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学識のどこから手をつければいいのか分からない。
燃焼・爆発の計算は種類が多すぎて、対策の的が絞れない。
そんな悩みを解決します。
10回すべてで大問1題まるごと出ている唯一の型
出る形は5つだけ(三角図3・断熱火炎温度3・TNT換算2・ル・シャトリエ1・セメノフ1)
どの形も最初の一手は同じ ── 反応式を書いて燃焼熱を出す
令和6年度の問題を、電卓の叩き方まで含めて完全に解く

学識で1つだけ型を仕上げるなら、これです。国試なら問5、検定なら問4がここでした。
最初に、学識の型別出題回数を出します。令和2〜6年度の国試5回・検定5回、計10回の集計です。
| 型 | 内容 | 主として出た回数 | 出題率 |
|---|---|---|---|
| 型9 | 燃焼・爆発 | 10 | 10/10回 |
| 型6 | 化学平衡 | 7 | 7/10回 |
| 型3 | 蒸気圧・気液平衡 | 6 | 6/10回 |
| 型7 | 反応速度・アレニウス | 6 | 6/10回 |
| 型4 | 熱力学の状態変化 | 5 | 5/10回 |
| 型1 | 理想気体・混合気体 | 5 | 5/10回 |
| 型8 | 熱化学 | 0(従として6) | 型9の下位工程 |
| 型2 | 実在気体 | 1 | 1/10回 |
| 型5 | 圧縮機動力・冷凍サイクル | 0(従1) | 1/10回 |
| 型10 | 流動・伝熱・材料力学 | 0 | 0/10回 |
学識の合格ラインは60%。型9を落とすと、そこだけで15〜20点が飛びます。
型別の全体像は学識の計算は「10の型」しか出ない、出題マップは学識の出題マップを参照してください。
型9は、出る形が5つしかない
| 形 | 10年(10回)で出た回 | 年度・問 |
|---|---|---|
| ① 三角図(爆発範囲図) | 3 | R5国試問5/R2検定問4/R6検定問4 |
| ② 断熱火炎温度 | 3 | R4国試問5/R4検定問4/R5検定問4 |
| ③ TNT換算・爆風過圧 | 2 | R2国試問5/R3検定問4 |
| ④ ル・シャトリエ/バージェス・ホイーラー | 1 | R6国試問5 |
| ⑤ セメノフの熱発火理論 | 1 | R3国試問5 |
そして、どの形も最初の一手が同じ
反応式を書く(係数を合わせる)
↓
生成エンタルピーから燃焼熱を出す(=型8)
↓
その燃焼熱を、①〜⑤のどれかに流し込む
だから型8(熱化学)は単独の大問になりません。 10回とも、型9の中の下位工程として現れています。
熱化学そのものの整理は型8|ヘスの法則と生成エンタルピー、概念としてはヘスの法則と総発熱量・真発熱量で扱います。
使う式は6つ
Qc = Σ(生成物のΔHf) − Σ(反応物のΔHf)
符号を反転したものが燃焼熱(発熱量)
100 / L = Σ(cᵢ / Lᵢ)
cᵢ:各可燃性ガスの vol%(可燃分の中での割合)
Lᵢ:各成分単独の爆発限界 vol%
L × Qc ≒ 一定(飽和炭化水素)
→ 既知のガスの L・Qc から、未知のガスの L を推算する
Qc = Σ(nᵢ × Cp,ᵢ) × (T − T₀)
発熱がすべて排ガスの昇温に使われるとした温度
W_TNT = (物質の爆発熱 × 質量) / 4,190[kg]
4,190 kJ/kg = TNTの爆発熱
Z = R / W_TNT^(1/3)
Z から図表を引いてピーク過圧を求める
本番は四則電卓のみです(関数電卓は禁止)。立方根は常用対数表で処理します ── 後述します。
令和6年度 国家試験 問5 を完全に解く
バージェス・ホイーラー+ル・シャトリエ+燃焼熱。型9の3層構造がそのまま出た年です。
設問(要約)
温度25℃における空気中の爆発下限界 L[vol%]と燃焼熱 Qc[kJ/mol]の積は、飽和炭化水素ではほぼ一定で L × Qc = K と表される(バージェス・ホイーラーの法則)。
(1) プロパンの燃焼熱を求めよ。標準生成エンタルピーは プロパン −104.7、CO₂ −393.5、H₂O(g) −241.8[kJ/mol]とする。
(2) エタンの燃焼熱は1,428 kJ/mol、25℃空気中の爆発下限界は3.0 vol%。式①を用いて25℃空気中でのプロパンの爆発下限界を有効数字2桁で求めよ。
(3) エタン50 vol%、プロパン50 vol% の混合気体の爆発下限界を有効数字2桁で求めよ。
(1) 燃焼熱 ── まず反応式
反応式を書かずに数字を触らない。 ここが最大の分岐点です。
C₃H₈ + 5 O₂ → 3 CO₂ + 4 H₂O
係数を合わせます。Cが3個 → CO₂が3、Hが8個 → H₂Oが4、Oは右辺に 3×2+4×1=10 個 → O₂が5。
ΔH = 3×(−393.5) + 4×(−241.8) − (−104.7)
= −1,180.5 − 967.2 + 104.7
= −2,043 kJ/mol
→ 燃焼熱 Qc = 2,043 kJ/mol
H₂O が (g) である点に注意してください。 (l) なら −285.8 で、答えが変わります。この差が総発熱量と真発熱量の差です(→ ヘスの法則と発熱量)。
(2) バージェス・ホイーラー
L_プロパン × 2,043 = 3.0 × 1,428
L_プロパン = 4,284 / 2,043 = 2.097
→ 2.1 vol%
燃焼熱が大きいガスほど、爆発下限界は低い。 式はそれを言っています。
爆発限界そのものの整理は爆発範囲(LEL・UEL)を参照してください。
(3) ル・シャトリエ
100/L = 50/3.0 + 50/2.1
= 16.67 + 23.81 = 40.48
L = 100 / 40.48 = 2.47
→ 2.5 vol%
今回は可燃分だけの混合(50+50=100)なので、そのまま代入できます。
規格化が必要な例
メタン30 vol%、プロパン20 vol%、窒素50 vol% の混合ガスの爆発下限界は?
(LEL:メタン5.0、プロパン2.1 vol%)
〔解答〕
可燃分は 30+20=50 vol%。これを100%に直す。
メタン:30/50×100 = 60 vol%/プロパン:20/50×100 = 40 vol%
100/L = 60/5.0 + 40/2.1 = 12.0 + 19.05 = 31.05
L = 3.2 vol%(可燃分中の値)
① 三角図 ── 10回中3回。読み方だけで解ける
R5国試問5(水素-空気-不活性ガス)、R2検定問4(HFC-134a-酸素-窒素)、R6検定問4(水素-酸素-窒素)。
頂点A:可燃性ガス 100%
頂点B:酸素(または空気)100%
頂点C:不活性ガス 100%
図の中の任意の点で、3成分の合計が常に100%
読み取る4つの量
| 量 | 図のどこか |
|---|---|
| 爆発下限界(LEL) | 空気線(B-C辺から可燃性ゼロ側)と爆発範囲の交点の下側 |
| 爆発上限界(UEL) | 同じ線の上側 |
| 限界酸素濃度(LOC / MOC) | 爆発範囲の「鼻先」の酸素濃度 |
| 最小不活性ガス濃度 | 鼻先を通る不活性ガス線の値 |
なぜ不活性ガス希釈で爆発を防げるのか
R4国試の問6でこれが記述問題として出ました。理由は2つあります。
- 酸素濃度が下がる → 反応に必要な酸素が足りなくなる
- 熱容量が増える → 発生した熱で温度が上がりにくくなり、火炎が伝播しない
2つ目を書き落とすと減点されます。 単なる酸素の希釈だけではありません。
実務側は不活性化とパージ、爆発現象そのものは爆燃と爆轟で扱っています。
解く手順
- 問題文の混合ガスの組成から、図上の点を打つ
- その点が爆発範囲の内か外かを判定する
- 「安全にするには何を何%加えるか」なら、点を動かして範囲の外へ出す
計算はほとんど不要です。 図が読めるかどうかだけ。ここは確実に取ってください。
三角図の詳しい読み方は三角図(三角座標)の読み方にまとめています。
② 断熱火炎温度 ── 10回中3回。作業量は多いが一本道
R4国試問5(プロパン・ブタン混合)、R4検定問4(プロパン・ブタン)、R5検定問4(水素・エタン)。
燃焼で出た熱が、すべて排ガスの昇温に使われるとしたら何度になるか
Qc = Σ(nᵢ × Cp,ᵢ) × (T − T₀)
→ T = T₀ + Qc / Σ(nᵢ × Cp,ᵢ)
手順は4ステップ
- 反応式を書く(過剰空気があれば、余った O₂ と N₂ も右辺に残す)
- 燃焼熱 Qc を出す(=型8)
- 排ガスの物質量 nᵢ を数える ── CO₂・H₂O・N₂・余剰O₂
- Σ(nᵢCp,ᵢ) で割る
窒素を忘れてはいけない理由
空気で燃やす場合、O₂ 1 mol に対して N₂ が 3.76 mol 付いてきます(79/21 ≒ 3.76)。
この N₂ は反応しませんが、一緒に温められます。排ガスの大部分は窒素です。
C₃H₈ + 5 O₂ + 5×3.76 N₂ → 3 CO₂ + 4 H₂O + 18.8 N₂
排ガス合計 = 3 + 4 + 18.8 = 25.8 mol
うち73%が窒素
ミニ例題
プロパン1 molを理論空気量で完全燃焼させた。断熱火炎温度を求めよ。
Qc = 2,043 kJ/mol(H₂Oは気体)、初期温度 25℃。
平均モル熱容量 Cp:CO₂ 55、H₂O 43、N₂ 33[J/(mol·K)]とする。
〔解答〕
Σ(nᵢCp,ᵢ) = 3×55 + 4×43 + 18.8×33
= 165 + 172 + 620 = 957 J/K
ΔT = 2,043×10³ / 957 = 2,135 K
T = 25 + 2,135 = 約2,160 ℃
この「無視した分だけ高く出る」という性質は、記述問題でも問われます。
概念としては断熱火炎温度の計算で詳しく扱います。
③ TNT換算・爆風過圧 ── 10回中2回
R2国試問5(硝酸エチル:ベンソン法・燃焼熱・TNT換算)、R3検定問4(アセトアルデヒド:TNT換算・爆風ピーク過圧)。
① 物質の爆発熱[kJ/kg]を出す(生成エンタルピー、またはベンソン法で推算)
② W_TNT = 爆発熱 × 質量 / 4,190
③ 換算距離 Z = R / W_TNT^(1/3)
④ Z から図表でピーク過圧を読む
立方根を四則電卓で出す
ここが本番の山場です。関数電卓は使えません。常用対数表で処理します。
log 1,000 = 3.000
3.000 ÷ 3 = 1.000
10^1.000 = 10
log 250 = log 2.50 + 2 = 0.398 + 2 = 2.398
2.398 ÷ 3 = 0.799
表で 0.799 に近い値を逆引き → 真数 6.30
常用対数表で使う公式は4つだけ
- log(xy) = log x + log y
- log(x/y) = log x − log y
- log xⁿ = n log x
- ln x = 2.303 log x(自然対数の変換)
最後の ln x = 2.303 log x は、型7(反応速度・アレニウス)で必ず1回使います。
なぜ4,190 kJ/kg か
TNT 1 kg が爆発したときに出るエネルギーです。この数値は問題文に与えられますので暗記は不要ですが、桁の感覚として持っておいてください。
参考:プロパンの燃焼熱は約46,000 kJ/kg。TNTの11倍です。
この違いが爆燃と爆轟の差そのものです。影響評価の実務はTNT換算とホプキンソンの三乗根法則、蒸気雲爆発で扱います。
⑤ セメノフの熱発火理論 ── 10回中1回だが記述でも出る
R3国試問5。発熱速度 q₁ と放熱速度 q₂ のグラフを読ませる問題でした。
q₁(発熱速度):温度に対して指数関数的に増える(アレニウス型)
q₂(放熱速度):温度に対して直線的に増える(ニュートン冷却)
発火するかどうかの判定
| 2本の関係 | 何が起きるか |
|---|---|
| q₂ が q₁ より上(交点2つ) | 低温側の交点で安定。発火しない |
| q₁ と q₂ が接する | 発火の臨界条件 |
| q₁ が q₂ より上(交点なし) | 温度が上がり続ける → 発火 |
これは暴走反応とSADTの理論そのものです。反応器の除熱能力を超えると温度が走る ── 実務の話と完全に同じ図で説明できます。
何を変えれば発火しにくくなるか
- 放熱を増やす(q₂ の傾きを上げる)── 容器を小さく、表面積を大きく、冷却を強く
- 周囲温度を下げる(q₂ を左へずらす)
- 発熱を減らす(q₁ を下げる)── 濃度を下げる、希釈する
「容器が大きいほど発火しやすい」のは、体積(発熱)が3乗、表面積(放熱)が2乗で増えるからです。
この型の練習のしかた
- 反応式を書く練習を先にやる。プロパン・ブタン・エタン・水素・メタノール・アセトアルデヒド。10分もかからない
- 生成エンタルピーから燃焼熱を出すを、上の6物質でひととおり
- ①三角図 → ②断熱火炎温度 → ③TNT換算の順に、過去問を1題ずつ
- 常用対数表での立方根を3回やる(これだけは手が覚えるまで)
よくある失点
| 失点 | 対策 |
|---|---|
| H₂O が (g) か (l) かを取り違える | 問題文の指定を丸で囲む。生成エンタルピーの値が違う |
| ル・シャトリエで規格化を忘れる | 不活性ガスがあれば必ず可燃分100%に直す |
| 断熱火炎温度でN₂を数え忘れる | O₂ 1 molに N₂ 3.76 mol。反応式に書き込む |
| 単体の生成エンタルピーを0でないと思う | O₂・N₂・C(黒鉛)・H₂ はすべて0 |
| 立方根が出せない | log を取って3で割り、逆引き |
この5つで、型9の失点はほぼ説明がつきます。
暗記カードにするならこれだけ
燃焼熱 Qc = Σ生成物ΔHf − Σ反応物ΔHf(単体は0)
ル・シャトリエ 100/L = Σ(cᵢ/Lᵢ)(cᵢは可燃分中の%)
バージェス・ホイーラー L × Qc ≒ 一定
断熱火炎温度 T = T₀ + Qc / Σ(nᵢCp,ᵢ)
TNT換算 W = 爆発熱×質量 / 4,190
換算距離 Z = R / W^(1/3)
空気燃焼では O₂ 1 molに N₂ 3.76 mol
H₂O は (g) か (l) かを必ず確認
ル・シャトリエは可燃分だけで100%に規格化
不活性ガス希釈の効果は①酸素濃度の低下 ②熱容量の増加の2つ
限界酸素濃度=爆発範囲の鼻先の酸素濃度
点を打って、範囲の内か外かを判定するだけ
q₁(発熱)は指数関数/q₂(放熱)は直線
接する点が発火の臨界条件
容器が大きいほど発火しやすい(発熱は3乗、放熱は2乗)
まとめ
- 型9は10回すべてで大問1題まるごと出ている唯一の型
- 出る形は三角図3・断熱火炎温度3・TNT換算2・ル・シャトリエ1・セメノフ1
- どの形も入口は反応式を書いて燃焼熱を出す(=型8)
- 型8は単独の大問にならない。型9とセットで練習する
- 三角図はほぼ計算不要。確実に取る
- 断熱火炎温度はN₂を数え忘れない(O₂ 1 molに3.76 mol)
- 立方根はlogを取って3で割り、逆引き
次は型6(化学平衡)です。10回中7回、モル収支表を書けば作業になります。→ 型6|化学平衡
型の全体像は計算10の型、学識全体の攻略は学識の出題マップへ。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に仕分けして独自に行ったものです。設問の要約と解法の解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。
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