積水化学工業は、就活生から見ると「どっちの会社なのか」が分かりにくい会社です。セキスイハイムの住宅メーカーなのか、それとも化学メーカーなのか。
決算を開くと、答えは**両方**です。売上1兆3,093億円のうち住宅が5,359億円で最大。ところが利益でいちばん稼ぐのは高機能プラスチックス(593億円)で、こちらは**売上の74%が海外**です。
私は化学メーカーの生産技術者として12年働いています。この記事では決算短信と募集要項という一次資料だけを使って、「何で稼ぎ、どこで働くのか」を整理します。難易度や口コミは扱いません。
化学業界そのものが曖昧な人は先に「化学業界とは」(→化学業界とは)へ。10社の比較は→化学メーカー大手10社の違いへ。
一言でいうと|日本の住宅と、世界の高機能材料を持つ会社
積水化学工業は1947年に設立されました。日本でプラスチック製品を早くから手がけた会社で、社名の「積水」は日本書紀の一節に由来します。
いまは**住宅(セキスイハイム)/環境・ライフライン/高機能プラスチックス/メディカル**の4事業を持つ、カンパニー制の会社です。
| 項目 | 数字(出典・基準日) |
|---|---|
| 売上高 | 1兆3,093億円(2026年3月期。前期比+0.9%。**過去最高**) |
| 営業利益 | 1,065億円(同。前期比▲1.4%) |
| 経常利益 | 1,172億円(同。前期比+5.6%。**過去最高**) |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 752億円(同。前期比▲8.2%) |
| 売上高営業利益率 | 8.1% |
| 自己資本比率 | 59.6%(2026年3月31日現在) |
| 資本金 | 1,000億円 |
| 連結従業員数 | 26,752名 |
| 本社 | 大阪(北区西天満)と東京(港区虎ノ門)の2本社 |
| 設立 | 1947年 |
就活生が押さえるべき性格は3つです。
- **カンパニー制**:住宅・環境ライフライン・高機能プラスチックスはそれぞれ「カンパニー」として独立して動いています。**どのカンパニーに入るかで、会社は別物**だと思ったほうがいい
- **売上は過去最高、利益は微減**:住宅の高付加価値化が進んだ一方、EV市場の伸び悩みと海外の検査キット需要減が効きました
- **当期純利益の減少は減損によるもの**:減損損失233億円を計上しており、うち150億円はフィルム型リチウムイオン電池事業(「その他」区分)です
事業の中身|4セグメントを売上と利益で見る

| セグメント | 主な製品・事業 | 売上高 | セグメント利益 |
|---|---|---|---|
| 住宅 | ユニット住宅(セキスイハイム)の製造・施工・販売、リフォーム、レジデンシャル | 5,359億円 | 372億円 |
| 高機能プラスチックス | 合わせガラス用中間膜、発泡ポリオレフィン、テープ、液晶用微粒子、感光性材料 | 4,517億円 | 593億円 |
| 環境・ライフライン | 塩化ビニル管・継手、ポリエチレン管、管きょ更生材料・工法、強化プラスチック複合管、建材、合成木材 | 2,251億円 | 232億円 |
| メディカル | 臨床検査薬、医薬品原薬・中間体 | 937億円 | 111億円 |
| その他 | フィルム型リチウムイオン電池ほか | 28億円 | ▲127億円 |
| 合計(セグメント計1,181億円。営業利益との差は全社費用など) | 1兆3,093億円 | 営業利益1,065億円 |
※ 出典:2026年3月期 決算短信。売上は外部顧客への売上高。セグメント利益は営業利益ベース。
読み方のポイント:
- **売上1位は住宅、利益1位は高機能プラスチックス**。住宅は売上5,359億円で利益372億円(利益率6.9%)、高機能プラは売上4,517億円で利益593億円(利益率13.0%)。売上の順位と利益の順位が入れ替わります
- 高機能プラスチックスの主力は**合わせガラス用中間膜**です。自動車のフロントガラスの2枚のガラスの間に挟む膜で、割れても破片が飛び散らないのはこの膜のおかげ。ヘッドアップディスプレイ用の中間膜も伸びています。**クラレ(→クラレの企業研究)のPVBと同じ土俵**の製品です
- **環境・ライフラインの営業利益は4期連続で過去最高**。塩ビ管や管路更生といった地味な事業ですが、老朽インフラの更新需要が追い風になっています
- 「その他」の▲127億円はフィルム型リチウムイオン電池事業の減損によるものです。**新規事業には失敗もある**、という現実がここに出ています
「売上の柱と利益の柱が違う」構造は旭化成(→旭化成の企業研究)とも似ています。ただし旭化成は住宅とヘルスケアの両方が利益を稼ぐのに対し、積水化学は**高機能プラという1つの化学事業が利益を引っ張っている**点が違います。
日本だけの住宅と、世界で戦う高機能プラ

この会社を理解する鍵は、**同じ社名の中に性格の違う事業が同居していること**です。売上の地域別内訳を並べると、はっきりします。
| 事業 | 日本の売上 | 海外の売上 | 日本の比率 |
|---|---|---|---|
| 住宅 | 5,346億円 | 14億円(アジアのみ) | 99.7% |
| 環境・ライフライン | 1,891億円 | 360億円 | 84% |
| メディカル | 488億円 | 449億円 | 52% |
| 高機能プラスチックス | 1,165億円 | 3,352億円 | 26% |
- **住宅はほぼ100%日本**。ユニット住宅は日本の住宅市場と工法に密着した事業です
- **高機能プラスチックスは海外が74%**。北米だけで1,181億円と、日本(1,165億円)を上回ります。欧州811億円、中国760億円と続きます
- 環境・ライフラインは国内が中心ですが、合成木材(FFU)のまくらぎが欧州で採用拡大しています
- メディカルは日本と海外がほぼ半々です
**つまり、住宅カンパニーに行けば日本の住宅市場が相手、高機能プラスチックスカンパニーに行けば世界が相手になります。** 同じ会社に入っても、見る景色がまったく違う。志望する段階でどちらに行きたいかを考えておくべきです(→化学メーカーの選び方)。
化学業界の川(→化学業界とは)で言えば、積水化学はナフサクラッカーを持たず、樹脂を買って加工する**中流から川下**の会社です。この点はダイセル(→ダイセルの企業研究)や東レ(→東レの企業研究)と同じ立ち位置です。
工場と研究所|どこで働くか

**積水化学工業(本体)の国内工場は5つだけ**です。住宅はセキスイハイム各社をはじめとするグループ会社が全国で担っているため、本体の工場一覧には住宅の工場が出てきません。
| 拠点 | 所在地 | カンパニー・内容 |
|---|---|---|
| 東京本社 | 東京都港区虎ノ門(オークラプレステージタワー) | 高機能プラスチックスの各事業部の営業所も同居 |
| 大阪本社 | 大阪市北区西天満(堂島関電ビル) | |
| 群馬工場 | 群馬県伊勢崎市境下渕名 | 環境・ライフラインカンパニー |
| 滋賀栗東工場 | 滋賀県栗東市野尻 | 環境・ライフラインカンパニー |
| 武蔵工場 | 埼玉県蓮田市大字黒浜 | 高機能プラスチックスカンパニー |
| 滋賀水口工場 | 滋賀県甲賀市水口町泉 | 高機能プラスチックスカンパニー。**中間膜事業部の営業所も同じ敷地** |
| 多賀工場 | 滋賀県犬上郡多賀町 | 高機能プラスチックスカンパニー |
| 先進技術研究所 | 茨城県つくば市和台 | R&Dセンター(全社の研究拠点) |
| 住宅技術研究所 | 茨城県つくば市和台 | 住宅カンパニー |
| 総合研究所 | 京都市南区上鳥羽 | 環境・ライフラインカンパニー |
| 開発研究所 | 大阪府三島郡島本町 | 高機能プラスチックスカンパニー |
現役として補足すると、この配置には特徴が2つあります。
1つは、**関東(群馬・埼玉・茨城)と関西(滋賀・京都・大阪)の2か所に集まっている**こと。ほかの化学メーカーのように全国のコンビナートに散らばってはいません。生活設計は立てやすいほうです(→化学メーカーの選び方)。
もう1つは、**滋賀県に3工場が集まっている**こと。栗東・水口・多賀で、高機能プラスチックスと環境・ライフラインの生産を担っています。技術系で製造に近い仕事をするなら、滋賀勤務は現実的な選択肢です。
ただし募集要項の勤務地は「日本全国・世界の各拠点、国内外関連会社に出向あり」となっています。**グループ会社への出向を含めると、行き先はもっと広い**という点は理解しておいてください。
職種・初任給|募集要項を読む
積水化学の採用は**2つのコースに分かれている**のが特徴です。
| コース | 考え方 | 初任給(月給) |
|---|---|---|
| ビジネスキャリアコース | 早い段階から幅広い経験を積み、経営を担う人材を目指す | 博士了 347,500円/修士了 312,000円/学部卒 295,000円 |
| エキスパートコース | 専門領域で実務力を高め、経営基盤を支える人材を目指す | 修士了 269,200円/学部卒・高専専攻科卒 257,800円/高専本科卒 246,400円 |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 採用実績(2026年入社) | ビジネスキャリアコース138名(事務系49名・技術系89名)/エキスパートコース8名(事務系1名・技術系7名) |
| 勤務時間 | 9:00〜17:30(事業所により異なる。フレックスタイムあり) |
| 休日 | 週休2日制、年間休日125日、夏季・年末年始休暇、年次有給休暇(初年度15日)、リフレッシュ休暇 |
| 勤務地 | 日本全国・世界の各拠点(国内外関連会社に出向あり) |
読み方:
- **同じ修士了でも、コースによって初任給が42,800円違います**(312,000円と269,200円)。転勤や職務範囲の広さが違う設計なので、額面だけでなく**何を引き受けるコースなのか**を採用担当に確認してください
- 採用の主力は**ビジネスキャリアコースの技術系89名**です。エキスパートコースは技術系7名と少数
- **年間休日125日はこのシリーズで最も多い水準**です(→化学メーカー大手10社の違い)
- 初任給(ビジネスキャリア修士了312,000円)は全産業平均(大学卒26.2万円、→化学メーカーの初任給と年収カーブ)を大きく上回ります
公開資料の読み方|この会社を自分で追いかけるには
| 資料 | 見るところ |
|---|---|
| 決算短信・決算説明資料(IR) | 高機能プラスチックスの利益率。住宅の受注棟数と棟単価。環境・ライフラインの過去最高更新が続くか |
| セグメント別データ・エリア別売上高(IR) | 事業ごとの地域別売上が時系列で見られます。この記事の図2はここから作りました |
| 中期経営計画・長期ビジョン(IR) | 新規事業(ペロブスカイト太陽電池など)にどれだけ投じるか |
面接では「売上1位は住宅ですが、利益1位は高機能プラスチックスですね」と言えると、決算を読んだ学生だと伝わります。そのうえで「自分は◯◯カンパニーで」と具体的に言えると、なお良い(→化学メーカーの面接で聞かれること)。
どんな人に向くか
- **世界を相手にしたい人**:高機能プラスチックスカンパニーは売上の74%が海外です。中間膜や液晶用微粒子で世界の自動車・電機メーカーと向き合います
- **生活に近いものを作りたい人**:住宅、水道管、検査薬。どれも暮らしに直結しています。「自分の作ったものが目に見える」ことを大事にする人に合います
- **関東か関西で働きたい人**:本体の拠点は関東と関西に集中しています。コンビナートの地方勤務が中心の会社とはここが違います(→化学メーカーの選び方)
志望動機の③会社の層(→化学メーカーの志望動機の書き方)では、「住宅と高機能プラという性格の違う2つを持つ会社の、どちらでどう貢献したいか」まで踏み込むと通りやすくなります。
この記事の使い方と注意
- 数字は2026年3月期決算と、2027年新卒採用の募集要項に基づきます(最終更新:2026年8月)
- **セグメント利益の合計(1,181億円)と連結営業利益(1,065億円)には差があります**。全社費用(報告セグメントに帰属しない一般管理費)などの調整によるものです
- 当期は減損損失233億円を計上しています(うちフィルム型リチウムイオン電池事業150億円)
- 就職難易度・採用大学・口コミは扱いません。一次資料と現場の感覚だけを書いています
積水化学工業は住宅・環境ライフライン・高機能プラスチックス・メディカルの4カンパニーを持つ会社です。売上1兆3,093億円のうち住宅が最大ですが、利益トップは高機能プラスチックス(593億円)で、こちらは売上の74%が海外。本体の工場は関東と関西に5つ。採用は2コース制で初任給が分かれます。10社の比較は化学メーカー大手10社の違いへ。
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