ラウールとヘンリーは、同じ気液平衡を濃い側と薄い側から見た式です。どちらを使うかは、問われている成分が溶媒か溶質かで決まります。
- ラウールは溶媒、ヘンリーは溶質。見分けは与えられた定数(p° か H か)
- 10回中6回で出題。ヘンリーと冷却凝縮が2回ずつで最多
- 冷却凝縮は「非凝縮ガスの物質量は変わらない」を軸に3ステップ
型別の全体像は学識の計算は「10の型」しか出ないへ。
出題実績 ── 10回中6回、ヘンリーと冷却凝縮が2回ずつ

| 年度・ルート・問 | テーマ | 使う法則 |
|---|---|---|
| R2 国試 問1 | 酸素の飽和水溶液 | ヘンリー |
| R6 検定 問1 | 気体Aの水への溶解と温度変化 | ヘンリー |
| R2 検定 問1 | エタノールの気液平衡・飽和蒸気圧 | ラウール |
| R4 国試 問2 | 水蒸気飽和空気の冷却・一部凝縮 | 飽和蒸気圧 |
| R3 検定 問1 | 窒素-水蒸気の冷却凝縮・除去熱量 | 飽和蒸気圧 |
| R4 検定 問1 | メタノールの体膨張係数・蒸気圧式 | アントワン型 |
最重要は「気液が共存して平衡なら、その成分の分圧 = 飽和蒸気圧」。 「一部凝縮した」「飽和している」と書いてあれば、その成分の分圧は自動的に決まります。
ほかに使うのは、ドルトンの分圧の法則 pᵢ = p_total × yᵢ(yᵢ:気相中のモル分率)と pV = nRT だけです。
ラウールとヘンリー ── 同じ曲線の濃い側と薄い側

どちらも「分圧はモル分率に比例する」という同じ形です。違うのは比例定数と、成り立つ濃度域だけ。
| ラウール | ヘンリー | |
|---|---|---|
| 対象 | 溶媒(濃い成分、x→1) | 溶質(薄い成分、x→0) |
| 式 | p = x p° | p = H x |
| 比例定数 | 純物質の飽和蒸気圧 p° | ヘンリー定数 H |
| 典型 | エタノール水溶液のエタノール | 水に溶けた酸素・窒素・CO₂ |
| Hとp°の関係 | ── | 理想溶液なら H = p°。実在の溶液では一般に H ≠ p°(別の定数) |
| 注意 | ── | H は温度で変わる。p = x/H や c = Hp の形もあるので問題文の定義に従う |
- 溶媒(x→1):周りはほぼ同じ分子。純物質のときと同じ振る舞いなので p° が比例定数
- 溶質(x→0):周りはほぼ溶媒分子。純物質とはまったく違う環境なので別の定数 H が要る
問題文のこの言葉で判断します。
| 問題文 | 使う法則 |
|---|---|
| 「飽和蒸気圧が与えられている」/「2成分の気液平衡」「沸点」 | ラウール |
| 「ヘンリー定数が与えられている」/「水への溶解」「溶解度」 | ヘンリー |
→ ラウールの法則とドルトンの法則/ヘンリーの法則とガスの溶解度
ヘンリーの問題(R6検定問1)── 温めても気体Aの総量は同じ

「総量が変わらない」を等式にするのが、この手の問題の骨格です。ヘンリー定数は温度が上がると大きくなる=溶解度が下がるので、溶けていたAが気相へ出てきます。
設問(要約):容積可変の容器に気体Aと水が封入されている。気体Aと水蒸気は理想気体。
- 飽和水蒸気圧:25.0℃で 3.17 kPa、50.0℃で 12.3 kPa
- ヘンリー定数(p = Hx):25.0℃で 170 MPa、50.0℃で 280 MPa
- 水2.00 kg、25.0℃、全圧100 kPa で平衡。気相の体積は1.50 L
- (1) 気相中の水と液相中の水の物質量 (2) 気相・液相中の気体Aの物質量 (3) 50.0℃にしたときの気相の体積
(1) 気相中の水 ── 飽和だから分圧が決まる
気液が共存して平衡なので、水蒸気の分圧 = 飽和蒸気圧 = 3.17 kPa。
- n_w(g) = pV/(RT) = 3.17×10³ × 1.50×10⁻³ / (8.31 × 298.15) = 4.755 / 2,477 = 1.92×10⁻³ mol
- 液相中の水:n_w(l) = 2,000 g / 18.0 g/mol = 111 mol
気相の水は液相の約6万分の1なので、蒸発による減少は無視できます。
(2) 気体A ── 全圧から水蒸気を引き、液相はヘンリー
- 気相中のAの分圧:p_A = 100 − 3.17 = 96.83 kPa
- 気相中のA:n_A(g) = 96.83×10³ × 1.50×10⁻³ / (8.31 × 298.15) = 145.2 / 2,477 = 5.86×10⁻² mol
- 液相のモル分率(p = Hx):x = p_A / H = 96.83×10³ / 170×10⁶ = 5.70×10⁻⁴
- 溶質は極めて薄いので x = n_A(l) / (n_A(l) + n_w(l)) ≒ n_A(l) / n_w(l)
- n_A(l) = 5.70×10⁻⁴ × 111 = 6.33×10⁻² mol
ヘンリー定数は MPa、分圧は kPa。 ここで1000倍ずれる人が多い。
(3) 50℃にしたら ── 何が変わって何が変わらないか
| 変わるもの | 変わらないもの |
|---|---|
| 飽和水蒸気圧:3.17 → 12.3 kPa(水蒸気が増える) | 気体Aの総量:5.86×10⁻² + 6.33×10⁻² = 0.1219 mol |
| ヘンリー定数:170 → 280 MPa(溶解度が下がる) | 全圧(100 kPa に保つ)、液相中の水(111 mol) |
- 50℃での分圧:p_A = 100 − 12.3 = 87.7 kPa
- 液相中のA:x = 87.7×10³ / 280×10⁶ = 3.13×10⁻⁴、n_A(l) = 3.13×10⁻⁴ × 111 = 3.48×10⁻² mol
- 気相中のA(総量から引く):n_A(g) = 0.1219 − 0.0348 = 8.71×10⁻² mol
- 気相の体積:V = n_A(g) RT / p_A = 8.71×10⁻² × 8.31 × 323.15 / 87.7×10³ = 233.9 / 87,700 = 2.67×10⁻³ m³ = 2.67 L
気相が広がるのは、①水蒸気が増える ②溶けていたAが出てくる ③気体そのものが膨張する、の3つのためです。
飽和した気体を冷やす(R4国試問2・R3検定問1)── 空気の量は変わらない

密閉容器なので空気(非凝縮ガス)は逃げません。物質量はそのままで、分圧だけ変わります。 水蒸気は冷却後も飽和しているので、その温度の飽和蒸気圧です。
解き方は3ステップで固定です。
- 冷却前:全圧 − 飽和蒸気圧 = 非凝縮ガスの分圧 → pV=nRT で物質量を出す
- 非凝縮ガスの物質量は変わらない → 冷却後の分圧を出す
- 冷却後も飽和 → 水蒸気の分圧=その温度の飽和蒸気圧
R4国試問2(要約):水蒸気が飽和した空気が、容積 1.0×10⁻² m³ の密閉容器に40℃・150 kPa で充填されている。25℃まで冷却したところ水蒸気の一部が凝縮した。飽和水蒸気圧は40℃で 7.38 kPa、25℃で 3.17 kPa。(1) 水蒸気をのぞいた空気の物質量 (2) 25℃での空気のモル分率
(1) 空気の物質量
- 空気の分圧:150 − 7.38 = 142.62 kPa
- n = 142.62×10³ × 1.0×10⁻² / (8.31 × 313.15) = 1,426.2 / 2,602 = 0.548 mol
(2) 25℃でのモル分率
- 空気は0.548 molのまま:p = nRT/V = 0.548 × 8.31 × 298.15 / 1.0×10⁻² = 1,357.6 / 0.01 → 135.8 kPa
- 水蒸気は飽和なので 3.17 kPa
- 空気のモル分率 = 135.8 / (135.8 + 3.17) = 135.8 / 138.97 = 0.977
全圧は150 kPaから139 kPaに下がります(冷却+凝縮)。
凝縮量・除去熱量まで問われたら
水蒸気の物質量を前後で計算して差を取ります。
- 40℃:n = 7.38×10³ × 1.0×10⁻² / (8.31×313.15) = 2.84×10⁻² mol
- 25℃:n = 3.17×10³ × 1.0×10⁻² / (8.31×298.15) = 1.28×10⁻² mol
- 凝縮量 = 2.84 − 1.28 = 1.56×10⁻² mol(≒0.28 g)
除去熱量(R3検定問1がこの形)は、① 気体の冷却(顕熱)Σ nᵢ Cp,ᵢ ΔT + ② 水蒸気の凝縮(潜熱)n_凝縮 × ΔH_vap + ③ 凝縮した液の冷却 m c ΔT。潜熱を忘れると桁が変わります。 水の蒸発潜熱は約2,440 kJ/kg(44 kJ/mol)と大きい。
蒸気圧式と体膨張係数(R4検定問1)── 代入するだけ

| 式 | 形 | 使い方 |
|---|---|---|
| アントワンの式 | log p = A − B/(T + C) | A・B・Cは問題文で与えられる。温度⇔蒸気圧(沸点) |
| クラウジウス・クラペイロンの式(簡易形) | ln(p₂/p₁) = −(ΔH_vap/R) × (1/T₂ − 1/T₁) | ファントホッフの式とまったく同じ形。ΔH が反応熱か蒸発潜熱かの違いだけ |
| 体膨張係数 | β = (1/V)(∂V/∂T)_p、近似的に ΔV/V = β ΔT | 液化ガスの過充填の問題(R5国試問1がこの形) |
アントワンの式は log で与えられているので、常用対数表をそのまま使えます。ln への変換は不要です。
満液の容器で温度が上がったときの圧力上昇 Δp = (β/κ)ΔT と、90%充填制限・G=V/C の根拠は型1|理想気体と混合気体の「液化ガスの過充填」へ。ファントホッフの式は型6|化学平衡。
本番前の確認 ── よくある失点
| 失点 | 正しくは |
|---|---|
| ラウールとヘンリーを取り違える | 与えられた定数を見る(p°かHか) |
| MPa と kPa を混ぜる | ヘンリー定数はMPaで与えられることが多い |
| 飽和なのに分圧を未知数のまま置く | 気液共存=分圧は飽和蒸気圧 |
| 冷却後に非凝縮ガスも減らす | 密閉容器なら物質量は不変。分圧だけ変わる |
| 潜熱を忘れる | 凝縮があれば必ず ΔH_vap を足す |
| 温度を摂氏のまま使う | pV=nRT は絶対温度。+273.15 |
練習は、冷却凝縮の3ステップを1題(R4国試問2が最適)、ヘンリー+温度変化を1題(R6検定問1)です。
次は型4(熱力学の状態変化)です。→ 型4|熱力学の状態変化
型の全体像は計算10の型、学識全体の攻略は学識の出題マップへ。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』。令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に分けて集計しました。問題文は転載せず、要約して解説しています。
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