保安管理技術の高圧設備のうち、圧縮機とポンプの論点を並べた記事です。見出しが論点名なので、目次から引いてください。
分野J:圧縮機とポンプ(この記事)|高圧装置・流動・伝熱・分離
圧縮機の種類と特性 ── 多段にして各段の圧力比と吐出し温度を下げる

| 形式 | 分類 | 押さえる特性 |
|---|---|---|
| 往復圧縮機 | 容積形 | 多段+中間冷却で各段の圧力比と吐出し温度を下げる |
| 無給油往復圧縮機 | 容積形 | 自己潤滑リング式・ラビリンスピストン式・ダイヤフラム式。ガスに油を入れない |
| 遠心圧縮機 | ターボ形 | 少風量でサージング。使用回転速度は危険速度を避ける |
| 軸流圧縮機 | ターボ形 | 大流量の圧縮に向き、効率もよい |
| ベーン・ねじ | 容積形(回転式) | ロータの回転で圧縮する |
1段で高い圧力比まで圧縮すると、温度上昇が大きく、動力の増加や潤滑不良を招きます。多段にして段間で冷却し、各段の圧力比を等しくすると仕事が最小になります(2段なら中間の絶対圧力=吸込みと最終の絶対圧力の積の平方根)。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 給油式往復圧縮機を多段にすると、吐出し温度が下がり潤滑油の劣化も抑えられる | ○ | 各段の圧力比が小さくなる |
| 二段圧縮の仕事を最小にする中間圧力は、吸込みと最終の絶対圧力の算術平均 | × | 幾何平均(積の平方根) |
| ある段の圧力が下がる原因は、後段の弁漏れやリング摩耗だけ | × | その段の弁漏れ・リング摩耗。後段の異常は前段の圧力を上げる |
| 振動の主成分が回転数 N と一致すれば、羽根車の汚れやアンバランスは除外できる | × | アンバランス・汚れの付着はN 成分で出る |
| 遠心圧縮機は危険速度をすばやく通過し、その上で定常運転する設計もできる | ○ | 危険速度での定常運転は避ける |
出題:国試15記述・検定1記述(平成28〜令和7年度)
- 無給油往復圧縮機は、ガスに潤滑油が混ざっては困るときに使う。ラビリンスピストン式は非接触なのでガスの漏れ量が増えるのは避けられない
- 遠心圧縮機の使用回転速度は危険速度(軸系の固有振動数)と一致しないように選ぶ。どれだけ離すかは軸系の減衰特性で決まる
段の圧力・温度の異常は「その段」と「後段」に分ける
| 症状 | 主な原因 |
|---|---|
| ある段の圧力が下がる | その段の吸込み弁・吐出し弁の漏れ、ピストンリングの摩耗、前段冷却器の過冷却 |
| ある段の圧力が上がる | 後段の吸込み弁・吐出し弁の漏れ、ピストンリングの摩耗、冷却器の能力低下、管路抵抗の増大 |
| ある段の温度が上がる | 後段の弁の不良による逆流、前段冷却器の能力低下、圧縮比の増加 |
2段の吐出し圧力と温度が上がったら、2段の後の冷却器だけでなく、3段の吸込み弁・吐出し弁も点検します。
ターボ圧縮機の振動は周波数で原因を絞る
| 振動の主周波数 | 原因の候補 |
|---|---|
| N(回転速度と同じ) | 回転体のアンバランス(汚れの付着・腐食や摩耗)、危険速度への接近 |
| 1/2 N | オイルホワール(軸受すき間の増大、油圧・油温・油量の変化) |
| Nc1(一次危険速度) | オイルホイップ |
| N・2 N・3 N | 心ずれ(据付不良・基礎の変形) |
| N・2 N・3 N のほか 1/2 N・Nc1 など | 軸シール・油切りとの接触(変形・熱膨張・組立不良) |
オイルホワール・オイルホイップの対策は、軸受の手入れと油圧・油温・油量の適正化です。
関連:圧縮機の種類と選び方
圧縮機の容量制御 ── 往復は吐出しを絞らない、遠心は回転速度がいちばん省動力

| 方式 | 使う圧縮機 | 要点 |
|---|---|---|
| 回転速度(速度制御) | 往復・遠心 | 遠心では動力の節約が大きく、最も経済的。圧力も下がるので範囲は系の抵抗で決まる |
| バイパス | 往復・遠心 | 本体の風量は変えない=動力は減らない。連続で戻すなら冷却器 |
| クリアランス弁・吸込み弁アンローダ | 往復 | すきま容積を変える/吸い込んだガスを吸込み側へ逆流させる |
| 吐出し絞り | 遠心 | 弁の抵抗がロスになり、動力はあまり減らない。範囲はサージング限界で決まる |
| 吸込み絞り | 遠心 | ガスの密度が下がった分だけ動力が下がる |
| ベーンコントロール | 遠心 | 入口案内羽根の角度を変える。制御範囲が最も広い |
往復圧縮機は吐出し弁を絞って容量を調整しません(回転速度・アンローダ・クリアランス・バイパス)。遠心圧縮機は回転速度を変える制御が最も経済的で、吐出し絞りは弁の抵抗が損失になります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 吐出し絞りは損失が小さく、速度制御と同じくらい動力が減る | × | 吐出し圧力が上がり、動力はあまり減らない |
| バイパスによる容量調整は往復圧縮機にしか使えない | × | 遠心圧縮機にも使う |
| 吐出しガスを連続して吸込みへ戻すときは、戻り配管に冷却器を設けることがある | ○ | 戻すたびに吸込み温度が上がる |
| ベーンコントロールは羽根車出口の弁を絞る方法 | × | 羽根車入口の案内羽根の角度を変える |
| 往復圧縮機は回転速度・アンローダ・クリアランス・バイパスで容量を調整する | ○ | 容積形なので吐出しを絞ると圧力が上がるだけ |
出題:国試6記述・検定2記述(平成28〜令和7年度)
- 遠心圧縮機の風量・ヘッド・動力は、回転速度 N に対しておおよそ N・N2・N3 に比例して変わる(圧力比があまり大きくないとき)。だから速度を下げる制御は動力の節約が大きい
- 吸込み絞りは吸込み圧力を下げるとサージング限界も少流量側へ移るので、サージング付近まで減らすなら吐出し絞りより制御範囲を広く取りやすい
- 吸込み絞りでは吸込み圧力が大気圧より下がるので、外気が入っては困るガスでは注意する
関連:圧縮機の容量制御
サージング ── 流量が減ると起こる。吸込みへ戻して本体の流量を保つ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 起こる機械 | 遠心圧縮機(ターボ形)。ターボ形ポンプでも起こるが少ない |
| 起こる条件 | 吐出し側の抵抗が増えて風量が減り、性能曲線の右上がりの範囲まで減ったとき |
| 現象 | 逆流と圧力変動を繰り返す不安定な運転(管系全体の振動) |
| 防ぎ方 | サージング領域の少ない羽根車を選ぶ。避けられなければ吐出しの一部を大気へ放出するか吸込み側へ戻し、圧縮機の必要風量を確保する |
管系の抵抗が増えて流量が減るほど、サージングに近づきます。 送り先の需要が少ないときは吐出しの一部を吸込みへ戻し、圧縮機本体を通る流量をサージング限界より多く保ちます(本体の流量=送る量+戻す量)。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 配管側の抵抗が増えて通過流量が減るほど、不安定な運転から遠ざかる | × | 少流量側の不安定領域に近づく |
| 吐出しの一部を吸込み側へ循環させれば、外への供給を減らしても本体の流量は保てる | ○ | バイパス制御の原理 |
| 放出弁を開いて余分なガスを逃がすと、かえってサージングが起こる | × | 放出して風量を確保すると避けられる |
出題:国試4記述・検定1記述(平成28〜令和7年度)
- サージングは圧縮機を含む管系全体が少風量側で振動的に不安定になる現象。圧縮機を守るため、この領域での運転は避ける
- ポンプのサージングは、性能曲線が山形で使用点がその頂上付近にあり、吐出し配管に空気だまりか貯槽があり、その出口側に吐出し調節弁がある、の3つがそろうと起こる
ポンプの種類と特性 ── 遠心は締切りで軸動力が最小、軸流は締切りで最大

| 運転 | 遠心ポンプ | 軸流ポンプ |
|---|---|---|
| 締切り(流量0)の軸動力 | 最小 | 最大 |
| 締切り起動・停止 | 揚程の低いものはできる | バイパスや可動羽根などの対策がなければできない |
| 軸動力が大きくなる運転 | 計画点より多い吐出し量 | 計画点より少ない吐出し量 |
| 揚程 | 低揚程から高揚程まで広い | 低い |
軸動力は吐出し量 × 液の密度 × 全揚程に比例し、ポンプ効率で割ります(P=qρgh/η)。遠心ポンプは流量が増えるほど軸動力が増えるので、締切り点で最小、流量の多い側で過負荷になります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 遠心ポンプの軸動力は、吐出し弁を全閉にした締切り点で最大になる | × | 最小。ただし長く続けると液が発熱する |
| 軸流ポンプは対策をしなくても、吐出し弁を締め切ったまま起動・停止できる | × | バイパス・可動羽根などがなければできない |
| 流量と揚程が同じでも、液の密度が上がれば軸動力が増えて過負荷の原因になる | ○ | 軸動力は密度に比例 |
| 同じ特性の遠心ポンプ2台を直列にすると、1台当たりの軸動力は単独運転より大きい | ○ | 運転点が大流量側へ移る |
| 往復ポンプの流量は、吐出し弁の絞りだけで調整するのが一般的 | × | バイパス・回転速度・ストローク長で調整 |
出題:国試11記述・検定0記述(平成28〜令和7年度)
- 遠心ポンプの締切り運転を長く続けると、液がかき回されて発熱し、蒸気圧が上がってキャビテーションや焼付きの原因になる
- 並列運転から1台運転に移ると、1台が受け持つ流量が増えるので、遠心ポンプでは1台当たりの軸動力が大きくなる
- 液の粘度・密度が計画より高いと過負荷になるので、運転温度に注意する
往復ポンプ(容積形)は吐出しを絞って調整しない
| 項目 | 遠心ポンプ | 往復ポンプ |
|---|---|---|
| 吐出し | 安定している | 脈動がある(アキュムレータで低減) |
| 配管抵抗が増えると | 流量が減る | 流量はほとんど変わらない |
| 流量調整 | 吐出し弁の開閉 | バイパス・回転速度・ストローク長 |
| NPSH | 利用し得るNPSH>必要NPSH | 加速損失を見込み、余裕を大きくとる |
| 運転の注意 | 長い締切り運転の発熱 | 脈動による水撃。弁を慎重に操作し、吸込み弁・吐出し弁、ストレーナの詰まり、グランドからの空気吸込みを点検 |
逆止弁のバイパス弁は、逆流が始まったら徐々に閉める(瞬時に閉めるほど圧力上昇は大きい)。往復ポンプの NPSH は「キャビテーションとNPSH」、逆止弁のバイパスは「ウォーターハンマー」の章で詳しく扱います(→ キャビテーションとNPSH/ウォーターハンマー)。
関連:ポンプの性能曲線の読み方
キャビテーションとNPSH ── 液温を上げると起こりやすく、液面を上げると起こりにくい

キャビテーションを起こさないには利用し得るNPSH>必要NPSH。液温が上がると蒸気圧が上がって利用し得るNPSHが減り、吸込み液面を上げると増えます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 吸込み液の温度が上がると蒸気圧が下がり、利用できるNPSHが増えて起こりにくくなる | × | 蒸気圧は上がり、NPSHは減る=起こりやすい |
| 吸込み貯槽の液面を上げると、利用し得るNPSHは小さくなる | × | 吸込み側の静水頭が増えて大きくなる |
| 遠心ポンプのキャビテーションは羽根車の出口付近で起こりやすい | × | 最も圧力が低い入口付近 |
| 往復ポンプでは脈動と加速損失を見込み、利用できるNPSHに十分な余裕をとる | ○ | 吸込み管の液を加速する損失が加わる |
出題:国試5記述・検定0記述(平成28〜令和7年度)
利用し得るNPSHは、ポンプの据付け条件で決まる余裕です。
| 利用し得るNPSHの項 | 増やすには |
|---|---|
| 液面に作用する圧力の水頭 | 吸込み液面の圧力を上げる |
| 吸込み実揚程(ポンプが液面より上なら引く、下なら足す) | 吸込み液面を上げる・据付け位置を下げる |
| 吸込み管の損失水頭(引く) | 吸込み管の損失を小さくする |
| 液温における蒸気圧の水頭(引く) | 液温を下げる |
- 必要NPSHを下げる側の対策:回転速度を下げる、両吸込み形の羽根車(多段ポンプは初段だけ)、吸込比速度の高いポンプを使う
- このほかの防止策:立軸ポンプで羽根車を液中に全部浸す(吸込み側に押込みの水頭がつく)、液中の混入ガスを少なくする
- 液温が高いときや、LPガスのように蒸気圧の高い液では、利用し得るNPSHが小さくなり条件が厳しくなる
- 密閉槽で液面に飽和蒸気圧が作用しているときは、液面の圧力と蒸気圧が打ち消し合い、利用し得るNPSH=吸込み実揚程(押込み)−吸込み管の損失水頭になる
- 気泡は騒音・振動と羽根車のエロージョンを起こし、進むと吐出し量・揚程・効率が下がる
ウォーターハンマー ── 流速の急変を緩め、負圧には空気弁で空気を入れる

| 防止策 | ねらい |
|---|---|
| 管径を大きくして流速を遅くする | 流速の変化を小さくする |
| フライホイールで慣性を大きくする | 急停止しても回転が徐々に下がる |
| 吐出し配管に空気弁 | 負圧になったら空気を吸い込み、液柱分離を防ぐ |
| サージタンク・空気室 | 圧力上昇と液柱分離を和らげる |
| 緩閉逆止弁 | 逆流が始まったら徐々に閉める |
| 逆止弁にバイパス弁 | 逆止弁が閉じてもバイパスで逆流させ、バイパス弁を徐々に閉める |
| 自動圧力調節弁・遮断弁の開閉速度 | 圧力上昇を逃がす/水撃が起きない速さで開閉する |
停電でポンプが急に止まったり、弁を急に開閉したりして管内の流速が急変すると、液圧が激しく変化して配管やポンプを壊すことがあります。対策は、流速の変化を緩やかにするか、急な圧力上昇・圧力低下(液柱分離)を逃がす・和らげる方向です。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 吐出し管が負圧になるとき、空気弁から空気を入れて液柱の分断を抑えるのは水撃対策になる | ○ | 液柱が再結合するときの圧力変動を防ぐ |
| 逆止弁のバイパスは、逆流が始まったら瞬時に全閉するほど圧力上昇が小さい | × | 徐々に閉めて減速を緩やかにする |
| 空気弁を付けるのは、常に配管内の空気を抜いてキャビテーションを防ぐため | × | 負圧時に空気を入れて液柱分離を防ぐため |
| 往復ポンプでは、弁の慎重な操作と吸込み・吐出し弁やストレーナの点検が水撃防止に役立つ | ○ | 脈動で流速・圧力の急変が起きやすい |
出題:国試1記述・検定0記述(平成28〜令和7年度)。往復ポンプの水撃と逆止弁のバイパスは「ポンプの種類と特性」の出題に含みます。
- 水撃は急な圧力上昇と急な圧力低下の両方で起こるので、両方を防ぐ
- 流体の運動を瞬時に止めるほど大きな圧力波が出る。「すばやく閉めるほど安全」は誤り
出典:高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』ほか。平成28〜令和7年度の国家試験・技術検定の出題を論点ごとに整理しました。
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