型6(化学平衡)は型9(燃焼・爆発)に次ぐ第2位の頻出型で、解法が完全に定型化しています。反応した量を a と置いて、モル収支表を書く。あとは定義式に代入して解くだけです。
- 10回中5回の試験で計7題。7題のうち5題が検定
- 係数2の生成物は+2a。転化率の問題では合計列を作る
- ΔG° = −RT ln K とファントホッフの式を使い分け、ln K = 2.303 log K で常用対数表と往復する
型別の全体像は学識の計算は「10の型」しか出ないへ。
10回中5回(7題)── 検定に偏っている
| 年度・ルート・問 | テーマ |
|---|---|
| R2 検定 問2 | 水性ガスシフト反応の ΔG°・K |
| R4 国試 問3 | N₂O₄ ⇄ 2NO₂ の圧平衡定数(転化率αで表す) |
| R4 検定 問2 | フガシティー・活量(メタン水蒸気改質) |
| R4 検定 問3 | 圧平衡定数・ファントホッフ |
| R6 国試 問3 | メタノール合成の ΔH・ΔG・ΔS・K |
| R6 検定 問2 | フガシティー・活量(アンモニア合成) |
| R6 検定 問3 | I₂+H₂ ⇄ 2HI の濃度平衡定数・ファントホッフ |
検定が5題、国試が2題。フガシティー・活量は検定だけに出ています。受験ルートによって優先度が変わる、数少ない型です。
使う式は4つです。
- 平衡定数の定義:Kc = [生成物]^係数 / [反応物]^係数(濃度平衡定数)、Kp = p生成物^係数 / p反応物^係数(圧平衡定数)
- ΔG° と K:ΔG° = −RT ln K、ΔG° = ΔH° − TΔS°
- ファントホッフの式(温度依存性):d(ln Kp) / d(1/T) = −ΔH° / R。2点間なら ln(K₂/K₁) = −(ΔH°/R) × (1/T₂ − 1/T₁)
- 対数の変換:ln K = 2.303 log K(常用対数表を使うため)
ルート選択は検定と国家試験の比較へ。
モル収支表 ── これを書けば作業になる

| I₂ | H₂ | HI | |
|---|---|---|---|
| 初期 | 4.0 | 1.0 | 0 |
| 変化 | −a | −a | +2a |
| 平衡時 | 4.0 − a | 1.0 − a | 2a |
反応式の係数の比で増減を書き込みます。HI の係数が2なので、変化は +2a。ここを +a と書くのが最も多い失点です。
令和6年度 技術検定 問3 の要約:I₂(g) + H₂(g) ⇄ 2HI(g)。ヨウ素4.0 mol と水素1.0 mol を、内容積が変わらない10 Lの容器に入れて反応させた。この温度における濃度平衡定数が4.0のとき、平衡時の各物質量を求めよ。
定義式に代入して解く
容積が10 Lで一定なので、濃度は物質量を10で割った値です。
- Kc = [HI]² / ([I₂][H₂])
- = (2a/10)² / ((4.0−a)/10 × (1.0−a)/10)
- = (2a)² / ((4.0−a)(1.0−a)) … 体積が約分で消える
両辺のモル数が同じ反応では、体積が消えます。 I₂+H₂→2HI は左辺2 mol・右辺2 mol なので、濃度でも物質量でも同じ答えになります。モル数が変わる反応(N₂O₄ → 2NO₂ など)では消えないので、必ず確認してください。
- 4.0 = 4a² / ((4.0−a)(1.0−a))
- 4(4.0−a)(1.0−a) = 4a²
- 16 − 20a + 4a² = 4a²
- 16 = 20a → a = 0.8
a² が両辺で消えて1次方程式になりました。 両辺のモル数が等しい反応では必ずこうなります。
| 物質 | 平衡時の物質量 |
|---|---|
| I₂ | 4.0 − 0.8 = 3.2 mol |
| H₂ | 1.0 − 0.8 = 0.2 mol |
| HI | 2×0.8 = 1.6 mol |
表を書いた時点で問題は終わっています。
転化率αで表せ、と言われたら ── 合計列を作る

分圧=全圧×モル分率なので、合計の列を必ず作ってください。合計がないと分圧が出せません。
令和4年度 国家試験 問3(N₂O₄ ⇄ 2NO₂)は文字で答えさせるタイプです。要約:N₂O₄ を n[mol]入れて反応させた。平衡時の全圧を p、N₂O₄ の転化率を α として、平衡時の物質量と分圧、および圧平衡定数 Kp を α と p で表せ。
転化率は α = 反応した量 / 初期量、つまり反応した量 = nα。さっきの a を nα に置き換えるだけです。
| N₂O₄ | NO₂ | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 初期 | n | 0 | n |
| 変化 | −nα | +2nα | +nα |
| 平衡時 | n(1−α) | 2nα | n(1+α) |
分圧に直す(p_i = p × n_i / n_total)
- p(N₂O₄) = p × n(1−α) / n(1+α) = p(1−α)/(1+α)
- p(NO₂) = p × 2nα / n(1+α) = 2pα/(1+α)
n が約分で消えます。 転化率で表すと初期量に依存しなくなる ── これがこの表現を使う理由です。
Kp を作る
- Kp = p(NO₂)² / p(N₂O₄)
- = [2pα/(1+α)]² ÷ [p(1−α)/(1+α)]
- = 4p²α²/(1+α)² × (1+α)/(p(1−α))
- = 4pα² / ((1+α)(1−α)) = 4pα² / (1−α²)
全圧 100 kPa、α = 0.20 なら、Kp = 4×100×0.04 / (1−0.04) = 16 / 0.96 = 16.7 kPa。
Kp には単位が付きます。 左辺と右辺のモル数が違う反応(1 mol → 2 mol)だからです。モル数が同じなら無次元。
なぜ全圧を下げると α が上がるのか
Kp は温度で決まる定数です。式を α について見ると、p が小さいほど α を大きくしないと Kp が保てません。これがル・シャトリエの原理の中身で、分子数が増える向きの反応は、減圧すると進みます。
ΔG° と K ── 熱力学から平衡定数を出す

| 物質(298 K) | ΔHf°[kJ/mol] | ΔGf°[kJ/mol] |
|---|---|---|
| CO | −110.5 | −137.2 |
| H₂ | 0 | 0 |
| CH₃OH | −200.7 | −162.0 |
ln → log → 逆引き。関数電卓は使えないので、この往復が本番の作業です。
令和6年度 国家試験 問3(メタノール合成)の要約:CO(g) + 2H₂(g) ⇄ CH₃OH(g)。上の値から (1) 反応の ΔH°、ΔG°、ΔS° を求めよ (2) 平衡定数 K を求めよ。
(1) 生成量から反応量へ
燃焼熱と同じ計算です(→ 型8|熱化学)。Σ生成物 − Σ反応物 で出します。
- ΔH° = (−200.7) − [(−110.5) + 2×0] = −200.7 + 110.5 = −90.2 kJ/mol
- ΔG° = (−162.0) − [(−137.2) + 2×0] = −24.8 kJ/mol
- ΔS° は ΔG° = ΔH° − TΔS° から:ΔS° = (ΔH° − ΔG°) / T = (−90.2 + 24.8) × 10³ / 298 = −65,400 / 298 = −219 J/(mol·K)
ΔS° が負なのは、3 mol が1 molになる反応だからです(気体の分子数が減る=乱雑さが減る)。符号でチェックできます。ΔH と ΔG は kJ、ΔS は J。10³ を掛け忘れると1000倍ずれます。
(2) K を出す
- ΔG° = −RT ln K より ln K = −ΔG° / (RT) = 24.8×10³ / (8.31 × 298) = 24,800 / 2,476 = 10.0
- 問題文が ln K = 2.30 log K と指定しているので、log K = 10.0 / 2.30 = 4.35
- K = 10^4.35 = 10^0.35 × 10⁴
- 表で 0.35 を逆引き → 2.24
- K = 2.24 × 10⁴
符号の意味で検算する
| ΔG° | K | 反応は |
|---|---|---|
| 負 | 1より大きい | 生成物側に偏る(進む) |
| 0 | 1 | 生成物側・反応物側のどちらにも偏らない |
| 正 | 1より小さい | 反応物側に偏る(進まない) |
ΔG° が負なのに K が1未満になったら、どこかで符号を間違えています。ギブズエネルギーそのものはギブズエネルギーと自発性へ。
ファントホッフの式 ── 発熱反応は高温で K が小さくなる

ln(K₂/K₁) = −(ΔH°/R) × (1/T₂ − 1/T₁)。発熱反応(ΔH°負)は温度を上げると K が小さくなり(反応が戻る)、吸熱反応(ΔH°正)は大きくなります(反応が進む)。計算する前に符号が予測できるので、合わなければ計算ミスだと気づけます。
10回中3回。令和6年度は国試・検定の両方で出ました。
令和6年度 技術検定 問3 (3) を解く
設問:400℃における圧平衡定数は、342℃における圧平衡定数の0.8倍であった。この温度範囲における ΔH° を求めよ。ln2=0.693、ln3=1.10、ln5=1.61 を用いよ。
- 与えられた値:T₁ = 342 + 273 = 615 K、T₂ = 400 + 273 = 673 K、K₂/K₁ = 0.8
- ln 0.8 を与えられた値から作る:ln 0.8 = ln(8/10) = ln 8 − ln 10 = 3 ln 2 − (ln 2 + ln 5) = 3×0.693 − 0.693 − 1.61 = 2.079 − 2.303 = −0.224
- 温度の項:1/T₂ − 1/T₁ = 1/673 − 1/615 = 0.0014859 − 0.0016260 = −1.401×10⁻⁴
- 代入:−0.224 = −(ΔH°/8.31) × (−1.401×10⁻⁴) → ΔH° = −0.224 × 8.31 / 1.401×10⁻⁴ = −13.3 kJ/mol
ln 10 = ln2 + ln5 = 2.303(対数変換の 2.303 と同じ数字)は覚えておくと速い。
設問は「温度を上げたら K が0.8倍になった」=小さくなった → 発熱反応。だから ΔH° は負で、答えと合います。
アレニウスの式との違い ── Ea は山の高さ、ΔH° は段差

| ファントホッフ | アレニウス | |
|---|---|---|
| 対象 | 平衡定数 K | 速度定数 k |
| 指数部 | −ΔH°/R(反応熱) | −Ea/R(活性化エネルギー) |
| 意味 | 温度を変えたとき K がどちらへ動くか | どれだけ速く進むか |
形はそっくりですが、ΔH° は反応の始点と終点の差、Ea は途中の山の高さです。触媒は Ea を下げるが ΔH° は変えない。だから触媒で速くはなっても、平衡の位置は動きません。
アレニウスは型7|反応速度、概念はアレニウスの式・活性化エネルギー、両者の対比はファントホッフとアレニウスの違いへ。
フガシティーと活量 ── 検定だけに出る(10回中2回)

| 量 | 定義 | 理想気体なら |
|---|---|---|
| フガシティー f | 実在気体を理想気体のように扱うための「補正された圧力」。f = φ × p(φ:フガシティー係数) | φ = 1、つまり f = p |
| 活量 a | a = f / f°(f° = 標準状態のフガシティー = 標準圧力) | 標準圧力基準なら a = p / p° |
| 平衡定数 K | K = Π(aᵢ)^νᵢ | aᵢ = pᵢ/p° なので Kp と一致する |
平衡定数を活量で定義すると、理想気体でも実在気体でも同じ形の式が使えます。活量が無次元だから K も無次元で、分圧そのままの Kp に単位が付くのとは扱いが違います。
R4検定問2(メタン水蒸気改質)、R6検定問2(アンモニア合成)。国試には出ていません。問われるのは次の4つです。
- フガシティーと圧力の関係(f = φp)を説明せよ
- 活量の定義(a = f/f°)を書け
- 与えられた φ から f を出し、活量で K を計算せよ
- 高圧ほど φ が1から離れる理由を述べよ → 高圧では分子間力と分子自身の体積が無視できなくなるから
本番前の確認 ── 練習のしかたとよくある失点
| 失点 | 対策 |
|---|---|
| 係数2の生成物を +a と書く | 反応式の係数をそのまま変化量に掛ける |
| 合計列を作らず分圧が出せない | 転化率の問題では必ず合計を書く |
| ΔS の単位(J と kJ)を混ぜる | ΔH・ΔG は kJ、ΔS は J。10³ を掛ける |
| ln と log を混同する | ln K = 2.303 log K。表は log 用 |
| ΔH° の符号を逆にする | K が小さくなる=発熱=ΔH°は負、で検算 |
| 体積が消える反応と消えない反応を混同 | 両辺のモル数が同じかを先に見る |
練習は次の順です。①だけで型6の半分は取れます。
- モル収支表を10題書く。 解かなくていい。表だけ
- 係数が2以上の生成物で +2a と書けるか確認
- 転化率αの形で1題、合計列まで含めて書く
- ΔG° = −RT ln K から K を出す往復(ln→log→逆引き)を3回
- ファントホッフを1題(検定受験ならフガシティーも1題)
次は型7(反応速度・アレニウス)です。10回中6回、ここでも ln x = 2.303 log x を使います。→ 型7|反応速度とアレニウス式
型の全体像は計算10の型、学識全体の攻略は学識の出題マップへ。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』。令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に分けて集計しました。問題文は転載せず、要約して解説しています。
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