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計装を独学するなら、最初の1冊は『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』です。計器・調節弁・制御・DCS・保守までを1冊で見渡せ、現場の事例が多く入っています。
2冊目は、順番ではなく今の困りごとで選びます。計器のトラブルなら『フィールド機器・虎の巻』、調節弁なら『工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック』、安全計装やアラームなら『プロセス安全の基礎』です。
この記事では、それぞれの本を「誰が・どの段階で・何を調べるときに読むか」で紹介し、読むときの注意と、本の次に開く社内の資料も案内します。
この記事の結論
- 最初の1冊は 『やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』。配属1〜3年目の製造部員や、計装が専門でない若手エンジニアの入口
- 伝送器・流量計の指示がおかしいときは 『フィールド機器・虎の巻』。設置の注意とトラブル事例が中心
- 調節弁の選定・サイジング・ポジショナ・保全は 『工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック』。巻頭の正誤表を先に見る
- 安全計装・インターロック・アラームは 『プロセス安全の基礎』と『若い技術者のためのプロセス安全入門』
- 伝達関数やボード線図まで進むなら、電験三種の機械の教科書の自動制御の章から入る
- 古い便覧の数値や規格は、発行年と単位を確かめ、現行の資料で裏を取る
1. 読む順番の地図
本は3つの段階で考えると選びやすくなります。

| 段階 | 本 | 誰が | 何を調べるとき |
| ① 最初の1冊 | やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎 | 配属1〜3年目、計装が専門でない若手 | 計装の全体像、計器の原理、PID、DCS、保守 |
| ② 2冊目 | フィールド機器・虎の巻 | 計器の担当、流量計のトラブルに当たる人 | 差圧・圧力伝送器、電磁流量計、渦流量計の設置とトラブル |
| ② 2冊目 | 工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック | 調節弁を選ぶ・直す人 | Cv 値とサイジング、流量特性、操作器、ポジショナ、保全 |
| ② 2冊目 | プロセス安全の基礎/若い技術者のためのプロセス安全入門 | 安全計装・アラームに関わる人 | 独立防護層、インターロック、アラーム管理、SIL |
| ② 2冊目 | 高圧ガス保安技術 | 高圧ガスの資格を目指す人 | 計測機器と計装の章 |
| ③ 深く | 電験三種 機械の教科書(自動制御) | 制御理論を学びたい人 | ブロック線図、伝達関数、ボード線図 |
| ③ 深く | 化学装置便覧、化学プラント建設技術 | 設計・工事の担当 | PID の調整則の表、計装工事の方法 |
2. 最初の1冊|やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎
計装メーカーの技術者が書いた入門書です。はしがきで著者は、制御理論やプロセス計装の詳細は他の本に譲り、現場でのシステム設計・機器選定・改善・保守に役立つノウハウに主眼を置いたと書いています。2003 年の初版から版を重ねています。
内容は、計装の基本構成と伝送信号、温度・圧力・流量・レベル・分析計の検出部、調節弁などの操作端、調節計と DCS、PID とカスケードなどの制御動作、信頼性・安全、応用例、保守まで、計装の全範囲にわたります。各所に【解説】として現場の経験や事例が入っていて、ここが一番役に立ちます。
- 誰が:配属1〜3年目の製造部員、計装が専門でない生産技術・設備・プロセスの若手エンジニア
- どの段階で:配属直後から。通読しなくてよい
- 何を調べるとき:画面の数字がどこで測られているか、調節弁がなぜその向きに動くか、PID の調整の手順、有寿命部品の交換年数(年数の表はDCS の保守と更新にもあります)
このブログの計装の記事も、この本の該当章から入るように書いています。まず 計装とは何かで全体の形をつかみ、本で深めるのがおすすめです。
3. 計器のトラブルに困ったら|フィールド機器・虎の巻
計装メーカーの技術者が、現場で数多く使われる 差圧・圧力伝送器、電磁流量計、渦流量計 の3種類に絞って書いたノウハウ集です。発刊の言葉には、原理原則よりも設計上の注意、選定基準、設置上の注意、アプリケーション事例、トラブル事例を多く盛り込み、「現場でのトラブルなどで困ったとき、本書をひもとけばヒントが得られる」ように作ったとあります。関連する法規や規格も巻末にまとめられています。
- 誰が:計器の保全担当、流量計・圧力計のトラブルに当たる若手エンジニア
- どの段階で:1冊目を読んで、実際に計器の不具合に出会ったとき
- 何を調べるとき:導圧管の勾配や凍結、ダイアフラムシール、電磁流量計の電極付着や気泡、渦流量計の脈動
新刊書店では見つけにくい本です。社内の図書室や計装担当の書棚を探してみてください。関連する記事は 導圧管の正しい引き回し、電磁流量計、渦流量計、流量計のトラブル事例です。
4. 調節弁を選ぶ・直す|工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック
調節弁の専門書です。調節弁の構造と種類、固有流量特性と有効流量特性、動特性、Cv 値の定義とサイジング(IEC 60534 の式)、騒音計算、圧力・温度定格と接続、操作器の出力と締切り差圧、材料、グランドパッキンとガスケット、バルブポジショナ、付属機器、関連法規と規格、トラブルと対策と保全管理、調節弁の仕様決定までを扱います。
- 誰が:調節弁の選定・更新・保全を担当する若手エンジニア、計装の保全担当
- どの段階で:調節弁の仕様書を書く、サイズを確かめる、ハンチングや漏れの原因を探すとき
- 何を調べるとき:Cv 値の計算、弁特性(イコールパーセント・リニア)の選び方、操作器の出力が足りるか、ポジショナの役割
この本には出版社の正誤表が綴じ込まれています。式や数値を引く前に、巻頭の正誤表を先に見てください。本文から抜けていて正誤表の側にしか載っていない図もあります。
調節弁そのものが初めてなら、手前に『絵とき「バルブ」基礎のきそ』を読むと入りやすくなります。配管技術の入門書の姉妹書として、バルブを図とイラストで基礎から説明した本です。関連する記事は 調節弁のしくみ、調節弁の流量特性、調節弁の選定とサイジング、調節弁のトラブルと保全です。
5. 安全計装とアラーム|プロセス安全の基礎、プロセス安全入門
安全計装・インターロック・アラームは、計装の本よりプロセス安全の本のほうが詳しく書かれています。
『実践・安全工学シリーズ2 プロセス安全の基礎』は、独立防護層、フェイルセーフ設計、アラームの重要度、インターロック、安全計装システムと SIL スタディまでを扱います。計器と緊急遮断弁の冗長化構成と故障率の考え方もあり、安全計装の設計や見直しに関わる技術者向けです。冗長化の考え方は計装の信頼性と二重化で説明しています。
『若い技術者のためのプロセス安全入門』は、米国の CCPS の入門書の翻訳で、若手エンジニアが最初に読むプロセス安全の本です。アラームを無効にするときの手順、重要な弁の開閉位置の管理など、運転と保全の現場で守るべきことが具体的に書かれています。
- 誰が:安全計装・アラームの設定や変更に関わる若手エンジニア、運転の班長を目指す製造部員
- どの段階で:アラームやインターロックの設定を変える、HAZOP に参加する前
- 何を調べるとき:制御と安全を分ける理由、アラームを止めている間の補償措置、SIS の冗長化
関連する記事は アラーム管理の基本、DCS と SIS の役割分担、安全計装システム(SIS)の基礎です。
6. 資格と保安の基礎|高圧ガス保安技術
高圧ガス製造保安責任者の講習・試験の教科書です。高圧設備の章に、温度計・圧力計・流量計・液面計・分析計の計測機器と、検出部・調節部・操作部・伝送部・安全計装からなる計装の節があります。安全計装の冗長化(並列・m/n・待機)や警報システム、エチレンプラントでの計装の実例まで、短くまとまっています。
- 誰が:高圧ガスの資格を目指す製造部員・若手エンジニア
- どの段階で:資格の勉強と並行して
- 何を調べるとき:計装の用語と原理を、試験で問われる言葉で確かめる
7. 設計・工事を調べる|化学装置便覧、化学プラント建設技術
『化学装置便覧』の計測制御装置の章には、制御動作の説明と、限界感度法とステップ応答法による PID パラメータの表が載っています。PID の調整則の元の表を確かめたいときに開く本です(PID パラメータの調整)。
『化学プラント建設技術(下)』の計装設計と工事の章は、計器の取付位置、計器室、工事仕様書、現場計器の取付、導圧配管、供給空気配管、信号空気配管、信号配線と温度計配線、分析計の配管、計器盤の据付、材料、試験・検査までを扱います。計装工事の立会いやループチェックの前に読むと、図面の意味が分かります。
どちらも古い本で、単位や規格は今のものと違うことがあります。図書館や社内の蔵書で探し、数値は現行の規格やメーカー資料で確かめてから使ってください。
8. 制御理論に進むなら|電験三種 機械の教科書
このブログの計装の記事は、伝達関数やボード線図を使わずに書いています。PID の理論を式で理解したい、電験三種を受けたい、という段階に来たら、電験三種の機械の教科書の自動制御の章が入口になります。
『みんなが欲しかった!電験三種 機械の教科書&問題集』の自動制御の章は、自動制御の種類、フィードバック制御、ブロック線図、伝達関数、ステップ応答と安定性、ボード線図、ナイキスト線図の順に進みます。問題集が付いているので、読んだところをすぐ確かめられます。関連する記事は フィードバック制御のしくみ、PID 制御とはです。
9. 現場で見る場所|本の次に開く資料
本は一般論です。自分の担当設備の答えは、社内の資料にあります。
- 機器の取扱説明書:有寿命部品の交換年数、校正の手順、故障時の表示。計装の教科書も、有寿命部品の年数は取扱説明書に書かれているとしている
- 計器仕様書(データシート):レンジ、材質、フェイル動作、防爆の区分
- P&ID とループ図:計器のタグ番号、信号のつながり、インターロックの範囲
- 社内の標準と手順書:アラームの設定基準、バイパスの手順、変更管理
- 計装担当者:本と資料で分からないことは、書いた本より詳しいことが多い
10. 先輩に聞かれたら答えられる3問
- 調節弁の Cv 値の計算を確かめたいとき、どの本のどこを開きますか。
- 差圧伝送器の導圧管が凍結したときの対策を探すなら、どの本ですか。
- 古い便覧の表の数値を使うとき、何に気をつけますか。
答えは順に、『工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック』の第3章「バルブサイジングと騒音計算」(その前に巻頭の正誤表)/『フィールド機器・虎の巻』の差圧・圧力伝送器の編の「差圧伝送器の導圧管設置」(凍結防止)/発行年と単位を確かめ、現行の規格やメーカー資料で裏を取る、です。
まとめ
計装の独学は、『やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』で全体をつかむところから始めます。2冊目は困りごとで選び、計器のトラブルは『フィールド機器・虎の巻』、調節弁は『工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック』(正誤表を先に)、安全計装とアラームは『プロセス安全の基礎』と『若い技術者のためのプロセス安全入門』です。
資格なら『高圧ガス保安技術』、制御理論なら電験三種の機械の教科書、設計・工事なら『化学装置便覧』と『化学プラント建設技術』へ進みます。古い本の数値は現行の資料で確かめ、自分の設備の答えは取扱説明書・仕様書・P&ID・社内標準で探してください。
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参考文献
- 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社 Amazonで見る
- 横河電機編『計装メーカが書いた フィールド機器・虎の巻』工業技術社
- 山武 調節弁ハンドブック編纂委員会編『工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック 改訂第2版』日本工業出版 Amazonで見る
- 小岩井隆『絵とき「バルブ」基礎のきそ』日刊工業新聞社 Amazonで見る
- 安全工学会監修『実践・安全工学シリーズ2「プロセス安全の基礎」』化学工業日報社 Amazonで見る
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