保安管理技術の分野H(運転管理・設備管理・検査)のうち、設備管理と検査の論点を並べた記事です。見出しが論点名なので、目次から引いてください。
分野H:運転管理|設備管理と検査(この記事)
目次
- 保全方式と保全計画 ── 予防保全は時間基準保全と状態基準保全、計画事後保全は含まない
- 設備診断と日常の点検 ── 日常点検は運転員、OSIは検査担当者が運転中に行う
- 非破壊試験(PT・MT・ET・RT・UT・AE) ── PTは表面開口だけ、MTは強磁性体だけ、ETは非磁性でも可
- 破壊試験 ── 疲労試験・硬さ試験も破壊試験、クリープ破断時間はクリープ試験で
- 耐圧試験と気密試験 ── 耐圧は原則水で常用の1.5倍以上、気密は危険性のない気体で常用以上
- 安全装置・安全計装の検査 ── 検知警報は設定値の1.6倍で30秒以内、緊急遮断装置は作動と弁座漏れ
- 回転機の保全 ── ポンプの空引きはケーシングに気体がたまる。吸込み圧力の低下か液の気化で起こる
保全方式と保全計画 ── 予防保全は時間基準保全と状態基準保全、計画事後保全は含まない

予防保全(PM)は、機能停止や性能低下の前に計画的に整備して突発故障を防ぐ方式で、時間基準保全(TBM)と状態基準保全(CBM)がこれに入ります。計画事後保全(BM)は計画保全の一つですが、予防保全ではありません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 予防保全には、時間基準保全や計画事後保全が含まれる | × | 計画事後保全は予防保全ではない |
| 時間基準保全は、劣化傾向を監視して寿命を予測し、整備の時期を決める | × | それは状態基準保全。TBMは定めた周期で交換・修理 |
| 状態基準保全では、交換・修理の周期を実績や同種設備の事例から決める | × | それは時間基準保全 |
| 保全方式は施設ごとに1つに統一し、どの機器にも同じ方式を当てる | × | 機器・部品ごとに重要度・経済性・故障予知技術の有無で選ぶ |
| 塗装や進行が遅く範囲の広い腐食は、長期計画を立てて実施する | ○ | 更新費用が大きい |
出題:国試19記述(平成28〜令和7年度)
時間基準保全と状態基準保全
| 時間基準保全(TBM) | 状態基準保全(CBM) | |
|---|---|---|
| 整備の時期 | 定めた周期(摩耗・詰まり・腐食・劣化を考え、実績や同種設備の事例から) | 劣化傾向を連続または定期に監視して寿命を予測 |
| 別名 | 定期保全 | 予知保全 |
| 注意点 | 周期を安全側にとるとオーバーメンテナンス、長すぎると突発故障 | 監視の設備・工数が要るが、異常の早期発見に信頼性が高い |
- 計画事後保全:故障や性能低下が起きてから整備することを前提に、計画的に管理する。生産や安全の維持に支障のない設備に当てる
- 改良保全:性能・健全性・保全性を高めるように設備を改善する。機器設計の改良提案を含むこともある
- 重要度ランクは安全性・生産性・保全性の観点で分ける。生産保全は安全を前提に、経営的な視点で生産性・経済性を高める考え方
- 保全計画は、材質・構造・使用環境・運転と検査の履歴、起こりうる劣化損傷を踏まえて立てる
設備診断と日常の点検 ── 日常点検は運転員、OSIは検査担当者が運転中に行う

| 区分 | だれが・いつ | 主な中身 |
|---|---|---|
| 日常点検 | 運転員が運転監視のため、1日1回以上 | 漏えい、計器の指示・警報、運転条件、損傷、回転機械や配管の振動・異音、ガス検知設備、液面、接地接続線 |
| 日常検査(OSI) | 設備管理部門の検査担当者が検査機器で、運転中に | 聴音棒・簡易振動計・ガス検知器・超音波厚さ計。配管は赤外線サーモグラフィや放射線透過で減肉も |
| 定期検査 | 1年に1回以上 | 気密試験、開放検査(目視・非破壊)、安全装置の作動検査 |
| 設備診断 | 劣化状態に使用環境・材料特性を加える | いつまで使えるかを予測し、健全性を総合的に診断 |
OSI(On Stream Inspection)は運転中に行う検査で、定期検査だけではつかみにくい運転中の経時変化を補います。日常検査の内容は、損傷要因・過去の検査データ・運転条件の変化・類似設備の事故情報から決めます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| OSIは、設備を停止して開放した状態でだけ行う検査 | × | 運転中に行う |
| 赤外線サーモグラフィは表面温度しか測れず、加熱炉の内面の耐火物の剥離は診断できない | × | 外面の温度分布から内面の耐火物の剥離・脱落が分かる |
| 取り外して清掃した熱交換器は、配管につないだあとの漏えい確認だけでよい | × | 機器単独で気密試験し、接続後もガスケット部などを確かめる |
| 配管の閉塞や弁の作動不良は、差圧測定と放射線透過試験で調べられる | ○ | 内部の状態を見る |
| 寿命予測は、異常を検出できれば終わる | × | 検出技術・損傷評価技術・余寿命予測技術の3つ |
出題:国試16記述・検定9記述(平成28〜令和7年度)
- 漏えいの診断は原因に合わせる。腐食減肉は肉厚測定、割れや接合部の漏れはガス検知や発泡液
- 音響検査はテストハンマで軽く叩いて音色で判定する。継目なし容器の充塡前のほか、はめあい部やボルトナットの緩みの点検にも使える
- 定期検査の記録には、検査年月日、検査したガス設備、設備ごとの検査方法と結果、監督した保安係員の氏名を書く
関連:リスクベース検査
非破壊試験(PT・MT・ET・RT・UT・AE) ── PTは表面開口だけ、MTは強磁性体だけ、ETは非磁性でも可

PT=表面に開口した欠陥だけ、MT=表面と表面近く(強磁性体だけ)、ET=導体なら非磁性体も可、RT・UT=内部。RTは透過、UTは反射を見ます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 浸透探傷は、表面に開口した欠陥と、表面近くの開口していない欠陥も検出できる | × | 表面に開口した欠陥だけ |
| 蛍光の浸透探傷・磁粉探傷は、暗い所で赤外線を当てて観察する | × | 紫外線(ブラックライト) |
| 磁粉探傷と渦電流探傷は、どちらも非磁性体の材料には使えない | × | ETは導体なら非磁性体にも使える |
| 放射線透過試験は、溶接部や鋳物の内部欠陥の検査に広く使われる | ○ | 入射方向に直角な薄い面状の欠陥は苦手 |
| 溶接部の非破壊試験は、溶接のあとすぐに行う | × | 遅れ割れの発生時間を考え、所定時間の後 |
出題:国試21記述・検定24記述(平成28〜令和7年度)
試験ごとの原理と制約
| 試験 | 原理 | 制約・特徴 |
|---|---|---|
| PT 浸透探傷 | 浸透液を染み込ませ、現像剤で吸い出す | 開口していない欠陥は見えない。金属以外にも使える |
| MT 磁粉探傷 | 磁化して、欠陥の漏えい磁束に磁粉を集める | 欠陥の位置と形状が分かる。オーステナイト系ステンレス鋼には使えない |
| ET 渦電流探傷 | 交流コイルの磁場で導体に渦電流を起こし、その変化を見る | 熱交換器チューブの割れ・腐食に使う |
| RT 放射線透過 | 透過後の放射線の強さの差をフィルムの濃淡に | ブローホールなど内部欠陥に強い。面状のき裂は向きで写らない |
| UT 超音波探傷 | 欠陥での反射・散乱 | 波長の短い(高周波の)超音波ほど位置の精度が上がる。厚肉にも向く |
| AE | 変形・破壊で出る弾性波をセンサで捉える | 外力や応力がかかった状態でしか実施できない |
- PTの工程は、前処理 → 浸透処理 → 余剰浸透液の除去 → 現像処理 → 観察。蛍光浸透液は暗い所で紫外線、染色浸透液は明るい所で観察し、精度は蛍光が少し高い
- RTを「反射・散乱を見る」、UTを「フィルムの濃淡で見る」とすり替える誤りが出る。き裂の検査はUTが向く
- 溶接部は外観・寸法を確かめ、遅れ割れを考えて所定時間の後にPT・MT・RT・UTを行う(→ 水素侵食と水素脆化)
関連:非破壊検査の使い分け/ステンレス鋼
破壊試験 ── 疲労試験・硬さ試験も破壊試験、クリープ破断時間はクリープ試験で

| 試験 | 方式 | 得られる情報 |
|---|---|---|
| 引張試験 | 引張り | 引張強度・降伏強度・延性・伸び・絞り |
| 衝撃試験 | シャルピー・アイゾット | 延性・遷移温度・破面など |
| クリープ試験 | 大気・環境クリープ | クリープ破断時間・クリープ延性など |
| 疲労試験 | 両振幅・片振幅の負荷など | 残存疲労強度・累積疲労強度 |
| 硬さ試験 | 圧痕(ビッカース) | 硬度分布(熱処理の状況・溶接の熱影響) |
設備の試験は、一部を切り取った試験片で調べる破壊試験と、壊さずに調べる非破壊試験に分かれます。疲労試験・硬さ試験も破壊試験で、ビッカースは硬さ試験の方式です。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 引張試験から得られるのは引張強度だけで、降伏強度や伸びは分からない | × | 降伏強度・延性・伸び・絞りも |
| シャルピー衝撃試験からクリープ破断時間が得られる | × | クリープ試験で求める |
| 疲労試験と硬さ試験は、設備を壊さずに行う非破壊試験に入る | × | 破壊試験 |
| 衝撃試験の方式にビッカース圧痕試験がある | × | ビッカースは硬さ試験 |
出題:国試1記述・検定6記述(平成28〜令和7年度)
衝撃試験で求める遷移温度は、低温で材料がもろくなるかどうかの目安です(→ 低温用材料)。
関連:金属材料の基礎
耐圧試験と気密試験 ── 耐圧は原則水で常用の1.5倍以上、気密は危険性のない気体で常用以上

| 試験 | 使う流体 | 圧力・手順 |
|---|---|---|
| 気密試験(開放した設備) | 原則空気その他の危険性のない気体 | 常用の圧力以上。規定圧力を10分以上保持してから漏れを確かめる |
| 気密試験(開放しない設備) | 運転状態の高圧ガスか危険性のない気体 | 運転状態の圧力。設備のガスを使うときは段階的に昇圧 |
| 耐圧試験(液圧) | 原則水 | 常用の圧力の1.5倍以上 |
| 耐圧試験(気体) | やむを得ないとき空気など | 常用の圧力の1.25倍以上。先に長手継手・周継手を放射線透過試験し、JISの1類か2類を確認 |
定期検査では原則として耐圧試験をせず、目視と非破壊検査で強度を確かめます。溶接補修や設備の一部の取替えなどで耐圧試験を行うことがあります。常用の圧力は、圧力が変動するなら変動範囲の最高の圧力です。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 開放した設備の気密試験には、原則としてその設備で扱う可燃性・毒性ガスを使う | × | 空気その他の危険性のない気体 |
| 開放しなかった設備は、試験圧力まで一気に上げ、保持せずすぐ漏れを確かめる | × | 段階的に昇圧し、10分以上保持してから |
| 水を使う耐圧試験は、原則として常用の圧力の1.5倍以上で行う | ○ | 気体なら1.25倍以上 |
| 運転圧力が変動する設備では、その平均の圧力を常用の圧力とする | × | 変動範囲の最高の圧力 |
| 気体で耐圧試験をする前に、長手継手と周継手を放射線透過試験する | ○ | 所定の等級を確かめる |
出題:国試1記述・検定10記述(平成28〜令和7年度)
- 気密試験も耐圧試験も、設備が脆性破壊を起こすおそれのない温度で行う
- 耐圧試験の規定圧力の保持時間は5〜20分が標準
- 開放した設備でも、運転状態の高圧ガスを使うのが適当なら、運転状態の圧力とガスで気密試験ができる
- 定期検査の気密試験は、小配管や計器を取り付けた運転開始の直前に、石けん水などでフランジやバルブグランドを重点に見る
関連:法令の耐圧試験と気密試験
安全装置・安全計装の検査 ── 検知警報は設定値の1.6倍で30秒以内、緊急遮断装置は作動と弁座漏れ

| 対象 | 定期検査ですること |
|---|---|
| ばね式安全弁・逃し弁 | 取り外すときは必要に応じて分解整備し、窒素などで加圧して作動圧力を設定。ばねの傷を点検 |
| 破裂板 | 外観検査。異常があれば性能を確かめてある破裂板に交換 |
| 緊急遮断装置 | 目視・作動検査、貯槽の開放時などに弁座の漏れ検査 |
| 貯槽の配管のバルブ | 目視・非破壊検査で耐圧性能と強度を確かめ、作動検査 |
| インターロック | 構成する遮断弁などの目視と、機構の作動検査 |
| ガス漏えい検知警報設備 | 試験用標準ガスで作動検査。設定値の1.6倍の濃度で30秒以内(アンモニア・一酸化炭素などは60秒以内) |
安全装置は目視検査に加えて、作動させて確かめられるものは作動検査をします。検知警報設備の発信の遅れは、警報設定値の1.6倍の濃度で通常30秒以内、応答の遅いアンモニア・一酸化炭素などは60秒以内です。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| メタンの検知警報設備が、設定値の1.6倍の濃度で90秒後に発信したので合格とした | × | 30秒以内 |
| 一酸化炭素の検知警報設備が、設定値の1.6倍の濃度で50秒後に発信したなら基準内 | ○ | 一酸化炭素などは60秒以内 |
| 破裂板は外観に異常があっても、まだ破れていなければ使い続けてよい | × | 性能を確かめた破裂板に交換 |
| 緊急遮断装置は作動検査をすれば、弁座の漏れ検査は要らない | × | 貯槽の開放時などに弁座の漏れも検査 |
| インターロックは省力化のためのもので、誤操作の防止には使わない | × | 誤操作や誤った順序の操作を防ぐ |
出題:国試3記述・検定4記述(平成28〜令和7年度)
回転機の保全 ── ポンプの空引きはケーシングに気体がたまる。吸込み圧力の低下か液の気化で起こる

| 現象 | 起こる機械 | 原因・場所 |
|---|---|---|
| 空引き | ポンプ | 液温が沸点近く・以上で液が気化/吸込み側のストレーナの詰まり・弁開度の不足・液面低下で吸込み圧力が下がる |
| キャビテーション | 遠心ポンプ | 圧力が最も低い羽根車の入口付近 |
| サージング | 遠心圧縮機 | 流量が減ったとき |
| 流れとの共振 | 配管 | 内部流体の流動 |
ポンプの空引きは、ケーシングの中が液で満たされず気体がたまり、所定の揚程・流量に達せず不安定な脈動(ハンチング)を起こす現象です。部品に異常がなくても、遠心圧縮機のサージングや遠心ポンプのキャビテーションで振動・異音が出ます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 吸込み側のストレーナが詰まると吸込み圧力が上がるので、空引きは起こりにくい | × | 吸込み圧力が下がり、空引きの原因になる |
| ポンプ内の液が気化してケーシングに気体がたまると、空引きになる | ○ | 液温が沸点近く・以上 |
| キャビテーションは遠心圧縮機に特有で、遠心ポンプの振動の原因にはならない | × | キャビテーションは遠心ポンプ、遠心圧縮機はサージング |
| 遠心ポンプのキャビテーションは、羽根車の出口付近で起こりやすい | × | 圧力が最も低い入口付近 |
| 遠心圧縮機の放出弁を開いて大量に放出すると、サージングが起こる | × | 放出して風量を確保すると避けられる |
出題:国試6記述・検定8記述(平成28〜令和7年度)
- 吸込み圧力が下がると、液から分離したガスや、負圧で配管に漏れ込んだ空気がケーシングにたまる
- キャビテーションとNPSHはキャビテーションとNPSH、サージングはサージング
- 定期検査で回転機は主に分解検査する。往復圧縮機は軸受・ピストンロッドとパッキン・シリンダとピストンリング・吸込み弁と吐出し弁、遠心圧縮機は羽根車の摩耗とバランス・軸受と軸封部、ポンプとブロワは特に軸受
出典:高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』ほか。平成28〜令和7年度の国家試験・技術検定の出題を論点ごとに整理しました。問題文は転載せず、要約して解説しています。
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