動画解説はこちら|YouTube

保安管理技術|リスク解析手法の出題|「〜できない」が誤りの半分を占める【甲種化学】

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

困っている人
困っている人

FTAとETA、HAZOPとWhat-if。手法名と説明の対応が覚えられない。

リスクアセスメントとリスクマネジメント、どちらが上位概念か分からない。

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

誤りの半分以上が「〜できない」と限定する形

FTAは結果から原因へ、ETAは原因から結果へ

特性要因図は因果関係を明確にできない(2回)

リスクマネジメント ⊃ リスクアセスメント

手法の性格さえ押さえれば、「できない」と書いてある記述はほぼ切れます。

最初に集計結果です。

国家試験技術検定
該当する問問9問8──
記述数202545

この分野の誤りは、その多くが「〜できない」「〜には適用できない」という限定です。

リスク解析手法は、たいてい柔軟に使えます。 「できない」と書いてあったら、まず疑ってください。

実務側はリスクアセスメント手法の選び方HAZOPLOPAFTAETAFMEAボウタイ分析を参照してください。

誤りの作り方 ── 「できない」が半分以上

年度・問「できない」とされたもの実際は
R2国試問9イWhat-ifは複数事象の組合せを想定できないできる
R3国試問9ロFTAで安全弁の効果は算入しない算入する
R3国試問9ニFMEAは部品の管理方法の見直しに適用できないできる
R3検定問8ニHAZOPはFTAの頂上事象の選定に使用できないできる
R4国試問9イFTAとHAZOPの併用は避けるべき併用したほうがよい
R4国試問9ロETAで安全装置は設置されていないものとして計算考慮する
R5検定問8ハチェックリストはリスク低減策の確認ができないできる

7つとも「できない/しない」と限定して誤りにしています。

なぜこの形が多いのか

リスク解析手法は、道具にすぎないからです。使い方を工夫すれば、たいていのことはできます。

読み方の指針

「〜できない」「〜には適用できない」「〜は算入しない」まず疑う

「〜と併用すべきでない」ほぼ誤り(併用は推奨される)

逆に「〜に便利である」「〜にも使える」 → 正しいことが多い

この読み方だけで、45記述のうち誤りの半分以上が切れます。

ただし2つだけ例外があります ── 特性要因図の「因果関係」と、手法名そのもののすり替えです。

例外① 特性要因図は因果関係を明確にできない(2回)

出た誤り記述(令和4年度 検定 問8ハ)

特性要因図は、魚の骨のような図にまとめたものであり、事故原因などを分類整理し、要因相互の因果関係を明確に把握するのに便利である。

× 要因相互の因果関係を明確に把握することはできない。

令和5年度 国試 問9ハでも同じ論点が出ています。

特性要因図(フィッシュボーン図)でできること・できないこと

できる:要因を分類・整理する(人・設備・作業環境・管理など)

できる:抜け漏れなく洗い出す

できない要因相互の因果関係を表す

できない:発生確率を求める

魚の骨は「並べる」道具であって「つなぐ」道具ではありません。

因果関係を明確にするのはFTAです。ANDゲート・ORゲートで論理関係を表す。

手法できること
特性要因図要因の分類・整理(因果関係は表せない)
4M分析要因をMan・Machine・Media・Managementで整理
FTA因果関係を論理的に表現/確率計算
なぜなぜ分析原因を掘り下げる(因果を追う)

「明確にできる」と書いてあったら誤りです。この分野で数少ない「できない」が正しいケース。

例外② 手法名のすり替え ── FTAとETA

出た誤り記述(令和4年度 検定 問8ホ)

FTAの特徴は、小規模のトラブルの波及拡大過程を解析するのに便利であり、1つの引金事象が事故に拡大する確率の推定も可能である。

× これはETAの説明。

FTA(Fault Tree Analysis)ETA(Event Tree Analysis)
方向結果 → 原因(さかのぼる)原因 → 結果(波及を追う)
出発点頂上事象(起きてほしくない事故)引金事象(初期異常)
構造論理ゲート(AND・OR)の木成功/失敗の分岐の木
得意なこと因果関係/各要因の寄与度波及の拡大過程/シナリオの網羅
確率頂上事象の発生確率各シナリオの発生確率

FTAは「なぜ起きたか」を上から掘る、ETAは「起きたらどうなるか」を下へ広げる。

覚え方

Fault = 故障・不具合(結果)から始まる → さかのぼる

Event = 事象(引金)から始まる → 広がる

両者を組み合わせたのがボウタイ分析です。左がFTA、右がETA、中央が頂上事象。

FTA(フォールトツリー解析)ETA(イベントツリー解析)ボウタイ分析

だから併用すべき(R4国試問9イ)

出た誤り記述

FTAとHAZOPは解析を進める方向の異なった手法であるため、同一の設備について両手法を併用してのリスク解析は避けるべきである。

× 併用したほうがよい

役割分担

HAZOPハザードを洗い出す(何が起こりうるか)

FTA:洗い出したものの原因を掘り下げ、確率を求める

HAZOPの結果がFTAの頂上事象になる

令和3年度 検定 問8ニでは「HAZOPはFTAの頂上事象の選定に使用できない」という誤りが出ています。

むしろ、そのために使うのがHAZOPです。

HAZOPの進め方手法の使い分け

主なリスク解析手法 ── 性格を1行で

手法性格得意なこと
チェックリスト過去の経験・知見をリスト化網羅的な確認/リスク低減策の実施確認もできる
What-if「もし〜だったら」と問いかける自由度が高い/複数事象の組合せも想定できる
HAZOPガイドワード×パラメータで系統的にハザードの網羅的な洗い出し/FTAの頂上事象の選定
FMEA部品・機器ごとの故障モードから部品の管理方針の検討/ボトムアップ
FTA結果 → 原因(トップダウン)因果関係/寄与度/発生確率の推定
ETA原因 → 結果波及の拡大過程/シナリオの網羅
LOPA防護層を数えるSIL(要求される安全度水準)の決定
ボウタイFTA+ETA全体像の可視化/防護層の整理

What-ifは組合せも想定できる(R2国試問9イ)

出た誤り記述

What-ifは、機器故障などの事象発生の影響を考える手法であり、複数の事象の組合せを想定することはできない

× できる

What-ifは最も自由度が高い手法です。「もし〜と〜が同時に起きたら」も問えます。

自由度が高い分、抜けが出やすいのが欠点です。だからHAZOPのような系統的手法と併用します。

FMEAは部品の管理方針に使える(R3国試問9ニ)

出た誤り記述

FMEAは、機器を構成する部品の管理方法の見直しには適用できない

× 部品の管理方針を考えるのに便利

FMEAの構造

部品ごとに「どんな故障モードがあるか」を列挙

→ その故障がシステムにどう影響するかを評価

影響の大きい部品ほど手厚く管理する

まさに部品の管理方針を決めるための手法です。予備品の持ち方、点検頻度、CBMの対象選定に直結します。

FMEA(故障モード影響解析)保全方式(TBM・CBM)

チェックリストで低減策も確認できる(R5検定問8ハ)

出た誤り記述

チェックリスト方式は、網羅的にリスクの有無と程度を調査する手法であるが、リスク低減策が実施されているかを確認することはできない

× 低減策をチェックリストに加えれば確認できる

チェックリストは「何を書くか」次第です。低減策の項目を入れれば確認できる。

手法そのものの限界ではなく、リストの作り方の問題だという理解が正解。

確率計算では安全対策を考慮する(2回)

出た誤り記述(令和3年度 国試 問9ロ)

FTAで事故の発生確率を算出する場合、安全弁設置による確率の低減は算入しない

× 安全対策による低減率も考慮する。

出た誤り記述(令和4年度 国試 問9ロ)

ETAで事故の発生確率を推算するのに、警報装置やインターロックなどの安全装置は設置されていないものとして計算した。

× 考慮する必要がある

2回とも「安全対策を無視する」形です。

なぜ考慮するのか

リスク評価の目的は「現状のリスクがどれだけか」を知ること

→ 安全対策があるなら、それを織り込んだ実際のリスクを出す

→ そうしないと対策の効果が評価できない

安全対策を入れる前と後で比較するのが、リスク評価の使い方です。

ETAは特に、安全装置の作動/不作動の分岐で構成されます。 無視したら木が作れない。

発生確率を決める要素

作業の頻度

引金事象の発生確率

安全対策による低減率

LOPA(防護層解析)リスクマトリクス

リスクマネジメントとリスクアセスメント(R5検定問8ロ)

出た誤り記述

リスクアセスメントは、リスクマネジメント、リスク対応、リスクの受容、リスクコミュニケーションの4つで構成されている。

× 包含関係が逆

正しい構造

■ リスクマネジメント(上位概念)

 ・リスクアセスメント(特定・分析・評価)

 ・リスク対応(低減・回避・移転・保有)

 ・リスクの受容

 ・リスクコミュニケーション

リスクマネジメント ⊃ リスクアセスメントです。アセスメントは一部にすぎない。

リスクアセスメントの3ステップ

ISO 31000 / JIS Q 31000

① リスク特定:何が起こりうるか

② リスク分析:発生確率と影響度を見積もる

③ リスク評価:許容できるかどうかを判断する

③まで含めてアセスメントです。「評価」で終わり、その後の「対応」は別。

だからアセスメントだけでは何も改善しません。 対応まで回して初めてマネジメント。

リスクマトリクスと許容基準リスクアセスメントの進め方

人的要因 ── フェーズ理論は5段階(2回)

出た誤り記述(R4検定問8ロ・R5検定問8ホ:2回)

意識レベルをI〜IVの4段階のフェーズに分けた考え方をフェーズ理論という。

× 0〜IVの5段階

フェーズ意識レベル状態信頼性
フェーズ0無意識・失神睡眠・脳発作ゼロ
フェーズI意識ぼけ疲労・単調・居眠り0.9以下
フェーズII正常(リラックス)休息時・定例作業0.99〜0.99999
フェーズIII正常(明晰)積極的活動・前向き思考・意欲的0.999999以上
フェーズIV興奮状態緊急時・パニック0.9以下

0から始まるので5段階です。「I〜IV」と書いてあれば誤り。

フェーズIIIが最も信頼性が高い状態です。ただし長時間は維持できません(15分程度)。

だから重要な作業の直前に「指差呼称」で意識レベルを上げるという発想が出てきます。

実務への応用

フェーズII(通常)→ III に上げる ── 指差呼称・KY活動・ブリーフィング

フェーズIV(パニック)を避ける ── 訓練・手順書・自動化

フェーズI(居眠り)を避ける ── 交替制・休憩・単調作業の排除

緊急時こそフェーズIVになりやすいので、訓練で「体が覚えている」状態にしておく必要があります。

教育訓練と技術伝承非定常作業の安全

その他の論点

計器室の出入口は2箇所以上(R3検定問8ロ)

出た誤り記述

コンビ則の適用を受けるエチレン製造設備に係る計器室に出入口を1箇所設け、外部からのガスの侵入を防ぐための措置は講じなかった

×

正しい要件

出入口は2箇所以上、うち1箇所は安全な側に設ける

二重扉などにより計器室内を必要な圧力に保持する(ガスの侵入防止)

計器室は事故時に運転員が最後まで残る拠点です。だから避難路とガス侵入防止が要る。

法令(コンビ則)の内容がそのまま保安管理技術で出ています。

計器室の扉と窓は耐火性という規定も別にあります。

事業所例問題(コンビ則・計器室)被害局限措置

4M分析

4つの視点

Man(人):知識・技能・意識・体調

Machine(設備):故障・設計不良・老朽化

Media(環境・情報):作業環境・手順書・表示

Management(管理):教育・監督・ルール

要因ごとに問題点を整理する手法です。特性要因図と組み合わせて使われます。

5M(Measurement を加える)や4M-4E(対策側を Education・Engineering・Enforcement・Example で整理)という展開もあります。

この分野の対策

  1. 「できない」と書いてあったら疑う(誤りの半分以上)
  2. FTA(結果→原因)とETA(原因→結果)を固定
  3. 特性要因図は因果関係を表せない(数少ない「できない」が正解のケース)
  4. リスクマネジメント ⊃ リスクアセスメント
  5. フェーズ理論は0〜IVの5段階

①だけで大半が切れます。 この分野は読み方のコツで得点が変わります。

よくある失点

失点対策
「できない」を素直に信じるまず疑う(手法は柔軟に使える)
FTAとETAを逆にF=結果から遡る/E=事象から広がる
特性要因図が因果を表せると思う分類・整理のみ
リスクアセスメントを上位概念と思うマネジメントが上位
確率計算で安全対策を無視する考慮する
フェーズ理論を4段階と思う0〜IVの5段階

暗記カードにするならこれだけ

読み方の指針(最重要)

「〜できない」「〜には適用できない」→ まず疑う

「併用すべきでない」→ ほぼ誤り(併用は推奨)

例外:特性要因図は因果関係を表せない(これは正しい)

手法の性格

FTA=結果→原因(論理ゲート・因果関係・確率)

ETA=原因→結果(波及の拡大過程・シナリオ)

HAZOP=ガイドワードで洗い出し(FTAの頂上事象の選定に使える)

FMEA=部品ごとの故障モード(部品の管理方針に使える)

What-if=自由度が高い(組合せも想定できる)

チェックリスト=低減策の確認もできる

特性要因図=分類・整理のみ

体系

リスクマネジメント ⊃ リスクアセスメント

リスクマネジメント=アセスメント+対応+受容+コミュニケーション

アセスメント=特定 → 分析 → 評価

人的要因

フェーズ理論は0〜IVの5段階

フェーズIIIが最も信頼性が高い(積極的活動・前向き思考・意欲的)

フェーズIV(パニック)は信頼性が低い

4M=Man・Machine・Media・Management

その他

確率計算では安全対策の効果を考慮する

計器室の出入口は2箇所以上(1箇所は安全側)+内圧保持

まとめ

  • 国試の問9・検定の問8がここ。10年で45記述
  • 誤りの半分以上が「〜できない」と限定する形
  • FTAは結果から原因、ETAは原因から結果
  • FTAとHAZOPは併用すべき(HAZOPの結果がFTAの頂上事象になる)
  • 特性要因図は分類・整理のみ。因果関係は表せない(2回)
  • 確率計算では安全対策の効果を考慮する(2回)
  • リスクマネジメント ⊃ リスクアセスメント
  • フェーズ理論は0〜IVの5段階(2回、4段階とする誤り)
  • 計器室の出入口は2箇所以上+内圧保持

これで保安管理技術の分野別記事10本は完結です。全体像は保安管理技術15問の攻略へ。

実務側はリスクアセスメント手法の選び方HAZOPLOPAFTAETAFMEAボウタイ分析リスクマトリクスを参照してください。

出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計150問671記述を筆者が1記述ずつ分解して独自に行ったものです。設問の要約と解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。