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配管工事が終わり、保温屋さんが入る前の現場。「あとは試験をやって試運転」という段階で、逆止弁が逆向きに付いていた、安全弁に試験圧力をかけてしまった、試験後の盲板が1枚残っていた、という話は珍しくありません。どれも、図面どおりに設計された配管で起きます。
完成した配管は、そのまま流体を流してよい状態ではありません。図面と仕様どおりにできているかをラインチェックで確かめ、強さを耐圧試験で、漏れがないことを気密試験で確かめてから、ようやく試運転に進めます。
この記事では、化学プラントの製造・保全・生産技術の担当者と配管設計の初学者に向けて、ラインチェックで見る場所、耐圧試験と気密試験の違い、水ではなく気体で試験するとなぜ危ないのか、試験圧力の倍率が法規ごとに違うこと、試験境界の作り方、試験後の水抜き・復旧・フラッシングまでを整理します。
この記事の結論
- ラインチェックは「仕様・図面どおりか」、耐圧試験は「強さ」、気密試験は「漏れ」を確かめる。3つは代わりにならない。
- 耐圧試験は原則として水で行う。気体は同じ圧力・容積でも水の数千倍のエネルギーをため、破れたときの被害が桁違いになる。
- 試験圧力の倍率と基準になる圧力は、適用法規・規格ごとに違う。「1.5倍」を覚えるのではなく、どの法規の、どの圧力の何倍かを確かめる。
- ポンプ・安全弁・調節弁・伸縮継手などは盲板や短管で試験範囲から外し、圧力の違う系統は盲板で切る。弁1つで区切らない。
- 試験は、水抜き・乾燥・盲板の撤去・部品の復旧・フラッシングまで終えて完了になる。ここで残した物が、試運転の事故になる。
目次
- 1. 確認は3段で進む:ラインチェック、耐圧試験、気密試験
- 2. 確認を省くと、試運転で何が起きるか
- 3. ラインチェック:図面と現物を1本ずつ照合する
- 4. 耐圧試験と気密試験は何が違うか
- 5. 水圧と気圧:気体で試験するとなぜ危ないか
- 6. 試験圧力は法規・規格ごとに倍率が違う
- 7. 試験境界をつくる:盲板・弁・切り離し
- 8. 水張り・昇圧・保持・漏れ確認・降圧
- 9. 試験後の水抜き・乾燥・復旧とフラッシング
- 10. 例:常用の圧力1.6 MPaのガス配管を試験する
- 11. 設計ノート:式の前提、規格の読み方、例外
- 12. レビューで聞く5問
- 13. 製造・保全で確認する5点
- まとめ
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- 参考文献
1. 確認は3段で進む:ラインチェック、耐圧試験、気密試験
配管の現地工事は、材料の受入れ、寸法の確認、製作、溶接と溶接部の検査、非破壊検査を経て組み上がります。そこから先、試運転に入る前にやる確認が、この記事の範囲です。
化学プラント建設の教科書は、現地配管工事の検査の流れを、非破壊検査の後に「管内清掃検査 → 耐圧試験 → 気密試験 → 洗浄検査 → 現場取合部・現場溶接部の検査 → ハンガの取付け → フラッシング → 試運転前検査」と並べています。配管の教科書も、設置の終わった配管は1ラインずつ設計図書と照合するラインチェックを行い、続いて耐圧試験と気密試験で健全性と安全性を確かめる、と説明しています。
| 確認 | 何を確かめるか | どう確かめるか | 見つかる不具合の例 |
| ラインチェック | 図面・仕様どおりにできているか、運転・保全できるか | P&ID、アイソメ図、配管仕様と現物を照合 | 弁の逆付け、材質違い、サポート抜け、操作できない弁 |
| 耐圧試験 | 設計した圧力に耐える強さがあるか | 水などの液体で試験圧力をかけ、保持して観察 | 溶接部の欠陥、ふくらみ・伸び、継手からの漏れ |
| 気密試験 | 継手やグランドから漏れないか | 空気・窒素などで加圧し、発泡液や圧力降下で確認 | フランジ・ねじ込み部・弁グランドの微小な漏れ |
ラインチェックで「強さ」は分からず、耐圧試験で「逆止弁の向き」は分かりません。3つは互いの代わりにならないので、どれかを時間の都合で省くと、その分の不具合がそのまま試運転へ持ち込まれます。化学プラント建設の教科書の配管工事の巻も、時間的な制約からラインチェックを省略するのは好ましくない、と書いています。
溶接と非破壊検査までの工程は、この記事では扱いません。溶接部の検査方法の違いは非破壊検査の使い分け、継手と溶接の基本は管継手と配管溶接を参照してください。
2. 確認を省くと、試運転で何が起きるか
試験前後の見落としは、試運転の初日に形になって出てきます。よくある見落としと、そのとき起きることを並べます。
| 見落とし | 試運転・運転で起きること |
| 逆止弁・玉形弁の逆付け | 流れない、逆流を止められない、弁が異常に傷む |
| 安全弁・調節弁・計器に試験圧力をかけた | 安全弁の設定が狂う、調節弁や計器の破損 |
| 圧力の違う系統を弁1つで区切った | 弁座漏れで低圧側に試験圧力が入る |
| 高点の空気を抜かなかった | 昇圧に時間がかかる、ためるエネルギーが増える |
| ガス配管に水を張ったのにサポートを見なかった | 水の重さでサポートや配管が変形する |
| 降圧時にベントを開けなかった | 水を抜くときに配管の中が負圧になる |
| 試験水を抜き切らなかった | さび、凍結、運転流体との反応や汚染 |
| 試験用盲板・ばねハンガのロックを外し忘れた | 流れない、熱膨張で配管や機器に無理な力がかかる |
| フラッシングの前に調節弁やオリフィスを付けた | 溶接くずやスケールをかみ込み、弁座や計器を傷める |
どれも、試験の要領書と記録で防げる種類の失敗です。以下、ラインチェック、試験、試験後の順に見ていきます。
3. ラインチェック:図面と現物を1本ずつ照合する
ラインチェックは、組み上がった配管が計画から外れていないか、運転上の不具合がないかを、配管全体にわたって確かめる検査です。通常は系統ごと、またはエリアごとに、配管図を手に現物を1本ずつたどって行います。
照合に使う図面は、P&ID、アイソメ図、配管仕様(配管クラス)です。P&IDでライン番号と弁・計器の並びを、アイソメ図で寸法とルートと支持を、配管仕様で材質とレイティングを確かめます。それぞれの図面の役割はP&IDとライン番号の読み方、配管図面の読み方、ラインリストと配管クラスで説明しています。

建設の教科書が挙げる確認項目を、現場で見る場所ごとにまとめると次のようになります。
- 設計の要求どおりに配管されていること:ルート、口径、分岐、弁・計器の位置がP&IDとアイソメ図に合っている
- 管・弁・フランジ・ボルトナット・ガスケットが、仕様書どおりの材質・寸法・レイティングであること
- サポート、ハンガ、ブレースが完全に取り付けられていること
- 固定点と遊動点を確かめ、配管が決めた方向に自由に伸び縮みできること
- 運転員が操作する弁などを、容易に操作できること
- 玉形弁・逆止弁のように流れ方向の表示があるものは、流体の流れと矢印が一致していること
- フランジのボルトはナットが完全に掛かる長さで、均一に締め付けられていること
- その他、仕様から外れている箇所がないこと
材質は見た目では区別できないことがあります。建設の教科書の配管工事の巻には、色分けや刻印がないと外観では材質の区別がつかない管を取り違えて、事故の原因になった例が紹介されています。刻印・色分け・ミルシートと配管仕様を突き合わせるのは、材質が見分けられないからこそです。
逆止弁の向きと形式の選び方は逆止弁の選び方、ボルトの締付けとガスケットの確認はガスケット選定とボルト締付け、固定点と遊動点の考え方は配管サポートの選び方で詳しく扱っています。
構造だけでなく機能も見る
化学装置の便覧は、ラインチェックでは構造上の確認と同時に機能面の確認も行う、として次の点を挙げています。
- 運転後に配管が動くとき、伸縮継手、スプリングハンガ、ダンパが正常に作動するか。配管が動いても、隣の配管や架台に接触しないか
- 弁や計器の操作・保守が容易にできるか
- 回転機器などの運転・保守点検が容易にできるか
弁や計器の操作空間の考え方はバルブ・計器の操作性とメンテナンス空間を参照してください。
結果は報告書に残し、手直し後にもう一度見る
ラインチェックの結果は報告書にまとめ、手直しが必要な箇所は、手直しが終わった後に再度確認して完了を記入します。「直しておきます」で終わらせると、どこが直ったのかを誰も確かめていない状態が残ります。
試験のために付けた盲板、仮設ベント、仮設ストレーナ、ばねハンガのロックは、この段階で一覧にしておくと、試験後の復旧で外し忘れを防げます。ばねハンガのロックは、耐圧試験の水の重さを受け持たせる設計があるので、外す時期は製品と試運転要領に従います。詳しくはスプリングハンガ・コンスタントハンガで説明しています。
4. 耐圧試験と気密試験は何が違うか
耐圧試験と気密試験は、どちらも配管に圧力をかけますが、目的も、かける圧力も、使う流体も違います。
| 項目 | 耐圧試験 | 気密試験 |
| 目的 | 設計した圧力に対する強さの確認 | 継手・グランドなどからの漏れの確認 |
| 流体 | 原則として水などの液体 | 空気、窒素などの危険のない気体 |
| 圧力 | 基準圧力より高い(倍率は法規・規格で決まる) | 基準圧力と同じか、それより少し高い程度 |
| 合格の目安 | ふくらみ、伸び、漏れなどの異常がない | 漏れなどの異常がない |
| 漏れの見つけ方 | 目視(継手、溶接部の濡れ) | 発泡液(せっけん水など)の塗布、圧力降下 |
| 順番 | 先 | 耐圧試験の後 |
高圧ガスの設備では、耐圧試験は原則として水を用いた液圧試験で行い、やむを得ない理由で水を満たすのが不適当な場合に限って、空気などの危険のない気体で行えます。気密試験は、原則として空気などの危険のない気体で行います。高圧ガス保安技術の教科書では、耐圧試験は構造が複雑で試験後の水を除くのが難しい場合などに気体で行われ、必要により気密試験は耐圧試験の後に行われる、と説明されています。
気密試験は強さの試験ではありません。 気密試験に合格しても、耐圧試験の代わりにはなりません。逆に、耐圧試験の水で見えない小さな漏れを、気体で見つけるのが気密試験の役目です。気体は液体より漏れやすいので、水では濡れなかった継手から気体が漏れることがあります。
5. 水圧と気圧:気体で試験するとなぜ危ないか
耐圧試験を水で行う最大の理由は、水は圧縮されにくく、試験体の中にほとんどエネルギーをためないからです。気体は圧縮されている分だけエネルギーをため、破れた瞬間に膨張しながらそれを放出します。
プロセス安全の教科書は、耐圧・気圧試験の昇圧時に試験体にたまるエネルギーを次の式で見積もっています。
- 水の場合:
E = (β/2)·p²·V(β:水の圧縮率、p:試験圧力、V:水の体積) - 気体の場合:
E = p₂·V/(k−1)·{1 − (p₁/p₂)^((k−1)/k)}(p₂:試験圧力の絶対圧、p₁:大気圧、k:比熱比。空気は1.4、V:試験圧力での気体の体積)
気体の式は、試験圧力から大気圧まで気体が断熱的に膨張するときにする仕事です。同じ教科書の例では、1,000 m³の貯槽を約3 MPa(30 kgf/cm²)で試験した場合、気体でためるエネルギーは水の約2,380倍、TNT火薬に換算して約1.1トン相当になります。
この式で、容積1 m³あたりのエネルギーを試験圧力ごとに計算したのが次の図です。

1 MPaでは、水が約0.23 kJ、空気が約1,360 kJで、差は約5,900倍です。圧力が上がると比は小さくなりますが、10 MPaでもまだ約800倍あります。同じ教科書も、低圧側はためるエネルギーそのものは小さいが、気圧による危険性の比は大きくなる、と注意しています。
水圧試験なら安全、とも言い切れません。同じ教科書は、先の例で水の中に空気が1%残っていると、ためるエネルギーは水だけの場合の約180%になると計算しています。水圧試験で高点の空気を抜くのは、昇圧を早くするためだけでなく、試験体のエネルギーを小さくするためでもあります。
気体で耐圧試験を行わざるを得ない場合には、次の点がそろっているかを確かめます。
- 気体で行う理由があること:大口径の低圧ガス配管で水の重さに支持が耐えない、水を嫌う機器や内面、水を抜き切れない構造など
- 溶接部の健全性が先に確かめられていること:高圧ガスの例示基準では、気体で耐圧試験を行う場合、あらかじめ長手継手・周継手の放射線透過試験を行い、JISの等級分類で1類または2類であることを確かめる、とされています
- 脆性破壊を起こすおそれのない温度で行うこと:低温で試験すると、鋼が粘りを失った状態で圧力を受ける。低温脆性の仕組みは金属材料の基礎を参照
- 人を近づけない範囲を決め、昇圧は段階的に、規定圧力が近づいたら上昇速度を落とすこと
- 昇圧系統に安全弁または手動の放出弁を付け、放出の向きを決めておくこと
建設の教科書は、気体を使う試験では圧力が上がりすぎることがあり、漏れや破損で圧縮気体が噴き出すと大きな災害になるので、昇圧系統に大型の安全弁または手動の放出弁を付けておく必要がある、と書いています。
6. 試験圧力は法規・規格ごとに倍率が違う
「耐圧試験は1.5倍」とだけ覚えていると、判断を誤ります。倍率も、何の圧力に掛けるかも、適用される法規・規格で違うからです。この記事で確かめられた範囲を表にまとめます。
| 適用 | 耐圧試験 | 気密試験 | 基準にする圧力 |
| 高圧ガス保安法 一般高圧ガス保安規則 第6条第1項第11号・第12号(定置式製造設備の高圧ガス設備) | 液体:1.5倍以上(第二種特定設備などは1.3倍以上)。液体が困難なとき気体:1.25倍以上(同1.1倍以上) | 常用の圧力以上 | 常用の圧力 |
| 消防法 危険物の規制に関する政令 第9条第1項第21号イ(製造所で危険物を取り扱う配管) | 1.5倍以上で水圧試験(水以外の不燃性の液体・気体による試験を含む) | 規定なし(この号では) | 最大常用圧力 |
| 一般配管の施工例(化学装置便覧 改訂二版、1989年) | 最高使用圧力の1.5倍(水) | 最高使用圧力以上、1.1倍以下(空気) | 最高使用圧力 |
高圧ガス保安法の条文と危険物政令の条文は、2026年9月27日にe-Gov法令検索で現行の文面を確かめました。一般高圧ガス保安規則の数値は、高圧ガス保安協会の講習テキストと、製造保安責任者試験の問題集の解説でも同じです。
表を読むときの注意が3つあります。
- 基準の圧力が違う:高圧ガス保安法の「常用の圧力」は、通常の使用状態で設備に作用する圧力で、変動する場合はその最高の圧力をいいます。設計圧力とは限りません。設計圧力と運転圧力の関係は設計圧力・設計温度の決め方で説明しています
- 液体と気体で倍率が違う:高圧ガス保安法では、気体で耐圧試験をするときの倍率は液体より低く決められています。倍率が低くても、前の節で見たとおり気体がためるエネルギーは水よりはるかに大きいことを忘れないでください
- ここにない法規・規格は別に確かめる:ASME B31.3など海外の配管コード、労働安全衛生法のボイラー・圧力容器、社内規格は、それぞれ倍率、温度による補正、保持時間を定めています。原文の最新版で確かめてください
高圧ガス保安法の検査の種類(完成検査・保安検査・定期自主検査)の違いは完成検査・保安検査・定期自主検査、技術上の基準の号ごとの整理は製造の技術上の基準にまとめています。
高圧ガスの例示基準が示す方法
高圧ガス保安技術の教科書は、一般則・コンビ則関係の例示基準に示された試験の方法を紹介しています。
- 気密試験:原則として空気その他の危険のない気体で行う。脆性破壊を起こすおそれのない温度で行う。気密試験圧力は常用の圧力以上とし、漏えいの確認は規定圧力を10分以上保持した後に行う。危険がないと判断される場合は、その設備で扱う気体を使ってもよく、その場合は段階的に昇圧する
- 耐圧試験:原則として水を用いた液圧試験。やむを得ない場合は危険のない気体。規定圧力の保持時間は5〜20分を標準とする。耐圧試験圧力でふくらみ、伸び、漏えいなどの異常がないとき合格とする
なお、同じ教科書によれば、定期検査では原則として耐圧試験は行わず、耐圧性能と強度は、減肉や劣化損傷がないことを目視検査と非破壊検査で確かめます。溶接補修や設備の一部取替えをしたときには、耐圧試験を行う場合があります。保全の担当者が試験に関わるのは、主にこの場面です。
試験圧力の上限も確かめる
試験圧力は「以上」で決められていますが、上げればよいわけではありません。試験範囲の中で一番弱い部品、たとえばフランジのレイティング、弁、計器、伸縮継手が、その圧力に耐えるかを確かめます。フランジの呼び圧力は使用できる圧力そのものではないので、温度と材料で決まる許容圧力を見ます。考え方はフランジの規格と呼び圧力で説明しています。
水圧試験では、液の高さの分だけ低い所の圧力が高くなります。水は高さ10 mで約0.1 MPaの差になるので、高低差の大きい系統では、圧力計をどの高さに付けて試験圧力を読むかを要領書で決め、一番低い所の部品が耐えるかを確かめます。
7. 試験境界をつくる:盲板・弁・切り離し
耐圧試験で最初に決めるのは、どこからどこまでに圧力をかけるか、つまり試験境界です。試験圧力をかけてはいけない機器を境界の外へ出し、圧力の違う系統を確実に切ることが、この段階の仕事です。

建設の教科書と化学装置の便覧が挙げる注意点を、境界の作り方としてまとめると次のとおりです。
- ポンプ、圧縮機、安全弁、調節弁、オリフィス、伸縮継手などには試験圧力をかけない。盲板や締切り弁で切り離すか、取り外して別の短管を入れてから試験する
- 膨張継手、ろ過器、オリフィス、調節弁は、保護のため事前に短管と取り替える(化学装置便覧の要点)
- 圧力の違うラインが弁1つでつながっているときは、適当な盲板で分離する。弁の弁座が漏れれば、試験圧力が低圧側へ入る
- 試験範囲と範囲外の境を確かめ、連絡部は弁または遮断板で完全に分離する
- 清掃や耐圧試験が終わった機器と、水との接触を禁じられている機器の出口には、必ず遮断板を設ける
- 計装配管は、計器の元弁まで配管と同時に試験する
- 大気に開放されている配管は試験しない
- 地中配管は埋め戻す前に試験し、保温・保冷・塗装は耐圧試験の前に行わない(継手や溶接部を見えるようにしておく)
逆止弁のある配管
逆止弁のある配管では、圧力源を弁の入口側にし、圧力を抜くときは出口側から抜けるようにします。 出口側から加圧すると逆止弁が閉じて上流に圧力がかからず、入口側から抜こうとすると下流に圧力が閉じ込められます。それができない場合は、逆止弁を取り外すか、盲板で仕切ってそれぞれ別に試験します。
盲板は一覧で管理する
試験のために入れた盲板は、試運転の前に必ず外すものと、そのまま残して運転中の隔離に使うものがあります。盲板の位置、枚数、入れた日、外した日を一覧にし、現物に札を付けて管理します。 運転中の隔離に使う盲板の考え方はLOTOと隔離の実務を参照してください。
ベントとドレン、圧力計
配管の中に空気溜まりを作らないこと、避けられないなら仮設のベントを設けて空気を抜けるようにすることが、試験の前提です。低点には水抜きのドレンが要ります。配管の高点・低点とベント・ドレンの設計はベント・ドレン・勾配の設計で詳しく説明しています。
圧力計について、1989年の化学装置便覧は、加圧源側に1か所、配管側に2か所以上付け、そのうち1か所は標準計で照合したものを使う、としています。圧力計が1つだけだと、その計器が狂っていても気づけません。
水の重さとサポート
ガス用の配管を水で試験するときは、サポートが水の重さに耐えられるかを事前に確かめ、必要なら仮の支柱で補強します。 内径200 mmの管なら、水だけで1 mあたり約31 kgになります。ガスを流すつもりで間隔を決めたサポートでは、この重さを想定していないことがあります。ばねハンガは、ロックで荷重を受けるか、仮支持を入れるかを要領書で決めます。
8. 水張り・昇圧・保持・漏れ確認・降圧
試験境界が決まったら、水を張り、段階的に圧力を上げ、保持して点検し、ゆっくり下げます。

水張りと空気抜き
水張りは、高点のベントを開けて空気を十分に追い出しながら行います。 建設の教科書は、液体によるテストでは内部に空気が残らないよう、ベントやドレンの弁を開いて十分に排気する必要があり、これが不十分だと加圧に長時間を要する、としています。前節で見たように、残った空気は試験体がためるエネルギーも増やします。
試験に使う水は、一般に清水です。1989年の化学装置便覧は、清水は気温0℃以下のときは使わない、寒冷地で水張りや夜間の満水放置をするときは凍結防止策を講じる、としています。また、先に紹介したプロセス安全の教科書は、鋼製の圧力容器では耐圧試験に用いる水の温度を15℃以上とする、と注意しています。適用する規格の温度条件を確かめてください。
段階的に昇圧する
いきなり試験圧力まで上げず、まず低い圧力で各部を点検し、異常がなければ段階を追って上げます。1989年の化学装置便覧の例では、耐圧試験ははじめ約0.2 MPa(2 kgf/cm²)まで上げて各部を点検し、その後段階的に昇圧します。気密試験は試験圧力の50%までは徐々に加圧して各継手の漏れを点検し、異常がなければ3〜5段階に小刻みに上げます。
段ごとに止めて点検するのは、高い圧力で初めて漏れや変形を見つけるより、低い圧力で見つけるほうが安全だからです。
保持して、全継手を点検する
試験圧力に達したら、圧力を保持して漏れと変形を確かめます。保持時間は適用する基準によって違います。
| 資料 | 耐圧試験 | 気密試験 |
| 高圧ガスの例示基準(高圧ガス保安技術で紹介) | 5〜20分を標準 | 10分以上保持した後に漏えいを確認 |
| 化学装置便覧 改訂二版(1989年)の要点 | 15分以上、各継手の漏れ検査が終わるまで | 10分以上、各継手の漏れ検査が終わるまで |
時間が来たら終わり、ではなく、全部の継手を見終わるまで保持します。 気密試験の漏れは、フランジ、ねじ込み部、弁のグランドなどに発泡液(せっけん水など)を塗って確かめます。高圧ガス保安技術の教科書は、設備に圧力を加えて長時間放置し、圧力降下を調べることもある、としています。
気体は温度で圧力が変わります。日射や気温の変化で圧力が上下するので、圧力降下で判定するときは、圧力と一緒に温度と時刻を記録します。
漏れが見つかったら
漏れが見つかったら、圧力を下げてから直し、もう一度同じ試験をします。 加圧したままボルトを締め増したり、溶接部を補修したりしてはいけません。1989年の化学装置便覧は、フランジ継手はボルトナットの締め直し、溶接継手はガウジングして再溶接し、再び耐圧試験を行う、としています。
ゆっくり下げ、ベントを開けて水を抜く
降圧は急激に行いません。 同じ便覧は、ライニング管や充塡物の入った装置では、充塡物の移動を考えてさらに遅くするよう求めています。
水を抜くときは、試験系統の最上部のベント弁を開けて、内部が負圧にならないようにします。 高点を閉じたまま低点から抜くと、配管や機器の中が真空になり、薄肉の大口径管や機器がつぶれるおそれがあります。
9. 試験後の水抜き・乾燥・復旧とフラッシング
試験は、圧力を下げた時点では終わっていません。試験のために変えたものを全部元に戻し、中をきれいにして、はじめて試運転に渡せます。
水を抜き切り、乾かす
試験水が残ると、さび、凍結、運転流体との反応や汚染の原因になります。建設の教科書は、炭素鋼や低合金鋼の管を水洗いした場合は、とくに乾燥を十分に行い、さびが出ないように注意するとしています。水を嫌う配管は乾燥空気で乾かし、長く置くなら窒素などを封入します。
減圧(真空)で使う系統では、水が残っていると試験のときに圧力の戻りが速くなり、漏れと区別がつかなくなります。真空系は内部を乾燥させてから減圧テストをします。
試験のために変えたものを戻す
- 試験用の盲板を外す(一覧と現物の札で照合する)
- 取り外した安全弁、調節弁、オリフィス、伸縮継手、ろ過器を元に戻す
- 耐圧テストに使ったボルトナットは、運転に移る前に取り替える(1989年の化学装置便覧)
- 仮の支柱、吊り金具を外し、支持台を調整する
- ばねハンガのロックを、要領書で決めた時期に外す
- 仮設ベントを撤去し、残すベントには閉止栓を付ける
フラッシング:異物を機器に送り込まない
組み上がった配管の中には、溶接くず、スパッタ、スケール、砂、木片、ウエスが残っています。これが運転中にはがれると、弁や調節弁、オリフィス、ポンプにかみ込み、製品の品質も落とします。フラッシングは、これを水・空気・蒸気などで吹き出す作業です。
建設の教科書が挙げる要点は次のとおりです。
- 調節弁の取付けは、配管のフラッシングが終わってから行う
- 空気で吹く場合は、吹き溜まりになる部分を開放し、塔槽類と切り離し、計器や弁を取り外して仮の短管でつなぐ
- ポンプの試運転を兼ねてフラッシングするときは、ポンプの吸込みに金網を付けて異物を吸い込まない
- 蒸気で吹く場合は、先に少量の蒸気で十分に暖管してウォータハンマや急激な膨張を防ぎ、スチームトラップの前を開放しておく。暖管の前に、アンカーやスライドが図面どおりかを確かめる
- 放出端の吹き出す向きを考え、付近の作業に危険がないようにする
また、スタートアップの教科書は、試験の後で内部の流体を放出するときに、調節弁やグローブ弁から放出してはいけないと注意しています。異物が弁座の上に堆積したり、摺り合わせ部に傷をつけたりするからです。
フラッシングの後は、ポンプの吸込みや計器の前に仮設ストレーナを入れて運転し、異物を受けます。洗浄の結果は、配管の末端から出る水の汚れや、配管に入れたろ過網の汚れ、継手を何か所か開けた内部の点検で判断します。酸素配管のように油脂が付いてはいけない配管では、油脂の付着も確かめます。
蒸気配管の暖管とドレンの扱いは蒸気・ドレン配管とスチームトラップ、圧縮機まわりのフラッシングは圧縮機の据付と試運転で説明しています。可燃性ガスを入れる前の窒素置換は置換・パージの実務を参照してください。試運転で圧力と温度を上げていく立上げの操作は、この記事の範囲の外です。
10. 例:常用の圧力1.6 MPaのガス配管を試験する
条件を置いて、ここまでの判断を1本の配管でたどります。数値は考え方を示すための例です。
条件
- 一般高圧ガス保安規則の定置式製造設備の高圧ガス設備に当たる、可燃性ガスの配管
- 常用の圧力 1.6 MPa(ゲージ)、内径約200 mm、長さ約100 m、高低差15 m
- 途中に逆止弁、オリフィス、調節弁、安全弁がある。下流は常用の圧力の低い容器につながる
判断1:試験圧力
一般高圧ガス保安規則 第6条第1項第11号・第12号から、次のとおりです。
| 試験 | 倍率 | 試験圧力 |
| 水で耐圧試験 | 1.5倍以上 | 2.4 MPa以上 |
| 気体で耐圧試験(液体が困難なとき) | 1.25倍以上 | 2.0 MPa以上 |
| 気密試験 | 常用の圧力以上 | 1.6 MPa以上 |
判断2:水か気体か
試験体の体積は約3.1 m³です。前の式で見積もると、水で2.4 MPaにしたときにたまるエネルギーは約4 kJ、空気で2.0 MPaにしたときは約9,600 kJで、気体は水の2,000倍を超えます(TNT換算で約2 kg)。水が使えるなら水で行います。
判断3:水の重さ
水の質量は約3.1トン、1 mあたり約31 kgです。ガス配管として決めたサポートがこの重さに耐えるかを確かめ、足りなければ仮の支柱を入れます。
判断4:試験境界
- 安全弁は外して盲板、調節弁とオリフィスは外して短管にする
- 下流の容器とは、弁ではなく盲板で切る
- 試験ポンプは逆止弁の入口側につなぐ
- 高点にベント、低点にドレン。圧力計は加圧源側と配管側に付ける
判断5:高低差
高低差15 mの静水頭は約0.15 MPaです。最高点で2.4 MPaを読むなら、最低点は約2.55 MPaになります。最低点のフランジと弁がこの圧力に耐えるかを確かめ、どこで試験圧力を読むかを要領書に書きます。
判断6:試験後
低点から水を抜き、乾燥させます。盲板を一覧と照合して外し、安全弁・調節弁・オリフィスを戻し、試験に使ったボルトナットを替えます。そのうえで窒素で気密試験を行い、フラッシングへ進みます。
11. 設計ノート:式の前提、規格の読み方、例外
蓄積エネルギーの式の前提
- 水の式は、水が圧縮された分のエネルギーだけで、管や容器が弾性変形してためるエネルギーは含みません。水の圧縮率は温度と圧力で少し変わります(この記事の計算は20℃付近の値)
- 気体の式は、理想気体が試験圧力から大気圧まで断熱膨張するときの仕事です。実際の破裂では、この一部が圧力波や破片の運動エネルギーになります
- 式の目的は、水と気体の危険の桁の違いをつかむことです。 立入禁止範囲などを決めるときは、適用する基準や社内規定の方法を使います
試験の「基準」と「方法」を分けて読む
法令の条文が決めているのは、何倍以上の圧力で試験に合格すること、という基準です。昇圧の段数、保持時間、漏れの確かめ方などの方法は、例示基準、規格、社内の要領書で決まります。条文の倍率だけで要領書を書かず、方法の出典も確かめます。
真空で使う配管
真空で使う配管は、外から圧力を受ける設計です。1989年の化学装置便覧は、真空配管の耐圧試験について、水張りできるものは約0.2 MPa(2 kgf/cm²)の水圧、水張りできないものは約0.1 MPa(1 kgf/cm²)以下の圧縮空気か窒素を使う例を挙げています。運転に近い状態での確認として、試運転前に減圧テストで到達真空度と圧力の戻りを記録します。
定期修理での試験
定期修理で配管の一部を取り替えたり溶接補修したりしたときは、その部分の耐圧試験と、組み立て後の気密試験が必要になることがあります。高圧ガス保安技術の教科書は、定期検査の気密試験は、分解整備のため取り外した小配管や計測機器を取り付けた運転開始直前、つまり定期検査の最終段階で行うのが一般的だとしています。最後に触った継手ほど、最後の気密試験で確かめるという順番です。
12. レビューで聞く5問
- このラインに適用される法規・規格はどれで、試験圧力は何の圧力の何倍か。 基準にした圧力(常用の圧力、最大常用圧力、設計圧力)を言えるか
- 試験範囲から外す機器(ポンプ、安全弁、調節弁、オリフィス、伸縮継手、計器)と、その切り方(盲板、短管)が図面に書かれているか。 圧力の違う系統を弁1つで区切っていないか
- 高点のベントと低点のドレンは、試験の水張りと水抜きに足りているか。 空気溜まりになる所に仮設ベントの手配があるか
- 水を張ったときの重さに、ガス配管のサポートやばねハンガは耐えるか。 高低差による最低点の圧力を確かめたか
- 気体で耐圧試験をする場合、その理由、溶接部の非破壊検査、試験温度、立入禁止範囲、放出弁が要領書にあるか
13. 製造・保全で確認する5点
- ラインチェックの報告書で、手直し箇所がすべて「完了」になり、再確認した人が記入しているか
- 試験用盲板の一覧と現物の札が一致し、外すべき盲板がすべて外れているか
- 取り外した安全弁、調節弁、オリフィスが元に戻り、流れの向きが正しいか
- 試験水が抜けて乾いているか。 冬季は低点、弁の中、計器の導圧管に水が残っていないか
- フラッシング後の仮設ストレーナの位置と、いつ外すかが運転側に引き継がれているか
まとめ
- ラインチェックは図面・仕様どおりかを、耐圧試験は強さを、気密試験は漏れを確かめます。 3つは代わりにならず、どれかを省くとその分の不具合が試運転へ持ち込まれます。
- ラインチェックは系統・エリアごとに現物を1本ずつたどり、弁の向き、材質とレイティング、フランジとボルト、サポートの固定点・遊動点、仮設物、操作性を見ます。 手直しは完了後に再確認して記録します。
- 耐圧試験は原則として水で行います。 気体は同じ条件で水の数千倍のエネルギーをためます。水圧試験でも空気を残せばエネルギーは増えます。
- 試験圧力の倍率と基準の圧力は、高圧ガス保安法、消防法、各規格で違います。 条文と規格の原文で確かめます。
- 試験境界は盲板でつくり、ポンプ・安全弁・調節弁・伸縮継手などは外に出します。 逆止弁は入口側から加圧し、出口側から抜けるようにします。
- 昇圧は段階的に、保持は全継手の点検が終わるまで、降圧はゆっくり、水抜きは高点のベントを開けて行います。
- 水抜き・乾燥・盲板の撤去・部品とボルトの復旧・フラッシングまで終えて試験完了です。 調節弁はフラッシングの後に付けます。
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参考文献
- 西野悠司『そうか!わかった!プラント配管の原理としくみ』日刊工業新聞社, 第1章 1.2「配管技術者の仕事」 Amazonで見る
- 化学工学協会編『化学プラント建設技術(中)』第8章「化学プラントの配管工事」8.5.3「ラインチェック」、8.5.4「検査および試験」(図8・5、図8・6)、8.6(取付けの注意、フラッシング、工事上のチェックポイント)
- 化学工学協会編『化学プラント建設技術(下)』第14章「化学プラントのスタートアップ」(テスト・点検、水循環・フラッシング)、第15章「化学プラントの検査点検保守」15.2.3「現場工事における検査」(図15・12)
- 化学工学協会編『化学装置便覧 改訂二版』丸善, 第13章「配管」13.5.3「検査」(表13・25「耐圧試験の要点」、表13・26「気密試験の要点」) Amazonで見る
- 化学工学協会編『プロセス設計シリーズ2 プラントの安全と公害対策』化学工業社, 第1章「プロセス設計のための安全対策」(耐圧・気密試験時の蓄積エネルギー計算、図1・14、図1・15)
- 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術(甲種化学・機械講習テキスト)』第21次改訂版, 保安管理技術編 4.2.3「検査の方法」、4.2.4「定期検査の要点」、学識編 第11章「高圧設備」(溶接部の検査)
- 『高圧ガス製造保安責任者 甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』令和4年度 法令 問16
- 一般高圧ガス保安規則(e-Gov法令検索) 第6条第1項第11号・第12号
- 危険物の規制に関する政令(e-Gov法令検索) 第9条第1項第21号
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