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化学プラントで「圧縮機」と呼ばれる機械は、姿も大きさもまったく違います。反応器へ水素を押し込む往復動、分解ガスを何段にも分けて圧縮する大型の遠心、計器室の調節弁を動かす空気をつくる小さなスクリュー。どれも圧縮機です。
ポンプと比べると、圧縮機は扱う流体が気体であるぶん、圧力を上げると温度も一緒に上がり、漏れは目に見えず、止まったときに工程全体へ影響が広がります。ところが、担当になってから最初に手にする資料は、特定の機種の取扱説明書であることがほとんどです。個々の機械の手順は分かっても、プラント全体でその圧縮機が何のためにあり、どこを見ればよいのかは見えてきません。
この記事は、化学プラントの圧縮機を担当する現場オペレーターと、化学メーカーのエンジニア向けの全体地図です。プラントのどこにどんな目的の圧縮機があるか、形式がどう住み分けているか、毎日どこを見るか、症状が出たらどの記事を読めばよいかを1本にまとめ、詳しい解説は個別の記事へ案内します。
この記事の結論
- 圧縮機は、吐出圧力がおおむね0.1 MPa以上になる、気体の圧力を上げて送る機械です。送風機とは圧力の大きさで、真空ポンプとは「吸込側の圧力を下げる」という目的で呼び分けます。
- 化学プラントの圧縮機は、反応系の入口(原料チャージ・メイクアップ)、ループ(循環)、出口(オフガス)と、ユーティリティ(冷凍・真空・計装用空気)に現れます。目的が違えば、制御したい量も向く形式も違います。
- 小流量・高圧は往復動、中容量はスクリュー、大流量は遠心、さらに大流量で中圧以下は軸流が目安です。境界ははっきりしたものではありません。
- 往復動は流量がほぼ一定で圧力が変わり、遠心は圧力比がほぼ一定で流量が変わります。異常は、往復動では圧力・温度・音に、遠心では振動に先に現れます。
- 日常点検は「段ごとの圧力と温度」「油」「冷却水」「ドレン」「振動・音・電流」の5系統を、平常値からの変化で見ます。圧力と温度は必ず組で見ます。
1. 圧縮機は「気体の圧力を上げて送る機械」|送風機・真空ポンプとの境目
気体にエネルギーを与えて送る機械は、圧力上昇の大きさで呼び名が変わります。ファン、ブロワー、圧縮機の順に圧力が高くなり、ファンとブロワーをまとめて送風機と呼びます。
| 呼び名 | 圧力上昇の目安 | 化学プラントでの例 |
| ファン | 約10 kPa未満 | 換気、燃焼用空気、排ガスの誘引 |
| ブロワー | 約10〜100 kPa | 曝気、粉体の空気輸送、ガスの昇圧 |
| 圧縮機 | 約0.1 MPa以上 | プロセスガスの昇圧、冷凍機、計装用空気 |
圧縮機の中でも、0.1〜0.2 MPa程度の低圧のものから、100 MPaを超える高圧のものまであります。1980年代末の便覧では、ポリエチレンの重合などの化学反応用に、ゲージ圧で約340 MPaに及ぶ圧縮機が挙げられています。同じ「圧縮機」でも、圧力の桁が3つも4つも違う機械が同じ名前で呼ばれていることを、最初に押さえておきます。
もう一つの分け方が、気体に圧力を与える仕組みです。閉じ込めた体積を縮める容積形(往復動・スクリューなど)と、羽根車で加速した速度を圧力に変えるターボ形(遠心・軸流)があります。圧力による呼び名と、仕組みによる形式は別の軸です。ルーツブロワーは容積形の送風機、遠心圧縮機はターボ形の圧縮機、というように組み合わせで呼びます。圧力比やゲージ圧と絶対圧の扱いは、ファン・ブロワー・圧縮機の違いで整理しています。
真空ポンプも、機械の働きとしては圧縮機です。吸い込んだ気体を大気圧まで圧縮して吐き出しています。ただし目的は圧縮ではなく、吸込側の圧力を下げることにあるので、別の名前で呼ばれます。評価も、吐出圧力ではなく到達圧力や排気速度で行います。真空側の選び方と運転は真空ポンプ完全ガイド、送風機全体は送風機・ブロワー完全ガイドにまとめています。
2. 化学プラントのどこに圧縮機があるか|使用目的の7分類
化学プラントの圧縮機は、何のために置かれているかで7つに分けると見通しがよくなります。
- 原料チャージ:原料がガスのとき、反応条件の圧力まで昇圧して装置へ押し込む。アンモニアプラントの原料空気、塩化ビニルプラントの原料塩素、水素プラントの原料ガスなど
- メイクアップ(補充):原料ではないが、反応で消費されるガスを系外から補う。水素化脱硫装置の水素メイクアップなど
- 循環(リサイクル):反応を1回通しで終わらせず、未反応のガスを反応器へ戻す。系内の流路抵抗の分だけ昇圧する。水素化装置の循環水素など
- オフガス:装置で発生したガスを、燃やしたり放出したりせずに次の工程へ送る、または製品として貯蔵するために一定の圧力まで上げる
- 冷凍機用:低温で蒸留・分離するための冷凍に使う。エチレンプラントの冷凍用エチレン圧縮機、深冷分離装置の窒素・水素圧縮機など
- 真空:機械は圧縮機だが、目的は吸込側を下げること。減圧蒸留塔の塔頂など
- 計装用空気・プラント空気:調節弁や緊急遮断弁を動かす空気と、パージや工具に使う空気をつくる
1台が複数の目的を兼ねることもあります。エチレンプラントには原料チャージと冷凍を同時に果たす圧縮機があり、ある工場から別の工場へガスを送る圧縮機は原料チャージとオフガスの両方の役目をします。

こうして並べると、圧縮機は反応系の入口(①②)、ループ(③)、出口(④)と、ユーティリティ(⑤⑥⑦)に現れることが分かります。反応系の圧縮機は止まれば反応が止まり、ユーティリティの圧縮機は止まれば複数の装置が同時に影響を受けます。冷凍サイクルそのものの考え方は冷凍サイクルとCOPを参照してください。
計装用空気の圧縮機は小さくても、止まると空気で動く調節弁と遮断弁が一斉に安全側へ動きます。計装用空気は、電力・冷却水と並んでプラントの安全の前提です。空気の系統と、空気が落ちたときに何が起きるかは、計装用空気とプラント空気の圧縮機で解説しています。
3. 目的が違えば、圧縮機への注文が違う
ポンプの運転を左右するのは主に差圧と流量ですが、圧縮機では吸込・吐出それぞれの圧力、温度、容積が絡みます。そのうえ、目的によって「何を一定に保ちたいか」が違います。1970年代の化学プラント用の設計書は、目的ごとの注文を次のように整理しています。
| 目的 | 守りたいもの | 向きやすい形式(例) | 気をつけること |
| 原料チャージ | 流量と圧力の両方(装置の物質収支の元) | 遠心・軸流 | 運転できる範囲を広くとる |
| メイクアップ | 小流量で大きな差圧、補充量の調整 | 往復動がもっとも一般的 | 段階的な容量制御、ピストン棒荷重の余裕 |
| 循環 | 系内の抵抗をまかなう大流量 | 信頼性を重視して遠心 | 設計点に余裕を載せない、サージを起こさない制御 |
| オフガス | ガス発生点の圧力を下げすぎない | 吐出圧力を一定にするなら容積形 | 発生量の変動への追従 |
| 冷凍機用 | 温度(=吸込圧力)の制御 | 遠心・スクリュー・往復動 | 容積形でも自動の容量制御が要る |
| 真空 | 規定の真空を破らない | 液封式・スクリュー・ベーンなど | 能力に大きめの余裕、機械的な信頼性 |
| 計装用空気 | 止めない、油と水を入れない | 無給油式スクリュー | 除湿、空気だめ、予備機 |
表のとおり、同じガスを圧縮する機械でも、流量を守るのか、圧力を守るのか、止めないことを守るのかで、選ぶ形式も容量制御の方式も変わります。容量を減らす方式と、何を一定にするかの決め方は圧縮機の容量制御で詳しく扱っています。
ターボ形(遠心・軸流)で特に注意したいのが、設計点の決め方です。ターボ形は運転できる流量の範囲が限られていて、流量を減らしすぎるとサージング、増やしすぎるとチョーク(それ以上流れない状態)になります。設計点は正常運転の条件で決め、余裕を上乗せしないのが原則です。余裕を見て大きく選ぶと、ふだんの運転点がサージ限界に近づき、運転できる範囲の外に出てしまうこともあります。
同じ設計書は、原料チャージ用のターボ形に望ましい条件の目安として、同じ回転数でのサージ点の流量が設計点の吸込流量の70%以下、サージ点の差圧が設計点の差圧の1.05〜1.10倍、チョーク点の流量が設計点の1.1倍以上を挙げています。1970年代の使用者側の目安で規格値ではありませんが、運転範囲の広さを数字で確かめるという考え方は今も同じです。
4. 形式の地図|容積形とターボ形、流量と圧力で住み分ける
圧縮機の形式は、作動原理で次のように分かれます。
- 容積形:往復動(ピストン)、回転式(スクリュー=ねじ式、ベーン)。送風機・真空の領域ではルーツ、液封式も容積形
- ターボ形:遠心、軸流
どの形式が使われるかは、まず吸込流量と吐出圧力で大まかに決まります。

図は1980年代末の便覧に載った適用範囲の図を、圧力をMPa(ゲージ圧)に換算して描き直したものです。流量が増えるほど往復動→スクリュー→遠心→軸流へ移り、圧力が高いほど往復動が残るのが全体の傾向です。ただし便覧自身が「境界は厳密なものではなく、技術の発達で変わる」と断っています。実際、現行のプロセスガス用スクリューは油冷式で吐出100 bar(ゲージ圧、約10 MPa)の機種まであり、この図より高圧側へ広がっています。資料によって線の引き方も違うので、図は桁をつかむ目安として使います。
| 形式 | 得意な範囲の目安 | 化学プラントでの主な用途 | 弱み |
| 往復動 | 小〜中流量、高圧 | 水素のメイクアップ、アンモニア・メタノール合成、ポリエチレン製造 | 脈動と振動、弁の寿命、予備機が必要 |
| スクリュー | 中容量、中圧 | 計装用空気(無給油式)、冷凍機、汚れたガス | 無給油式は冷却の異常でロータが接触する |
| 遠心 | 大流量、中〜高圧 | 分解ガス、循環ガス、空気分離、合成ガス | サージング、ガスの分子量と吸込温度で性能が変わる |
| 軸流 | 非常に大きい流量、中圧以下 | 大容量の空気源、ガスタービン | 運転範囲が狭く、汚れに弱い |
形式の原理と性能曲線の違い、スクリューの油冷式と無給油式の違い、選ぶ手順は圧縮機の種類と選び方で解説しています。ルーツブロワーは送風機の種類と特徴、液封式は液封式(水封式)真空ポンプの構造と運転を参照してください。
5. 往復動とターボ形の違いは「押しのける」か「速度を圧力に変える」か
運転と保全の話は、ほとんどがこの違いから始まります。
往復動は、シリンダに閉じ込めたガスをピストンで押し縮めます。 回転数が同じなら1回に押しのける量はほぼ決まっているので、吐出側の抵抗が増えても流量はほとんど減らず、圧力が上がり続けます。定容量・可変圧力の機械です。吐出側の弁を閉めたまま運転してはいけません。 最後に守るのは安全弁です。
遠心は、羽根車でガスを加速し、その速度を圧力に変えます。 回転数が同じなら圧力比はほぼ決まっていて、吐出側の抵抗が変わると流量が変わります。流量を減らしすぎるとサージングに入ります。吐出圧力は、ガスの分子量と吸込温度でも上下します。
| 見るところ | 往復動 | 遠心 |
| 性能の性格 | 流量がほぼ一定、圧力が変わる | 圧力比がほぼ一定、流量が変わる |
| 容量の減らし方 | アンローダ、クリアランスポケット、回転数 | 回転数、入口案内翼(IGV)、吸込絞り |
| 減らしすぎたとき | 各段の温度とピストン棒荷重が問題になる | サージングに入る |
| 異常が先に出るところ | 段ごとの圧力・温度、音 | 振動(軸振動・軸位置) |
| 連続運転と予備 | 弁の寿命から、予備機を含めて系統を組む | 長期の連続運転が前提 |
遠心の運転範囲の下限であるサージングと、それを防ぐアンチサージ制御は圧縮機のサージングとアンチサージ制御で解説しています。リサイクル弁や放風弁で流量を確保しても、圧縮機の動力は減りません。 減量運転の省エネ手段ではない点に注意します。
どちらの形式でも、高い圧力比を1段で出すと吐出温度が高くなりすぎるので、段に分けて途中で冷やします(段間冷却)。段間冷却は吐出温度だけでなく動力も下げます。理論動力と多段圧縮の最適な中間圧力の求め方は圧縮機の理論動力、資格試験の形で整理したものは圧縮機の理論動力と冷凍サイクル(甲種化学)にあります。
6. 運転員が毎日見るところ|圧力・温度・油・冷却水・振動・電流・ドレン
最近の圧縮機は自動制御と監視装置が整い、運転中に機械のそばへ行く機会は減っています。それでも、運転記録を整理して傾向を見ることと、計画的に機械のまわりを見回って音や振動の異常を確かめることが、事故を防ぐ基本です。見るものは、次の5系統にまとめられます。
| 系統 | 見る計器・場所 | 往復動で特に見る | 遠心で特に見る |
| ① 段ごとの圧力と温度 | 各段の吸込・吐出の圧力計と温度計 | 中間圧力と各段の吐出温度 | 吸込・吐出の圧力と温度、流量 |
| ② 油 | 油面、油圧、油温、フィルタの差圧 | フレーム油、シリンダ注油器の作動 | 軸受潤滑油の給油圧力と戻り油温度、シール油の差圧 |
| ③ 冷却水 | 出入口の温度、水量、排水の気泡 | インタークーラ、シリンダジャケット | 油冷却器、段間冷却器 |
| ④ ドレン | ドレン弁・トラップの作動、排出量と色 | クーラー下流のドレン、黒くないか | 吸込ドラムの液面、段間のドレン |
| ⑤ 振動・音・電流 | 軸受、機体、電動機の電流と電力 | ノック音(平常の軽い音との差) | 軸振動と軸位置(常時監視) |
このほか、軸受温度(周囲温度との差)、グランドパッキン・フランジ・安全弁からの漏れも見回りで確かめます。

判定基準の多くは「平常と変わらないこと」です。ここが見回りのいちばん大事な点で、数値は絶対値ではなく、その機械の平常値からの変化で判断します。往復動では通常でも軽いノック音がするので、平常の音を覚えておかないと異常が判別できません。温度は気温やクーラーの状態でも変わります。
圧力と温度は必ず組で見ます。 たとえば往復動で2段目の吸込圧力(中間圧力)が上がり、同時に1段目の吐出温度が上がっていれば、2段目の弁の漏れで1段目の圧縮比が増えている可能性があります。片方だけ見ていると、原因の段を取り違えます。
平常値の元になるのは、試運転と整備後に取った値です。据付・試運転で何を記録して引き取るかは圧縮機の据付と試運転、油と冷却水とドレンの日常管理は圧縮機の潤滑と冷却で解説しています。記録は、定期点検の時期や部品を準備する時期を決める根拠にもなります。
7. 症状から記事を引く早見表
異常に気づいたときに、まず疑うものと読む記事を並べます。往復動は圧力・温度・音に、遠心は振動に、異常が先に現れることを頭に置いて使ってください。
| 症状 | まず疑うもの | 読む記事 |
| 往復動の中間圧力が上がる | 後段(高圧側)の弁・ピストンリングの漏れ、冷却器の能力低下 | 往復動圧縮機の異常と弁の保全 |
| 往復動の中間圧力が下がる | 前段(低圧側)の弁・ピストンリングの漏れ、前段冷却器の冷やしすぎ | 往復動圧縮機の異常と弁の保全 |
| ある段の吐出温度が上がる | 弁の漏れによる逆流と再圧縮、圧縮比の増加 | 往復動圧縮機の異常と弁の保全 |
| 次の段の吸込温度も上がる | インタークーラの能力低下、冷却水の水量・水温 | 圧縮機の潤滑と冷却 |
| 容量が出ない、吐出圧力が立たない | 弁の割れ、アンローダの戻り不良 | 往復動圧縮機の異常と弁の保全、圧縮機の容量制御 |
| 負荷とともに大きくなるノッキング音 | ピストンナットのゆるみ、液の吸込み | 往復動圧縮機の異常と弁の保全 |
| 油圧が下がる | 潤滑油ポンプ、フィルタ、リリーフ弁、油温 | 圧縮機の潤滑と冷却 |
| ドレンが黒い、弁にカーボンが付く | シリンダ注油の入れすぎ | 圧縮機の潤滑と冷却 |
| 遠心の流量と吐出圧力が周期的に振れ、大きな異音がする | サージング | 圧縮機のサージングとアンチサージ制御 |
| 遠心の振動が増える | 付着物によるアンバランス、心ずれ、オイルホワール(周波数で分ける) | 遠心圧縮機の振動と異常 |
| シールのベント流量やサワーオイル量が変わる | ドライガスシール、オイルフィルムシールの劣化や汚れ | 圧縮機の軸封、ドライガスシールのしくみと監視 |
| 開放や据付の後、起動すると振動が大きい | 芯出し、配管荷重、フラッシング不足 | 圧縮機の据付と試運転 |
| 計装用空気の圧力低下の警報 | 空気圧縮機、除湿器、漏れ、弁の誤閉止 | 計装用空気とプラント空気の圧縮機 |
止めるかどうかは、変化の速さで分けます。 急な温度上昇、負荷とともに大きくなるノッキング音、潤滑油圧の低下、遠心の振動の急増や軸位置の急変は、運転要領に従ってすぐ止めます。ゆっくりした変化は、原因を詰めてから計画的に止めます。 慌てて止めて起動し直すほうが、機械とプロセスに負担をかける場合もあります。
遠心の振動は、送風機やポンプと同じく、平常値からの変化と周波数で原因を分けます。ポンプの振動の測り方と停止基準はポンプの振動も参考になります。送風機のサージングの基本は送風機のサージングと並列・直列運転で扱っています。
異常のあとの操作にも注意が要ります。1968年には、計装用空気の圧力低下で緊急遮断した分解ガス圧縮機で、排水弁が開いていたために分解ガスがドレン抜き配管からピットへ噴き出し、圧縮機室へ流れ込んで爆発した事故がありました。空気が落ちた後の経過と教訓は計装用空気とプラント空気の圧縮機で扱っています。可燃性ガスの圧縮機でドレン弁を開けるときは、ガスがどこへ出ていくかを先に確かめます。
8. 隣の分野とのつながり|送風機・真空ポンプ・計装・冷凍・高圧ガス
圧縮機は、ほかの設備分野と重なる所が多い機械です。圧縮機の各記事では、圧縮機に固有の話(多段・高圧・プロセスガス、アンチサージ制御、軸封のガス、各段の圧力と温度)に絞り、共通の話はそれぞれの記事へ送っています。
- 送風機:ファン・ブロワーとの呼び分けはファン・ブロワー・圧縮機の違い、送風機の種類・運転・省エネは送風機・ブロワー完全ガイド
- 真空ポンプ:減圧操作の考え方と形式選定は真空ポンプ完全ガイド
- ポンプ:流体機械の運転・点検の共通の考え方はポンプ完全ガイド
- 計装:アンチサージ調節計や計装用空気で動く弁の全体像は計装・制御の完全ガイド、空気が来ないと弁がどちらへ動くかは調節弁のしくみ
- 冷凍:冷凍機用圧縮機が回す冷凍サイクルは冷凍サイクルとCOP
- 熱交換器:インタークーラやアフタークーラ、油冷却器の考え方は熱交換器の完全ガイド
- 計算:理論動力と多段圧縮の中間圧力は圧縮機の理論動力
法令との関係では、高圧ガス保安法の「高圧ガス」に当たるかどうかは、機械を送風機と呼ぶか圧縮機と呼ぶかとは別に、扱うガスの種類と、常用の温度での圧力などで判断します。 圧縮機を新設・改造するときは、機械の呼び名ではなく、扱うガスと圧力から法令上の扱いを確かめます。
9. 圧縮機の記事一覧と読む順番
圧縮機の個別記事は次の10本です。
| 記事 | 主な読者 | この記事で分かること |
| 圧縮機の種類と選び方 | 運転員・エンジニア | 往復動・スクリュー・遠心・軸流の原理と性能曲線の違い、ガスが変わったときの挙動、選ぶ手順 |
| 圧縮機のサージングとアンチサージ制御 | 運転員・エンジニア | サージ限界線と制御線、アンチサージ制御が測っているもの、リサイクル弁と放風弁、起動・停止でサージに入りやすい場面 |
| 圧縮機の容量制御 | 運転員・エンジニア | 何を一定にするかの決め方、アンローダとクリアランスポケット、多段往復動の操作順序、遠心の5方式と動力 |
| 往復動圧縮機の異常と弁の保全 | 運転員 | 中間圧力と吐出温度から吸込弁・吐出弁を見分ける方法、異音の聞き分け、弁の取替え基準と漏れ試験 |
| 圧縮機の軸封 | 運転員・エンジニア | ロッドパッキン、ラビリンス、オイルフィルムシール、ドライガスシールの違いと、ベントの見方 |
| ドライガスシールのしくみと監視 | 運転員・エンジニア | 動圧溝で浮く原理、配列の選び方、シールガス・ベント・セパレーションガスの系統、起動停止の順序、1次ベント流量の読み方 |
| 圧縮機の据付と試運転 | エンジニア | 基礎、芯出しとコールドオフセット、配管荷重、フラッシング、無負荷運転から負荷運転までの手順 |
| 圧縮機の潤滑と冷却 | 運転員 | シリンダ注油と潤滑油系統、インタークーラと各段の温度、ジャケット水、ドレンの管理 |
| 遠心圧縮機の振動と異常 | 運転員・エンジニア | 周波数で原因を分ける方法、付着物によるアンバランス、心ずれ、オイルホワールとオイルホイップ |
| 計装用空気とプラント空気の圧縮機 | 運転員 | 無給油スクリュー、露点と除湿器、空気だめの保持時間、空気が落ちたときの弁の動きと事故の教訓 |
すべてを順番に読む必要はありません。目的に合わせて、次の順を勧めます。
- 運転員:種類と選び方 → サージング → 往復動の異常と弁 → 潤滑と冷却 → 計装用空気
- エンジニア:種類と選び方 → 容量制御 → 軸封 → 据付と試運転 → 遠心の振動と異常
- 異常が出ているとき:第7章の早見表から、該当する記事へ直接進んでください
まとめ
- 圧縮機は吐出圧力がおおむね0.1 MPa以上の、気体の圧力を上げて送る機械です。 送風機とは圧力で、真空ポンプとは目的で呼び分け、圧力による呼び名と作動原理による形式は別の軸で見ます。
- 化学プラントの圧縮機は、原料チャージ・メイクアップ・循環・オフガスの反応系と、冷凍・真空・計装用空気のユーティリティに現れます。 目的によって、流量・圧力・止めないことのどれを守るかが違います。
- ターボ形の設計点は正常運転の条件で決め、余裕を上乗せしません。 余裕を見て大きく選ぶと、ふだんの運転点がサージ限界に近づきます。
- 流量が増えるほど往復動→スクリュー→遠心→軸流へ移り、高圧ほど往復動が残ります。 適用範囲の境界は目安で、技術の発達とともに広がっています。
- 往復動は流量がほぼ一定で圧力が変わり、遠心は圧力比がほぼ一定で流量が変わります。 容積形の吐出弁を閉めたまま運転せず、遠心は流量を絞りすぎません。
- 日常点検は段ごとの圧力と温度、油、冷却水、ドレン、振動・音・電流の5系統を、平常値からの変化で見ます。 圧力と温度は組で見て、原因の段を取り違えないようにします。
- 急な変化はすぐ止め、ゆっくりした変化は原因を詰めて計画的に止めます。 異常のあとのドレン弁の操作など、止めたあとの操作にも注意します。
参考文献
- 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』11.5「圧縮機とポンプ」(図11.80、表11.7、11.5.2 c「運転管理」)、2.4.3「空気供給設備」 最新版をAmazonで見る
- 化学工学協会関東支部編『プロセス機器構造設計シリーズ6 化学プラント用ポンプ・圧縮機』丸善, 1・2「圧縮機」(1・2・1 使用目的による分類、1・2・2 各使用目的に必要な圧縮機の性能、図1・2)
- 日本プラントメンテナンス協会編『ファン・コンプレッサーの本』第3章 3・1「圧縮機の概要」、3・2「圧縮機の種類と特徴」、表3・1「往復動圧縮機の日常点検要領」、表3・3「遠心圧縮機の日常点検要領」 Amazonで見る
- 化学工学協会編『化学装置便覧 改訂二版』第18章「ポンプ,圧縮機,冷凍機」18・2「圧縮機,送風機」(表18・10、図18・13、18・2・2「圧縮機,送風機の用途」)
- 化学工学会編『化学工学便覧 改訂五版』丸善, 第5章「流動」(図5・58)(リンクは最新版) 最新版をAmazonで見る
- 『環境保全技術シリーズ 化学プラント安全対策技術4 事故災害事例と対策』第6章「事故災害事例」
- 神戸製鋼所「油冷式(WET)スクリュ圧縮機」
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