数値要件(8m・90%・5,000L・5トン)の押さえ方

〔一般〕第6条は10年で213記述。法令20問のうち問14〜20の7問がここです。配点にして35%。
この分野に対する誤解を、まず解いておきます。
〔一般〕第6条には50を超える号があります。全部覚えるのは無理です。しかし号ごとに「なぜそのガスが対象なのか」を考えれば、その場で導けます。
そしてこの「導く力」は、そのまま保安管理技術の得点になります。同じ知識で2科目を取りにいくのが、この分野の正しい使い方です。
結論の表 ── 10年で最も出た13の号
事業所例に出るガスは、だいたいアセチレン(可燃)・アンモニア(可燃+毒)・酸素(支燃)・窒素(不活性)の4つです。
| 号 | 内容 | アセチレン (可燃) | アンモニア (可燃・毒) | 酸素 | 窒素 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1項第3号 | 火気距離 8m | ○ | ○ | × | × |
| 第1項第4号 | 可燃性⇔酸素の設備間距離 | ○ | ○ | ○ | × |
| 第1項第7号 | 流出防止措置(防液堤) | ○ | ○ 5t以上 | ○ 1,000t以上 | × |
| 第1項第11号 | 耐圧試験 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 第1項第19号 | 圧力計+安全装置 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 第1項第25号 | 緊急遮断措置(5,000L以上) | ○ | ○ | ○ | × |
| 第1項第31号 | 漏えい検知警報設備 | ○ | ○ | × | × |
| 第1項第32号 | 温度上昇防止措置 | ○ | ○ | △ 近くに火気源があるとき | △ 同左 |
| 第1項第39号 | 防消火設備 | ○ | ○ | ○ | × |
| 第2項第1号イ | 安全弁・逃し弁の止め弁は全開 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 第2項第2号イ | 液化ガス充填90%以下 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 第2項第2号イ後段 | 90%超過の自動検知・警報 | × | ○ 毒性のみ | × | × |
| 第2項第4号 | 使用開始・終了時+1日1回以上の点検 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 第2項第8号イ | 充填容器と残ガス容器の区分 | ○ | ○ | ○ | ○ |
① 設備そのものの健全性に関する号は、ガスの種類を問わない(耐圧試験・圧力計・点検・容器区分・90%制限)
② 燃える・毒に関する号は、可燃性ガスと毒性ガスが対象(火気距離・検知警報)
③ 火災が起きたときの被害に関する号は、酸素も入る(防消火設備・緊急遮断・防液堤)
窒素はほぼ対象外。ただし①のグループには必ず入る。 ここが最大の引っかけです。
最頻出の引っかけ ── 「窒素だから不要」
事業所例の誤り記述で最も多いのが、窒素を理由に義務を外す形です。
| 年度・問 | 誤りの作り方 | 正しくは |
|---|---|---|
| H28問16ロ | 窒素の容器は充填容器と残ガス容器を区分しなかった | ガスの種類に関係なく区分が必要 |
| H30問19ハ | 窒素は使用開始・終了時の点検だけで1日1回以上の点検は不要 | 両方必要 |
| H28問16イ | 窒素のポンプの逃し弁の止め弁は運転終了後は閉じた | 常に全開 |
窒素が本当に対象外なのはどこか
火気距離(燃えないから)
漏えい検知警報設備(漏れても爆発も中毒も起こさないから)
防消火設備(燃焼に関与しないから)
緊急遮断措置(漏れ続けても化学的な危険がないから)
防液堤(同上)
すべて「化学的な危険」に関する号です。逆に「物理的な危険(高圧・破裂)」に関する号からは、窒素は外れません。
この整理は酸素欠乏の危険とは別問題である点に注意してください。窒素は法令の化学的危険の規定からは外れますが、酸欠という物理的な危険は現場で最大級です。
酸素 ── 「燃えない」で切ると間違える
酸素は自分では燃えません。しかし周囲の可燃物の燃焼を激しくします。
この二面性が、号ごとの扱いの違いを生んでいます。
| 号 | 酸素は | 理由 |
|---|---|---|
| 火気距離 8m(第3号) | 対象外 | 自身が燃えないため |
| 漏えい検知警報(第31号) | 対象外 | 漏れても爆発も中毒も直接起こさない |
| 防消火設備(第39号) | 対象 | 油や有機物と接触すれば発火し、消火が極めて困難 |
| 緊急遮断(第25号) | 対象 | 漏れ続ければ助燃につながる |
| 可燃性⇔酸素の距離(第4号) | 対象 | 可燃性ガスと混ざれば激しく燃える |
同じ問の中で対比してくる(平成28年度 問14)
| 肢 | 記述 | 判定 |
|---|---|---|
| ロ | 漏えい検知警報設備はアセチレンには必要、酸素には不要 | ○ |
| ハ | 防消火設備はアセチレンには必要、酸素には不要 | × 酸素も対象 |
酸素の危険性については危険物の分類と混触危険で扱っています。油と酸素の組み合わせが最も危険という話です。
可燃性ガスと酸素の設備間距離(第4号)
平成28年度 問14イ(正しい記述)・平成30年度 問15イ(誤り記述)。
出た誤り記述
酸素の貯槽にはアセチレンの設備からの距離が要るが、液化酸素のポンプにはその定めがない。
→ × ポンプも「高圧ガス設備」にあたる。
「高圧ガス設備」という言葉には、貯槽もポンプも配管も含まれます。
酸素ポンプの危険性はポンプの選定と運転でも触れています。
数値要件 ── 4つだけ覚える
8m 火気を扱う施設までの距離(可燃性・毒性の製造設備)
90% 液化ガスの貯槽への充填上限(常用の温度における容量)
5,000L 緊急遮断措置が必要になる貯槽の内容積
5トン/1,000トン 防液堤(毒性ガス/液化酸素)
8m ── 距離が取れないときの代替(平成29年度 問15イ・正しい記述)
火気を取り扱う施設まで8m以上を確保できなかったので、漏えい時に連動装置で使用中の火気を直ちに消す措置をとった。
→ ○(正しい)
8mは、漏れたガスが火気に届く前に薄まることを見込んだ距離です。ただし敷地の都合で取れないことは現実にある。
これはガス拡散の考え方そのものです。距離=希釈時間の確保。
90% ── 全ガス/自動検知は毒性のみ
前段と後段で対象が違います。 ここが平成28年度 問17ハで問われました。
| 対象 | |
|---|---|
| 常用の温度における容量が内容積の90%を超えない | すべての貯槽 |
| 90%超過を自動検知して警報する措置 | 毒性ガスの貯槽のみ |
出た誤り記述(平成28年度 問17ハ)
液化アンモニアの貯槽に充填するとき、保安係員が開始から終了まで監視する体制をとっているなら、90%超過の自動検知・警報は不要。
→ × 毒性ガスである以上、監視体制があっても省けない。
これはフェイルセーフ設計の考え方です。安全計装システムが人の操作とは独立に働くのも同じ理由。
なぜ90%なのか
満液にすると温度上昇で液が膨張し、逃げ場がなくなって危険な圧力が生じるからです。
容器の充填量の式に0.9が掛かるのも同じ理由です(→ 容器保安規則)。
5,000L ── 規模とガス種の両方で絞る
出た誤り記述(平成28年度 問19ロ)
ここにある貯槽はいずれも内容積5,000L以上なので、それぞれの配管に緊急遮断措置を講じる。
→ × 対象は可燃性・毒性・酸素の液化ガスの貯槽。窒素は含まれない。
5トン/1,000トン ── 防液堤
| ガス | 防液堤が必要になる貯蔵能力 |
|---|---|
| 毒性ガス | 5トン以上 |
| 液化酸素 | 1,000トン以上 |
| 不活性ガス | 規定なし |
毒性ガスの閾値が極端に低いのは、少量でも人体に重大な被害を出すからです(→ 毒性の指標)。
そのほかの頻出論点
安全装置の作動は「許容圧力を超えたとき」(第19号)
出た誤り記述(平成28年度 問15ハ)
許容圧力の1.5倍を超えた時点で直ちに許容圧力以下へ戻せる安全装置を設ける。
→ × 作動の基準は許容圧力を超えたとき。1.5倍ではない。
許容圧力は設備が耐えられる上限として設計された圧力です。1.5倍まで待てば設備が壊れます。
安全弁の設定圧力については安全弁の設計と設置基準で詳しく扱っています。
圧力計と安全装置は「かつ」(第19号)
令和2年度 問15ハ(正しい記述)。両方が必要です。
圧力計は異常を知るための装置、安全装置は異常な圧力を逃がすための装置。役割が違うのでどちらか一方では足りません。
耐圧試験は常用の圧力で決まる(第11号)
出た誤り記述(平成28年度 問18ハ)
耐圧試験の試験圧力を決めるのは製造する高圧ガスの種類であって、常用の圧力は関わらない。
→ × 試験圧力は常用の圧力等で決まる。ガスの種類ではない。
| 試験媒体 | 試験圧力 |
|---|---|
| 液体(水など) | 常用の圧力の1.5倍以上 |
| 気体(空気・窒素など) | 常用の圧力の1.25倍以上 |
試験媒体で倍率が変わるのであって、ガス種で変わるのではありません。
なぜ気体は例外扱いなのか(令和6年度 問16イ・正しい記述)
耐圧試験に空気や窒素等の気体を使えるのは、水その他の安全な液体では実施が難しいと認められる場合だけです。
だから液体が原則。倍率が1.25と低いのも、危険性が高いぶん試験圧力を抑えているからです。
安全弁の止め弁は常に全開(第2項第1号イ)
10年で9記述。逃し弁も同じ扱いです。
出た誤り記述(平成28年度 問16イ)
安全弁の止め弁は常に全開にしたが、ポンプの逃し弁の止め弁は運転を終えた後は常に閉じておいた。
→ × 逃し弁の止め弁も常に全開。
安全弁も逃し弁も、異常な圧力を逃がすための最後の砦です。その手前の止め弁が閉まっていれば作動しません。
実務での止め弁の管理は隔離管理と安全弁と破裂板の組合せで扱っています。
点検は2種類(第2項第4号)
| 点検 | 目的 |
|---|---|
| 使用開始時・使用終了時 | 施設全体の異常の有無を見る |
| 1日1回以上 | 運転中の作動状況を追う |
目的が違うので片方では代替できません。 設備の異常は運転中に進行するため、動いている最中に見なければ捉えられない。
温度上昇防止措置は支柱まで(第32号)
出た誤り記述(平成30年度 問17イ)
温度上昇を防ぐ措置は、液化アンモニアの貯槽についてもその支柱についても講じなくてよい。
→ × 貯槽と支柱の両方に必要。
火災で支柱が加熱されると強度が落ち、貯槽を支えきれずに倒壊します。 中身が無事でも構造が崩れれば大量漏えいにつながる。
なお酸素・窒素の貯槽は、近くに可燃性ガスの貯槽や可燃性物質を扱う設備があって火災のおそれがある場合に限って措置が求められます(平成28年度 問19ハ・正しい記述)。
解き方 ── 3ステップで固定する
- 設問がどの号の話かを見分ける(火気距離/検知警報/防消火/点検…)
- その号の対象ガスを、ガスの性質から導く
- 数値要件があれば、事業所例の数字と突き合わせる
燃える? → 火気距離・検知警報の対象
毒? → 火気距離・検知警報・防液堤(5t)・90%自動検知の対象
燃焼を助ける? → 防消火設備・緊急遮断・可燃性との距離の対象
高圧である? → 耐圧試験・圧力計・安全装置・点検・容器区分の対象(全ガス)
この4行が、〔一般〕第6条の213記述をほぼカバーします。
暗記カードにするならこれだけ
設備の健全性に関する号 → 全ガス対象(窒素も外れない)
燃える・毒に関する号 → 可燃性ガス・毒性ガス
火災被害に関する号 → 酸素も入る
8m 火気距離(連動装置で代替可)
90% 液化ガス充填上限(自動検知・警報は毒性のみ)
5,000L 緊急遮断(可燃性・毒性・酸素のみ)
5t/1,000t 防液堤(毒性/液化酸素)
耐圧試験 液体1.5倍/気体1.25倍(気体は液体が困難なときのみ)
安全装置の作動は許容圧力を超えたとき(1.5倍ではない)
止め弁は安全弁も逃し弁も常に全開(休止中も)
点検は開始終了時+1日1回以上の2種類
温度上昇防止は支柱も対象
「高圧ガス設備」にポンプも配管も含まれる
まとめ
- 〔一般〕第6条は10年で213記述。問14〜20の7問がここ(配点35%)
- 号ごとに対象ガスが違う。これがこの分野の正体
- 設備の健全性に関する号は全ガス対象。窒素だから不要、は最頻出の誤り
- 酸素は火気距離・検知警報は対象外/防消火・緊急遮断は対象
- 数値は8m・90%・5,000L・5t/1,000tの4つ
- 規模要件とガス種はANDで見る
- 暗記ではなくガスの性質から導く。その力は保安管理技術でも点になる
次は危険時の措置と事故届です。「直ちに」と「遅滞なく」の使い分けを扱います。→ 危険時の措置と事故届
コンビナート則・液石則を含む事業所例の解き方は事業所例問題の解き方へ。
法令全体の骨格は法令20問の攻略、保安管理技術との重なりは保安管理技術の全体像を参照してください。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』ほか。集計は平成28年度〜令和7年度の法令20問を筆者が1記述ずつ分解して独自に行ったものです。問題文そのものの転載は行っていません。
化学プラント大全 
