動画解説はこちら|YouTube

トクヤマの企業研究|セメントも化学も持つ会社を現役化学技術者が解説【2026年版】

トクヤマは「セメントの会社」と思われがちですが、決算を開くと違います。利益トップは電子先端材料の157億円。中身は多結晶シリコン——半導体シリコンウエハの原料です。

そしてセメントも、思われているほど薄利ではありません。セメント事業の営業利益率は14.3%。全社の10.6%を上回っています。

私は化学メーカーの生産技術者として12年働いています。この記事では決算短信と募集要項だけをもとに、「何で稼ぎ、どこで働くのか」を整理します。難易度や口コミは扱いません。

化学業界そのものが曖昧な人は先に「化学業界とは」(→化学業界とは)へ。29社の比較は→化学メーカー大手29社の違いへ。

一言でいうと|塩とセメントと半導体材料を持つ会社

トクヤマの創立は1918年(大正7年)2月16日。山口県周南市(旧・徳山市)で、塩から苛性ソーダを作る会社として始まりました。登記上の本店はいまも徳山製造所です。

そこから、塩化ビニル、セメント、多結晶シリコン、体外診断薬へと広げてきました。

項目数字(出典・基準日)
売上高3,495億円(2026年3月期。前期比+1.9%)
営業利益370億円(同。前期比+23.5%)
経常利益382億円(同。前期比+29.1%)
親会社株主に帰属する当期純利益222億円(同。前期比▲5.1%)
売上高営業利益率10.6%
資本金100億円(2026年3月31日現在)
従業員数連結6,390名/単独2,652名(同)
本店徳山製造所(山口県周南市)
東京本部東京都千代田区
創立1918年2月16日

就活生が押さえるべき性格は3つです。

  • 営業利益率10.6%はシリーズの上位。29社の中では7番目で、東ソー(9.4%)を上回ります(→化学メーカー大手29社の違い)
  • セメントを社内に持っている:同じ山口県のUBE(→UBEの企業研究)がセメント事業を連結の外に出したのと対照的です
  • 海外売上は26%:日本2,576億円、アジア681億円、その他237億円。国内が中心の会社です

事業の中身|5セグメントを売上と利益で見る

利益の柱は多結晶シリコン
セグメント主な製品売上高セグメント利益
化成品苛性ソーダ、ソーダ灰、塩化カルシウム、塩化ビニルモノマー、塩化ビニル樹脂、酸化プロピレン、塩素系溶剤1,061億円97億円
電子先端材料多結晶シリコン、乾式シリカ、四塩化珪素、窒化アルミニウム、電子工業用高純度イソプロピルアルコール、フォトレジスト用現像液909億円157億円
セメントセメント、生コンクリート、セメント系固化材、資源リサイクル661億円95億円
ライフサイエンス医療診断システム、体外診断用医薬品、歯科器材、医薬品原薬・中間体、プラスチックレンズ関連材料494億円78億円
その他海外販売会社、運送業、不動産業310億円20億円
環境事業イオン交換膜、廃石膏ボードリサイクル59億円7億円
合計(基礎研究開発費など▲84億円の調整を含む)3,495億円営業利益370億円

※ 出典:2026年3月期 決算短信。売上は外部顧客への売上高。セグメント利益は営業利益ベース。

読み方のポイント:

  • 利益トップは電子先端材料の157億円。主力の多結晶シリコンは、信越化学(→信越化学工業の企業研究)が作る半導体シリコンウエハの、さらに手前の原料です。半導体の川の一番上流にいます
  • 化成品は売上1,061億円で利益97億円(9.1%)。苛性ソーダと塩ビは市況品で、電力価格の影響も大きい事業です
  • ライフサイエンスが伸びている:2025年10月にJSRの体外診断用医薬品事業を買収し、トクヤマライフサイエンスとしています。中期経営計画で「電子」「健康」「環境」を成長分野に置いており、健康分野の中核にする方針です
  • セメントの利益95億円は化成品とほぼ同じ。次の章で詳しく見ます

「セメントは儲からない」は思い込み

セメントもちゃんと稼ぐ

セグメントごとの営業利益率を並べると、意外なことが分かります。利益率の分母は、セグメント間の取引を含むセグメント売上高です(上の表の外部顧客への売上高で割ると、少しずれます)。

セグメント営業利益率
電子先端材料17.1%
ライフサイエンス15.9%
セメント14.3%
環境事業10.7%
化成品9.1%
その他4.9%
(全社)10.6%
  • セメントの営業利益率14.3%は、化成品(9.1%)より高い。セメントは装置産業で、需要は国内の建設に左右されますが、この会社では資源リサイクル(廃棄物を燃料や原料に使う)と組み合わせて収益性を確保しています
  • 電子先端材料の17.1%が最も高い。多結晶シリコンは高純度が要求され、作れる会社が世界で限られます
  • 化成品が一番低いというのは、化学業界の「川上は薄利」という原則どおりです(→化学メーカー大手29社の違い)

就活生への含意は1つ。「セメント事業がある会社は古い」という見方は、数字で確かめると崩れます。 事業の新旧ではなく、その事業でどれだけ稼げているかを見てください(→化学メーカーの選び方)。

化学業界の川(→化学業界とは)で言えば、トクヤマは塩と石灰石という無機の川上から始まり、多結晶シリコンや診断薬という川下まで持つ会社です。信越化学(→信越化学工業の企業研究)と出発点がよく似ています。

工場と研究所|どこで働くか

本店は山口・徳山
拠点所在地
徳山製造所【本店】(創業の地。主力の生産拠点)山口県周南市
徳山研究所(徳山製造所と同じ住所)山口県周南市
先進技術事業化センター山口県柳井市
鹿島工場茨城県神栖市
つくば研究所茨城県つくば市
つくば第二研究所茨城県つくば市
東京本部東京都千代田区
大阪オフィス大阪市北区
支店・営業所広島、高松、福岡、名古屋、周南、セメント東京販売部

現役として補足すると、この会社の拠点配置は徳山(山口県周南市)への一極集中が特徴です。本店・製造所・研究所が同じ住所(周南市御影町)にあります。

周南市は東ソー(→東ソーの企業研究)の南陽事業所と同じ地域です。周南コンビナートには両社の巨大な設備が並んでいます。技術系で入ると、この地域での勤務が現実的な選択肢になります(→コンビナート地域で働くという選択、→化学メーカーの選び方)。

研究はつくば(茨城)にも2つあり、東西2か所体制です。研究職志望なら、どちらの研究所で何をしているかを分けて理解しておくとよい(→院卒で研究開発職に就く)。

職種・初任給|募集要項を読む

項目内容
技術系の職種研究開発、製造技術、生産技術、プロセス技術、エンジニアリング、電気計装
事務系の職種営業、営業企画、経理、財務、購買、人事、総務、広報、法務、経営企画
募集分野化学系、化学工学系、物理系、薬学系、機械系、電気・電子系、情報系、土木・建築系 ほか
採用予定数(2025年度)技術系34名/事務系10名
初任給(2025年度実績・徳山拠点)博士 371,900円/修士 338,500円/学士 320,100円/高専 313,100円(いずれも「ライフサポート手当」55,000円を含んだ額)
平均年間給与(有報・単体)7,940,277円(平均年齢41.45歳・平均勤続16.82年・単体2,652名、2026年3月31日現在)
賞与年2回(6月・12月)/昇給 年1回(4月)
勤務時間本部 9:00〜17:45/工場 8:30〜17:15
休日年間休日125日
勤務地東京、つくば、山口(徳山)、大阪、広島、高松、福岡、鹿島 ほか

※ 平均年間給与は有価証券報告書(2026年06月19日提出、EDINET S100YDQ3)の「従業員の状況」による。単体の全従業員の平均で、賞与・基準外賃金を含む。新卒の初任給とは別の数字。29社の並びは→化学メーカー29社の平均年収ランキングへ。

読み方:

  • 初任給に手当55,000円が含まれている点は必ず確認してください。修士338,500円は一見29社で最高ですが、手当を除くと283,500円相当になります。他社の「基本給ベースの初任給」とそのまま比べられません(→化学メーカー大手29社の違い、→化学メーカーの初任給と年収カーブ)
  • つくば・東京の拠点では、これに加えて居住地手当(つくば20,000円/東京50,000円)が出ます
  • 募集分野に土木・建築系が入っているのはセメント事業を持つ会社ならではです
  • 年間休日125日は多いほうです(→化学メーカー大手29社の違い)

公開資料の読み方|この会社を自分で追いかけるには

資料見るところ
決算短信・決算説明資料(IR)電子先端材料の利益率が維持されるか。ライフサイエンスが買収後にどう伸びるか
中期経営計画(IR)「電子」「健康」「環境」を成長事業と位置づけ、2030年度に成長事業の売上高比率60%以上を目指す方針が書かれています
採用サイト初任給の内訳(手当込みかどうか)が明示されています。ここを読み違えないこと

面接では「利益トップは電子先端材料で、セメントも14.3%出ていますね」と言えると、決算を読んだ学生だと伝わります(→化学メーカーの面接で聞かれること)。

どんな人に向くか

  • 半導体の一番上流に関わりたい人:多結晶シリコンは半導体ウエハの原料です。作れる会社は世界で限られます
  • 無機化学をやってきた人:塩、石灰石、セメント、シリコン。有機よりも無機・材料系の知識が生きます
  • 山口で腰を据えたい人:本店・製造所・研究所が徳山にまとまっています(→化学メーカーの選び方)

志望動機の③会社の層(→化学メーカーの志望動機の書き方)では、「塩とセメントから始まり、半導体材料と診断薬に伸ばした会社」という理解を軸に語ると通りやすくなります。

この記事の使い方と注意

  • 数字は2026年3月期決算と、執筆時点の募集要項に基づきます(最終更新:2026年8月)
  • 初任給は「ライフサポート手当55,000円込み」の額です。他社と比べるときは注意してください
  • 2025年10月にJSRの体外診断事業を取得しており、ライフサイエンスの数字にはその影響が入っています
  • 就職難易度・採用大学・口コミは扱いません。決算短信・有価証券報告書・募集要項と現場の感覚だけを書いています

トクヤマは1918年創立、山口県徳山で塩から始まった会社です。売上3,495億円、営業利益率10.6%。利益トップは多結晶シリコンなどの電子先端材料157億円で、セメントも利益率14.3%を出しています。本店・製造所・研究所は徳山に集中。初任給は手当55,000円込みの表示です。29社の比較は化学メーカー大手29社の違いへ。

化学プラントニュース―週報と事故速報をわかりやすく紹介するnoteマガジン PLANT NEWS ON NOTE 化学プラントニュース 化学・石油プラントの重要ニュースを、毎週の週報と事故速報でお届けします。現場で押さえたい動きを、わかりやすく整理します。 noteで最新ニュースを読む