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日油の企業研究|油脂から爆薬まで作る会社を現役化学技術者が解説【2026年版】

日油は、社名のとおり油脂の化学から始まった会社です。ところが決算を開くと、産業用爆薬・宇宙関連製品・防衛関連製品という事業が出てきます。種子島には、ロケットの固体推進薬を作る事業所があります。

そして数字がいい。営業利益率18.4%は、このシリーズで信越化学(24.7%)・日産化学(22.7%)に次ぐ3位です。

さらに当期は、化薬事業の売上が1年で59%増えました。防衛関連の需要が急に立ち上がっています。

私は化学メーカーの生産技術者として12年働いています。この記事では決算短信と募集要項だけをもとに、「何で稼ぎ、どこで働くのか」を整理します。難易度や口コミは扱いません。

化学業界そのものが曖昧な人は先に「化学業界とは」(→化学業界とは)へ。29社の比較は→化学メーカー大手29社の違いへ。

一言でいうと|油脂の化学から3方向へ広げた会社

日油は、脂肪酸・界面活性剤といった油脂の化学を土台に、機能化学品・医薬医療健康・化薬という3事業を持つ会社です。本社は東京・恵比寿。

項目数字(出典・基準日)
売上高2,580億円(2026年3月期。前期比+8.2%)
営業利益474億円(同。前期比+4.6%)
経常利益504億円(同。前期比+8.1%)
親会社株主に帰属する当期純利益406億円(同。前期比+11.1%)
売上高営業利益率18.4%
自己資本利益率(ROE)14.1%
資本金177億円(2026年3月31日現在)
従業員数連結4,155名/単体1,976名(同)
本社東京都渋谷区

就活生が押さえるべき性格は3つです。

  • 営業利益率18.4%はシリーズ3位。信越化学(24.7%)・日産化学(22.7%)に次ぎます(→化学メーカー大手29社の違い)。売上2,580億円と規模は小さめですが、営業利益474億円は東洋紡(売上4,216億円、営業利益279億円、→東洋紡の企業研究)を上回ります
  • 海外売上は28%:日本1,863億円、アジア372億円、欧州172億円、その他173億円。国内が中心の会社です
  • 防衛・宇宙という事業を持つ:化学メーカーの中では珍しい領域です。志望する前に、自分がこの分野をどう考えるかは整理しておいたほうがいい

事業の中身|3セグメントを売上と利益で見る

利益率18.4%の油脂の会社
セグメント主な製品売上高セグメント利益利益率
機能化学品脂肪酸、脂肪酸誘導体、界面活性剤、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド誘導体、有機過酸化物、石油化学品、機能性ポリマー、電子材料、特殊防錆処理剤1,458億円268億円17.9%
化薬産業用爆薬類、宇宙関連製品、防衛関連製品、機能製品617億円80億円12.9%
医薬・医療・健康食用加工油脂・食品機能材、健康関連製品、生体適合性素材、DDS医薬用製剤原料499億円158億円31.0%
その他運送、不動産販売・管理6億円4億円—
合計(全社費用など▲37億円の調整を含む)2,580億円営業利益474億円18.4%

※ 出典:2026年3月期 決算短信。売上は外部顧客への売上高。利益率はセグメント間を含む売上に対する比率。

読み方のポイント:

  • 利益率が最も高いのは医薬・医療・健康の31.0%。売上499億円で利益158億円。中心はDDS(ドラッグデリバリーシステム)用の製剤原料で、mRNAワクチンなどに使われる高純度のポリエチレングリコール(PEG)を作っています。作れる会社が世界で限られる材料です
  • 機能化学品が売上の56%、利益の56%。界面活性剤と脂肪酸誘導体が土台です
  • 化薬は売上617億円で利益80億円。次の章で詳しく見ます

化薬事業に何が起きているか

化薬が急に大きくなった
項目前期(2025年3月期)当期(2026年3月期)変化
売上高388億円617億円+59%
営業利益31億円80億円2.6倍
設備投資37億円257億円約7倍

※ 設備投資は「有形固定資産及び無形固定資産の増加額」。決算短信には「早期装備化に係る防衛関連設備への投資」と注記されています。

  • 設備投資が37億円から257億円へ、約7倍。全社の設備投資344億円のうち、実に4分の3が化薬事業です。決算短信には「早期装備化に係る防衛関連設備」という記載があり、防衛関連の生産能力を急いで立ち上げていることが読み取れます
  • この防衛関連設備の取引は特殊な会計処理(一定期間にわたって収益を認識する)なので、化薬事業の数字を前期と単純に比べるときは注意が要ります
  • 種子島事業所(鹿児島県)では、宇宙ロケット用の固体推進薬を作っています。愛知の武豊工場も化薬の拠点です

就活生への含意は2つ。

1つは、この分野は今後も投資が続く可能性が高いこと。技術者の採用も増える方向に働きます。

もう1つは、防衛・宇宙という分野に自分がどう向き合うかを、志望前に考えておくべきだということです。これは良し悪しの話ではなく、知って選ぶかどうかの話です(→化学メーカーの選び方)。

化学業界の川(→化学業界とは)で言えば、日油はナフサクラッカーを持たず、油脂と有機合成から機能材料・医薬原料・火薬まで作る川下の会社です。ADEKA(→ADEKAの企業研究)と技術の土台がよく似ています。

工場と研究所|どこで働くか

工場は5か所、種子島にも
区分拠点
本社東京都渋谷区
支社・支店大阪支社、名古屋支店、福岡支店、札幌営業所
工場・事業所尼崎工場(兵庫)/川崎事業所:千鳥工場・大師工場・DDS工場(神奈川)/大分事業所:大分工場・LS大分工場/愛知事業所:武豊工場・衣浦工場・LS愛知工場/種子島事業所(鹿児島)
研究所ヘルスサイエンス研究所、マテリアルサイエンス研究所、尼崎研究所、千鳥研究所、衣浦研究所、機能食品研究所、ライフサイエンス研究所、先端技術研究所(茨城・つくば)

現役として補足すると、この会社の拠点には特徴が2つあります。

1つは、研究所が工場のそばにあること。千鳥研究所は川崎の千鳥工場、衣浦研究所は愛知の衣浦工場、尼崎研究所は尼崎工場。作る場所と考える場所が近い設計です(→院卒で研究開発職に就く)。

もう1つは、種子島事業所。鹿児島県の離島で、宇宙ロケット用の固体推進薬を作っています。化学メーカーの拠点としては日本でも特異です。

DDS工場(川崎)も特徴的で、医薬用製剤原料の専用工場です。医薬品の原料は品質要求が厳しく、専用の設備と管理が要ります。

職種・初任給|募集要項を読む

項目内容
募集職種研究開発職/技術職(エンジニアリング部門、製造部門、品質保証部門)/スタッフ職・営業職
初任給(2026年度)博士了 326,800円/修士了 311,500円/大学卒 295,800円
平均年間給与(有報・単体)8,437,958円(平均年齢42.9歳・平均勤続17.5年・単体1,976名、2026年3月31日現在)
賞与年2回(6月・12月)/賃金改定 年1回
諸手当通勤手当、住宅手当、各種勤務手当
勤務時間本社・支社・支店・営業所 9:00〜17:30/工場・研究所 8:30〜17:00(フレックスタイム制度あり)
勤務地本社および全国の各事業所
応募資格国内外の大学学部・大学院修士課程・博士課程、または高等専門学校の卒業・修了予定者

※ 平均年間給与は有価証券報告書(2026年06月25日提出、EDINET S100YI3F)の「従業員の状況」による。単体の全従業員の平均で、賞与・基準外賃金を含む。新卒の初任給とは別の数字。29社の並びは→化学メーカー29社の平均年収ランキングへ。

読み方:

公開資料の読み方|この会社を自分で追いかけるには

資料見るところ
決算短信のセグメント注記化薬事業の設備投資額と「早期装備化」の注記。ここに会社の今が出ています
決算短信・業績説明会資料(IR)医薬・医療・健康の利益率31%が続くか。機能化学品が回復するか
中期経営計画(IR)DDSと化薬をどこまで伸ばす方針か

面接では「化薬の設備投資が37億から257億に増えていますね」と言えると、注記まで読んだ学生だと伝わります(→化学メーカーの面接で聞かれること)。

どんな人に向くか

  • 有機合成と界面化学をやってきた人:脂肪酸誘導体・界面活性剤がこの会社の土台です
  • 医薬原料に関わりたい人:DDS用のPEGは、作れる会社が世界で限られる材料です。医薬・医療・健康の利益率31%はここから来ています
  • 宇宙・防衛に関心がある人:種子島の固体推進薬、防衛関連製品。化学メーカーの中では例外的な領域です

志望動機の③会社の層(→化学メーカーの志望動機の書き方)では、「油脂の化学を土台に、DDSと火薬という両極端まで広げた会社」という理解を軸に語ると、他社と差がつきます。

この記事の使い方と注意

  • 数字は2026年3月期決算と、執筆時点の募集要項に基づきます(最終更新:2026年8月)。資本金・従業員数は2026年3月31日現在の値です
  • 化薬事業には、早期装備化に係る防衛関連設備の特殊な会計処理が含まれます。前期との比較はこの点を踏まえて読んでください
  • 就職難易度・採用大学・口コミは扱いません。決算短信・有価証券報告書・募集要項と現場の感覚だけを書いています

日油は油脂の化学を土台に、機能化学品・医薬医療健康・化薬の3事業を持つ会社です。売上2,580億円に対し営業利益474億円、営業利益率18.4%はシリーズ3位。利益率が最も高いのはDDS用製剤原料などの医薬・医療・健康で31.0%。化薬は1年で売上59%増、設備投資は約7倍になりました。29社の比較は化学メーカー大手29社の違いへ。

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