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圧縮機の種類と選び方|往復動・スクリュー・遠心・軸流の違いと化学プラントでの使い分け

圧縮機の種類と選び方のアイキャッチ

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

同じ工場の中に、床を揺らして動く往復動圧縮機と、高い音で回り続ける遠心圧縮機があります。計装用空気の建屋ではスクリュー圧縮機が回り、大型の空気系では軸流圧縮機に出会うこともあります。どれも「ガスの圧力を上げる機械」ですが、運転のしかたも、止まり方も、壊れ方もまったく違います。

違いを知らないまま運転すると、往復動と同じ感覚で遠心の流量を絞ってサージングに入れたり、遠心と同じ感覚で往復動の吐出弁を閉めて圧力を上げすぎたりします。水素の比率が変わった、夏になった、というだけで遠心圧縮機の圧力が出なくなる理由も、形式の違いから説明できます。

この記事では、化学プラントの現場オペレーターとエンジニア向けに、往復動・スクリュー・遠心・軸流の4形式について、原理、性能曲線、ガスが変わったときの反応、脈動と連続運転期間、用途別の選び方、取り違えやすい操作を整理します。

この記事の結論

  • 圧縮機は、閉じ込めた体積を縮める「容積形」(往復動・スクリュー)と、羽根車でガスを加速して速度を圧力に変える「ターボ形」(遠心・軸流)の2系統に分かれます。
  • 往復動は吐出側の抵抗が増えても流量はほとんど変わらず、圧力が上がり続けます。遠心は流量が減り、減らしすぎるとサージングに入ります。
  • 遠心の吐出圧力はガスの分子量と吸込温度で上下します。往復動の容量は分子量ではほとんど変わりません。
  • スクリューは弁がなく脈動もサージングもない中容量の機械です。油冷式は吐出温度が低く高圧向き、無給油式は油を入れたくないガスや汚れたガス、計装用空気に使います。
  • 形式は「流量と圧力→用途→ガスの性質→運転と保全」の順で絞ります。小流量で差圧が大きければ往復動、大流量なら遠心、さらに大流量で中圧以下なら軸流が候補です。
  • 容積形の吐出側の弁を閉めたまま運転してはいけません。圧力は止まるところまで上がり続け、最後に守るのは安全弁です。

1. 圧縮機は「容積形」と「ターボ形」の2系統

圧縮機は、ガスの圧力を上げる原理で大きく2つに分かれます。

  • 容積形:ガスを閉じた空間に吸い込み、その空間の容積を小さくして圧力を上げる。往復動(レシプロ)、スクリュー(ねじ式)、ベーン、ルーツ、ダイヤフラム、液封などがある
  • ターボ形:回る羽根でガスに速度(運動エネルギー)を与え、それを減速させて圧力に変える。遠心と軸流がある

考え方はポンプの容積形・ターボ形と同じです。ポンプ側の分類はポンプの種類と分類で解説しています。

圧縮機の4形式|容積形は閉じ込めて縮め、ターボ形は速度を圧力に変える

往復動圧縮機は、シリンダの中をピストンが往復し、吸込弁から入れたガスを縮めて吐出弁から押し出します。吸込弁・吐出弁は外から操作する弁ではなく、ばねで押さえた弁板が、シリンダの内と外の圧力差で開閉する自動弁です。ピストンが戻りきってもシリンダ内にはわずかなすき間(すきま容積)が残り、そこに残った高圧のガスが吸込行程の初めに膨張するので、実際に吸い込める量はピストンの押しのけ量より少なくなります。圧力比が大きいほど、すきま容積が大きいほど、吸い込める割合(体積効率)は下がります。

スクリュー圧縮機は、ねじれた歯を持つ雄と雌の2本のロータがかみ合って回ります。歯の溝とケーシングで囲まれた空間が吸込口に開いたときにガスが入り、回転につれて閉じ込められたまま容積が小さくなり、吐出口に通じたところで吐き出されます。吸込弁も吐出弁もありません。

遠心圧縮機は、羽根車(インペラ)の回転でガスを中心から外周へ振り出して加速し、その先のディフューザや戻り流路で減速させて圧力に変えます。羽根車には、羽根が回転方向と逆へ反った後向き羽根がよく使われます。多段機では羽根車を1本の軸に何枚も並べます。

軸流圧縮機は、ロータに付いた動翼とケーシングに付いた静翼を交互に並べた翼列の中を、ガスが軸方向に流れます。動翼で運動エネルギーを与え、静翼と吐出流路で圧力に変えます。

2. 往復動と遠心の違い① 性能曲線の形|往復動は縦、遠心は右下がり

往復動と遠心の違いがいちばんはっきり出るのが、吐出側の抵抗が変わったときの反応です。

往復動は「流量がほぼ一定で、圧力は相手しだいで変わる」機械です。ピストンは1回転ごとに決まった体積を押し出すので、吐出側の抵抗が増えると、流量はほとんど変わらずに吐出圧力が上がります。圧力比が上がると体積効率が下がる分だけ流量はわずかに減りますが、止まるところまで押し続けます。そのため駆動機は、吐出圧力が安全弁の吹出し圧力まで上がっても出力が足りるように選ばれます。

遠心は「圧力比がほぼ一定で、流量が相手しだいで変わる」機械です。吐出側の抵抗が大きくなると流量が減り、圧力は少し上がります。さらに流量を減らしていくと、性能曲線の山を越えて右上がりの部分に入ったところで、流量と圧力が周期的に大きく振れて逆流するサージングが起きます。反対に流量を増やしすぎると、ある流量から先は圧力が急に落ちて流量が増えなくなります(チョーク)。

性能曲線の違い|吐出側の抵抗が増えると往復動は圧力が上がり、遠心は流量が減る

遠心・軸流には「これより少なくは流せない」サージ限界と「これより多くは流せない」チョークの両側に限界があり、運転できる範囲が限られます。往復動とスクリューにはサージングがなく、そのかわり圧力の上限を安全弁で守ります。 軸流は遠心よりも性能曲線が急で、運転できる流量の幅がさらに狭くなります。

曲線と運転点の関係は送風機と同じ考え方です。送風機の性能曲線と運転点と送風機のサージングと並列・直列運転も参考にしてください。

3. 往復動と遠心の違い② ガスが変わったとき|遠心は分子量と吸込温度、往復動は比熱比

遠心圧縮機は、回転数が同じなら羽根車がガスに与えるヘッド(単位質量あたりの仕事)がほぼ一定です。同じヘッドで得られる圧力比は、ガスが重いほど大きく、軽いほど小さくなります。

  • 分子量が大きいほど圧力比は大きくなり、小さいほど圧力が出なくなります。 炭酸ガスのような重いガスは少ない段数で高い圧力が得られ、水素を多く含む軽いガスは、わずかな圧力比を得るのにも多くの段数が要ります
  • 吸込温度が高いほど圧力比は下がります。 空気圧縮機が夏に圧力が出なくなり、冬には流量も圧力も出て動力が増えるのはこのためです
  • 吸込圧力が変わっても圧力比は変わらないので、吐出圧力は吸込圧力に比例して上下します

往復動は、ガス組成が変わっても容量はほとんど変わりません。容量と動力の変化を決めるのは分子量ではなく、比熱比(Cp/Cv)です。空気と水素は分子量が大きく違いますが比熱比はほぼ同じなので、同じ往復動圧縮機なら容量の差はわずかで、動力が弁を通るときの抵抗の分だけ変わる程度です。比熱比が小さいガスほど体積効率が下がり、容量が減ります。

ガスが変わったときの反応|遠心は分子量と吸込温度で圧力比が変わり、往復動は比熱比で容量が変わる

吸込温度が上がった場合、往復動では吸い込む実体積は変わらないので、標準状態に換算した流量(Nm³/h)は吸込絶対温度に反比例して減ります。

水素の比率が大きく変動するガスや、軽いガスで大きな差圧が要る用途は、遠心が苦手とする条件です。 遠心を運転していて「今日は圧力が出ない」ときは、機械の不調を疑う前に、吸込温度とガス組成(分子量)の変化を確かめます。ヘッドと理論動力の式は圧縮機の理論動力、高圧で理想気体からずれる扱いは実在気体と圧縮係数で解説しています。

4. 往復動と遠心の違い③ 脈動・振動・油・連続運転期間

往復動は構造そのものに揺れを抱えています。

  • 脈動:ピストンの行程に合わせてガスが断続的に流れるので、吸込・吐出配管に脈動が出て、配管や付属機器が振動することがある。脈動を考えた配管設計をし、吸込側・吐出側に脈動防止タンク(スナッバ)やガスだめを置く
  • 振動と基礎:往復運動の慣性力が大きく、基礎の振動防止を十分に検討する必要がある。回転数が低いので、同じ仕様なら機械は大きく重い
  • 油:給油式はピストンリングやロッドパッキンの摺動部に潤滑油を送るので、吐出ガスにシリンダ油が混じる。油を嫌う場合は、カーボンやテフロンのリング、ラビリンス、ダイヤフラムなどを使う無給油式にする
  • 弁の寿命:圧縮機の弁は1日に約50万回も衝突を繰り返し、弁座・弁板・ばねが少しずつ摩耗する。往復動は1年を超える連続運転を確実に保証しにくく、予備機を持つ理由の大半は弁の寿命だとされる(1970年代の設計書)

遠心は、機械的に接触する部分が軸受だけで、振動が小さく基礎の設計も容易です。長期連続運転が前提で、定期開放の間隔は年1回程度(1970年代の資料)から3年以内に1回程度(1990年代の資料)とされてきました。そのかわり高速で回る機械なので、軸系の危険速度から回転数を離す設計と、運転中の軸振動の監視が欠かせません。

往復動は「予備機を含めて系統を組み、弁を定期的に取り替える」前提で、遠心は「1台で長く回し、振動で異常をとらえる」前提で考えます。 運転員が日常見る項目も、往復動は各段の圧力・温度・弁の音、遠心は振動・軸受温度と、力点が違います。

スクリューは往復動ではないので振動が少なく、基礎の設計が容易で、吐出ガスの脈動も少ない機械です。一方で、圧縮の原理から騒音が大きく、防音がしにくいという欠点があります。

5. スクリュー圧縮機|油冷式と無給油式で性格がまるで違う

スクリュー圧縮機は、往復動と遠心の中間の容量で経済性があり、機械的な信頼性は遠心に次ぐと位置づけられてきました。弁がないので脈動がなく、遠心のようなサージングも起こしません。小風量でも高い圧力が得やすく、1段あたりの圧力比は遠心より大きくとれます。

ただし、ひとくちにスクリューといっても、油をどう使うかで2つの形式に分かれ、向く用途が大きく違います。

スクリュー圧縮機の油冷式と無給油式|油でシールと冷却をするか、タイミングギヤで非接触に保つか

油冷式(油注入式、ウェット形) は、タイミングギヤ(同期歯車)を持たず、ケーシング内に多量の油を噴き込みます。油はロータ間やケーシングとのすき間をふさぎ(シール)、摺動部を潤滑し、圧縮で出る熱をその場で奪います。等温圧縮に近づくので効率がよく、吐出温度が低く、高い圧力比に向きます。油はガスと一緒に吐き出されるので、吐出側の油分離器で回収して冷やし、再び噴き込みます。容量は滑り弁(スライド弁)で連続的に調整でき、現行の製品では15〜100%程度の範囲をうたうものがあります。

無給油式(ドライ形、オイルフリー) は、軸端のタイミングギヤで雄ロータと雌ロータの位置関係を保ち、ロータどうしもケーシングとも接触させずに回します。圧縮室に油が入らないので、油の混入を嫌うガスに向きます。 高圧ガス保安の教科書も、計装用空気に油が混入しないよう無給油タイプのスクリュー圧縮機を採用するとしています。

項目油冷式無給油式
ロータの位置決め油膜を介して接触タイミングギヤで非接触
圧縮室の油多量に噴く(シール・冷却・潤滑)入れない
吐出温度低い油冷式より高い
1段で上げられる圧力大きい小さい(多段にする)
吐出後の処理油分離器で油を回収油の分離は不要
向く用途の例水素・ヘリウム・燃料ガスの昇圧、冷凍機計装用空気、重合しやすいガス、汚れやダストを含むガス、分子量が変わるガス

1980年代末の便覧では、無給油式は1段で約0.4 MPa、2段で約1.0 MPa、3段で約2.9 MPa(いずれもゲージ圧)、油注入式は1段で約0.7 MPaまでが目安とされていました。現行のプロセスガス用では、無給油式で吐出約4.5 MPa、油冷式で約10 MPaまでの機種が作られており、適用範囲は大きく広がっています。

冷凍機のように閉じたループで冷媒を回す場合は、油が冷媒と一緒に系内を回っても支障がないので、油冷式が広く使われます。冷凍サイクルそのものは冷凍サイクルとCOPで解説しています。

スクリューの弱点は、ロータを精密なすき間で回す機械であることです。 高い精度の加工が要り、差圧が大きいと軸方向の推力(スラスト)が大きくなります。トラブルの多くはロータどうし、またはロータとケーシングの接触につながるとされ、冷却水が止まると圧縮熱でケーシングがひずんですき間が保てなくなります。スクリューでは冷却水の通水と吐出温度の上昇を最も警戒し、断水の検出を止めないようにします。

6. 軸流圧縮機|大流量・高効率だが運転範囲が狭く汚れに弱い

軸流圧縮機は、遠心よりも小形で大容量のガスを圧縮でき、効率も遠心より高い機械です。1980年代末の便覧では、風量1,000〜10,000 m³/min、吐出約0.7 MPa(ゲージ圧)程度のものが使われるとされ、1990年代の資料でも使用圧力は約0.1〜1 MPaと低めです。主な用途は、ガスタービン、製鉄の高炉送風機、大容量の空気源です。

一方で、次の弱点があります。

  • 運転できる範囲が狭い:性能曲線が非常に急で、サージ限界と設計点の間の余裕が小さい
  • 汚れやダストに弱い:翼列のすき間が性能を決めるので、付着物による能力低下が遠心より大きく、汚れを伴うプロセスには使いにくい
  • 大容量でないと出番がない:もともと遠心1台では容量をまかなえない大型の装置で検討されるようになった形式

容量は静翼の角度(ピッチ)を変えて調整します。化学プラントで軸流を選ぶのは、遠心1台では容量をまかなえない大風量の清浄な空気やガスを扱う場合で、初めの数段を軸流、後段を遠心にした組合せ機もあります。

7. そのほかの形式|ルーツ・ベーン・ダイヤフラム・液封

化学プラントでは数は少ないものの、次の形式もあります。

  • ルーツ:まゆ形の2つのロータを非接触で回し、閉じ込めたガスを吐出側へ送る。内部で圧縮せず、吐出口に通じた瞬間に吐出側のガスが逆流して圧縮されるので、効率は低く吐出温度は高い。圧力の低いブロワーや真空ブースターとして使う。詳しくは送風機の種類と特徴とルーツポンプ(メカニカルブースター)
  • ベーン(偏心円筒ロータ形):シリンダ内で偏心して回るロータと、ロータに接して動く仕切り板で三日月形の空間を区切って圧縮する。真空ポンプや小形の冷凍機に使われ、容量は小さい
  • ダイヤフラム:膜の往復変形でガスを吸い込み、吐き出す。ガスが潤滑油にも外部にも触れないので、腐食性ガスや漏らしたくないガスを小容量で圧縮するのに使う
  • 液封:楕円形のケーシング内で液を羽根車で回し、液面の内側の空間の容積変化で圧縮する。真空ポンプのほか、塩素ガスの圧送など特殊な用途に使う

8. 比較表|4形式を並べる

項目往復動スクリュー遠心軸流
原理容積形容積形ターボ形ターボ形
得意な領域小流量・高圧中流量・中圧大流量・中〜高圧超大流量・低〜中圧
抵抗が増えたとき流量ほぼ一定で圧力上昇流量ほぼ一定で圧力上昇流量が減る流量が減る(幅が狭い)
サージング起きない起きない起きる起きる
圧力の守り安全弁が必須安全弁が必須締め切っても圧力上昇に限度同左
脈動大きい(緩衝器が要る)少ないないない
振動・基礎大きい・重い基礎小さい小さい小さい
吐出ガスへの油給油式は混じる油冷式は混じる(分離器)混じらない混じらない
ガス組成の影響比熱比で容量が変わる分子量の影響は小さい分子量で圧力比が変わる分子量で圧力比が変わる
汚れ・ダスト弁の不調の原因無給油式は強い付着でアンバランス特に弱い
主な容量調整アンローダ・クリアランスポケット・リサイクル滑り弁など回転数・吸込絞り・入口案内羽根静翼の角度
連続運転弁が上限を決め、予備機を持つ長い長い(1台で長期)長い

9. 選び方の手順|流量と圧力→用途→ガス→運転

形式を選ぶときは、次の順に絞り込みます。

① 流量と吐出圧力で大まかに決める

流量が小さく圧力が高いほど往復動、流量が大きくなるにつれてスクリュー、遠心、軸流へ移ります。往復動は1段あたりの圧力比を2〜12程度と大きくとれ(1980年代末の便覧)、化学反応用では非常に高い圧力まで使われます。境界ははっきりしたものではなく、実機はこの目安の外にもあります。迷ったら最初に「流量が小さく、差圧が大きいか」を見ます。

② 用途で求められる性能を考える

  • メイクアップ(補充):装置で消費される水素などを補う圧縮機。補充量は大きくないのに装置の運転圧力まで大きく上げるので、小容量・高差圧になり、往復動がもっとも一般的
  • 循環(リサイクル):反応系にガスを回し、系内の圧力損失だけをまかなう。流量が大きく差圧が小さいので、装置の信頼性を重視して遠心を選ぶことが多い
  • オフガス:装置から出るガス量が原料や外気温で変動するのが普通。発生量に合わせて吐出圧力を一定に保ちたいなら容積形が向く
  • 計装用空気:油を入れないことが条件で、無給油スクリューが基本
  • 冷凍機:閉じたループなので油冷スクリューなども使える

③ ガスの性質で候補を外す

分子量が大きく変動するガスや軽いガスは遠心が苦手です。重合しやすいガス、汚れやダストを含むガスは弁や翼を傷めるので、無給油スクリューが候補になります。油の混入が許されないなら無給油式、腐食性で漏らしたくないガスを少量ならダイヤフラムです。凝縮しやすい湿ったガスを往復動で扱う場合は、シリンダ内でできた液が弁座と弁板の間でたたかれて弁板を割ることがあるので、吸込側での凝縮対策が前提になります。

④ 運転と保全で決める

容量をどこまで、どう下げるか(段階的でよいか、連続的に要るか)、連続運転期間、予備機を置くか、駆動機(電動機か蒸気タービンか)を合わせて決めます。

遠心・軸流の設計点に余裕を上乗せしすぎないことも大切です。 ターボ形は運転範囲が限られるので、設計点は正常運転の条件で決めます。余裕を見て大きく選ぶと、ふだんの運転点がサージ限界に近づきます。1970年代の設計書では目安として、サージ点の流量は設計点の吸込流量の70%以下、チョーク点は110%以上が望ましいとされています。

10. 取り違えやすい操作|吐出弁を閉めてよいのはどちらか

形式の違いが事故に直結するのが、吐出側の弁の扱いです。

往復動・スクリューなど容積形の圧縮機は、吐出側の弁を絞って流量を調整できません。 吐出を絞っても流量はほとんど減らず、圧力と動力が上がり続けます。締め切り運転はできず、圧力に対する保安装置(安全弁)が必要です。吐出側の弁を閉めたまま起動したり、運転中に閉めたりしてはいけません。 容積形の流量を下げるときは、アンローダやクリアランスポケット、滑り弁、回転数、吸込側へ戻すリサイクル(スピルバック)を使います。

リサイクル圧縮機のように圧力比が小さい容積形では、安全弁が吹くほど吐出圧力が上がると、動力は吸込と吐出の圧力差にほぼ比例して増えます。圧力比がとても小さい高圧のリサイクル機で、吸込・吐出間に差圧を制限する安全弁を付けて動力の上がりすぎを防ぐ例があるのはこのためです。

遠心は、締め切っても圧力の上昇に限度があり、容積形のように圧力が上がり続けることはありません。ただし締め切り近くまで絞ればサージングに入ります。 流量を下げるときは回転数や吸込側の絞りを使い、サージ限界より少なくなる分はリサイクル弁で吸込側へ戻します。

「吐出弁を絞って流量を減らす」のは遠心だけに許される操作で、それでもサージ限界の手前までです。 形式の違う圧縮機が並ぶ現場では、操作手順書の中で形式ごとの禁止操作をはっきりさせておきます。

まとめ

  • 圧縮機は容積形(往復動・スクリューなど)とターボ形(遠心・軸流)に分かれます。 容積形は閉じ込めて縮め、ターボ形は速度を圧力に変えます。
  • 往復動は流量がほぼ一定で圧力が変わり、遠心は圧力比がほぼ一定で流量が変わります。 遠心・軸流にはサージ限界とチョークがあり、運転範囲が限られます。
  • 遠心の吐出圧力は分子量と吸込温度で上下し、往復動の容量は比熱比で変わります。 遠心で圧力が出ないときは、吸込温度とガス組成を先に確かめます。
  • 往復動は脈動・振動・弁の寿命を抱え、予備機を含めて系統を組みます。 遠心は長期連続運転が前提で、振動で異常をとらえます。
  • スクリューは油冷式と無給油式で別の機械と考えます。 油冷式は吐出温度が低く高圧向き、無給油式は計装用空気や汚れたガス、重合しやすいガスに使います。
  • 軸流は大流量・高効率ですが、運転範囲が狭く汚れに弱い機械です。
  • 形式は流量と圧力、用途、ガスの性質、運転と保全の順で絞り、ターボ形の設計点に余裕を上乗せしすぎないようにします。
  • 容積形の吐出弁を閉めたまま運転しない。 遠心でも絞りすぎればサージングに入ります。

ファン・ブロワーとの呼び分けや圧力比の考え方はファン・ブロワー・圧縮機の違い、送風機全体は送風機・ブロワー完全ガイドを参照してください。

参考文献

  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』, 11.5「圧縮機とポンプ」(図11.75、図11.80〜図11.90)、2.4.3「空気供給設備」 最新版をAmazonで見る
  • 化学工学協会関東支部編『プロセス機器構造設計シリーズ6 化学プラント用ポンプ・圧縮機』丸善, 1・2「圧縮機」(図1・2)、3・1・2「遠心圧縮機の性能」、3・5「往復動圧縮機の計画」(表3・3)、6・1「遠心圧縮機の取扱い」(図6・2)、6・2「往復動圧縮機の取扱い」
  • 日本プラントメンテナンス協会編『ファン・コンプレッサーの本』第3章「圧縮機の種類と構造」 Amazonで見る
  • 化学工学協会編『化学装置便覧 改訂二版』第18章「ポンプ,圧縮機,冷凍機」18・2・3「容積型圧縮機」、18・2・4「ターボ型圧縮機」(図18・13)
  • 化学工学会編『化学工学便覧 改訂五版』丸善, 第5章「流動」(図5・58)(リンクは最新版) 最新版をAmazonで見る
  • 高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』理工学社, 3章「送風機・圧縮機」(表3・4) Amazonで見る
  • 化学工学協会編『プロセス設計シリーズ7 プロセスの制御と計算機制御』丸善, 1・4「制御を考慮したプロセス設計」
  • 神戸製鋼所「無給油式(DRY)スクリュ圧縮機」
  • 神戸製鋼所「油冷式(WET)スクリュ圧縮機」
  • 日立インダストリアルプロダクツ「遠心圧縮機」
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