住友化学は、就活生が「総合化学」を調べ始めると最初に出会う会社の一つです。でも採用ページを読んでも「結局、何で稼いでいて、自分はどこで働くことになるのか」は見えにくい。
私は化学メーカーの生産技術者として12年働いています。この企業研究シリーズでは、就活サイトが並べる難易度や口コミではなく、決算と募集要項という公開資料から「事業の中身・工場の場所・職種」を読み解いて、現場の感覚で翻訳します。数字はすべて年度と出典を明記し、年1回更新します。
住友化学を知る前に化学業界そのものが曖昧な人は、先に「化学業界とは」(→化学業界とは)を読んでください。
一言でいうと|石化から農薬・医薬・電子材料まで持つ総合化学
住友化学は、1913年に愛媛県新居浜で創業した総合化学メーカーです(別子銅山の製錬で出る亜硫酸ガスを肥料にする事業が始まり)。いまは石油化学から、ディスプレイや半導体の材料、農薬、飼料添加物、医薬品まで手がけています。
| 項目 | 数字(出典・基準日) |
|---|---|
| 売上収益 | 2兆3,285億円(2026年3月期。前期比▲10.7%) |
| コア営業利益 | 2,084億円(同。前期比+48.3%) |
| 海外売上比率 | 71.0%(同) |
| 従業員数 | 連結27,491名・単体6,465名(2026年3月31日現在) |
| 本社 | 東京(日本橋)・大阪(北浜)の2本社 |
| 創業 | 1913年 |
就活生が押さえるべき性格は3つです。
- 事業の幅がとても広い:「化学」の中に石化・電子材料・農薬・医薬が同居している。配属の幅が広いということ
- 海外売上が7割:製品も工場も海外にある。英語や海外勤務に関心がある人には向く
- いま変革期:売上が1割減っているのに利益が5割増えているのは、石油化学の縮小・再編と、医薬・電子材料での稼ぎ方の転換が同時に進んでいるから(→H2-2)
事業の中身|4部門+住友ファーマを売上で見る

| 部門(セグメント) | 主な製品 | 売上収益 | コア営業利益 |
|---|---|---|---|
| エッセンシャル&グリーンマテリアルズ | 石油化学(ポリエチレンなど)、プロピレンオキサイド、メタクリル樹脂、アルミナ、硫酸・硝酸 | 6,788億円 | 144億円 |
| アグロ&ライフソリューション | 農薬(殺虫剤・除草剤・殺菌剤)、飼料添加物メチオニン、家庭用殺虫剤、マラリア対策の蚊帳 | 5,742億円 | 530億円 |
| ICT&モビリティソリューション | 偏光フィルム、フォトレジスト、高純度アルミナ、電池セパレータ、化合物半導体 | 5,193億円 | 563億円 |
| アドバンストメディカルソリューション | 再生・細胞医薬などの先端医療 | 586億円 | 28億円 |
| 住友ファーマ | 医薬品(連結子会社) | 4,519億円 | 1,084億円 |
| その他 | — | 458億円 | 44億円 |
| 合計 | 2兆3,285億円 | 2,084億円 |
※ 出典:住友化学「2026年3月期 連結決算概要」。全社費用等を含む合計。
読み方のポイント:
- 売上のいちばん大きい塊は石油化学などの「エッセンシャル&グリーンマテリアルズ」。ただし前年から2,200億円減り、利益は小さい。ここが再編の対象です
- 利益の柱は医薬(住友ファーマ)、ICT(電子材料)、農薬。売上は石化より小さいのに、利益はこちらが大きい
- つまり住友化学は「大きな石化で売上を作り、電子材料・農薬・医薬で利益を出す」構造から、「利益の出る領域に重心を移す」途中にある会社です
化学業界全体の「汎用品の再編と機能性材料への重心移動」(→化学業界とは)が、この1社の決算にそのまま表れています。
川のどこにいるか|川上から川下まで一貫

化学業界を川上(基礎化学品)→中流(素材)→川下(機能性材料・最終用途)で見ると(→化学業界とは、→化学メーカーの選び方)、住友化学は全部に足がかかっています。
- 川上〜中流:エッセンシャル&グリーンマテリアルズ(石化・樹脂・無機薬品)。コンビナートの大型プラント。オペレーター・生産技術の大所帯
- 川下:ICT(偏光フィルム・フォトレジスト)、農薬、医薬。多品種・高付加価値。研究と製造の距離が近い
就活生にとってこれが意味するのは、「同じ会社に入っても、配属される部門で仕事の景色が全然違う」ということです。巨大装置の安定運転をやりたいのか、クリーンルームで電子材料を作りたいのか、農薬の合成プロセスを作りたいのか——志望動機を書く前に、どの川にいたいかを決めておくと強い(→化学メーカーの志望動機の書き方)。
工場と研究所|どこで働くか

国内の工場は9か所。北から並べます(所在地・生産品目は公式の事業所ページ・工場見学ページによる)。
| 工場 | 所在地 | 主な生産品目・特徴 |
|---|---|---|
| 三沢工場 | 青森県三沢市 | 農薬など(アグロ&ライフの拠点) |
| 茨城工場 | 茨城県日立市 | (生産品目は公式ページで確認) |
| 千葉工場 | 千葉県市原市 | ポリエチレン、プロピレンオキサイド、アセトアルデヒド、レゾルシン。京葉コンビナートの石化拠点 |
| 大阪工場 | 大阪市此花区 | 半導体用フォトレジスト、触媒。研究所と一体の臨海拠点 |
| 岐阜工場 | 岐阜県安八郡安八町 | (生産品目は公式ページで確認) |
| 岡山工場 | 岡山県倉敷市 | (生産品目は公式ページで確認) |
| 愛媛工場 | 愛媛県新居浜市 | アクリロニトリル、アニリン、メチオニン、肥料、MMAモノマー、硫酸・硝酸。創業の地にある最大級の拠点 |
| 大江工場 | 愛媛県新居浜市 | 偏光フィルム、リチウムイオン電池セパレータ。1958年に日本で初めてエチレンを生産した場所 |
| 大分工場 | 大分県大分市 | 農薬(除草剤・殺虫剤)、医薬中間体。1939年操業 |
研究所は11か所(工業化技術研究所、先進基盤技術研究所、各事業の研究所、生産安全基盤センターなど)。大阪のように工場と研究所が同じ敷地にある拠点もあります。
現役として一つ補足すると、愛媛(新居浜)は住友グループ発祥の地で、工場群が市と一体になった典型的な「企業城下町」、千葉と大阪は臨海コンビナート型です。どちらの暮らしになるかは配属次第(→立地で暮らしがどう変わるかは化学メーカーの選び方、→コンビナートで働く コンビナート地域で働くという選択)。
職種・初任給・勤務地|募集要項を読む
新卒採用サイトの募集要項(2026年度)から、技術系に関わる部分を抜き出します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 技術系の職種 | 基礎研究、製品開発、プロセス開発、生産技術、プラントエンジニアリング、品質管理・品質保証、知的財産、DX推進など |
| 採用人数(2026年度) | 技術系72名、事務系20名 |
| 初任給(2026年7月1日時点) | 学部卒 289,600円/修士了 312,600円/博士了 364,200円 |
| 勤務地 | 青森、茨城、東京、千葉、大阪、兵庫、愛媛、大分など |
| 勤務時間 | フレックスタイム制(コアタイムなし、標準7時間50分) |
| 休日 | 完全週休2日制(年間休日124日)、年間有給休暇20日 |
| 住まい | 寮(個室)・社宅を整備 |
読み方:
- 「プロセス開発」「生産技術」「プラントエンジニアリング」が別々に並んでいるのは、事業の幅が広く工場が多い会社らしい分け方。職種の中身が曖昧なら職種図鑑(→化学メーカーの職種図鑑)で
- 初任給は全産業平均(大学卒26.2万円、→化学メーカーの初任給と年収カーブ)より高め。修士と学部の差が2.3万円あるのも、研究開発の比重が大きい会社の特徴
- 勤務地の一覧は、そのまま上の工場一覧です。志望する部門と勤務地はセットで考える
オペレーター(高卒・高専卒の現場採用)は工場ごとの採用になることが多く、新卒サイトの技術系総合職とは別枠です。高卒・高専の人は学校の求人票と各工場の採用情報を見てください(→高卒・高専卒で化学プラントに就職する)。
公開資料の読み方|この会社を自分で追いかけるには
企業研究は、この記事を読んで終わりにせず、自分で一次資料を見られるようになるのが目標です。住友化学で見るべきものは3つ。
| 資料 | 見るところ |
|---|---|
| 決算概要・決算説明資料(IR) | セグメント別の売上と利益。石化(E&GM)が縮み、医薬・ICT・農薬が稼ぐ構造が数字で追える |
| 統合報告書(IR) | どこに投資するか、石化をどう再編するか、という会社の方針。数年分を並べると重心の移動が見える |
| 新卒採用サイトの募集要項・社員紹介 | 職種の定義、勤務地、初任給。面接の逆質問の材料にもなる(→化学メーカーの面接で聞かれること) |
面接で「御社の決算を見て、○○部門の利益が伸びているのを知り…」と言える学生は多くありません。この記事の表を自分の言葉で言い直せるだけで、業界理解の層(→化学メーカーの面接で聞かれること)で一歩抜けます。
どんな人に向くか
公開資料と現場の感覚から、住友化学が向くのはこんな人です。
- 配属の幅を受け入れられる人:石化・電子材料・農薬・医薬のどこに行っても面白がれるか。逆に「この製品だけやりたい」人は専業メーカーのほうが合う(→化学メーカーの選び方)
- 海外に関心がある人:売上の7割が海外。海外工場・海外顧客と関わる機会が多い
- 変化の時期に入りたい人:石化の再編と利益構造の転換が同時進行。安定だけを求める人より、変える側に回りたい人向き(→業界の今は化学業界とは、→将来性は化学業界に将来性はあるか)
志望動機の型(業界→職種→会社)で言えば、③会社の層は「事業の幅」「海外比率」「変革期」のどれかを自分の経験と結びつけるのが王道です(→化学メーカーの志望動機の書き方)。
この記事の使い方と注意
- 数字は2026年3月期決算(2026年5月発表)と2026年度の募集要項に基づきます。次の決算・募集要項が出たら更新します(最終更新:2026年8月)
- 就職難易度・採用大学・口コミは扱いません。知りたい人は就活サイトで。ここでは一次資料と現場の感覚だけを書きます
- 企業研究シリーズの他の会社と並べて読むと、タイプの違いが分かります(→企業研究カテゴリ)
住友化学は、石油化学で売上を作り、電子材料・農薬・医薬で利益を出す総合化学大手で、いま重心を利益の出る領域へ移している途中です。国内9工場と11研究所、技術系72名採用・初任給は平均より高め。配属の幅と海外、変革期を面白がれる人に向く会社です。業界全体は化学業界とは、会社の選び方は化学メーカーの選び方へ。
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