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ポンプの性能曲線の読み方|Q-H・効率・軸動力・NPSH3、運転点が動くと何が起きるか【シミュレータ付き】

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

ポンプのカタログや納入図に付いてくる1枚のグラフ——性能曲線。横軸に流量、縦軸に揚程・効率・軸動力・NPSH3の4本の線が引いてあります。選定のときにしか見ないものだと思われがちですが、運転員が現場でやる操作は、すべてこのグラフの上で点を動かすことです。

吐出し弁を絞る、インバータで回転数を下げる、タンクの液面が下がる、液温が上がる。どれも運転点をどこかへ動かします。この記事では4本の線を1本ずつ読み、運転点がどう動くかを追えるようにします。記事の途中にシミュレータを置いたので、弁と回転数と実揚程を動かして、点が動くのを確かめてください。

この記事の結論

  • 性能曲線は揚程・効率・軸動力・NPSH3の4本。どれも横軸は流量
  • 運転点は「ポンプの揚程曲線」と「配管側の抵抗曲線(システムカーブ)」の交点で自動的に決まる。ポンプが勝手に決めるのではない
  • 吐出し弁を絞ると抵抗曲線が立ち上がり、交点は左上(流量減・揚程増)へ動く。遠心ポンプの軸動力は流量と一緒に減る
  • 流量が増えるほど NPSH3 は増え、NPSHA は減る。交点を超える流量ではキャビテーションが起きる
  • 始動時は締切(流量0)から点が動き出す。吐出し弁を絞って起動するのは、締切付近で軸動力が小さいから(遠心の場合)

1. 4本の線|揚程・効率・軸動力・NPSH3

性能曲線は4本。横軸はすべて流量

性能曲線には、流量 Q を横軸にして次の4本が描かれます。

曲線読み方
全揚程 H流量0(締切)で最大、右下がりポンプが液に与えるエネルギー。締切揚程よりわずかに右で最大になる「山形」の曲線もある
効率 η山形。頂点が最高効率点(BEP)軸動力のうち液に渡った割合。BEPから離れるほど損が増える
軸動力 P遠心では右上がり。流量が増えるほど大きいモータが出す力。締切で最小、流しすぎると過負荷
NPSH3右上がりその流量でキャビテーションを起こさずに吸い込むのに必要な吸込み側の余裕。流すほど大きくなる

H-Q曲線が「右下がり」なのが遠心ポンプの基本です。流量を増やすと揚程が下がり、流量を減らすと揚程が上がる。締切(流量0)のときの揚程が最大で、これを締切揚程と呼びます。

軸動力の向きは形式で違います。遠心ポンプは流量が増えるほど軸動力が増える右上がり。だから締切付近で起動すればモータは軽く、流しすぎると過負荷になります。逆に軸流ポンプは締切で軸動力が最大になるので、締切起動ができません。カタログの軸動力曲線を見れば、そのポンプを「絞って起動するか、開けて起動するか」が分かります。

効率は山形です。頂点が最高効率点(BEP)で、設計点はここかそのすぐ近くに置かれます。BEPから大きく外れると、効率が落ちるだけでなく、羽根車を片側に押す力や振動が増えます。運転点を「BEPの近くに置き続ける」ことが、寿命を延ばすいちばんの方法です。

2. 運転点はどう決まるか|配管の抵抗曲線との交点

絞るのと回転数を下げるのは違う

ポンプは自分で流量を決めません。吸込タンクから吐出しタンクまでの配管系が、その流量で必要とする揚程と、ポンプが出せる揚程が釣り合うところで流量が決まります。

配管側が必要とする揚程(システムカーブ)は3つの足し算です。

  • 実揚程 Ha:吸込液面と吐出液面の高さの差に、タンク圧力の差を揚程に直して足したもの。流量によらず一定
  • 配管の損失:直管・エルボ・弁の摩擦損失。流量の2乗に比例
  • 調節弁の損失:弁開度で変わる。流量の2乗に比例する係数が、弁を絞ると大きくなる

グラフにすると、実揚程の高さから立ち上がる放物線になります。ポンプの右下がりのH-Q曲線と、この右上がりの抵抗曲線の交点が運転点です。

ここから運転員の操作を読めます。

  • 吐出し弁を絞る → 抵抗曲線が急になる → 交点は左上へ。流量が減り、揚程(吐出圧力)が上がる。遠心ポンプなら軸動力は減る
  • 吐出タンクの液面が上がる・背圧が上がる → 抵抗曲線が上に平行移動 → 交点は左へ。流量が減る
  • 配管が詰まる・ストレーナが汚れる → 弁を絞ったのと同じ。運転員が触っていないのに流量が減り吐出圧力が上がる
  • 回転数を下げる(インバータ) → ポンプ側のH-Q曲線が下に下がる → 交点は左下へ。流量も揚程も下がる

「弁を絞ったら圧力計が上がった」「流量が出ないので弁を開けたら圧力が下がった」は、どちらもこの交点の移動です。

3. シミュレータ|弁・回転数・実揚程を動かして運転点を見る

下のシミュレータは、典型的な片吸込単段遠心ポンプの性能曲線に、配管側の抵抗曲線を重ねたものです。吐出し弁の開度、回転数、実揚程(液面差)を動かすと、交点=運転点と、そのときの効率・軸動力・NPSHの余裕がどう変わるかが見られます。

運転点シミュレータ|弁・回転数・実揚程を動かす
運転点の流量 Q
運転点の全揚程 H
効率 η(BEPとの比較)
軸動力 P(水、密度1000 kg/m³)
NPSH3 / NPSHA
判定

モデル:定格 60 m³/h・50 m の片吸込単段遠心ポンプ(筆者の想定値)。回転数を変えると相似則(Q∝N, H∝N², P∝N³)で曲線を動かす。抵抗曲線=実揚程+配管損失(Q²)+弁損失(Q²、開度で係数が変わる)。

やってみてほしいこと:

  1. 弁開度を100%から50%、30%に絞る。流量が減り揚程が上がる。軸動力は減る。効率はBEPから外れて落ちる
  2. 回転数を80%に下げる。弁を絞ったときと違い、揚程も流量も下がり、軸動力は大きく減る。同じ流量を出すなら絞るより回転数を下げるほうが省エネ
  3. 実揚程を大きくする(吐出側の液面や背圧を上げる)。抵抗曲線が持ち上がり、流量が減る
  4. 弁を全開にして回転数を100%にし、実揚程を小さくする。流量が増えて NPSH3 が NPSHA に迫る。ここでキャビテーション警告が出る

4. NPSH3 と NPSHA|流すほど余裕が減る

性能曲線の4本目、NPSH3 はその流量でポンプが液を吸い込むために必要な吸込側の余裕で、右上がりです。一方、配管側が用意できる余裕 NPSHA は、流量が増えると吸込配管の損失が増えるので右下がりです。

2本を重ねると必ずどこかで交わり、交点より右(大流量側)ではキャビテーションが起きます。弁を開けすぎて流量が設計点を大きく超えたときに「ジャリジャリ」と音がするのはこれです。安全側の余裕として、NPSHA − NPSH3 ≧ 0.6 m、または NPSHA ≧ 1.3×NPSH3 を指示する購入者が少なくありません。計算の手順は NPSH の記事で扱います。

5. 始動のとき、点はどこから動き出すか

起動時、点はどこから動くか

ポンプを起動した瞬間、流量は0、揚程も0です。回転数が上がるにつれて揚程が上がり、全揚程が実揚程に達した瞬間に液が流れ始めます。 その先は吐出し弁の開度で行き先が変わります。

  • 吐出し弁が全開:実揚程の点から抵抗曲線に沿って上がり、定格回転数に達したところで運転点に落ち着く
  • 吐出し弁を少し開けている:急な抵抗曲線に沿って上がり、流量の小さい運転点で落ち着く。ここから弁を開けていくと点は右下へ移り、全開の運転点に達する
  • 吐出し弁が全閉:流量0のまま揚程だけ上がり、締切揚程に達する。ここで弁を開け始めると点は曲線に沿って右下へ動く

遠心ポンプの起動手順書に「吐出し弁を少し開けて(または閉めて)起動し、圧力が立ってから開ける」と書いてあるのは、締切付近で軸動力が最小で始動電流が小さく、かつ圧力が立つまで逆流や空気の巻き込みを避けられるからです。長時間の締切運転は液温が上がるので別問題で、これは締切運転と最小流量の記事で扱います。

6. 性能曲線で見抜けること

最後に、性能曲線を手元に置いて現場で判断できることを整理します。

  • 流量計の値と吐出圧力・吸込圧力の差(全揚程)が、曲線の上に乗っているか。 乗っていなければ、羽根車の摩耗(曲線が下にずれる)か、空気の吸込み、計器の不具合
  • 電流値から軸動力を逆算し、軸動力曲線と比べる。 曲線より大きければ、液が重い・粘い、こすれている、流しすぎ
  • 今の流量での NPSH3 を読み、現場の NPSHA と比べる。 夏場に液温が上がって NPSHA が減ると、同じ流量でも余裕がなくなる
  • 回転数を変えたら曲線がどう動くか。 流量は回転数に比例、揚程は2乗、軸動力は3乗で変わる(相似則)。インバータで20%落とすと軸動力はおよそ半分

まとめ

  • 性能曲線は揚程・効率・軸動力・NPSH3の4本。遠心ポンプは揚程右下がり、軸動力右上がり
  • 運転点はポンプの曲線と配管の抵抗曲線の交点。弁・液面・詰まり・回転数はすべて交点を動かす操作
  • 弁を絞る=抵抗曲線を立てる=流量減・揚程増・軸動力減。回転数を下げる=ポンプ曲線を下げる=流量も揚程も軸動力も減る
  • 流量が増えるほど NPSH3 は増え NPSHA は減る。交点の先でキャビテーション
  • 遠心ポンプは締切付近で軸動力が最小なので絞って起動する。軸流は逆

シミュレータの性能曲線は、片吸込単段遠心ポンプの典型的な形を筆者がモデル化したもので、特定の実機のデータではありません。実務では必ずメーカーの性能曲線を使ってください。

参考文献

  • 高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』理工学社, 2章「ポンプ」遠心ポンプの特性(揚程曲線・軸動力曲線・効率曲線、山形特性、リミットロード特性)  Amazonで見る
  • 松村正夫『入門 新ポンプ技術』丸善, 5.2「ポンプの運転点の決定」(システムカーブ、配管損失・バルブ損失・実揚程の内訳、図5.6)  Amazonで見る
  • 外山幸雄『ポンプの選定とトラブル対策』日刊工業新聞社, 2・15「性能曲線と運転点の関係」(始動時のルート)  Amazonで見る
  • 外山幸雄『絵とき「ポンプ」基礎のきそ』日刊工業新聞社, 1-7「吸込揚程」(NPSHA と NPSH3 の関係、余裕の目安)  Amazonで見る
  • 化学工学協会編『化学装置便覧 改訂二版』丸善, 第18章 図18・4/18・5「遠心ポンプの特性」(手元は改訂二版)  Amazonで見る
  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』学識編 11.5「圧縮機とポンプ」図11.96 ポンプの特性曲線(遠心・斜流・軸流)