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DICの企業研究|インキで世界と戦う会社を現役化学技術者が解説【2026年版】

DICは、就活生から「印刷インキの会社でしょ? 紙が減っているのに大丈夫?」と見られがちな会社です。

たしかに売上1兆522億円の**52%がインキ事業**です。でも中身は本や新聞ではなく、**食品や日用品のパッケージに刷るインキ**が主力。パッケージは減っていません。そして**グループ163社のうち141社が海外**という、極端にグローバルな会社でもあります。

私は化学メーカーの生産技術者として12年働いています。この記事では決算短信と募集要項という一次資料だけを使って、「何で稼ぎ、どこで働くのか」を整理します。難易度や口コミは扱いません。

化学業界そのものが曖昧な人は先に「化学業界とは」(→化学業界とは)へ。10社の比較は→化学メーカー大手10社の違いへ。

一言でいうと|インキ・顔料・樹脂の3本柱を世界で回す会社

DICの創業は**1908年(明治41年)の川村インキ製造所**。1937年に会社として設立され、長く「大日本インキ化学工業」という社名でした。2008年に現在のDICになっています。

いまはインキだけでなく、有機顔料と合成樹脂まで持つ会社です。

項目数字(出典・基準日)
売上高1兆522億円(2025年12月期。前期比▲1.8%)
営業利益522億円(同。前期比+17.2%)
経常利益443億円(同。前期比+16.7%)
親会社株主に帰属する当期純利益324億円(同。前期比+51.8%)
売上高営業利益率5.0%
自己資本比率**37.0%**(2025年12月31日現在)
資本金966億円
従業員数連結20,884名/単体3,880名(2025年12月31日現在)
グループ会社数163社(国内22社・海外141社)(同)
本社東京都中央区日本橋
創業/設立1908年2月15日/1937年3月15日

就活生が押さえるべき性格は3つです。

  • **極端にグローバル**:グループ163社のうち**141社が海外**。連結20,884名に対し単体は3,880名で、社員の8割以上は海外・国内グループ会社にいます。M&Aで世界に広げてきた会社です
  • **自己資本比率37.0%はこのシリーズで最も低い**(→化学メーカー大手10社の違い)。買収で大きくなった会社の特徴で、借入が多い。信越化学の78.7%(→信越化学工業の企業研究)と比べると対照的です
  • **決算期は12月**。3月期の他社と数字を並べるときは期がずれます

事業の中身|3セグメントを売上と利益で見る

売上の半分はインキ
セグメント主な製品売上高セグメント利益
パッケージング&グラフィックグラビアインキ、オフセットインキ、新聞インキ、ジェットインキ、ポリスチレン5,497億円311億円
ファンクショナルプロダクツアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、PPSコンパウンド、工業用テープ2,868億円231億円
カラー&ディスプレイ有機顔料、ヘルスケア食品2,152億円50億円
合計(3事業の計592億円から全社費用72億円を引く)1兆522億円営業利益522億円

※ 出典:2025年12月期 決算短信。売上は外部顧客への売上高。セグメント利益は営業利益ベース。

読み方のポイント:

  • **インキが売上の52%、利益の53%**。ここが会社の柱です。ただし中身はグラビアインキ(食品などの軟包装向け)が中心で、新聞インキは一部です。**「紙の印刷が減る=DICが減る」ではない**、という点は理解しておいてください
  • **カラー&ディスプレイは売上2,152億円に対し利益50億円**(2.3%)。有機顔料の市況が厳しく、ここが立て直しの焦点です
  • **ファンクショナルプロダクツは利益率8.0%**(セグメント間を含む売上2,909億円に対し231億円)。エポキシ樹脂やPPSコンパウンドといった機能材料で、3つの中では収益性が高い
  • **全社費用は72億円**と小さめです。カネカ(→カネカの企業研究)の392億円と比べると、事業部の外に持つ研究費が少ない設計だと分かります

3年で最終赤字から立ち直った

3年で赤字から立ち直った

DICを見るときに知っておくべきなのが、**直近3年の動き**です。

年度売上高営業利益純利益
2023年度1兆387億円179億円**▲399億円**
2024年度1兆711億円445億円213億円
2025年度1兆522億円522億円324億円
  • **2023年度は399億円の最終赤字**でした。そこから2年で営業利益は約3倍、純利益は324億円の黒字まで戻しています
  • 売上はほぼ横ばい(1兆387億円→1兆522億円)。**売上を伸ばして直したのではなく、利益率を上げて直した**ということです。高付加価値品へのシフトとコスト管理が効いています
  • 自己資本比率も32.7%(2024年度末)から37.0%(2025年度末)へ改善しています

**就活の面接では、この「立て直しの途中」という現在地が語れると強い**です。伸びている会社の話をする学生は多いですが、「立て直しをどう続けるか」に関心を示す学生は少ない(→化学メーカーの面接で聞かれること)。

化学業界の川(→化学業界とは)で言えば、DICはナフサクラッカーを持たず、**樹脂や顔料を作って加工品(インキ・テープ)まで届ける中流〜川下**の会社です。

工場と研究所|どこで働くか

国内10工場、研究所は1つ

国内は**本社・2支店・10工場・研究所・美術館**という構成です。

拠点所在地
本社東京都中央区日本橋3-7-20
大阪支店大阪市中央区久太郎町/名古屋支店名古屋市中区錦
東京工場東京都板橋区坂下3-35-58(**登記上の本店**)
千葉工場千葉県市原市八幡海岸通12
鹿島工場茨城県神栖市東深芝18
埼玉工場埼玉県北足立郡伊奈町小室4472-1
館林工場群馬県館林市大島町
北陸工場石川県白山市湊町
小牧工場愛知県小牧市下末
四日市工場三重県四日市市霞1-5
滋賀工場滋賀県湖南市柑子袋373
堺工場大阪府高石市高砂1-3
総合研究所千葉県佐倉市坂戸631
DIC川村記念美術館千葉県佐倉市坂戸631(総合研究所と同じ敷地)

現役として補足すると、この配置の特徴は3つです。

1つは、**工場が10か所と多いこと**。単体3,880名という規模に対して工場が多いのは、インキ・顔料・樹脂と製品の種類が多く、それぞれ違う設備が要るためです。

2つめは、**関東に集中していること**。東京・千葉・茨城・埼玉・群馬で5工場。生活の拠点を関東に置く技術者が多くなります(→化学メーカーの選び方)。

3つめは、**研究所が1つで、美術館と同じ敷地にあること**。千葉県佐倉市の総合研究所とDIC川村記念美術館は同じ住所です。研究職の勤務地は基本的にここになります。

千葉工場と鹿島工場はコンビナート型です(→コンビナート地域で働くという選択)。

職種・初任給|募集要項を読む

項目内容
技術系の職種基礎・開発研究、応用・改良研究、分析・物性解析・計算化学・データサイエンス、知的財産 など
生産系の職種生産技術、生産プロセス開発、生産システム開発、製造、品質保証 など
事務系の職種営業・マーケティング、購買・物流、総務・人事 など
対象学科全学部全学科
初任給学部了 276,830円/修士了 301,830円/博士了 351,260円
賞与**年4回(4月・5月・10月・11月)**
勤務時間工場 8:30〜17:00/総合研究所・本社・支店 8:45〜17:15(休憩60分)
休日**年間休日126日**(2026年度)、年次有給休暇 初年度13日・次年度14日・最高20日
勤務地東京、千葉、埼玉、茨城、大阪、愛知、石川、三重、群馬、滋賀
諸手当住宅手当、家族手当、通勤手当、時間外手当 など

読み方:

公開資料の読み方|この会社を自分で追いかけるには

資料見るところ
決算短信・決算説明資料(IR)カラー&ディスプレイ(顔料)の利益が戻るか。自己資本比率が改善し続けるか
DICレポート(統合報告書)海外141社をどう束ねるか。事業ポートフォリオの入れ替え方針
会社概要の「業績等の推移」3年分の売上・営業利益・経常利益・純利益が並んでいます。この記事の図2はここから作りました

面接では「2023年度の最終赤字から2年で立て直しましたね」と言えると、資料を読んだ学生だと伝わります。そのうえで「顔料事業をどうするか」に触れられると、事業を分けて見ていることが伝わります(→化学メーカーの面接で聞かれること)。

どんな人に向くか

  • **海外と関わりたい人**:グループ163社のうち141社が海外。連結2万人のうち単体は3,880名です。海外グループ会社との仕事が日常になります
  • **製品の種類の多さを楽しめる人**:インキ、顔料、樹脂、テープ、PPSコンパウンド、ヘルスケア食品。1つを深く掘るより、幅を持ちたい人に合います
  • **関東で働きたい人**:10工場のうち5つが関東、研究所も千葉です(→化学メーカーの選び方

志望動機の③会社の層(→化学メーカーの志望動機の書き方)では、「立て直しの途中にある、極端にグローバルなインキ・顔料・樹脂の会社」という現在地を踏まえて語ると通りやすくなります。

この記事の使い方と注意

  • 数字は2025年12月期決算と、執筆時点の募集要項に基づきます(最終更新:2026年8月)
  • **この会社は12月決算**なので、3月期の他社と単純比較はできません
  • 国内の印刷インキ事業はDICグラフィックス(株)が担っており、本記事の拠点一覧はDIC本体のものです
  • 就職難易度・採用大学・口コミは扱いません。一次資料と現場の感覚だけを書いています

DICは1908年創業の旧・大日本インキ化学工業で、インキ・有機顔料・合成樹脂の3本柱を持ちます。売上1兆522億円の52%がインキ事業。グループ163社のうち141社が海外という極端にグローバルな会社で、2023年度の最終赤字から2年で立て直しました。国内10工場、研究所は千葉・佐倉。10社の比較は化学メーカー大手10社の違いへ。