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ガスの性質は範囲が広すぎて、どこまで覚えればいいのか分からない。
「このガスは○○ではない」という記述の正誤が、いつも自信を持てない。
そんな悩みを解決します。
10年で70記述。検定が50・国試が20と検定に偏る
誤りの作り方は「属性の逆転」と「適用対象の誤り」に集中
アンモニアは銅を腐食する/乾燥塩素は鉄を腐食しない ── 最頻出2件
3項目のうち1つだけ入れ替える巧妙な出し方に注意

ガス各論の知識がそのまま点になる分野です。上位ガスから固めれば効率よく取れます。
最初に集計結果です。
| 国家試験 | 技術検定 | 計 | |
|---|---|---|---|
| 該当する問 | 問2 | 問1・問2 | ── |
| 記述数 | 20 | 50 | 70 |
学識でもガス各論は問4(国試)/問5(検定)で20点。同じ知識が2科目で効きます。
ガスごとの中身はガス各論①・ガス各論②、覚える順番はガス各論の暗記が進む順番を参照してください。
誤りの作り方 ── 5つに分類できる
| 型 | 何をするか | 例 |
|---|---|---|
| ① 属性の逆転 | 可燃性↔不燃性、酸化性↔還元性、安定↔不安定 | 「ジボランは不燃性で熱的に安定」→ × |
| ② 適用対象の誤り | 腐食する金属を入れ替える | 「アンモニアは銅に腐食性を示さない」→ × |
| ③ 3項目のうち1つだけ | 正しい記述を並べて1つだけ逆にする | 「燃焼速度増加・発火温度上昇・火炎温度上昇」→ × |
| ④ 製法・用途のすり替え | 作り方を別の方法に置き換える | 「アルゴンは吸着分離法で得られる」→ ×(深冷分離) |
| ⑤ 性質の否定 | 持っている性質を「ない」と言う | 「モノシランは自然発火性はなく」→ × |
③の実例(令和2年度 検定 問1ハ)
酸素濃度が高くなるにつれて燃焼速度を増加させ、発火温度の低下、火炎温度の上昇をもたらす。また、最小発火エネルギーも大きくなって爆発の危険性が増大する。
→ × 最小発火エネルギーは小さくなる
4項目のうち3つが正しく、最後の1つだけが逆です。
しかも「危険性が増大する」という結論は正しい。 結論に引きずられると見落とします。
同じ論点の別の出方(令和3年度 検定 問1ロ)
酸素濃度が高くなるにつれて燃焼速度の増加、発火温度の上昇、火炎温度の上昇をもたらす。
→ × 発火温度は低下する
今度は「発火温度」のほうを逆にしています。 同じ論点を、入れ替える項目を変えて出す。
燃焼速度 → 増加
発火温度 → 低下(着火しやすくなる)
火炎温度 → 上昇
最小発火エネルギー → 低下(着火しやすくなる)
爆発範囲 → 拡大
最頻出の2件 ── 腐食する金属を入れ替える
① アンモニアは銅を腐食する
出た誤り記述(令和3年度 国試 問2ハ)
アンモニアは、銅および銅合金に対して腐食性を示さないが、鉄に対しては激しい腐食性を示す。
→ × まったく逆。
銅・銅合金 → 使用不可(錯イオンを作って激しく腐食)
鉄・鋼 → 常温では問題なし
ただし高温高圧(合成条件)では窒化・水素脆化を起こす
令和3年度 検定 問2イでは、高温高圧での窒化・水素脆化が正しい記述として出ています。
「常温は鉄OK、高温高圧は鉄もNG」という二段構えで覚えてください。
② 乾燥塩素は鉄を腐食しない
出た誤り記述(令和3年度 検定 問2ハ)
塩素は、無色、無臭の毒性の強いガスで、乾燥した塩素は常温でも鉄を含めほとんどの金属材料を激しく腐食する。
→ × 3か所とも誤り。
塩素は黄緑色で激しい刺激臭がある
乾燥塩素は常温では金属をほとんど腐食しない(鉄も使える)
ただしチタンだけは乾燥塩素で激しく燃える
湿った塩素は塩酸になって激しく腐食する
チタンは耐食材料の代表格なのに、乾燥塩素だけは例外的にダメ ── これが試験で狙われます。
だから塩素設備では徹底的に乾燥を管理します。 水分が入った瞬間に材料の前提が崩れる。
③ 塩化水素とイオン化傾向(令和3年度 国試 問2ニ)
イオン化傾向が水素より小さい金属は、塩化水素に侵され、水素を発生して塩化物となる。
→ × 水素より大きい金属が溶ける。
K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au
水素より左(大きい)=酸に溶ける。 鉄・亜鉛・アルミは溶け、銅・銀・金は溶けない。
これは腐食全般の基礎です。→ 腐食のメカニズム
両属性のガスは出題の宝庫
「可燃性かつ毒性」のガスは、片方だけを書いた誤り記述が作りやすい。
| ガス | 可燃性 | 毒性 | その他 |
|---|---|---|---|
| アンモニア | ○(15〜28 vol%) | ○ | MIEが極めて大きい(着火しにくい) |
| 硫化水素 | ○ | ○(強い) | 腐卵臭だが高濃度で嗅覚麻痺 |
| シアン化水素 | ○ | ○(猛毒) | 重合爆発する |
| 酸化エチレン | ○ | ○ | 分解爆発する(上限界100%) |
| 一酸化炭素 | ○ | ○ | 無臭 |
一酸化炭素の毒性機構(正しい記述として3回出題)
一酸化炭素は無臭の極めて有害なガスであり、吸入すると赤血球のヘモグロビンと結びついて一酸化炭素ヘモグロビンとなり、赤血球の機能を破壊して死に至らしめる。
ヘモグロビンとの親和性は酸素の200〜300倍。だから低濃度でも危険です。
無臭であることが最大の危険です。気づけない。
シアン化水素の安定剤 ── 定番のひっかけ
出た誤り記述(令和2年度 国試 問2イ)
シアン化水素は、水分が含まれると重合により爆発することがあるので、安定剤としてアルカリ性物質を少量加える。
→ ×
水分・アルカリ性物質は重合を促進する(危険側)
安定剤には無機酸(硫酸・リン酸など)を加える
シアン化水素の毒性機構も押さえてください ── 中枢神経に作用し、作用が極めて速い。
内呼吸(細胞のミトコンドリア)を止めるので、酸素があっても細胞が使えなくなります。
特異な性質を持つガス ── 例外を狙われる
① 分解爆発(空気がなくても爆発する)
| ガス | 分解爆発 | 対策 |
|---|---|---|
| アセチレン | ○ | 溶剤に溶解して多孔質物質に充填 |
| 酸化エチレン | ○ | 窒素・CO₂で希釈 |
| 亜酸化窒素 | ○ | ── |
| ヒドラジン | ○ | ── |
正しい記述として3回出題(R2・R3・R6 検定)
酸化エチレンは、空気が存在しなくても電気火花、静電気などによって爆発を起こす分解爆発性があるので、容器や貯槽内には窒素などの不活性ガスを希釈剤として加えておかなければならない。
3年で3回。ほぼ毎年出ています。
② 自然発火性(空気に触れるだけで燃える)
| ガス | 自然発火性 |
|---|---|
| モノシラン(SiH₄) | ○(常温の空気で発火) |
| ジシラン | ○ |
| ホスフィン(PH₃) | ○ |
| ジボラン(B₂H₆) | ○ |
| アルシン(AsH₃) | 可燃性(自然発火性は条件による) |
出た誤り記述(R3検定問2ニ・R6検定問2ホ:同一の記述が2回)
モノシランは、可燃性のガスであるが自然発火性はなく、常温で空気と接触して滞留しても発火しない。
→ × 自然発火性がある。
半導体用の特殊材料ガスは、シラン系=自然発火性とグループで覚えます。
③ ジボランの誤り(可燃性と熱安定性を両方逆に)
出た誤り記述(令和2年度 検定 問2ホ)
ジボランは、極めて毒性が強く、不燃性で熱的に安定性の高いガスである。
→ × 可燃性で熱的に不安定。
令和4年度 検定 問2ホでは、正しい形(熱的に不安定)で出ています。
熱的に不安定だから、ボンベの中で分解して圧力が変わります。 これが「出流れ現象」の原因。
④ 二酸化炭素は大気圧では液化しない
出た誤り記述(令和3年度 検定 問1ハ)
二酸化炭素は、大気圧で冷却していくと液化し、さらに冷却するとドライアイスになる。
→ × 大気圧では液体にならず、直接固体(ドライアイス)になる。
CO₂ の三重点は 0.518 MPa・−56.6℃
→ 大気圧(0.101 MPa)は三重点より低い
→ 液相が存在できない(昇華する)
臨界温度が31℃という制約も併せて押さえてください。→ 実在気体(臨界温度)
⑤ 二酸化炭素消火剤が効かない相手
出た誤り記述(令和2年度 国試 問2ロ)
二酸化炭素は、消火剤として用いられ、マグネシウムやナトリウムの消火にも有効である。
→ × 活性金属はCO₂中でも激しく燃える。
2Mg + CO₂ → 2MgO + C
→ マグネシウムがCO₂から酸素を奪って燃える
→ 消火どころか炭素が遊離して激しく燃焼
製法のすり替え ── アルゴンが2回狙われた
出た誤り記述(令和2年度 検定 問1ニ)
アルゴンは、一般に空気の吸着分離法によって得られる。
→ × 空気液化分離装置での蒸留(深冷分離)で得られる。
令和6年度 検定 問1ニでは「天然ガス由来」とすり替えています。
だから酸素PSAは約95%が上限になります(残りがアルゴン)。
主なガスの製法(覚えておく)
| ガス | 工業的製法 |
|---|---|
| 酸素・窒素・アルゴン | 空気の深冷分離(液化して蒸留) |
| 酸素・窒素(小規模) | PSA(吸着分離) |
| 水素 | 天然ガスの水蒸気改質/副生ガス/水電解 |
| アセチレン | カーバイド法/炭化水素の熱分解 |
| 塩素 | 食塩水の電解(イオン交換膜法) |
| アンモニア | ハーバー・ボッシュ法(N₂+3H₂) |
| ヘリウム | 天然ガスから分離 |
アルゴンは空気から、ヘリウムは天然ガスから。 ここを入れ替えるのが定番です。
検定の学識問5ではイオン交換膜法(塩素の製法)が出ています(R2)。
LPガスの静電気 ── 3回出た論点
正しい記述として3回出題(R2国試問2ハ・R3検定問1ニ・R6検定問1ホ)
液状のLPガスは、電気絶縁性がよく静電気が蓄積されやすいので、その放電による火花で発火する危険がある。
導電性が高い液体:発生した電荷がすぐ大地に流れる → 蓄積しない
絶縁性液体:電荷が逃げない → 蓄積して高電位になる
→ 放電すると着火源になる
導電率が10⁻¹⁰ S/m 以下の液体は要注意とされています。LPガス・軽油・トルエンなど。
LPガスは空気より重いので低所に滞留するという性質も併せて出ます(R3検定問1ニ)。
この分野の対策
- 上位5ガス(酸素・水素・窒素・塩素・アンモニア)を完全に固める
- 両属性(可燃性かつ毒性)の4ガスを押さえる
- 分解爆発・自然発火性・重合性のグループを作る
- 3項目のうち1つだけ入れ替える形に慣れる(結論に引きずられない)
読み方の手順
- 属性を表す語に印(可燃性/不燃性、酸化性/還元性、安定/不安定)
- 金属名に印(腐食する/しないの対象)
- 各項目を1つずつ判定する(結論だけ見ない)
- 「〜ではない」「〜しない」を疑う
よくある失点
| 失点 | 対策 |
|---|---|
| 3項目のうち1つの誤りを見落とす | 各項目に印をつけて1つずつ判定 |
| アンモニアと銅を逆にする | 銅NG・鉄OK(常温) |
| 乾燥塩素と鉄を逆にする | 乾燥はOK・湿ったらNG・チタンは乾燥でもNG |
| イオン化傾向の向きを間違える | 水素より大きい金属が溶ける |
| CO₂ が大気圧で液化すると思う | 三重点0.518 MPaより下では液相なし |
| アルゴンの製法を吸着と思う | 深冷分離(吸着ではO₂と分けられない) |
暗記カードにするならこれだけ
アンモニア:銅NG・鉄OK(ただし高温高圧では窒化・水素脆化)
乾燥塩素:鉄OK・チタンNG/湿った塩素:鉄NG
燃焼速度増加/発火温度低下/火炎温度上昇/MIE低下/爆発範囲拡大
分解爆発:アセチレン・酸化エチレン・亜酸化窒素(上限界100%)
自然発火性:モノシラン・ジシラン・ホスフィン・ジボラン
重合爆発:シアン化水素(安定剤は無機酸、アルカリは促進側)
両属性:アンモニア・硫化水素・シアン化水素・酸化エチレン・一酸化炭素
CO₂ は大気圧では液化しない(三重点0.518 MPa)
CO₂ 消火剤は Mg・Na に効かない(かえって燃える)
アルゴンは深冷分離/ヘリウムは天然ガス
液状LPガスは絶縁性で帯電しやすい
塩素は黄緑色・刺激臭(無色無臭は誤り)
ホスゲンは青草臭
まとめ
- 10年で70記述。検定50・国試20と検定に偏る
- 誤りは属性の逆転・適用対象の誤り・3項目中1つだけ入れ替えが中心
- 3項目のうち1つだけ逆にする形が最も巧妙。結論に引きずられない
- アンモニアは銅NG・鉄OK(高温高圧では鉄も窒化)
- 乾燥塩素は鉄OK・チタンNG。湿ったら鉄もNG
- 両属性のガスは片方を否定する誤りが作りやすい
- モノシランの自然発火性を否定する同一記述が2回出た
- CO₂ は大気圧では液化しない/Mg・Na の消火には使えない
- アルゴンは深冷分離(吸着では酸素と分けられない)
- 対策は上位5ガスから。学識のガス各論(20点)とも共通
次は高圧装置用材料と熱処理です。検定のみで25記述、国試には出ません。→ 高圧装置用材料と熱処理
ガスごとの詳細はガス各論①・ガス各論②、覚える順番はガス各論の暗記順へ。
保安管理技術の全体像は保安管理技術15問の攻略を参照してください。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計150問671記述を筆者が1記述ずつ分解して独自に行ったものです。設問の要約と解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。
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