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高圧ガス甲種化学のガス各論①|水素・酸素・炭化水素・硫黄化合物系24ガスの完全整理

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困っている人
困っている人

ガス各論は数が多すぎて、覚えても覚えても混ざってしまう。

学識の記述で、製造法の触媒名まで書けない。

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

49ガスを4分類に振り分ける全体マップ

24ガスの暗記早見表(分類・急所・製法の核を一覧に)

各ガスを「性質/材料・保安/用途/製法/試験のツボ」の同じ枠で整理

分類ごとの“代表格”から枝を伸ばす覚え方

私が国家試験で落ちた最大の原因が、このガス各論です。半分近くを落としました。抜け出せたのは、自分で暗記ノートを作ってからでした。

理由は単純で、ガスの数が多すぎるからです。

水素からセレン化水素まで49種。それぞれに性質・用途・製法があり、さらに例外や引っかけがある。過去問を回すだけでは、出題されたガスの断片的な知識しか残らず、初見のガスが出た瞬間に崩れます。

ばらばらの知識を、全ガス同じ切り口で1つの表に並べ直す。すると「似ているガスの違い」が浮かび上がり、記憶が構造化されます。

この記事と次の記事は、そのとき私が作ったノートを体系化して作り直したものです。あなたは、この作業をゼロからやる必要はありません。

  • この記事:水素・炭素酸化物系/酸素・窒素・貴ガス系/炭化水素系/アンモニア・窒素化合物・硫黄化合物系 の24ガス
  • 次の記事:ハロゲン・ハロゲン化合物系/特殊材料ガス系 の25ガス+本番で効く横断整理

長いので、通しで読むのは1回でいい。あとはブックマークして、分類ごとに戻ってきてください。

ガス各論は「どう出るか」から逆算する

ここは「文章で覚えない」が鉄則です。すべてのガスを同じ切り口で揃えます。出題は2方向です。

  • 学識(記述):ガスの性質の説明と、工業的製造法。製造法は「原料 → 触媒 → 温度・圧力 → 反応式」のセットで書かせる問題が定番
  • 保安管理技術(択一):性質・取扱いの正誤判定。「似ているガスとの引っかけ」で削ってきます

だから、各ガスは次の5項目で必ず同じ形に整理します。

  1. 分類(可燃性/毒性/支燃性/不活性)
  2. 性質・特徴(比重、におい、危険性)
  3. 材料・保安(使えない材料、貯蔵・除害の注意)
  4. 用途
  5. 工業的製法(触媒・反応条件・反応式)

特に⑤の「触媒と温度・圧力」は学識論述の核心です。反応式だけ覚えて触媒名が書けない、が最も多い失点パターンです。

分類の全体マップ(49ガス)

まず全ガスを4分類に振り分けます。これが正誤問題の土台です。次の記事のガスも含めて、先に全体を眺めてください。

分類該当するガス
可燃性水素、CO、メタン〜ブタジエン、アセチレン、酸化エチレン、アンモニア、シアン化水素、硫化水素、メチルアミン、塩化メチル、塩化エチル、塩化ビニル、臭化メチル、シラン類、アルシン、ホスフィン、ジボラン、ゲルマン、セレン化水素
毒性CO、アンモニア、シアン化水素、硫化水素、二酸化硫黄、塩素、塩化水素、ホスゲン、フッ素、フッ化水素、NO₂、特殊材料ガス全般
支燃性酸素、塩素、フッ素、亜酸化窒素、NO、NO₂、三フッ化窒素
不活性窒素、CO₂、貴ガス、六フッ化硫黄

「可燃性かつ毒性」「毒性かつ支燃性」の両属性ガスが引っかけの定番です(次の記事の横断整理で潰します)。

24ガスの暗記早見表

先に一覧を置きます。直前期はこの表だけを毎日10分眺めてください。詳細は下に続きます。

ガス分類急所(試験のツボ)製法の核
水素 H₂可燃密度最小・熱伝導率は大きい/水素侵食水蒸気改質:Ni触媒・700〜850℃・吸熱
一酸化炭素 CO可燃・毒無臭で猛毒/Hbとの親和力は酸素の300〜400倍/金属カルボニル石炭・石油ガス化、高炉副生
二酸化炭素 CO₂不活性大気圧では液化せず昇華/Mg・Naは CO₂中でも燃える水素製造の副生回収
酸素 O₂支燃常磁性/断熱圧縮発火/禁油深冷分離/PSA(ゼオライトでN₂吸着、純度90〜93%)
窒素 N₂不活性単純窒息性/パージ作業の酸欠深冷分離/PSA(分子ふるい活性炭でO₂吸着)/膜分離
貴ガス不活性Heが沸点最低(−268.9℃)/Arは空気中0.93%Ar等は空気分離の副生/Heは天然ガス由来
メタン CH₄可燃空気より軽い可燃性ガスの代表天然ガスから精製
エタン C₂H₆可燃空気比重ほぼ1/反応性が低い天然ガス中。通常はエチレンへ熱変換
LPガス可燃低所に滞留/液は絶縁性で静電気が溜まる/天然ゴムを溶かす随伴ガス・製油所ガスから回収
エチレン C₂H₄可燃石油化学最大の基礎原料ナフサ熱分解:800〜900℃・水蒸気添加・滞留0.2〜0.6秒
プロピレン C₃H₆可燃誘導品と触媒の対応ナフサ熱分解の併産/メタセシス(W系触媒)
ブテン C₄H₈可燃異性体ごとの用途(イソブテン→MTBEC₄留分の分離/脱水素
ブタジエン C₄H₆可燃空気中で過酸化物 → 重合暴走/低温+TBCC₄留分の抽出蒸留(DMF・アセトニトリル・NMP)
アセチレン C₂H₂可燃・分解爆発爆発範囲2.5〜100%/吸熱化合物/銅62%ルール/溶解アセチレンカーバイド法/炭化水素熱分解(1000〜1500℃・極短時間)
酸化エチレン C₂H₄O可燃・毒・分解爆発爆発範囲3.0〜100%液相から取り出すエチレン直接酸化:Ag触媒・多管式固定床
アンモニア NH₃可燃・毒銅・銅合金NG/鉄は常温で無害/三塩化窒素ハーバー・ボッシュ法:Fe₃O₄触媒・高圧有利
亜酸化窒素 N₂O支燃支燃性なのに分解爆発(吸熱化合物 +82.1 kJ/mol)硝酸アンモニウム分解/アンモニア酸化
一酸化窒素 NO支燃常磁性/不均化のため充填3MPa程度に制限アンモニアの白金触媒酸化
二酸化窒素 NO₂毒・支燃赤褐色/N₂O₄との二量体平衡NOをさらに酸素酸化
メチルアミン類可燃・毒魚臭/循環反応でジアミン収率を上げるメタノール+NH₃、シリカ・アルミナ触媒 400〜450℃
シアン化水素 HCN可燃・猛毒沸点25.7℃/アーモンド臭/安定剤は無機酸(アルカリは×)Sohio法の副生/Andrussow法(Pt触媒・1100℃)
硫化水素 H₂S可燃・猛毒腐卵臭/硫化物応力腐食割れ脱硫排ガスから回収/Claus法で硫黄化
二酸化硫黄 SO₂不燃・毒可燃性ではない(硫黄は燃えるがSO₂は燃焼済み)硫化鉄鉱の焙焼/硫黄の直接燃焼
六フッ化硫黄 SF₆不活性極めて安定(例外:Naと250℃で反応)/GWPはCO₂の22,800倍フッ素中で硫黄を燃焼。副生S₂F₁₀を分解処理

水素・炭素酸化物系

水素(H₂)|可燃性

  • 性質:無色無臭。全ガス中で密度最小、拡散速度は最大、粘度は小さい。熱伝導率はヘリウムとともに非常に大きい(「熱伝導率が小さい」は誤り選択肢の定番)。爆発範囲が広く、漏えいすると上方に滞留。炎が見えにくい
  • 材料・保安:高温高圧下で鋼材中の炭素と反応してメタンを生成し、金属組織を脆化させる水素侵食
    Fe₃C + 4H → CH₄ + 3Fe
    対策はCr 5〜6%以上のクロム鋼、Mo鋼、ステンレス鋼の使用
  • 用途:アンモニア合成、メタノール合成、硬化油・シクロヘキサン・塩酸の製造、水素化脱硫・水素化分解、光輝焼鈍雰囲気ガス、半導体用高純度シリコン製造、酸水素炎、燃料電池

製法

  1. 水蒸気改質法:メタン等の炭化水素にNi触媒700〜850℃で水蒸気を反応(吸熱反応
    CmHn + mH₂O → mCO + (m+n/2)H₂
  2. 部分酸化法:原油・重質油を酸素と水蒸気とともにガス化炉(約1400℃、3MPa)で不完全燃焼
  3. メタノール改質:Cu-Cr-Mn系・Cu-Zn系触媒、200〜300℃、1.5〜2MPaで水蒸気改質(オンサイト用)
  4. 食塩電解の副生、コークス炉ガスの深冷分離

試験のツボ:水素侵食の反応式と対策材料。水蒸気改質の「Ni触媒・吸熱」。密度最小・熱伝導率が大きいという物性の言い回し。水素侵食は腐食メカニズムの体系的分類でも扱っています。

一酸化炭素(CO)|可燃性・毒性

  • 性質:無色無臭で極めて毒性が強い。ヘモグロビンとの親和力は酸素の300〜400倍で、一酸化炭素ヘモグロビンを生じ血液の酸素運搬を阻害(この数値が頻出)。強い還元性
  • 材料・保安:鉄族金属(Fe・Co・Ni)と反応して揮発性の金属カルボニルを形成し金属を侵食。Ni + 4CO ⇄ Ni(CO)₄。高温下では鋼材に浸炭(脆化)→ 対策はNi-Cr系ステンレス鋼
  • 用途:メタノール合成、酢酸合成などの有機合成原料

製法:石炭・石油のガス化(水性ガス)、高炉・転炉の副生ガスから回収

  • メタノール合成:5〜10MPa、約250℃、Cu-ZnO-Al₂O₃系触媒。CO + 2H₂ = CH₃OH + 91 kJ
  • 酢酸合成(モンサント法):ロジウム錯体触媒+ヨウ化メチル助触媒、液相175℃、2.6MPa、選択率99%。CH₃OH + CO → CH₃COOH

試験のツボ:「無臭なのに猛毒」、金属カルボニル、モンサント法の触媒(Rh錯体+ヨウ化メチル)。毒性の指標の読み方は毒性の指標を整理へ。

二酸化炭素(CO₂)|不活性(不燃性)

  • 性質:無色無臭。大気圧下では液化せず、冷却すると直接ドライアイスに(昇華性)。水に溶けて弱酸性(炭酸)。高濃度では窒息に加えて独自の毒性(血圧亢進等)
  • 材料・保安:水分共存下で炭素鋼を腐食。不燃性だが、MgやNaなどの活性金属はCO₂中でも激しく燃焼する
  • 用途:尿素製造、ソーダ灰製造、溶接用シールドガス、清涼飲料、消火剤、ドライアイス、超臨界抽出溶媒、フロン代替冷媒
  • 製法:水素製造プロセスの副生物として回収・精製

試験のツボ:「大気圧では液体にならない」、活性金属は消火できない(Mg火災にCO₂消火器は不可)

酸素・窒素・貴ガス系

酸素(O₂)|支燃性

  • 性質:無色無臭。気・液・固すべてで常磁性(液化酸素は淡青色)
  • 材料・保安:強力な支燃性。高圧酸素バルブの急開 → 断熱圧縮によるパッキン発火。油脂類との接触で発火爆発 → 厳重な脱脂洗浄(禁油)が必須
  • 用途:合成ガス製造(部分酸化)、製鋼(転炉)、溶接・溶断、酸化反応、曝気、オゾン発生、医療用、ロケット酸化剤

製法

  1. 空気液化分離法(深冷分離):窒素(沸点−195.8℃)と酸素(沸点−183.0℃)の沸点差を利用して精留分離
  2. PSA法合成ゼオライトで加圧下に窒素を選択吸着させ、酸素(純度90〜93%)を得る

試験のツボ:常磁性、沸点の数値(酸素の方が沸点が高い=液に残る)、断熱圧縮発火、禁油。PSA酸素の純度が9割程度である点。断熱圧縮でどれだけ温度が上がるかは計算の型4で計算できます。

窒素(N₂)|不活性

  • 性質:空気中に約78.1vol%。極めて安定。高温高圧で水素と反応しアンモニア、高温で酸素と反応しNOx。Mg・Ca・Liと窒化物を作る。単純窒息性
  • 保安:タンク等の窒素パージ作業では酸欠に注意(換気必須)
  • 用途:アンモニア合成原料、パージ・雰囲気・キャリヤーガス、液化窒素は低温発生・急速冷凍
  • 製法:①深冷分離 ②PSA法(分子ふるい活性炭で酸素を吸着、約0.6MPa、純度95〜99.99%以上)③膜分離法(中空糸膜、酸素が透過しやすく窒素が残る)

酸素PSAは「ゼオライト(N₂を吸着)」、窒素PSAは「分子ふるい活性炭(O₂を吸着)」——この吸着剤の対比が頻出です。

窒素置換が酸欠空間を作るという実務側の話は入槽(限定空間)作業の安全に書いています。

貴ガス(He・Ne・Ar・Kr・Xe・Rn)|不活性

  • 性質:無色無臭、化学的に極めて不活性。放電で特有の発光(Ne:赤橙、Ar:青、Xe:白)。Heは全物質中で沸点最低(−268.9℃)Arは空気中に約0.93vol%と貴ガス中で最多。Xeは麻酔作用を持つ
  • 用途:Ar=溶接用保護ガス・熱処理・封入ガス/He=気球、GCキャリヤー、リークテスト、超伝導マグネット(MRI)の冷却/Xe=X線検出器、イオンエンジン、レーザー
  • 製法:Ar・Ne・Kr・Xeは空気液化分離装置の副生として回収(粗Arは酸素を水素と反応させ除去後、精留で99.999%品)。Heは天然ガス(He含有0.2〜3%)から回収し輸入

試験のツボ:Heの沸点最低、Arの空気中濃度0.93%、「Heは空気分離では作らない(天然ガス由来)」

炭化水素ガス系

メタン(CH₄)|可燃性

  • 性質:最も単純なアルカン。無毒、空気より軽い。化学的に安定だが、Ni触媒下で酸素・水蒸気と反応して合成ガス(CO+H₂)を生成
  • 用途:都市ガス・発電燃料(LNG・CNG)、合成ガス製造、クロロメタン類、1500℃以上の部分燃焼によるアセチレン製造
  • 製法:天然ガスとして採取(CO₂・水分・H₂Sを精製除去)

試験のツボ:「空気より軽い可燃性ガス」の代表。合成ガスの原料。ガスの比重が検知器の設置高さを決めるという話はガス拡散と滞留へ。

エタン(C₂H₆)|可燃性

  • 性質:無色無臭、空気に対する比重ほぼ1。反応性は極めて低い
  • 用途:塩素化による塩化エチルの製造
  • 製法:天然ガス・石油精製ガス中に存在するが、通常は個別回収せずエチレンへ熱変換

試験のツボ:「比重ほぼ1」という中間的な物性

LPガス(プロパンC₃H₈・ブタンC₄H₁₀)|可燃性

  • 性質:無色無臭(漏れ検知用に付臭)。空気の約1.5〜2倍重く低所に滞留。液は電気絶縁性が良く、流動・漏えい時の静電気が蓄積しやすい天然ゴムをよく溶解する
  • 用途:家庭用・工業用・自動車燃料、都市ガス増熱用、化学原料(エチレン・プロピレン等の製造)
  • 製法:①天然ガス・原油随伴ガスからの回収(圧縮冷却・吸収・吸着)②製油所ガスからの回収 ③ナフサ分解C₃〜C₄留分の蒸留分離

試験のツボ:低所滞留、静電気蓄積(絶縁性が高い)、天然ゴムを溶かす(パッキン選定)。絶縁性液体がなぜ帯電するかは化学工場の静電気対策で解説しています。

エチレン(C₂H₄)|可燃性・分解爆発性

  • 性質:無色、独特の甘いにおい。塩素付加でEDC、塩酸付加で塩化エチル、重合でポリエチレン
  • 用途:石油化学最大の基礎原料。①ポリエチレン(LDPE・LLDPE・HDPE)②アセトアルデヒド(ヘキスト・ワッカー法:塩化パラジウム触媒による直接酸素酸化)③酸化エチレン(銀触媒)④エタノール、高級アルコール(Alfol法)、酢酸ビニル等
  • 製法:①ナフサ等の熱分解(管状炉外熱式:水蒸気を加え800〜900℃、滞留時間0.2〜0.6秒で連続熱分解)②重質油の流動接触分解(FCC):シリカアルミナ触媒・ゼオライト触媒下で分解・回収

試験のツボ:ナフサ熱分解の条件(800〜900℃・水蒸気添加・短滞留時間)、誘導品と触媒の対応(ワッカー法=PdCl₂、酸化エチレン=Ag

プロピレン(C₃H₆)|可燃性

  • 性質:無色。二重結合を持ち、化学的活性はエチレンに類似
  • 用途:ポリプロピレン、アクリロニトリル(Sohio法:プロピレン+アンモニア+空気、400〜500℃、Fe-Sb系等触媒)、1-ブタノール(ヒドロホルミル化:Co・Rh触媒)、アセトン、クメン
  • 製法:①ナフサ熱分解の併産・蒸留分離(最も一般的)②メタセシス反応:エチレンと2-ブテンからタングステン系触媒でプロピレンを得る
    CH₃CH=CHCH₃ + CH₂=CH₂ ⇄ 2CH₂=CHCH₃

試験のツボSohio法(アンモ酸化)の原料3点セット、メタセシスの反応式

ブテン(C₄H₈)|可燃性

  • 性質:無色ほぼ無臭。1-ブテン、2-ブテン、イソブテンの異性体
  • 用途:1-ブテン=LLDPEのコモノマー/2-ブテン=無水マレイン酸、2-ブタノール(直接水和)/イソブテン=MTBE(メタノールと反応。ガソリン添加剤)、メタクリル酸メチル、ブチルゴム
  • 製法:①ナフサ分解C₄留分:ブタジエン抽出後のラフィネートからイソブテンをMTBEとして化学分離 → 精密蒸留で1-ブテン・2-ブテン ②FCCのC₄留分 ③ブタン・イソブタンの脱水素

試験のツボ:異性体ごとの用途の対応(イソブテン→MTBE)

ブタジエン(C₄H₆)|可燃性

  • 性質:微かな芳香。共役二重結合で極めて反応性に富む。常温で空気中の酸素と反応して重合性の過酸化物を形成 → 貯蔵は低温保持+重合防止剤(TBC等)の添加が絶対条件。麻酔性・発がん性
  • 用途:合成ゴムの最重要原料(BR・SBR・NBR・CR)、ABS樹脂、ナイロン66原料(アジポニトリル経由)、PBT樹脂
  • 製法:①C₄留分からの抽出蒸留(主流):DMF、アセトニトリル、N-メチルピロリドン等の選択溶剤 ②ブタンの2段階脱水素(約600℃、減圧または水蒸気下、Cr₂O₃-Al₂O₃系やFe₂O₃-Cr₂O₃-K₂O系触媒)

試験のツボ:過酸化物生成 → 重合暴走の機構と対策(TBC)、抽出蒸留の溶剤名。重合暴走がなぜ止まらないかは暴走反応はなぜ止まらないのか|熱爆発理論とSADTが対応します。

アセチレン(C₂H₂)|可燃性・分解爆発性

  • 性質:無色。爆発範囲2.5〜100vol%と極めて広い。標準生成エンタルピーが正の吸熱化合物で、加圧すると単独でも分解爆発する(酸素不要
  • 材料・保安:容器にはケイ酸カルシウム主成分の固形マス(多孔度90〜92%)を詰め、アセトンやDMFに溶解させて充填(溶解アセチレン)。銅・銀と爆発性アセチリドを生成 → 銅含有率62%を超える銅合金は使用厳禁
  • 用途酸素アセチレン炎(3000℃超)による金属の溶接・溶断。800℃以上での加熱分解によるカーボンブラック(アセチレンブラック。乾電池用電極)の製造
  • 製法:①カーバイド法:CaC₂ + 2H₂O → C₂H₂ + Ca(OH)₂(常温)②炭化水素熱分解法:1000〜1500℃、反応時間0.001〜0.01秒の極短時間で熱分解 → 急冷、DMF・冷アセトンで吸収分離

試験のツボ爆発上限100%の意味(=酸素なしで分解爆発)、吸熱化合物という説明、多孔質物+溶剤の貯蔵方式、銅62%ルール。学識論述の最頻出ガスです。

「上限界が100%になるガス」がなぜ存在するのかは爆発範囲(LEL・UEL)の読み方に書いています。

酸化エチレン(C₂H₄O)|可燃性・毒性・分解爆発性

  • 性質:エーテル臭。10℃以下で液体。爆発範囲3.0〜100vol%と極めて広く、酸素がなくても静電気放電等で自己加速的に分解爆発する
    C₂H₄O → CH₄ + CO + 133 kJ
  • 保安:貯槽内には窒素・CO₂等の不活性ガスを希釈剤として加圧充填し、気相の不活性ガス濃度を下げないよう必ず「液相から」取り出す
  • 用途:エチレングリコール(最大用途)、エタノールアミン、ポリエチレングリコール、グリコールエーテル、界面活性剤原料
  • 製法エチレン直接酸化法:アルミナ担体の銀(Ag)触媒、1〜3MPa、200〜300℃、多管式固定床反応器(外側で熱媒体を循環させ反応熱を除去)
    C₂H₄ + 1/2O₂ → C₂H₄O + 105 kJ

試験のツボ:上限界100%、「液相から取り出す」理由、Ag触媒・多管式反応器。保安管理と学識の両方で頻出

アンモニア・窒素化合物・硫黄化合物系

アンモニア(NH₃)|可燃性・毒性

  • 性質:強い刺激臭。水に非常によく溶け弱アルカリ性
  • 材料・保安銅・銅合金を激しく腐食(使用不可)。鉄は常温では無害だが、高温高圧下(合成条件等)で窒化+水素脆化。塩素過剰下では摩擦・衝撃で激爆する三塩化窒素(黄色油状)を生成
  • 用途:尿素、硝酸、窒素肥料、合成繊維、半導体窒素源、冷媒(フロン代替)
  • 製法ハーバー・ボッシュ法四三酸化鉄(Fe₃O₄)主体の溶融触媒。体積減少反応のため高圧が平衡的に有利 → 15〜30MPa・高温で直接合成
    N₂ + 3H₂ ⇄ 2NH₃

試験のツボ「高圧が有利な理由(ル・シャトリエ)」を平衡論で説明させる問題計算の型6と直結)、銅不可、三塩化窒素の生成条件。銅合金×アンモニアは応力腐食割れの代表的な組合せでもあります(腐食メカニズムの体系的分類)。

亜酸化窒素(N₂O)|支燃性

  • 性質:甘味と芳香(笑気ガス)。標準生成エンタルピーが正(+82.1 kJ/mol)の吸熱化合物で、高圧下で分解爆発の危険
  • 用途:医療用麻酔、半導体CVD(モノシランと混合しシリコン酸化膜成膜)、エアバッグ、ロケット酸化剤、食品エアゾール
  • 製法:①硝酸アンモニウム分解法:硝酸カリウム・硝酸ナトリウム共融混合物(約260℃)中でNH₄NO₃を熱分解。NH₄NO₃ → N₂O + 2H₂O ②アンモニア酸化法:300〜350℃、Mn₂O₃またはBi₂O₃触媒

試験のツボ「支燃性なのに分解爆発する」二面性、吸熱化合物仲間(アセチレン・ゲルマン)との横断整理

一酸化窒素(NO)|支燃性

  • 性質:無色無臭。不対電子を持つラジカル分子で気相でも常磁性。常温付近でも不均化反応(NO₂とN₂Oに分解)が進行し、高圧ほど加速 → 容器充填圧力は3MPa程度に制限
  • 用途:半導体成膜、重合反応のラジカル防止剤
  • 製法:硝酸の中間原料として、アンモニアを白金触媒で高温空気酸化

試験のツボ:充填圧力制限の理由(不均化)、常磁性

二酸化窒素(NO₂)|毒性・支燃性

  • 性質赤褐色・強刺激臭。常温では無色の二量体N₂O₄との平衡混合物。2NO₂ ⇄ N₂O₄。気体では常磁性、低温固体(二量体)では反磁性
  • 用途:ニトロ化合物合成原料、硝酸塩無水物、ロケット酸化剤
  • 製法:NOをさらに酸素で酸化。2NO + O₂ → 2NO₂

試験のツボ:色と二量体平衡、温度で色が変わる理由

メチルアミン類(モノ・ジ・トリ)|可燃性・毒性

  • 性質:強い魚臭。塩基性。水・アルコールに極めてよく溶ける
  • 用途:ジメチルアミン→DMF(溶剤)製造原料が主。塩化コリン、医農薬、界面活性剤
  • 製法:メタノール+アンモニアをシリカ・アルミナ系触媒、400〜450℃、1.4〜2MPaで気相脱水反応。混合アミンとして得られ、需要の多いジアミンの収量を上げるためモノ・トリを循環反応させる

試験のツボ:「循環反応でジアミンの収率を上げる」というプロセス設計の考え方

シアン化水素(HCN)|可燃性・猛毒

  • 性質沸点25.7℃アーモンド臭(杏仁臭)。極めて毒性が強く、内呼吸を阻害(270ppmで5分以内に致死)。水分またはアルカリの混入で自己触媒的な重合爆発(褐色固体析出・発熱)→ 安定剤として無機酸(硫酸・リン酸)を少量添加
  • 用途:MMA樹脂(アセトンと反応させアセトンシアノヒドリンを経由)、アジポニトリル(ナイロン66原料ヘキサメチレンジアミンの前駆体)、アセトアルデヒドから乳酸、青化ソーダなど無機シアン化物
  • 製法:①Sohio法(アクリロニトリル製造)の副生回収(国内主流)②Andrussow法白金触媒、0.2〜0.3MPa、1100℃でメタン+アンモニア+空気を直接酸化。極短時間反応 → 急冷

「安定剤としてアルカリ性物質を加える」は誤りです。アルカリは重合爆発を促進します。加えるのは無機酸。引っかけの定番なので、逆に覚えないでください。

硫化水素(H₂S)|可燃性・猛毒

  • 性質腐卵臭。高濃度吸入で呼吸停止・即死。強い還元性(濃硝酸等の強酸化剤と激しく反応)
  • 材料・保安:水分共存下で著しい金属腐食性——鉄鋼の水素脆化・硫化物応力腐食割れ
  • 用途:金属精錬、蛍光材料、硫黄化合物原料。大量用途がないため、回収H₂SはClaus法で硫黄として回収
    2H₂S + SO₂ → 2H₂O + 3S(ボーキサイト・アルミナ触媒、250〜350℃)
  • 製法:合成ガス精製や水素化脱硫装置の排ガスからアミン溶液で回収

試験のツボ:硫化物応力腐食割れ、Claus法の反応式

二酸化硫黄(SO₂/別名:亜硫酸ガス)|不燃性・毒性

  • 性質:強刺激臭。水に溶け弱酸性(亜硫酸)。液化SO₂は優れた非水溶媒
  • 用途:硫酸製造(最大用途)、パルプ漂白、ハイドロサルファイト製造
  • 製法:①硫化鉄鉱の空気燃焼(流動焼成炉)②硫黄の直接燃焼

試験のツボ「可燃性ではない」(硫黄は燃えるが、SO₂は燃焼済み)

六フッ化硫黄(SF₆)|不活性

  • 性質:無臭・不燃・無毒で著しく安定(500℃の石英管中でも不変。例外:金属Naとは250℃で反応)。優れた電気絶縁性。GWPはCO₂の22,800倍の強力な温室効果ガス
  • 用途:ガス遮断器・変圧器の絶縁媒体、ドライエッチング、リークテスト用トレーサー
  • 製法:フッ素ガス中で硫黄を直接燃焼。副生する猛毒のS₂F₁₀を400℃で加熱分解(SF₄とSF₆に)した後、アルカリ洗浄・脱水乾燥

試験のツボ:安定性の例外(Na)、GWPの大きさ、副生S₂F₁₀の処理

この24ガス、覚え方のコツ

分類ごとに「代表格」を1つ決めて、そこから枝を伸ばすのが速いです。

分類代表格そこから伸ばす枝
水素・炭素酸化物系水素水素侵食・水蒸気改質(Ni触媒・吸熱)
酸素・窒素・貴ガス系PSAの吸着剤の対比酸素=ゼオライト/窒素=分子ふるい活性炭
炭化水素系アセチレン爆発上限100%・吸熱化合物・銅62%・溶解アセチレン
アンモニア系ハーバー・ボッシュ法Fe₃O₄触媒・高圧有利をル・シャトリエで説明

この4つを完璧にしておけば、記述問題で手が止まることはまずありません。

まとめ

  • ガス各論は全ガスを同じ5項目(分類/性質/材料・保安/用途/製法)に揃えて整理する
  • 学識は「原料 → 触媒 → 温度・圧力 → 反応式」で書かせる。触媒名が書けないのが最多の失点
  • 保安管理は「似ているガスとの引っかけ」。両属性ガスが定番
  • アセチレン・酸化エチレンの上限界100%は、酸素なしで分解爆発するという意味
  • アンモニアは銅NG・鉄は常温で無害。シアン化水素の安定剤は無機酸
  • PSAの吸着剤は酸素=ゼオライト/窒素=分子ふるい活性炭

次は残りの25ガス(ハロゲン・特殊材料ガス)と、本番でいちばん効く「横断整理」です。銅がNGなガス、乾燥ならOK・湿潤はNGのもの、分解爆発するもの——似ているガスを先に潰します。

ガス各論②:ハロゲン・特殊材料ガス25種と横断整理

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