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ガスの性質②毒性・腐食性ガスの論点|アンモニア・塩素・CO・フッ素・シアン化水素・特殊材料ガス【甲種化学・保安】

ガスの性質②|アンモニア・塩素・CO・シアン化水素・特殊材料ガス

保安管理技術の分野B(ガスの性質)のうち、毒性ガス・腐食性ガスの論点を並べた記事です。見出しがガスの名前なので、目次から引いてください。ガスごとの学識の解説はガス各論①・ガス各論②へ。

分野B:ガスの性質①可燃性・支燃性・不活性ガス|ガスの性質②毒性・腐食性ガス(この記事)

可燃性で毒性もあるガス載っている論点
アンモニア②アンモニア
一酸化炭素②一酸化炭素
硫化水素②硫化水素と二酸化硫黄
シアン化水素②シアン化水素
酸化エチレン①エチレン・酸化エチレン・ブタジエン

アンモニア ── 銅は腐食、鉄は常温ならよい。可燃性だが着火しにくい

アンモニアは銅、乾燥塩素はチタンがだめ:アンモニアは銅を腐食し鉄は常温なら使えるが高温高圧で窒化する。乾燥塩素は鉄が使えチタンが発火し、湿った塩素は鉄を腐食しチタンが使える

アンモニアは銅・銅合金を激しく腐食します。鉄は常温なら腐食しませんが、高温・高圧では窒化と水素脆化を起こします。可燃性でも発火エネルギーが大きく、着火しにくいガスです。

問われる形正誤ポイント
アンモニアは銅・銅合金に腐食性を示さないが、鉄には激しい腐食性を示す×まったく逆(R3国試問2ハ・H29検定問2イ・H30国試問2ハ)
アンモニアは常温でも鉄を激しく腐食し、窒化・水素脆化を起こす×常温の鉄は腐食しない。窒化・水素脆化は高温・高圧(R1検定問2イ・R7検定問7ハ)
アンモニアは発火エネルギーが小さいので、空気中で容易に発火してバーナ火炎もつくりやすい×発火エネルギーは大きく、燃焼速度は小さい
常温・常圧の空気中で、アンモニアの最小発火エネルギーはエタンより小さい×アンモニアのほうが大きい

出題:国試3記述・検定9記述(平成28〜令和7年度)

最小発火エネルギーは水素やエタンよりけた違いに大きい

ガス(常温・常圧の空気中)最小発火エネルギーの最低値(×10−5 J)
水素1.6
アセチレン1.9
エタン24
アンモニア1400
  • 空気中の爆発範囲は15〜28 vol%と狭い。ただし、空気との混合ガスに着火すれば爆発する
  • 酸素中では黄色い炎をあげて燃え、窒素と水を生じる
  • 強い刺激臭のある無色の毒性ガスで、水に非常によく溶け、水溶液は弱アルカリ性。塩素が過剰にあると、衝撃で激しく爆発する三塩化窒素ができる

関連:材料の選び方/冷凍サイクルとCOP(アンモニア冷媒)

塩素 ── 乾燥なら鉄はよいがチタンは燃える。湿った塩素はほとんどの金属を腐食

項目塩素
色・におい黄緑色・激しい刺激臭。空気より重い
燃焼性酸化力が強く支燃性(可燃性ではない)
水との反応溶けて塩酸と次亜塩素酸を生じる
水素との等体積混合ガス塩素爆鳴気。冷暗所では変化しないが、加熱・直射日光・紫外線で爆発的に反応して塩化水素
乾燥した塩素と材料常温なら鉄は使える(120℃を超えると腐食が進む)。チタンは激しく反応して発火
湿った塩素と材料チタン以外のほとんどの金属を激しく腐食

乾燥塩素は常温なら鉄も使えますが、チタンとは激しく反応して燃えます。 湿った塩素は逆に、チタン以外のほとんどの金属を激しく腐食します。

問われる形正誤ポイント
乾燥塩素は常温で腐食性が小さいので、配管材料にチタンも十分使える×チタンは乾燥塩素で発火(R4検定問2ハ・R6検定問2ニ・H30検定問2ハ)
乾燥した塩素は、常温で鉄をほとんど腐食しない○R1国試問2ハ
湿った塩素は、チタンと激しく反応する×湿った塩素にはチタンが耐える(R6国試問2イ)
水素と塩素の等体積混合ガスは、直射日光や紫外線を受けても冷暗所と同じく安定×加熱・直射日光・紫外線で爆発的に反応
塩素は無色・無臭で、乾燥していても常温で鉄を激しく腐食する×黄緑色・激しい刺激臭、乾燥なら鉄は使える(R3検定問2ハ)

出題:国試4記述・検定12記述(平成28〜令和7年度)

  • 塩素爆鳴気(水素と塩素の1:1)と水素爆鳴気(水素と酸素の2:1)を取り違えない(→ 水素)
  • 塩素自体は燃えない。可燃性物質に対して燃焼を支える側(支燃性)
  • 工業的には食塩水の電気分解でつくる。国内ではイオン交換膜法だけが行われている

関連:アンモニアは銅、乾燥塩素はチタンがだめ(図)/耐食材料の選定

一酸化炭素 ── 無色・無臭で毒性が強く、しかも可燃性。「不燃性」は×

可燃性で毒性もある主な5ガス:アンモニア・硫化水素・シアン化水素・酸化エチレン・一酸化炭素は可燃性ガスと毒性ガスの両方に当たり、一酸化炭素を不燃性とする記述は誤り

一酸化炭素は可燃性で、しかも毒性が強いガスです。無色・無臭で、吸い込むとヘモグロビンと結びついて酸素を運べなくします。正しい性質に「不燃性」を混ぜた記述は×です。

問われる形正誤ポイント
一酸化炭素は無臭で、ヘモグロビンと結びついて赤血球の機能を壊す不燃性のガス×可燃性(R4検定問1ロ・R6検定問1ロ・R7検定問1ニ)。毒性の部分は正しい
一酸化炭素は強い還元性をもち、条件によって金属カルボニルの生成や浸炭を起こす○高圧で鉄カルボニル、高温で浸炭
高温・高圧の一酸化炭素を扱う設備には、炭素鋼を避けて低合金鋼を使う×炭素鋼・低合金鋼とも避け、Ni-Cr系ステンレス鋼

出題:国試1記述・検定6記述(平成28〜令和7年度)

  • 血液中のヘモグロビンとの親和力は酸素の300〜400倍。吸い込むと一酸化炭素ヘモグロビンができて体内が酸素欠乏になる。無臭なので漏れに気づきにくい
  • 鉄族の金属(Fe・Co・Ni)と金属カルボニルをつくる。微粉状のニッケルとは室温付近でもニッケルカルボニルになり、鉄とは高圧で揮発性の鉄カルボニルをつくって鉄を侵す
  • 高温では鋼に炭素が拡散浸透して浸炭を起こし、鋼を脆くする
  • 空気中の爆発範囲は12.5〜74 vol%
  • 図の5ガスは可燃性ガスと毒性ガスの両方に当たる。片方の性質だけを書いた記述を疑う

関連:毒性の指標

フッ素とハロゲン化水素 ── フッ素は最強の酸化剤で支燃性。塩化水素・臭化水素は不燃性

ガス分類押さえる点
フッ素支燃性・毒性酸化力が元素の中で最も強い。水素とは冷暗所でも発火爆発。Al・Mg・Cu・Fe・Niなどは不動態皮膜で内部の腐食が抑えられる
塩化水素不燃性・毒性水に溶けて塩酸。水素よりイオン化傾向の大きい金属を侵して水素を出す
臭化水素不燃性・毒性無色・刺激臭。水分があると強い腐食性
フッ化水素毒性・腐食性沸点19.5℃。水に溶けやすく、水溶液はフッ化水素酸(フッ酸)

フッ素は支燃性(可燃性・還元性ではない)で、水素とは冷暗所でも反応します。塩化水素・臭化水素は不燃性ですが、水分があると金属を腐食し、塩化水素では発生した水素が空気中で爆発することがあります。

問われる形正誤ポイント
フッ素は非常に強い酸化剤で、水素とは冷暗所でも反応が進み得る○「可燃性」「還元性」とすれば×
フッ素と接触する金属には、反応を抑えるフッ化物の不動態皮膜はできない×Al・Mg・Cu・Fe・Niなどでは皮膜ができる
イオン化傾向が水素より小さい金属は、塩化水素に侵されて水素を発生する×水素より大きい金属(R3国試問2ニ)
臭化水素は可燃性で、水分があっても金属への腐食性は弱い×不燃性で、水分があると強い腐食性
フッ化水素は水に溶けやすく、腐食性・毒性とも強い○常温付近に沸点がある

出題:国試6記述・検定7記述(平成28〜令和7年度)

  • イオン化傾向:K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au。水素より左(大きい)の金属が酸に溶けて水素を出す(例:Fe + 2HCl → FeCl2 + H2)。水分があると作用は特に激しい
  • 塩化水素そのものは燃えない。危ないのは金属との反応で出る水素
  • フッ素の不動態化が起きても、運転条件を無視して材料を安全と決めつけない

関連:腐食のメカニズム

シアン化水素 ── 水分・アルカリで重合が進む。安定剤は硫酸などの無機酸

項目シアン化水素
性状沸点25.7℃、無色・透明、アーモンドのような臭い。可燃性かつ毒性
重合を進めるもの水分・アルカリ性物質(重合は発熱反応で自触作用があり、爆発することもある)
安定剤無機酸(硫酸・リン酸など)を少量
水に溶けると弱酸性
酸による加水分解ホルムアミドを経てギ酸とアンモニア
毒性吸入すると中枢神経に作用して呼吸機能を麻痺させる。作用が速い

シアン化水素は水分やアルカリ性物質で重合が促進され、ときには爆発します。安定剤は硫酸・リン酸などの無機酸で、アルカリを「安定剤」とする記述は×です。

問われる形正誤ポイント
水分で重合爆発することがあるので、安定剤としてアルカリ性物質を少量加える×アルカリは重合を促進する(R2国試問2イ)
水を含むと重合することがあるので、安定剤として硫酸を少量加える○H28検定問2ロ
水溶液は弱アルカリ性で、吸入すると呼吸機能を急速に麻痺させる×水溶液は弱酸性(毒性の部分は正しい)
酸で加水分解すると、ホルムアルデヒドを経てギ酸とアンモニアになる×経由するのはホルムアミド

出題:国試1記述・検定5記述(平成28〜令和7年度)

  • 純粋なシアン化水素は安定。重合を進めるものと止めるものが正反対なので、取り違えは重大な誤りになる
  • 空気中の爆発範囲は5.6〜40.0 vol%
  • 工業的には、アクリロニトリル製造(Sohio法)の副生物から回収する

関連:除害設備と毒性ガスの処理

硫化水素と二酸化硫黄 ── 硫化水素は可燃性で水分があると腐食大、二酸化硫黄は不燃性

項目硫化水素(H2S)二酸化硫黄(SO2)
色・におい無色・腐卵臭無色・強い刺激臭
燃焼性可燃性(青い炎で燃えてSO2)不燃性
毒性強い。低濃度でも中枢神経を麻痺させる。高濃度ではすぐ嗅覚が麻痺し臭いで気づけない強い
化学的性質還元性が強い水に溶けて酸性
腐食水分があると特に著しい―

硫化水素は可燃性かつ毒性で還元性が強く、水分がある環境で腐食性が特に著しくなります。二酸化硫黄は不燃性の毒性ガスで、水に溶けると酸性です。

問われる形正誤ポイント
硫化水素は、水分のある環境ほど鋼への腐食性が小さくなる×水分があると特に著しい
回収した硫化水素は、二酸化硫黄と反応させて硫黄に変えられる○クラウス法。ボーキサイトやアルミナが触媒
二酸化硫黄は可燃性で、水に溶けても中性を保つ×不燃性で、水溶液は酸性

出題:国試3記述・検定5記述(平成28〜令和7年度)

  • 硫化水素は合成ガスの精製装置や石油の水素化脱硫装置から回収される。大量に使う用途がないので、クラウス法で硫黄に変える(250〜350℃)
  • 硫化水素の空気中の爆発範囲は4.0〜44.0 vol%。高濃度のガスを多量に吸い込むと即死することがある
  • 二酸化硫黄の用途の大部分は硫酸の製造

関連:ガス各論①(硫黄・窒素化合物系)

窒素酸化物 ── 麻酔に使い分解爆発するのは亜酸化窒素。一酸化窒素は無色・無臭

項目亜酸化窒素(N2O)一酸化窒素(NO)
色・におい無色・若干の甘味常温で無色・無臭
燃焼性支燃性支燃性
危険性標準生成エンタルピーが正。高圧のガスにエネルギーを与えると分解爆発酸素で酸化されて二酸化窒素になりやすい
主な用途医療用麻酔、半導体のシリコン酸化膜(CVD)、エアバッグオレフィンのラジカル反応防止剤、シリコン酸化膜の成膜

麻酔に使い、分解爆発するのは亜酸化窒素(N2O)です。支燃性で、アセチレンと同じく標準生成エンタルピーが正の化合物です。一酸化窒素(NO)は無色・無臭で、ラジカル反応の防止や成膜に使います。

問われる形正誤ポイント
亜酸化窒素は支燃性をもたず、標準生成エンタルピーも負なので単独では分解爆発しない×支燃性、生成エンタルピーは正、高圧で分解爆発
一酸化窒素は常温で無色・無臭で、ラジカル反応の抑制や成膜に使われる○代表的な麻酔ガスは亜酸化窒素
亜酸化窒素は、分解爆発性を利用して自動車のエアバッグにも使われる○麻酔・CVD・エアバッグ

出題:国試1記述・検定5記述(平成28〜令和7年度)

  • 亜酸化窒素の標準生成エンタルピーは82.1 kJ/mol(正)。物理的性質は二酸化炭素によく似ている
  • 二酸化窒素は赤褐色で刺激臭がある。一酸化窒素・二酸化窒素はいずれも支燃性
  • 一酸化窒素は高圧ほど不均化反応が進むので、容器への充塡圧は3 MPa程度に抑えられている

関連:分解爆発と自然発火性の違い(図)

ホスゲン ── 加水分解なら二酸化炭素と塩酸、加熱なら一酸化炭素と塩素

項目ホスゲン(COCl2)
色・におい無色で青草臭(市販品の液は淡黄緑色)
燃焼性可燃性でも支燃性でもない
毒性極めて強い(50 ppm以上の空気を吸うと30分以内に死亡)
乾燥状態常温で通常の金属材料をほとんど腐食しない
水分があると加水分解して二酸化炭素と塩酸。塩酸が金属を腐食
加熱すると一酸化炭素と塩素に分解(生成反応 CO + Cl2 の逆)
除害水酸化ナトリウムに極めて速やかに吸収される

ホスゲンは加水分解なら二酸化炭素と塩酸、熱分解なら一酸化炭素と塩素。生成物の組合せを入れ替えた記述や、乾燥・湿潤の腐食性を逆にした記述に注意します。

問われる形正誤ポイント
水分があると加水分解して二酸化炭素と塩酸を生じ、その塩酸が金属を腐食する○常温の乾燥状態ならほとんど腐食しない
ホスゲンは無色・無臭で、可燃性を示すガス×青草臭があり、可燃性でも支燃性でもない
ホスゲンを加熱すると、一酸化炭素と塩素に分解する○加水分解の生成物と取り違えない

出題:国試2記述・検定2記述(平成28〜令和7年度)

  • 一酸化炭素と塩素を活性炭触媒上で反応させてつくる
  • 塩素の黄緑色・刺激臭、一酸化炭素の無臭と入れ替えた記述が作られやすい

関連:除害設備と毒性ガスの処理

特殊材料ガス(シラン・ホスフィン・アルシン・ジボラン・ゲルマン) ── シラン・ホスフィンは自然発火、ジボランは熱的に不安定

ガス燃焼・分解押さえる点
モノシラン・ジシラン可燃性・自然発火性(常温でも空気に触れると発火)純水・酸性水溶液とはほとんど反応せず、アルカリ性水溶液と反応して水素
ホスフィン可燃性・室温の空気中で自然発火常温では安定、約300℃から分解
アルシン可燃性・極めて強い毒性ヒ素を含む。にらのような不快臭。常温で安定、230〜240℃付近から分解
ジボラン可燃性・熱的に不安定(室温でも徐々に分解)常温付近では発火しないが、80℃付近で自然発火
モノゲルマン毒性・分解爆発性350℃以上でほとんど完全にゲルマニウムと水素に分解。空気中では約85℃で自然発火

シラン・ジシラン・ホスフィンは自然発火性(着火源がなくても空気に触れると燃える)、ジボランは熱的に不安定、ゲルマンは分解爆発性。「自然発火しない」「熱的に安定」とした記述は×です。

問われる形正誤ポイント
モノシランは可燃性だが自然発火性はなく、空気と接触して滞留しても発火しない×自然発火性がある(R3検定問2ニ・R6検定問2ホ)
モノシランは、アルカリ性水溶液より酸性水溶液と激しく反応して水素を出す×反応するのはアルカリ性水溶液
ジボランは毒性が極めて強く、不燃性で熱的に安定性の高いガス×可燃性で熱的に不安定(R2検定問2ホ)
ホスフィンは自然発火することはないが、常温で分解する×常温では安定で、空気中で自然発火する(R1検定問2ホ)
モノゲルマンは無毒で熱的に安定し、350℃を超えても分解しない×毒性・分解爆発性があり、350℃以上でほぼ完全に分解

出題:国試2記述・検定10記述(平成28〜令和7年度)

  • アルシンはヒ素(As)、シランはケイ素(Si)を含む。名前で混同しない。アルシンは塩素と激しく反応して塩化水素とヒ素を生じる
  • ジボランの分解でデカボランなどの固体ができると、減圧弁の出流れが起こることがある
  • シランは不活性ガスで低濃度に薄めても空気中で発火・爆発することがある。逆に、高速で流出すると発火せずに空気と混ざり、あとで着火すると激しく爆発する危険がある

関連:自然発火/分解爆発と自然発火性の違い(図)

出典:高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』ほか。平成28〜令和7年度の国家試験・技術検定の出題を論点ごとに整理しました。

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