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調節弁のトラブルと保全|グランド漏れ・シート漏れ・ハンチング・固着、日常点検で見る所

調節弁のトラブルと保全のアイキャッチ

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調節弁は制御ループの最終操作端なので、調節弁の異常はそのまま装置の異常になります。調節弁ハンドブックは、調節弁のトラブルの中で流体が関係したものが全体の 20% に上り、そのうち流体の物性に関連するものがほぼ半数だと書いています。

トラブルの代表は、ハンチング、スティックスリップ(引っかかっては急に動く)、作動しない、異音・振動、漏れです。どれも「外から見えるのは開度の動きと音と漏れだけ」なので、弁開度の波形と現場の五感が切り分けの材料になります。

この記事では、ハンチングをループ発振と区別する方法、波形で摩擦か空気容量かを見分ける表、スティックスリップの原因、動かないときの順序、日常点検の4項目、そして故障の原因と対策の一覧を説明します。

この記事の結論

  • 弁のハンチングとループ発振を区別するには、コントローラを手動にする。出力一定でも弁開度が動き続ければ弁側
  • 波形が 長周期(1秒以上)で停止域があるなら摺動部の摩擦(パッキン締めすぎ、異物噛込み)、短周期(1秒以下)で停止なく反転するなら空気容量(ポジショナやブースタの供給容量過大、ゲイン過大)
  • スティックスリップは静摩擦と動摩擦の差で起きる。原因はトリム摺動部への異物噛込みとグランドパッキンの過大締付が多い
  • 動かないときは、まず操作器の出力が正常か → 部位 → 原因の順に切り分ける
  • 日常点検の4項目は 外部漏洩・作動の異常・振動騒音・外観と設置状態。運転中の疑わしい現象は最終的に開放点検で実証される
  • 全閉付近でハンチングするのは Cv が大きすぎるか流れ方向の逆取付。バイパス弁を開けての運転も制御性を損なう

1. ハンチングか、ループ発振か

ハンチングとは、ある限定された範囲で同一の変化パターンを繰り返す弁開度の変動です。ハンドブックは、流体の変動が引き金になり、ポジショナや流量ブースタなどの付属計装機器が影響して発生することが多い、と書いています。

ここで大事な区別があります。上位コントローラの PID パラメータが不適切なために起きる「ループ発振」と混同されやすいのです。ハンドブックの定義では、弁のハンチングは「コントローラをマニュアルモードとし、その出力が一定となった状態でもなお、調節弁の開度が継続的な変化状態となる現象」です。

だから切り分けの最初の一手は、コントローラを手動にして出力を固定し、それでも弁が動き続けるかを見ることです。止まればループ側(PID や上流の変動)、止まらなければ弁側です。積分飽和とハンチングの記事で扱った切り分けと同じ考え方です。

2. 波形で摩擦か空気容量かを見分ける

弁側のハンチングは、波形の形でさらに2つに分かれます。ハンドブックの表を要約します。

ハンチングの波形で原因を見分ける
ハンチングの波形で原因を見分ける
区分波形の特徴主な要因対応
Ⅰ長周期(1秒程度以上)、変化に停止域がある(台形のような波)摺動部の摩擦:グランドパッキンの摩擦力や過大締付、トリム部の摩擦や異物噛込み、ポジショナのゲイン過大パッキンの締付調整・交換・材質再選定、摺動部の点検清掃、ポジショナのゲイン再調整、操作器出力の見直し
Ⅱ短周期(1秒程度以下)、停止部がなく直ちに反転する(正弦波のような波)空気圧室の容量:ポジショナやブースタの供給空気容量が過大、ポジショナのゲイン過大信号や出力の経路に絞りやボリュームを追加、ゲイン再調整、絞りやノズル・フラッパの清掃

実際の応答は単純な波形ではなく複合していることが多いので、波形をよく観察して見極めます。DCS のトレンドで弁開度(ポジショナからのフィードバック信号があれば)を秒単位で見るのが有効です。見分けの手順はポジショナの役割と調整で説明しています。

3. スティックスリップ|引っかかっては急に動く

スティックスリップは、弁のストローク動作で、動作速度が不連続に変化しつつ動く現象です。摺動部に摩擦力が働き、操作器の出力が静摩擦に打ち勝ったところで動き出す。動き出すと摩擦は動摩擦になって抵抗が減り、動作速度が急に増す。その結果、操作器の空気圧室の圧力が急に減って、摩擦とのバランス点で止まる。まだ目標の位置に達していなければ、再び静摩擦に打ち勝つまで静止し、また動き出す。この繰り返しです。

スティックスリップは階段状に動く
スティックスリップは階段状に動く

ハンドブックは、実際の調節弁の摺動部に発生する過大な摩擦力は、トリム摺動部への異物の噛み込みや挟み込み、グランドパッキン部の過大締付による場合が多いと書き、弁本体内部で採取した異物の写真(金属チップ、切粉、溶接スパッタ、砂)を載せています。金属でも酸化して硬くなったものや砂は、通常の金属より硬いものが多く、摺動表面を傷めて摩擦を増やします。

対策は摩擦の発生部位への処置が基本で、グランド部(締付のリリースと再締付、パッキン交換)、トリム摺動部(配管内部の清掃・フラッシング、トリムの硬化処理)、操作器部(シール部品の損傷や漏れ、空気源圧力の異常、付属機器の異常)に分けて対応します。新設や改造の後にスティックスリップが出たら、配管内の異物を疑うのが順序です。

4. 動かない・異音・振動

調節弁が作動しない現象は、多くは操作系(駆動系)の異常で、操作部出力の直接的または相対的な力不足と推定されます。ハンドブックは、まず操作器部の出力が正常であるか否かの確認、次いでその部位の確認、原因の確認と手順を踏み進めることが重要だとしています。空気が来ているか、圧力は足りているか、ポジショナは出力しているか、を先に見て、それから弁本体を疑います。

異音・振動は、高圧の気体で縮流部を通過した流体が高速の噴流になり、剪断・剥離・衝撃波などで騒音を出すことがあり、流速や弁差圧を考慮した処置が要ります。

5. 日常点検の4項目

ハンドブックの日常点検項目の表です。運転状態における異常をいち早く発見し処理することが主な目的です。

点検項目点検部位
プロセス流体の外部漏洩本体・上蓋の外殻部、グランド部、フランジ部
作動の異常ポジショナ、操作器、本体部、付属機器類、制御動作全体
振動・騒音の有無自励振動、伝達振動、異常音、騒音
外観・設置状態その他配線、空気配管からの洩れ、保温・保冷、潤滑剤の補給、塗装の剥がれ、防水・防錆、組み付け、設置環境(周囲温度変化など)

ハンドブックは、この種の点検は「人間の五感にたよる部分がかなり多い」とし、外からだけでは弁内部の状況を引き出すことは極めて難しく、運転中の疑わしい現象は最終的に開放点検によって実証されることが多いと書いています。日常点検は「開放点検につなぐ情報収集」でもあります。

6. 故障の原因と対策の早見

ハンドブックの「故障の原因と対策」から、運転員が現象として気づくものを抜粋します。

現象推定原因対策
供給空気圧が変動する計装空気の容量不足、エアセットの故障コンプレッサ容量増、専用コンプレッサ、エアセット点検
制御信号がハンチングする信号配管の抵抗や容量が不適当(空気信号)、調節計の故障やチューニング不足信号配管に容量タンクや絞り、調節計の点検・チューニング
信号も供給空気も一定なのにハンチングポジショナの故障(摩擦・磨耗・パイロットリレー・感度)、プロセス圧力変動による不平衡・軸推力の変動ポジショナ点検・感度調整、弁前後差圧を減らす、剛性の高い操作器、ポジショナ追加
全閉位置付近でハンチングCv 値が大きすぎる、流れ方向の逆取付弁前後差圧を減らす、Cv の小さい内弁に交換、出入口を反対に
どの開度でも振動するサポート不足、周辺に振動源、プラグ・ガイド部の磨耗サポート強化、振動源除去、ガイドリングやプラグ交換
往復とも動作が鈍いガイド部や上蓋の流体滞留部にスラリーなどの付着物、ピストン O リングの磨耗、グランドパッキンの変質・硬化開放清掃、圧力バランス孔の拡大、スチームジャケット、O リング交換、パッキン交換・潤滑剤補給

「全閉付近でハンチング」は、弁が大きすぎて低開度でしか使われていない典型的な症状です。流量特性の記事で扱った「常用域が 10% 以下」の弁は、この症状が出ます。

7. 現場で見る場所

  1. グランド部の漏れ:ステムの根元の滲み。締めすぎると摩擦が増えてスティックスリップになる。増締めは規定トルクで
  2. 開度の動き:手で触れずに、開度指針が小刻みに動いていないか、引っかかって飛んでいないか
  3. 空気の音:ポジショナや操作器からの連続的な漏れ音。信号配管の継手
  4. 弁前後の差圧:全開近くで差圧が無くなっていないか、全閉付近でしか動いていないか
  5. 設置環境:日射・輻射熱・振動源・保温の剥がれ。許容周囲温度 −20〜70℃
  6. 記録:異常を見つけたら、開度の波形(トレンドの画面)と時刻を残す。開放点検のときに役立つ

8. 先輩に聞かれたら答えられる3問

  1. 弁のハンチングとループ発振を区別するには、何をしますか。
  2. 長周期で停止域のあるハンチングの主な要因は何ですか。
  3. 調節弁が動かないとき、最初に確認するのは何ですか。

答えは順に、コントローラを手動にして出力を固定し、それでも弁が動くか見る/摺動部の摩擦(パッキンの締めすぎ、異物噛込み)/操作器の出力が正常か(空気が来ているか、圧力は足りているか)、です。

まとめ

調節弁のトラブルは、ハンチング、スティックスリップ、動かない、異音・振動、漏れが代表で、切り分けの第一手はコントローラを手動にして弁側かループ側かを見ることです。弁側なら波形の周期と停止域で摩擦か空気容量かを分け、スティックスリップは異物噛込みとパッキンの締めすぎを疑います。動かないときは操作器の出力から順に確認します。

日常点検は外部漏洩・作動・振動騒音・外観設置の4項目で、五感に頼る部分が多く、疑わしい現象は最終的に開放点検で実証されます。全閉付近でのハンチングは Cv が大きすぎる典型で、弁のサイズ見直しにつなげてください。

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参考文献

  • 山武 調節弁ハンドブック編纂委員会編『工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック 改訂第2版』日本工業出版, 第11章「トラブルと対策と保全管理」(11.1 トラブルの代表例とその解決方法、11.2 トラブルを起こさないための留意点、11.3.4 日常点検、11.3.5 故障全般、その原因と対策)  Amazonで見る
  • 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 3.1「調節弁」、【解説】弁駆動部の選定と使用上の注意  Amazonで見る
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