保安管理技術の漏えい防止のうち、フランジ・ガスケット、軸封、弁のシール、漏えい量の論点を並べた記事です。見出しが論点名なので、目次から引いてください。
分野F:安全装置|計測と制御|シール・フランジと漏えい防止(この記事)
フランジ・ガスケットとボルトの締付け ── ガスケット係数は最小必要残留圧縮応力と内圧の比

| 使う所 | ガスケット |
|---|---|
| 塔・槽の低圧のフランジ | ジョイントシートなどのシートガスケット |
| 塔・槽の中圧のフランジ | メタルジャケットガスケット |
| 高温・高圧のフランジ | うず巻形ガスケットか金属リングガスケット |
| 反応塔の大口径の端部、超高圧装置 | 自己緊密式(内圧が上がるほど面圧が増す) |
| 高圧の熱交換器 | シェルカバーはメタルジャケット、溝形のノズルは金属リングなど、部位とフランジ形状で選ぶ |
ガスケット係数 m = 内圧作用時の最小必要残留応力 ÷ 内圧。内圧でボルトが伸びても、ガスケットに漏れを止めるだけの圧縮力が残っていなければなりません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| ガスケット係数は、内圧が作用する前の初期締付け応力の内圧に対する比 | × | 内圧作用時の最小必要残留応力の内圧に対する比 |
| 金属リングガスケットは復元力も大きいので、ホットボルティングを省略できる | × | 復元力が小さいため、ホットボルティングを行う |
| 同じフランジのすき間なら、流体の粘度が大きいほど漏えい量は多い | × | 漏れは圧力が高いほど、密度・粘度が小さいほど多い |
| 超音波軸力計でボルトの伸びを測りながら締める方法を、テンション法という | × | それは伸び測定法 |
| 自己緊密式ガスケットは、内圧の上昇を利用して密封の面圧を高める | ○ | 大口径の端部・超高圧装置に使う |
出題:国試12記述・検定15記述(平成28〜令和7年度)
- ガスケット係数はガスケットの材質と構造で決まる。必要なボルト荷重は、組立て時(ガスケットの最小設計締付け圧力 y)と運転時(m)の両方で計算し、大きいほうを採る
- ホットボルティング:昇温したときのフランジ継手各部の熱膨張差による漏えいを防ぐため、昇温状態で行う増し締め。金属リングガスケットはシール性能と強度に優れるが、締付けで変形したあとの復元力が小さいので、高温配管では行う。やり方は漏えいしたときの影響度や過去の実績をもとに設備ごとの基準で決めることが多い(→ 非定常作業の安全)。降温過程・降温後に常温で行う締付けはコールドボルティング
- 漏れ止めの性能は、締付け圧力とガスケットの種類だけでなくフランジ面の表面粗さにも左右される。適切なシール剤の塗布は、シール性能の向上と焼付き防止に使われる
ボルトの締め方は5つ
| 方法 | しくみ |
|---|---|
| 手締め法 | スパナなどを使い人力で締める |
| トルク法 | トルクレンチや油圧レンチで締付けトルクを管理する |
| 回転角法 | ナットの回転角を確かめながら締める |
| テンション法 | ボルトテンショナで直接軸力を与える |
| 伸び測定法 | 超音波軸力計や伸びゲージでボルトの伸びを測りながら締める |
どの方法でも片締めにならないよう慎重に締めます。配管の振動には振れ止めを施します。
ポンプの軸封(メカニカルシール・グランドパッキン) ── メカニカルシールは軸に直角な端面で止め、振動に弱い

| グランドパッキン | メカニカルシール | |
|---|---|---|
| 漏れ | わずかな漏れを許す(潤滑と冷却に使う) | ほぼ完全に止める |
| 密封のしかた | 軸のまわりにパッキンを詰めて締める | 回転環と固定環を軸に直角な端面で押し付ける |
| 弱点 | 締めすぎると発熱・動力損失・スリーブの傷 | 振動に弱い。漏れ出したら運転中には止められない |
| 使う場面 | わずかな漏れが許される所 | 可燃性・毒性の液体 |
メカニカルシールは漏れをほぼ完全に止められるので、可燃性・毒性の液体に使います。ただし振動に弱く、漏れ出したら止められないので早めに処置します。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| メカニカルシールは、回転環と固定環を回転軸に平行な面で接触させる | × | 軸に直角な端面 |
| メカニカルシールは振動に強いので、漏れ始めても運転を続けて様子を見ればよい | × | 振動に弱く、漏れ出したら早めの処置 |
| グランドパッキンから漏れたら、漏れが完全に止まるまでボルトを強く締める | × | わずかな漏れを許し、漏れと摩擦を調整する |
| フラッシングは外から冷却水を流すだけで、しゅう動面の異物を除く働きはない | × | 軸封内部の液を循環させて冷やし、異物の停滞も防ぐ |
| ガスケット係数は、内圧が作用する前の初期締付け応力を内圧で割った値 | × | 最小必要残留圧縮応力と内圧の比(→ フランジ・ガスケット) |
出題:国試8記述・検定13記述(平成28〜令和7年度)
- しゅう動面は摩耗するので、一方をカーボン、他方をステンレス・超硬合金・セラミックスなどにする
- 冷却・潤滑には、フラッシング(冷却効果が最も高い)、クーリング(固定環の外周に冷却水)、クエンチング(しゅう動面の大気側に冷却液)がある
- 液化ガスでは、しゅう動部に蒸気がたまって乾いた状態でしゅう動すると発熱するので、しゅう動部を冷やしエコライジングパイプでガスを抜く
関連:ポンプ軸封の選び方
圧縮機の軸封(ラビリンス・ドライガス・オイルフィルム・往復のパッキン) ── オイルフィルムは漏れが許されないガス用

| シール | 漏れ | 適用 |
|---|---|---|
| ラビリンスシール | あり(多い) | 漏れてもよいガス(空気・窒素・CO₂) |
| オイルフィルムシール | 極めて少ない | 漏れが許されないガス(水素・アンモニア) |
| ドライガスシール | 若干あり | 非接触で摩耗はほとんどない。清浄ガスの供給が必要 |
オイルフィルムシールは漏れが許されないガス用。 その適用先を逆にした誤りが繰り返し出ています。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 漏れが許される場合には、最も単純なオイルフィルムシールが用いられる | × | 最も単純なのはラビリンスシール |
| オイルフィルムシールは、水素ガスのように漏れが許されない圧縮機には用いない | × | まさにそういう用途に使う |
| ドライガスシールは非接触なので摩耗せず、異物の影響も受けにくい | × | 異物に弱いので、清浄なガスをフィルタを通して供給する |
| 無給油式往復圧縮機のピストンロッドパッキンには、主に銅合金を用いる | × | カーボンまたはテフロン |
| ラビリンスシールは、狭いすき間と広い室を何段も重ねて漏れを完全に止める | × | 段ごとに圧力を失わせて漏れを抑えるだけ |
出題:国試9記述・検定14記述(平成28〜令和7年度)
- オイルフィルムシール:2つのリングの間にガス圧よりわずかに高い圧力の油を送り、油膜でガスが大気へ漏れるのを防ぐ
- 往復圧縮機のロッドパッキン:給油式は主に銅合金。無給油式は自己潤滑性のある材料を使う。酸素圧縮機の内部には油を使わない(油と高圧の酸素の接触は発火のもと)。ダストやさびはロッドを傷つけ、パッキンの損耗を早める(→ 圧縮機の理論動力/酸素の取扱い)
- 遠心圧縮機の軸封はすき間が非常に小さいので、振動・ガスによる汚染・オーバーヒート・サージングで問題が出やすい
関連:圧縮機の軸封
弁のシール ── 弁座漏れは皆無にできないので、縁切りは仕切板で
| 項目 | 押さえる点 |
|---|---|
| グランドパッキンの材質 | カーボン・フッ素樹脂などの繊維や黒鉛を主材とし、潤滑剤で表面処理したもの、テフロン繊維を格子編みにしたものなど |
| 弁座漏れ(シートの中漏れ) | 皆無にすることは難しい |
| 工事の縁切り | 弁だけで遮断するのは危険。継手部に仕切板を入れる |
| 弁座漏れの区分(JIS B 2003) | レートAは水でも空気でも漏れのないこと。レートB〜Dは試験流体(水か空気か)で許容量が違う |
バルブの弁座漏れはゼロにできません。工事で確実に縁を切るときは、弁を閉めるだけに頼らず仕切板を挿入します。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 工事の対象を弁で二重に閉止すれば、仕切板は要らない | × | 中漏れは残り得るので仕切板で隔離 |
| JIS B 2003 のレートBでは、試験流体が水か空気かで許容量が違う | ○ | レートAだけはどちらも漏れのないこと |
| カーボンやフッ素樹脂の繊維、黒鉛を主材とするものは、バルブのグランドパッキンに使われる | ○ | 耐薬品性・耐熱性・低摩擦 |
出題:国試1記述・検定2記述(平成28〜令和7年度)
関連:調節弁のトラブルと保全
漏えい量の考え方 ── ピンホールは孔径の4乗、大きい破断口は圧力差の平方根に比例

| 漏れ方 | 漏えい量の比例関係 |
|---|---|
| 細長いピンホール(粘性流) | 圧力差 ΔP と孔径 D の4乗に比例し、孔の長さ L(と粘度 μ)に反比例。q ∝ ΔP·D4/(μL) |
| 液体が大きい破断口から | q = C A √(2gh)。流出係数 C と破断口面積 A に比例し、液頭(内外圧力差)h の平方根に比例 |
大きい破断口では圧力差(液頭)が4倍になっても漏えい量は2倍。一方、ピンホールは孔径が2倍で16倍になるので、小さな孔でも広がると漏えいは加速度的に増える。早めに措置します。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 大きい破断口からの液体の漏えい量は、内外の圧力差に比例する | × | 圧力差の平方根に比例 |
| 同じ圧力差と孔の長さで、ピンホールの孔径が2倍になると漏えい量も2倍 | × | 孔径の4乗なので16倍 |
| 大きい破断口からの液体の漏えい量は、破断口の面積に比例し、液頭の平方根に比例する | ○ | 流速が液頭の平方根に比例 |
出題:国試10記述・検定5記述(平成28〜令和7年度)
- 漏えい量:q = C A √(2gh)(トリチェリの定理)。C と A に比例し、ヘッド h の平方根に比例する
- 高圧のガスでは、断熱指数(比熱容量の比)と噴出前後の圧力比で計算式が変わる
出典:高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』ほか。平成28〜令和7年度の国家試験・技術検定の出題を論点ごとに整理しました。
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