動画解説はこちら|YouTube

防爆の基礎|危険場所のゾーン、耐圧・本質安全・安全増の違い、現場計器の銘板の読み方

防爆の基礎のアイキャッチ

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

可燃性のガスや蒸気が漏れるおそれのある場所では、電気機器そのものが着火源になります。防爆とは、電気機器を着火源にしない構造にすることです。

場所の危険度は「0種・1種・2種」の3段階に分け、機器の側は「耐圧防爆・本質安全防爆・内圧防爆・安全増防爆」などの構造で応じます。どの場所にどの構造を置いてよいかは決まっていて、使用者が決める役割です。

この記事では、危険場所の分け方、代表的な防爆構造の違い、現場計器の銘板に書かれた「Ex d IIC T4」の読み方、そして交換や仮設のときに現場で確認することを説明します。

この記事の結論

  • 危険場所は 0種(常時)・1種(1万時間に1時間以上)・2種(100万時間に1時間以上) の3区分
  • 耐圧防爆は1種・2種、本質安全防爆はすべての場所、安全増防爆は原則2種。0種に置けるのは本質安全だけ
  • プロセス計装の主流は耐圧防爆。伝送器など小さな電子機器は本質安全防爆も多い
  • 本質安全防爆は現場機器だけでは成り立たない。計器盤側の安全保持器(バリヤ)と、認定された組合せで使う
  • 銘板の「Ex d IIC T4」は 構造の種類・ガスのグループ・温度等級 の順。旧規格の「d2G4」とは数字の意味が違う
  • 計器を交換・仮設するときは、場所の区分と銘板の適合を確認してから電源を入れる

1. 防爆とは何か|着火源をなくす

爆発には、可燃性物質・酸素・着火源の3つが要ります。プラントの可燃性物質は漏れるものとして扱い、酸素は空気中にあるので、電気機器の側で管理できるのは着火源だけです。

電気機器は、スイッチの火花、モータの巻線の発熱、電子回路のショートなど、正常に動いていても着火源になり得ます。防爆構造とは、これらの火花や熱が外の爆発性雰囲気に火をつけないようにした構造で、国が定めた規格に基づき公的機関の検定を受けた機器だけが「防爆機器」を名乗れます。

日本では労働安全衛生法に基づく規則で、爆発のおそれのある場所には検定に合格した防爆機器を使うことが義務付けられています。計装機器の教科書は「防爆では、計装機器の選定に加えて計装工事が重要」と指摘しています。機器を正しく選んでも、配線や接地が規定どおりでなければ防爆は成り立ちません。

2. 危険場所の3区分|0種・1種・2種

危険場所は、爆発性雰囲気がどのくらいの頻度で存在するかで3つに分けます。区分はプロセス設計の段階で場所ごとに決め、決めるのは使用者(事業者)の役割です。

区分定義現場の例
0種場所常時、可燃性物質が存在する可燃性液のタンクの内部、通気管の出口の近く
1種場所10,000 時間に 1 時間以上、危険雰囲気になる通常運転で漏れが予想される機器のまわり(ポンプの軸封部、サンプリング口)
2種場所1,000,000 時間に 1 時間以上、危険雰囲気になる異常時だけ漏れる可能性がある機器のまわり、1種場所の外周

国際規格では Zone 0・1・2 と呼びます。数字が小さいほど危険です。自分の担当エリアのどこが何種かは、防爆区域図(危険場所区分図)に書いてあります。計器を置く前に、必ずこの図を見ます。

3. 代表的な防爆構造|4つの考え方

防爆構造にはいくつもの種類がありますが、考え方は「爆発しても外に出さない」「そもそも火花を出さない」「中に入れない」「火花が出にくい設計にする」の4つに整理できます。

危険場所と防爆構造の対応
危険場所と防爆構造の対応
構造記号考え方使える場所計装での使いどころ
耐圧防爆d容器の中で爆発しても圧力に耐え、外へ引火させない1種・2種プロセス計装の主流。伝送器、スイッチ、モータ
本質安全防爆ia/ib正常時も事故時(短絡・断線)も、火花と熱のエネルギーが小さく着火しないすべての場所(ia は0種も可)伝送器、センサ、電子式の小型計器
内圧防爆p容器に空気などを送り込み、内圧を周囲より高く保って可燃性ガスを入れない1種・2種大型の分析計、非防爆機器を収めた盤
安全増防爆e通常は火花や高温部が出ない機器を、さらに壊れにくく作る原則 2種ポンプ・ブロワのモータ、端子箱

0種場所には原則として電気機器を置かないのが設計の基本です。置くなら本質安全防爆だけです。

安全増防爆については注意が要ります。計装の教科書は「2種場所に限定して使用できる」としています。一方、古い実務書には1種場所の電動機に「まれに安全増防爆構造(火花発生機構のないもの)」を使った例があり、現在の国際整合の技術指針でも条件付きで1種場所の例があります。現場では「安全増は2種」を基本にし、1種場所に置く案が出たら計装・電気の担当に確認するのが安全です。

4. 本質安全防爆は「組合せ」で成り立つ

伝送器のような小さな電子機器では、本質安全防爆がよく使われます。回路のエネルギーを、火花が出ても着火しない大きさに抑える方式です。

ここで大事なのは、現場の機器だけでは本質安全防爆にならないことです。計器盤側に「安全保持器(バリヤ)」を置いて、現場へ流れるエネルギーを制限し、さらに現場への配線が一般回路と混触しないように施工します。

場所機器役割
危険場所(現場)検出器、操作端本質安全防爆の認定品
計器盤(安全場所)安全保持器現場へ流れる電圧・電流を制限する
計器盤(安全場所)制御システム、電源一般回路

計装メーカーの実務書は、安全保持器はその伝送器との組合せが認められたもの以外を使ってはならないと念を押しています。電気的な仕様の数字が合っていても、認定された組合せでなければ使えません。伝送器を別メーカーに交換するときに見落としやすい点です。

5. 銘板の読み方|Ex d IIC T4 X

防爆機器の銘板には、検定合格の標章と防爆の仕様が書かれています。国際規格に整合した表示は、次の順に読みます。

位置例意味
ExEx防爆構造であることを示す
構造の種類dd 耐圧、p 内圧、e 安全増、o 油入、ia/ib 本質安全、s 特殊
グループIICII は工場・事業所用(I は鉱山)。ガスの危険性で IIA(プロパンなど)・IIB(エチレンなど)・IIC(水素・アセチレン)に分かれ、C が最も厳しい
温度等級T4機器の最高表面温度の上限。T1 450℃以下から T6 85℃以下まで。数字が大きいほど表面温度が低い
使用条件X使用上の条件付き。取扱説明書で条件を確認する

温度等級は、周囲のガスの発火点より機器の表面温度が低いことを保証するものです。T4 は表面温度が 135℃ を超えない機器で、発火点が 135℃ より高いガスに使えます。

旧規格の記号と混同しない

古い設備には、旧規格の「d2G4」のような表示が残っています。これは「構造 d、爆発等級 2、発火度 G4」の順で、同じ数字でも新旧で意味が違います。旧規格の G4 は「発火点が 135℃ を超え 200℃ 以下のガス」を指し、新規格の T4 は「機器の表面温度が 100℃ を超え 135℃ 以下」を指します。旧表示の機器を新表示の機器に置き換えるときは、機械的に数字を合わせず、対象ガスの発火点から選び直します。

国内の検定は、旧規格(防爆構造規格)と国際整合の技術的基準の2本立てで行われてきました。銘板がどちらの表示かをまず見分けるのが、読み方の第一歩です。

6. 現場で見る場所|交換・仮設・開放のとき

防爆で事故が起きるのは、機器を選ぶときより、現場で触るときです。次の場面で確認します。

  1. 計器の交換:交換品の銘板が、その場所の区分・ガスのグループ・温度等級に適合しているか。本質安全なら安全保持器との組合せが認定されているか
  2. 仮設の計器・照明・工具:仮設でも防爆区域なら防爆品が要る。非防爆の測定器を持ち込むときは、ガス検知と火気使用の手続きに従う
  3. 耐圧防爆容器のカバーを開ける:開ける前に電源を切り、内部のコンデンサが放電するまで待つ。カバーのねじを1本でも締め忘れると耐圧構造にならない
  4. 配線工事のあと:防爆用のケーブルグランド、耐圧パッキン、電線管のシールが規定どおりか。本質安全回路と一般回路の分離
  5. 周囲温度:防爆機器の基準周囲温度は 40℃ が上限。夏場の日射や蒸気配管の近くでは、温度等級の余裕が減る

「防爆品を買ったから大丈夫」ではなく、据え付けと保守が規定どおりで初めて防爆になります。

7. 先輩に聞かれたら答えられる3問

  1. 1種場所と2種場所の違いを、時間の目安で言えますか。
  2. 0種場所に置ける防爆構造は何ですか。
  3. 銘板の「Ex d IIC T4」の d・IIC・T4 はそれぞれ何を表しますか。

答えは順に、1種は 10,000 時間に 1 時間以上・2種は 1,000,000 時間に 1 時間以上の危険雰囲気、本質安全防爆(ia)、耐圧防爆構造・水素やアセチレンにも使えるガスグループ・最高表面温度 135℃ 以下です。

まとめ

防爆は、電気機器を着火源にしないための構造で、場所の側は 0種・1種・2種、機器の側は耐圧・本質安全・内圧・安全増などの構造で対応します。耐圧防爆は 1種・2種、本質安全防爆はすべての場所、安全増防爆は原則 2種と覚え、0種に置けるのは本質安全だけです。

本質安全防爆は現場機器と安全保持器の認定された組合せで成り立ちます。銘板の Ex d IIC T4 は構造・ガスグループ・温度等級の順に読み、旧規格の d2G4 とは数字の意味が違います。交換や仮設のときは、場所の区分と銘板の適合を確認してから電源を入れてください。

関連記事

この章(計装の基礎)の記事

あわせて読みたい

参考文献

  • 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 7.2.1「安全に関する法規」  Amazonで見る
  • 横河電機編『計装メーカが書いた フィールド機器・虎の巻』工業技術社, Ⅱ 3.3「設置環境条件による分類」、付録3「防爆に関する法規と規格」
  • 化学工学協会編『化学プラント建設技術(中)』, 9章「化学プラントの電気設計と工事」
化学プラントニュース―週報と事故速報をわかりやすく紹介するnoteマガジン PLANT NEWS ON NOTE 化学プラントニュース 化学・石油プラントの重要ニュースを、毎週の週報と事故速報でお届けします。現場で押さえたい動きを、わかりやすく整理します。 noteで最新ニュースを読む