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計装用空気とプラント空気の圧縮機|無給油スクリュー・除湿・レシーバ、空気が落ちたらプラントはどう動くか

計装用空気とプラント空気の圧縮機のアイキャッチ

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

化学プラントで運転員が毎日そばを通る圧縮機は、反応ガスを送る大型機よりも、ユーティリティ棟で回っている空気圧縮機かもしれません。調節弁を動かし、空気式の計器に信号を送り、パージやホースステーションに空気を配る、地味な設備です。

ところが、この空気が止まると、プラント中の調節弁と遮断弁が一斉に「空気が来ないときの位置」へ動きます。冬の朝に計器の指示が暴れる、弁がハンチングする、といった症状の裏に、空気に混じった水や油が隠れていることもあります。

この記事では、化学プラントの現場オペレーターとエンジニア向けに、計装用空気とプラント空気の違い、圧縮機から計器までの系統、無給油スクリュー圧縮機が選ばれる理由、露点と除湿器の選び方、ドレンを抜く場所、レシーバの保持時間、予備機、そして空気圧が落ちたときにプラントの何がどの順に動くかを、事故事例とあわせて整理します。

この記事の結論

  • 計装用空気は、電力・冷却水と並ぶ「安全の前提」です。空気で動く調節弁や緊急遮断弁は、空気が止まっても安全側へ動くように作られ、そのための空気だめ(レシーバ)を持ちます。
  • 計装用空気には油と水を入れません。圧縮機は無給油形のスクリューが基本で、除湿器で露点を「配管が触れる最低気温より10℃以上低く」保ちます。
  • 露点には圧力下露点と大気圧露点があり、同じ空気でも数字が大きく違います。露点計や仕様書の値がどちらなのかを必ず確かめます。
  • 空気源が止まってから何分もつかは、レシーバと配管の容積、消費量、そして「弁が確実に動き切れる最低圧力」で決まります。
  • 事故は空気が落ちた瞬間より、その後の操作で起きています。空気が戻っても、原因と全弁の位置を確かめるまで運転を再開しません。

1. 計装用空気とプラント空気の違い|同じ圧縮空気でも、止まったときの重さが違う

プラントの圧縮空気は、使い道で2つに分けて扱います。

項目計装用空気プラント空気
主な使い道空気式計器の信号、調節弁・遮断弁・アンローダの駆動パージ、ホースステーション、エア工具、吹込み、エア駆動ポンプ
求める品質油・水・固形分・腐食性ガスを含まない、乾いた清浄な空気用途に支障がなければよい
配管亜鉛めっき鋼管をねじ込みでつなぐのが基本。メインフィルタ以降は異物を入れない材料一般の鋼管
止まったとき調節弁・遮断弁がフェイル位置へ動き、プラント全停につながる作業や一部の機器が止まる

計装用空気は、空気式計器の情報伝達と、空気式調節弁などの作動に使われます。DCS と電子式の伝送器が主流になった今でも、現場の調節弁の多くは空気で動いています。空気式計器の信号 20〜100 kPa の由来は、4〜20 mA と計装信号で解説しています。

空気式の計器や弁の中には、内径 0.1〜1.0 mm 程度の絞りやノズルがあります。ここに固形分や油が付けば詰まり、水分があればノズルで膨張して冷えるときに凍ります。そのため計装用空気には、油分・水分・固形分・腐食性ガスのない清浄な空気が求められます。

高圧ガス保安法関係の例示基準では、停電などのときに保安を保つ「保安電力等」として、買電・自家発電・蓄電池などに並んで「空気又は窒素だめ」が挙がっています。空気で動く自動制御装置と緊急遮断装置には、空気又は窒素だめを必ず持たせることになっています。 計装用空気は、電力と同じ重さで扱うユーティリティです。

もう一つ大事なのが、計装用空気をプロセスのパージや工具に流用しないことです。計装用空気をプロセスのエアパージに使っていて、空気圧が下がったときにプロセスガスが空気源へ逆流し、空気配管とつながっていた計器を腐食させた例があります。どうしても使う場合は、逆流したときのガスの腐食性・毒性を確かめたうえで、逆流防止器を付けます。計装全体の地図は計装・制御の完全ガイドを参照してください。

2. 空気系統の全体|冷やす→水を落とす→ためる→乾かす→ろ過する→配る

計装用空気の系統は、どのプラントでも並びの意味が同じです。

  1. 圧縮機:大気を吸い込み、フィルタでほこりを止めてから圧縮する
  2. アフタークーラとドレンセパレータ:圧縮で熱くなった空気を冷やし、出てきた水を落とす
  3. レシーバ(空気だめ):圧力の脈動を抑え、残った水を落とし、非常時の空気をためる
  4. 前フィルタ→除湿器→後フィルタ:油分と水滴を止めてから乾かし、除湿器から出る粉を止める
  5. 計装空気ヘッダ→各プラント入口のメインフィルタ→計器ごとのフィルタ付き減圧弁:必要な圧力に下げて計器・調節弁へ送る
計装用空気とプラント空気の系統

プラント空気の系統は、圧縮機・レシーバ・ヘッダまでは同じですが、除湿器を持たないことが多く、ホースステーションやパージへ配ります。系統例では、プラント空気のレシーバの下流から逆止弁を通して計装用空気側へ補えるようにし、逆向きには流れないようにしています。 計装用空気の予備機と、プラント空気側からのバックアップの2本立てで、計装用空気を優先する考え方です。

配管の決まりもいくつかあります。

  • 枝管はヘッダの上面から取り出し、根元に元弁を設ける。下から取ると、ヘッダの底にたまった水や錆を持っていく
  • 分岐管・枝管の必要な箇所にドレン弁を設け、各配管の末端には弁を付けてブローできるようにする
  • 同じ支管の系統の中に、運転系統の違う計器をつながない。支管を閉めたときに止まる範囲が分かりにくくなる
  • 空気圧の低警報は、空気源側(1次側)だけでなく、各プラントへの弁より下流(2次側)にも置く(理由は10章の事故例)

3. なぜ無給油スクリューなのか|油と脈動を計装に入れない

計装用空気の圧縮機は、無給油(オイルフリー)形のスクリュー圧縮機が基本です。空気圧縮機には往復動式・スクリュー式・遠心式が一般に使われ、容量・経済性・保守性で選ばれますが、どの形式でも圧縮空気に油分が入らない型が推奨されます。大容量では遠心式も使われます。

スクリュー圧縮機には油給式と無給油式があります。

  • 油給式:ケーシングの中に多量の潤滑油を吹き込み、ロータ間のすき間のシール、圧縮熱の冷却、潤滑を油にさせる。油は圧縮空気と一緒に吐き出されるので、油分離器で回収して再使用する。空気側に油が残る
  • 無給油式:同期歯車でおすロータとめすロータを回し、ロータ間とケーシングとの間に微小なすき間を保ったまま、まったく接触させずに運転する。圧縮室に油を入れない

無給油式でも、軸受と歯車には潤滑油を使います。油が入らないのは圧縮室だけです。スクリューは吸込み・吐出しの弁がなく、連続して吐き出すので、往復動のような脈動もありません。

無給油スクリューの弱点は、ほとんどのトラブルがロータの接触につながることです。冷却水が止まると、圧縮熱でケーシングがひずみ、すき間が保てなくなってロータが当たります。そのため冷却水の断水と吐出温度の上昇を最も警戒し、断水リレーで通水を確かめます。 日常点検で見るのは、各段の吐出し空気圧力と温度、2段吸込み空気温度、油冷却器出入口の油温、圧縮機と増速機からの排油温度、油圧、冷却水温度、電動機の電圧・電流です。1990年代の保全書では、油温は室温+30〜40℃くらい、夏場でも最高70℃程度が目安とされています。数値は機械ごとに違うので、正常運転時の値をベースに、変化で判断します。

4. 露点で乾き具合を読む|「最低気温より10℃以上低く」

露点は、空気を冷やしていったとき、中の水蒸気が水滴になり始める温度です。計装用空気の配管は屋外のパイプラックを通るので、冬の夜に配管が露点より冷えれば、配管の中で水が出ます。氷点下なら凍り、計器の絞りやノズルでは膨張による冷却でさらに凍りやすくなります。

計装用空気の露点は、除湿器を使って、その地域の最低気温より10℃以上低い値に保ちます。 高圧ガスの試験では「最低気温に保つ」という選択肢が誤りとして出題されています(防災設備の出題の解説)。国際的な目安として知られる米国の計装用空気の品質規格 ISA-7.0.01 も、圧力下露点を系統が触れる最低周囲温度より10℃以上低く、かつライン圧力で4℃を超えないこととしています。同規格は粒子の大きさや油分の上限、腐食性・可燃性・毒性の汚染がないことも求めています。

ここで取り違えやすいのが、露点の表し方です。

  • 圧力下露点:配管の中の圧力のままで冷やしたときの露点。除湿器の性能や、配管の中で水が出るかどうかはこちらで考える
  • 大気圧露点:その空気を大気圧まで減圧してから測った露点

空気を減圧すると水蒸気の分圧も下がるので、同じ空気でも減圧後の露点は低くなります。 0.69 MPaG で圧力下露点10℃の空気の露点を換算した例です。

0.69 MPaG での圧力下露点0.3 MPaG に減圧したとき大気圧まで減圧したとき
+10℃約0℃約−16℃
+3℃約−6℃約−21℃
−40℃約−46℃約−57℃

計算条件:Magnus 式の飽和水蒸気圧(0℃未満は氷に対する値)、水蒸気のモル分率は減圧で変わらないとして分圧を比例させた例。大気圧は 0.101 MPa。

「大気圧露点 −16℃」と書かれた空気は、ヘッダの中では10℃で水が出ます。露点計の表示や除湿器の仕様書が圧力下露点か大気圧露点かを必ず確かめてください。 露点の数字を見比べるときは、同じ圧力の値どうしで比べます。

露点の物差し|必要な露点と除湿方式

5. 除湿器の選び方|冷凍式と吸着式

圧縮空気の水蒸気を除く方法には、冷却して凝縮させる、高圧に圧縮して凝縮させる、液体の吸湿剤を使う、吸着剤を使う、の4つがあり、組み合わせて目的の露点をつくります。計装用空気で使うのは、主に冷却(冷凍式)と吸着式です。

方式到達する圧力下露点の目安仕組みと特徴
冷凍式+3〜+10℃冷媒で空気を冷やし、出た水を落とす。凝縮水が凍るので0℃より下げられない
吸着式(非加熱再生)−20〜−70℃2塔を短い周期で切り替える。乾いた空気の一部(0.69 MPa で15〜20%)を再生に使う。小容量向き
吸着式(加熱再生)−20〜−70℃ヒーターで吸着剤を再生する。再生用の空気の消費が少ない。大容量向き

到達露点はメーカー資料の目安です。吸着剤にはシリカゲルと活性アルミナが一般的で、モレキュラーシーブや合成ゼオライトも使われます。吸着塔は2基あり、交互に吸着と再生を自動で繰り返します。1980年代の便覧では、1サイクルは加熱再生で8時間、非加熱再生で10分が一般的とされ、露点計で露点が所定値に達したときだけ再生する省エネルギー型も紹介されています。吸着の原理は吸着によるガス分離(PSA と TSA)を参照してください。

選び方の判断基準は、必要な圧力下露点=配管が触れる最低気温−10℃です。冷凍式の +3〜+10℃ でこれを満たせるのは、配管が触れる最低気温が +13〜+20℃ 以上の場合だけです。屋外に配管が出るプラントでは、冬の最低気温から考えて吸着式が基本になります。化学プラント向けの便覧も、計装用空気の除湿には吸着式が適しているとしています。冷凍式を吸着式の前段に置き、吸着式の負荷を下げる組合せもあります。

吸着式の前後にはフィルタを置きます。前フィルタは油分と水滴から吸着剤を守り、後フィルタは吸着剤から出る粉を止めます。 最終フィルタに 0.01 µm 級を使う例もあります。

運転で見るのは次の点です。

  • 切替弁が周期どおりに動いているか(片側の塔に吸着が偏っていないか)
  • 加熱再生なら再生温度、非加熱再生ならパージ空気が出ているか
  • 露点計の値と警報
  • 前後フィルタの差圧

6. ドレンを抜く場所|アフタークーラ・レシーバ・フィルタ・配管の低い所

大気を圧縮して冷やせば、空気中の水分は必ず水になって出てきます。無給油の圧縮機でも水は出ます。ドレンがたまる場所は決まっています。

場所ドレンの出方
アフタークーラ下流のドレンセパレータ最も量が多い。圧縮熱を取った直後に大半の水が出る
レシーバの底冷えて凝縮した水がたまる
除湿器の前のフィルタ取り切れなかった水滴・油分
ヘッダ・分岐管の低い所、配管の末端除湿不良や除湿器のバイパス時に出た水、錆

圧縮機から出る油やカーボンと混ざったドレンは、ワニスのように変質して膠(にかわ)状になり、配管や空気機器の錆と作動不良の原因になります。ドレン切りを怠ると、潤滑油の白濁や錆、計器の作動不良として後から出てきます。

自動ドレントラップは便利ですが、閉じたまま詰まればドレンが下流へ流れ、開いたままになれば空気が逃げ続けて圧力が下がります。ドレントラップは適時点検し、実際に水が抜けているかを確かめます。 導圧管や現場計器側のドレン・凍結の見方は、現場計器の日常点検で解説しています。

7. レシーバの役目と保持時間|圧縮機が止まってから何分もつか

エアレシーバの役目は3つです。

  1. 空気圧力の脈動と変動を抑える
  2. 凝縮水を落とす
  3. 大元の計装用空気が止まったとき、施設を安全に止め終えるまでの空気をためる

3番目がレシーバの大きさを決めます。レシーバは工場全体として計画する場合と装置ごとに設ける場合がありますが、どちらも緊急時の保持時間で大きさを決めます。

見積もりの考え方を式にすると、温度一定、消費量一定として、次のようになります。

t ≒ V ×(P₁ − P₂)÷(Q × P₀)

  • t:空気源が止まってから P₂ まで下がる時間(min)
  • V:レシーバとヘッダ・配管の容積の合計(m³)
  • P₁:通常の圧力、P₂:弁が確実に動き切れる最低圧力(どちらもゲージ圧、MPa)
  • Q:計装用空気の消費量(大気圧換算、m³/min)、P₀:大気圧(0.101 MPa)

例として、容積10 m³、通常0.69 MPaG、最低0.39 MPaG、消費量5 m³/min とすると、t ≒ 10×0.30÷(5×0.101) ≒ 約6分です。容積が5 m³なら約3分、20 m³なら約12分になります。数値は説明のための例です。

空気源が止まってからのヘッダ圧力|保持時間の見積もり

この見積もりで大事なのは、P₂ を警報の圧力ではなく「遮断弁や調節弁が最後まで動き切れる最低圧力」で決めることです。低警報や全停インターロックは P₂ より高い圧力に置き、インターロックが働いてから弁が動き終わるまでの余裕を残します。

実際には、弁が一斉に動くときに消費が一時的に増え、漏れがあればその分も減りが早くなります。温度も一定ではありません。計算は目安にとどめ、実際の保持時間は、圧縮機停止のテストや空気圧の記録で確かめておくのが確実です。

緊急遮断弁の中には、弁ごとに小さな空気だめ(アキュムレータ)を持ち、電気や空気の供給が止まっても内蔵した圧縮空気で閉じられるものがあります。電源側では、保安上重要な計装システムに無停電電源装置を設け、全停電でも30分間以上の計装電源を確保するといった考え方が示されています。空気の側も同じく、「安全に止め終えるまでの時間」から逆算して備えます。

8. 予備機と駆動源|止まらない仕組みと、その確かめ方

計装用空気の供給を止めないための手段は、おおむね次のとおりです。

  • 常用機と駆動源の違う予備機を持ち、圧力低下で自動起動させる(電動機とスチームタービンなど)
  • プラント空気側からのバックアップ(逆止弁を通す)
  • 余裕のある空気ホルダー(レシーバ)
  • 停電時の動力源。計装用空気圧縮機のように大きな動力が要るものには、自家発電、ガソリンやディーゼルのエンジン、スチームタービン、ガスタービンが使われる
  • 計装用空気を失ったときに窒素へ切り替えるバックアップ

計装用空気系の故障は、「弁1台への空気の停止」「サブヘッダの故障による1系統の停止」「空気源の故障による全プラントの停止」の3段階で考えます。どの段階を設計の前提にしたかで、予備機やバックアップの持ち方が変わります。自分のプラントがどこまでを想定しているかを知っておくと、異常時の判断が速くなります。

予備機の自動起動やバックアップは、普段は動かない設備です。定期的に実際に作動させて確かめます。 保安電力等は定期的に検査し、使うときに支障のないようにしておくことが求められ、そのためのテスト回路を設けることもあります。多重の備えを防護層として見る考え方は多重防護と独立防護層(IPL)で解説しています。

低警報が出たときに運転員がまず確かめるのは、予備機が起動したか、ヘッダ圧力が戻り始めたか、そして大きな漏れや開けっぱなしの弁がないかです。計装用空気が足りないときは、プラント空気側のホースステーションやパージの使用を止めて、計装用空気を優先します。

9. 計装空気の圧力が落ちたら、何がどの順に起きるか

空気源が止まったときの流れを、順に追います。

  1. 圧縮機の停止、配管の破損や大きな漏れ、弁の誤操作などでヘッダ圧力が下がり始める
  2. 低警報が出て、予備機が自動起動する(バックアップ弁が開く)
  3. 予備機が間に合わなければ、レシーバの空気で持ちこたえる
  4. 低低の圧力でプラント全停のインターロックが働く
  5. 各調節弁・遮断弁が、空気が来ないときの位置(フェイル位置)へ動く

計装用空気の圧力低下でプラントを全停させる設計は、停電・冷却水断水と並ぶ共通ユーティリティのインターロックの例として便覧にも挙がっています。インターロックが働いたあとに運転員が何を見るかは、DCS と SIS の役割分担を参照してください。

空気が抜けると弁は全部閉まる、と思われがちですが、実際には開く弁も閉じる弁もあります。各弁は、そのプロセスにとって安全な側へ動くように設計されています。 冷やす側は開、加熱や燃料は閉が一般的です。

計装用空気が失われたとき、弁と圧縮機はどちらへ動くか

図は一般的な向きの例です。スチームの調節弁は用途で分かれ、プロセス流体の流量・圧力・温度の調節弁は「一般には閉だがプロセスの特性で決める」とされています。実際の向きは、P&ID や弁の銘板の FC(閉)・FO(開)・FL(ロック)の表示で確かめます。 駆動部のばねと空気の釣り合いで向きが決まる仕組みは、調節弁のしくみ(FC/FO)で解説しています。

圧縮機のまわりでも動くものがあります。

  • 遠心圧縮機のスピルバック(リサイクル)弁は開く。流量が減ってもサージングに入らないようにするため
  • 往復動圧縮機の空気作動のアンローダは、空気が失われたときに負荷側へ動く型(Air Failure Load)と無負荷側へ動く型(Air Failure Unload)があり、どちらかは機械ごとに設計で決まっている。銘板や図面で確かめておく
  • 空気だけが失われても、電動機は回り続ける。ポンプは吐出側の弁が閉じれば締切運転になり、圧縮機はリサイクルで回り続ける。モーターを止めるのはインターロックか運転員の操作
  • プラント空気で動くエア駆動ダイヤフラムポンプ(AODD)やエア工具は、プラント空気が落ちれば止まる

空気圧がゆっくり下がる場合は、弁が一斉に動くのではなく、空気の力がばねに負けた弁から順に、途中の開度を通ってフェイル位置へ動きます。 その途中では制御が乱れ、計器が一斉にハンチングしたように見えることがあります。計装用空気だけが失われたとき、系として何が起きるかはフェイルセーフ設計で詳しく扱っています。

10. 事故に学ぶ|空気が落ちたあとの操作で事故は起きる

1968年の分解ガス圧縮機室の爆発

ナフサ分解ガスを扱うプラントで、計装用空気源の不調により空気圧が約0.64 MPa から約0.39 MPa まで下がり(当時の記録で6.5→4 kg/cm²)、自動緊急遮断装置が働きました。分解ガス圧縮機の前後が遮断され、ガスは圧縮機の中でリサイクルする状態になりました。

運転員は作業基準に従い、逆スラストを防ぐために手動の還流弁を開けるなどの操作をし、ドレンがたまるので排水弁を開けました。この排水弁が開いたままになり、分解ガス(水素47%を含み、推定92 m³以上)がドレン抜き配管からピットへ噴き出し、ピット沿いに圧縮機室へ流れ込みました。空気圧の低下からおよそ7分後、圧縮機室で爆発が起き、死傷者を出したほか、周辺の民家にも被害が及びました。

着火源は、250℃以上のスチーム配管の保温材に油がしみ、自然に酸化して高温になった部分と推定されています。間接的な原因として、この装置の緊急停止マニュアルがなかったこと、騒音対策で圧縮機室を囲って換気が悪かったことが挙げられています。

1973年のエチレン装置の爆発

別のエチレン装置では、作業員がプラント空気配管の切換作業をしていて、近くにあった計装用空気配管の弁を誤って閉めました。運転室では全計器が一斉にハンチングを始め、原因が分からないまま運転基準どおり緊急停止しました。数分後、誤操作に気付いた作業員が弁を開けたので計器は平常に戻りましたが、運転室への連絡はありませんでした。

原因が分からないまま運転再開の準備が進み、水素弁の閉め方が不完全だったことから、アセチレン水添塔の温度が異常に上がり、内部は約1000℃に達したと考えられています。数時間後に配管が壊れて大爆発し、消火作業中の作業員1名が亡くなりました。

調査の結果、計装用空気圧の警報を1次側だけでなく2次側にも設けること、計装用配管を色別などで管理することが改善命令として出されました。プラント空気の弁と計装用空気の弁が近くに並び、本来閉めるべきプラント空気の弁は約100 m 離れていたことも分かっています。同じ用途の弁はまとめ、違う用途の計装用空気の弁は離して置き、色や表示札で区別するのが本質的な対策とされています。

この2つの事故から、現場の判断として次のことが言えます。

  • 計装用空気が戻っても、原因と全弁の位置を確かめるまで運転を再開しない
  • 空気が落ちたあとにドレン弁やベントを開けるときは、先に「どこへガスが出るか」を確かめ、開けた弁は閉めるまで離れない
  • 計装用空気の弁はプラント空気の弁と離して置き、色と札で区別する。空気配管の弁を操作する作業は運転室に連絡してから行う
  • 緊急停止の手順は、計装用空気喪失を含めて装置ごとに用意しておく

エラーを個人の不注意で片付けない考え方はヒューマンファクターとエラー対策、弁の隔離の一般論はLOTO と隔離の実務を参照してください。

まとめ|空気系統の日常点検表

点検項目見る場所正常の見方外れたら疑うこと
ヘッダ圧力と低警報計装空気ヘッダ、各プラント入口(2次側)通常値で安定、警報が生きている圧縮機の能力低下、漏れ、弁の誤閉止
露点除湿器出口の露点計必要露点より低い。圧力下か大気圧かを確認吸着剤の劣化、再生不良、切替弁の故障
除湿器切替弁、再生温度、パージ周期どおりに切り替わる片塔への偏り、ヒーター故障
フィルタ前後フィルタの差圧平常値からの上昇が小さい目詰まり、吸着剤の粉の流出
ドレンセパレータ、レシーバ、フィルタ、配管の低い所トラップから実際に水が抜けるトラップの詰まり・開きっぱなし
圧縮機各段の吐出圧力・温度、油温・油圧、冷却水、電流正常運転時の値からの変化が小さい冷却水の断水、ロータ接触の前兆、油系の不良
予備機・バックアップ予備機の待機状態、バックアップ弁自動起動の設定が生きている、定期作動試験の記録起動しない、弁の閉め忘れ
  • 計装用空気は電力・冷却水と並ぶ安全の前提です。 空気で動く自動制御装置と緊急遮断装置には空気だめを持たせ、プロセスのパージや工具に流用しません。
  • 圧縮機は無給油スクリューが基本で、冷却水の断水と吐出温度の上昇を最も警戒します。
  • 露点は最低気温より10℃以上低く保ち、圧力下露点か大気圧露点かを必ず確かめます。 屋外配管があるプラントでは吸着式の除湿器が基本です。
  • レシーバの保持時間は、「弁が動き切れる最低圧力」を下限にして見積もり、実際の記録でも確かめます。
  • 空気が落ちると、各弁は安全な側へ動き、電動機は回り続けます。 実際の向きは P&ID の FC/FO/FL で確かめます。
  • 空気が戻っても、原因と全弁の位置を確かめるまで運転を再開しません。

調節弁そのもののトラブル(空気容量不足によるハンチングや固着)は調節弁のトラブルと保全、インターロックの解除の運用はプロセス安全インターロックを参照してください。圧縮機の理論動力や多段圧縮の計算は圧縮機の理論動力で扱っています。

参考文献

  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』第2章「保安・防災設備」2.4「用役設備」2.4.1「電気設備(非常用電源設備)」(表2.13)、2.4.3「空気供給設備」 最新版をAmazonで見る
  • 化学工学協会編『化学装置便覧 改訂二版』総論 d「圧縮空気・不活性ガス設備」(図G・6)、第26章 26・1・6「計装とインターロック」(表26・4)、保安電力の例(表26・7)
  • 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 7.4.2「計装用空気源」(図7.15) Amazonで見る
  • 日本プラントメンテナンス協会編『ファン・コンプレッサーの本』第3章 3・3・2「スクリュー圧縮機の保全ポイント」(図3・13)、3・4・2「スクリュー圧縮機の故障原因と対策」、3・4・5「一般的な保全管理のポイント」(表3・7) Amazonで見る
  • 化学工学会編『プロセス機器構造設計シリーズ3 配管』第2章「配管のアレンジメント」(4)「空気」
  • 化学工学会編『プロセス機器構造設計シリーズ6 化学プラント用ポンプ・圧縮機』第3章 3・7「往復動圧縮機の容量調整」(吸入弁アンローダー)
  • 『化学プラント建設技術(下)』第10章「化学プラントの計装設計と工事」(供給空気配管の系統)
  • 安全工学会編『実践・安全工学シリーズ2 プロセス安全の基礎』第3章「プロセス安全設計の基礎」(表3-9、計装用空気の喪失) Amazonで見る
  • 『環境保全技術シリーズ 化学プラント安全対策技術4 事故災害事例と対策』第3章「事故から災害への動態」(図3・10、図3・15)、第6章「事故災害事例」
  • 『環境保全技術シリーズ 化学プラント安全対策技術2 化学プラントの安全設計』5・5「機器安全設計」d「バルブの人間工学的配置」
  • Compressed Air Best Practices, “Understanding the ISA-7.0.01-1996 Instrument Air Standard”
  • オリオン機械「圧縮空気の品質等級」(JIS B 8392-1 / ISO 8573-1 の湿度等級)
  • アネスト岩田「エアドライヤの原理と種類」
  • オリオン機械「冷凍式エアードライヤーとヒートレスエアードライヤーの違いは何ですか」
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