「化学メーカーの年収はいくらか」。就活サイトの数字は出どころがバラバラなので、**有価証券報告書に会社自身が書いている平均年間給与**を29社ぶん並べました。出どころは1つ、基準日もほぼ同じです。
結論から書くと、**事業会社26社の平均年間給与は685万円(東洋紡)から958万円(住友化学)**。ただし、この数字を順位表として読むと間違えます。**平均年齢が38歳の会社と47歳の会社を同じ物差しで並べている**からです。
私は化学メーカーの生産技術者として12年働いています。この記事では数字を並べたうえで、**年齢・勤続・初任給と一緒に読む方法**を書きます。難易度や口コミは扱いません。
個別の会社は企業研究シリーズ(→化学メーカー大手29社の違い)に29本あります。
ランキング|事業会社26社の平均年間給与

| 順位 | 会社 | 平均年間給与 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 単体の従業員数 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 住友化学 | 9,585,195円 | 42.4歳 | 16.7年 | 6,465名 | +17.1% |
| 2 | 積水化学工業 | 9,462,708円 | 44.2歳 | 15.9年 | 3,156名 | +1.2% |
| 3 | 三菱ガス化学 | 9,076,743円 | 41.0歳 | 17.5年 | 2,562名 | +2.9% |
| 4 | 信越化学工業 | 8,988,000円 | 40.8歳 | 18.8年 | 4,059名 | +2.6% |
| 5 | 帝人 | 8,902,000円 | 46.8歳 | 22.5年 | 2,749名 | +9.4% |
| 6 | 三井化学 | 8,717,118円 | 40.0歳 | 15.1年 | 5,198名 | +2.4% |
| 7 | 日産化学 | 8,707,047円 | 40.8歳 | 15.9年 | 2,107名 | +3.0% |
| 8 | ダイセル | 8,655,282円 | 41.9歳 | 15.3年 | 2,533名 | +0.7% |
| 9 | 日本触媒 | 8,590,000円 | 39.4歳 | 16.6年 | 2,573名 | +5.9% |
| 10 | 旭化成 | 8,483,519円 | 41.9歳 | 17.1年 | 8,233名 | +6.0% |
| 11 | 日油 | 8,437,958円 | 42.9歳 | 17.5年 | 1,976名 | +1.0% |
| 12 | 日東電工 | 8,437,000円 | 41.0歳 | 15.5年 | 6,813名 | +1.2% |
| 13 | 東レ | 8,384,000円 | 40.8歳 | 17.4年 | 7,027名 | +2.2% |
| 14 | 東ソー | 8,288,000円 | 38.5歳 | 13.8年 | 4,002名 | +4.1% |
| 15 | カネカ | 8,242,752円 | 41.3歳 | 16.8年 | 3,485名 | +1.4% |
| 16 | 三洋化成工業 | 8,220,000円 | 42.9歳 | 18.6年 | 1,267名 | +3.7% |
| 17 | 住友ベークライト | 8,170,000円 | 46.7歳 | 22.0年 | 1,684名 | +2.9% |
| 18 | エア・ウォーター | 8,164,000円(本体のみ) | 42.5歳 | 9.9年 | 685名 | +2.6% |
| 19 | クラレ | 8,089,641円 | 42.2歳 | 17.8年 | 4,715名 | ― |
| 20 | DIC | 7,990,933円 | 44.3歳 | 18.3年 | 3,880名 | ― |
| 21 | ADEKA | 7,952,220円 | 40.2歳 | 17.1年 | 1,827名 | +1.8% |
| 22 | トクヤマ | 7,940,277円 | 41.45歳 | 16.82年 | 2,652名 | +8.5% |
| 23 | 日本ゼオン | 7,763,347円 | 39.6歳 | 14.3年 | 2,503名 | +5.2% |
| 24 | UBE | 7,745,921円 | 43.4歳 | 15.3年 | 2,778名 | +0.0% |
| 25 | クレハ | 7,418,000円 | 43.6歳 | 19.8年 | 1,631名 | ― |
| 26 | 東洋紡 | 6,853,737円 | 40.1歳 | 14.2年 | 2,885名 | +6.8% |
※ 提出会社(単体)の全従業員の平均。賞与・基準外賃金を含む。エア・ウォーターは本体685名の数字で、事業の大半は子会社にある。前年比は2026年提出の有報から新設された「平均年間給与の対前事業年度増減率」。12月決算の3社(レゾナック・クラレ・DIC)は提出が3月で、この項目がない。
**上と下で約270万円の差**があります。ただし、この表の読み方は次の章からです。
持株会社の数字は別枠|三菱ケミカルG・レゾナック・日本酸素HD
有報の「平均年間給与」は**提出会社=単体**の数字です。持株会社の場合、本体にいるのは経営企画や経理などの数十〜数百名だけで、**工場や研究所で働く人は事業会社の社員**です。
| 会社 | 平均年間給与 | 本体の従業員数 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|
| 三菱ケミカルグループ | 11,889,000円 | 27名 | 50.2歳 |
| レゾナック | 11,319,076円 | 346名 | 46.3歳 |
| 日本酸素ホールディングス | 10,641,000円 | 108名 | 43.8歳 |
この3社を「年収1,000万超の化学メーカー」と読むのは間違いです。**事業会社(三菱ケミカル株式会社、株式会社レゾナック、大陽日酸株式会社など)の平均給与は有報には載っていません**。3社の記事(→三菱ケミカルGの企業研究、→レゾナックの企業研究、→日本酸素HDの企業研究)では、この点を明記しています。
就活生が比べる相手は事業会社なので、**この記事のランキングからは外して「参考」にしました**。
平均年齢と一緒に読む|38歳の会社と47歳の会社

平均年間給与は**年功の影響を強く受けます**。平均年齢が高い会社は、それだけで数字が上がる。
- **東ソー(38.5歳・828万円)と帝人(46.8歳・890万円)**を同じ土俵で比べてはいけません。年齢差8歳で62万円の差なら、**同じ年齢なら東ソーのほうが高い可能性が十分あります**
- **住友ベークライト(46.7歳・817万円)**は年齢が高いのに給与は中位。**若い会社が多い中で「年齢の割に」という見方が要ります**
- 逆に**日本触媒(39.4歳・859万円)や日本ゼオン(39.6歳・776万円)**は若い。ここで年収が高いのは、同年齢で比べればさらに上に出ます
- **散布図で右上にある会社(年齢が高く給与も高い)と、左上にある会社(若いのに給与が高い)は意味が違う**。後者のほうが「若いうちの水準が高い」と読めます
**1つの数字で会社を選ばないでください。** 年齢・勤続・単体の従業員数を横に置いて、初めて意味が出ます。
前年比で動きを見る|住友化学の+17.1%

2026年提出の有報から「**平均年間給与の対前事業年度増減率**」が新しく載るようになりました。**どの会社が上げているか**が初めて同じ形で見えます。
- **住友化学の+17.1%は異例の大きさ**です。有報に理由の記載はありません。構造改革で人員構成が変わった影響、賞与の回復などが考えられますが、**説明がないので会社説明会で聞く価値があります**(→住友化学の企業研究)
- **三菱ケミカルグループの+12.3%**は持株会社27名の数字なので、1人の入れ替わりで動きます。参考扱い
- **帝人+9.4%、トクヤマ+8.5%**は、どちらも業績が動いた年です。帝人は減損で最終赤字、トクヤマは増益。賞与が業績に連動する会社では、**1年の数字は業績を映す**
- **UBE ±0.0%、ダイセル+0.7%**は据え置きに近い。**賃上げの潮流の中で横ばいなら、それも情報です**
**前年比は1年分しかありません。** 来年の有報で2年分になったとき、初めて「上げ続けている会社」が見えます。このシリーズは年1回更新します。
初任給の順位と、平均年収の順位は違う
修士の初任給(募集要項)が高い順に並べて、平均年間給与の順位を横に置きます。母数は持株会社3社とクレハを除いた25社でそろえました(詳しくは→化学メーカーの初任給の読み方)。
- **初任給が高い会社が、平均年収でも上位とは限りません**。ダイセルは初任給2位(手当込みのトクヤマを除けば実質1位)ですが平均年収は8位。**入口の高さと、その後の伸びは別**です
- **三菱ガス化学は初任給3位・年収3位、信越化学は初任給4位・年収4位**で、どちらも入口と全体がそろって上位。信越化学は利益率24.7%の会社です(→信越化学工業の企業研究、→三菱ガス化学の企業研究)
- **初任給は「手当込み」「基本給」が混ざっている**うえに基準年がバラバラです。トクヤマの338,500円は手当55,000円込み、ADEKAの309,290円は住宅手当込み、帝人と日東電工は基本給表示(→化学メーカー大手29社の違い)
- **平均年間給与は「賞与・基準外賃金込み」の年額で、しかも全員の平均**。若い会社は低く出ます
**どちらか一方で決めないでください。** 初任給は最初の数年、平均年収は会社全体の水準。その間を埋めるのが昇給カーブで、それは有報にも募集要項にも載っていません(→化学プラント技術者の年収)。
女性管理職・男性育休・賃金差異|同じ有報に載っている
2023年から有報に「女性管理職の割合」「男性の育児休業取得率」「男女の賃金差異」の開示が義務になりました。29社ぶんはハブ記事(→化学メーカー大手29社の違い)の表にまとめてあります。要点だけ。
- **男性の育休取得率は29社のうち22社が80%超**。100%超えは前年度に生まれた子の育休が当年度に入るため。**数字より「何日取れるか」**が生活には効きます
- **女性管理職の割合は2.3%(東ソー)〜8.9%(帝人)**。化学メーカー全体として低い水準で、どの会社も目標を掲げています
- **男女の賃金差異(全労働者)は60〜85%**。各社とも「賃金制度に性別の差はなく、職位や勤務形態の構成の差」と注記しています
これらは**会社が自分で算出した開示値**で、算出方法の注記が各社で少しずつ違います。比べるときは有報の注記まで読んでください。
自分で確かめる|有価証券報告書はここを見る
この記事の数字は全部、有価証券報告書の「**第一部 企業情報 › 第1 企業の概況 › 5 従業員の状況**」にあります。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | EDINET(金融庁)の閲覧サイトで、会社名か証券コードで検索する。「有価証券報告書」を選ぶ |
| 2 | PDFを開いて「従業員の状況」を探す。目次から飛べる(多くは70〜110ページ目) |
| 3 | 「提出会社の状況」の表に、従業員数・平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与・前年比が1行で載っている |
| 4 | **単位を見る**。「(円)」の会社と「(千円)」の会社がある |
| 5 | 「(注)」を読む。「賞与及び基準外賃金を含む」「臨時従業員は外数」などの条件が書いてある |
| 6 | 同じページか次のページに、女性管理職・男性育休・賃金差異の表がある |
**会社四季報や就活サイトの「平均年収」も、元はこの数字です。** 引用の時点がずれていることがあるので、応募するときは有報を直接見てください。29社のEDINET書類番号はハブ記事(→化学メーカー大手29社の違い)の元データに控えてあります。
この記事の使い方と注意
- 数字は2026年3月〜7月に提出された有価証券報告書に基づきます(最終更新:2026年8月)。次の更新は2027年の有報提出後
- **単体の数字**です。工場を子会社に出している会社では、現場の平均とは違います。配属される法人がどこかは募集要項で確かめてください
- **持株会社3社は参考扱い**。事業会社の平均給与は有報に載っていません
- 年収の高低で会社の良し悪しを決める記事ではありません。**年齢・勤続・初任給・利益率・勤務地と合わせて読むための表**です(→化学メーカー大手29社の違い)
- 就職難易度・採用大学・倍率・口コミ・「激務/やばい」系の断定は扱いません
化学メーカー29社の平均年間給与を有価証券報告書から並べると、事業会社26社は東洋紡685万円〜住友化学958万円。持株会社3社は本体のみの数字なので参考扱い。平均年齢が38〜47歳と幅があるので、年齢と一緒に読むこと。初任給の順位と年収の順位は一致せず、前年比は住友化学+17.1%が異例でした。個別の会社は企業研究シリーズ29本へ。
化学プラント大全 
