動画解説はこちら|YouTube

渦流量計の基礎を徹底解説!原理からメリット・デメリット、選定のポイントまで

今回は、差圧式オリフィスに次ぐ標準機として広く普及している「渦流量計」について、その測定原理から構造、メリット・デメリット、そして失敗しないサイジングの勘所までを徹底解説します。

渦流量計の基本と歴史

渦流量計は、1900年代初頭から使われてきた差圧式オリフィス流量計に次ぐ、第2の標準機として1960年代後半に工業化されました。特に日本のメーカーが開発を牽引してきた歴史があります。

その定義は「流エネルギー抽出型の速度式流量計」です。難しく聞こえるかもしれませんが、シンプルに言えば、外部からエネルギーを加えることなく、流体が障害物に当たってできる渦の数を数えることで、流速を知る方式です。スマート化が進んだ2000年代以降、その重要性はさらに高まっています。

測定原理:カルマン渦とストローハル数

流れの中に「ブラフボディ」と呼ばれる柱状の障害物を置くと、その下流に規則正しい渦が交互に発生します。これを「カルマン渦列」と呼びます。風で電線が鳴る音や、旗がはためく現象もこれと同じ原理です。

流量計として最も重要なのは、この「渦の発生する回数(周波数)が、流体の速さに綺麗に比例する」という性質です。つまり、渦を数えれば流速がわかるのです。

この関係を表す数式において重要なのが「ストローハル数」という係数です。流体の状態(レイノルズ数)が変化しても、ストローハル数は広い範囲で一定に保たれます。これにより、渦流量計は流速に対して出力周波数が正比例するという、オリフィスにはない優れたリニア(直線)特性を持っています。

内部構造と検出の仕組み

渦流量計の構造を見ていきましょう。

渦発生体

単なる円柱では渦の発生点が安定しないため、一般的には断面が台形や三角形の形状が採用されます。エッジを鋭くして渦の発生点を固定し、安定した強い渦を作り出しています。

検出方法

渦が発生すると、発生体には交互に揚力(引き上げる力)が働きます。多くの場合、発生体の内部にある「圧電素子」がこの力を電気信号に変換します。 ここで注目すべきは、センサーが流体に直接触れない(非接触)という点です。センサーは金属ボディの中に守られているため、腐食性の流体でも問題なく、シール部品も不要です。これが渦流量計の高い耐久性を支えています。

渦流量計を導入する3つのメリット

①幅広い適用性と高いレンジアビリティ

液体、気体、蒸気のすべてを同じ原理で測定できます。また、測定可能な流量の範囲(レンジアビリティ)が非常に広く、オリフィスが1対4程度なのに対し、渦流量計は1対20以上を誇ります。流量変動が大きいプロセスでも、設定の切り替えなしで測定を継続できるのは大きな利点です。

②堅牢性とメンテナンス性

従来のオリフィス流量計で悩みの種だった、導圧管の凍結や詰まり、配管接続部からの漏れリスク。渦流量計なら可動部がなく、導圧管も不要なため、これらの問題を一挙に解消できます。詰まらない、漏れない、壊れにくいことで、総所有コストを劇的に削減できます。

③精度とリニアリティ

出力は流速に比例したデジタルパルスであるため、差圧式のような複雑なルート計算が不要で、ゼロ点ドリフトも発生しません。指示精度はプラスマイナス1%程度と高く、特に低流量の領域でも精度が安定する特徴があります。

デメリットと導入時の注意点

優れた流量計ですが、注意すべき弱点もあります。

①低流速での測定限界

カルマン渦は、極端に遅い流速や高粘度の流体では安定して発生しません。そのため、測定不能となる「カットオフ」領域が存在します。

②外部振動の影響

圧力を検知する仕組み上、配管自体の振動をノイズとして拾ってしまう弱点があります。流体が止まっていても数値が出てしまうことがありますが、配管サポートの追加などで対策が可能です。

③直管長の制約

綺麗な渦を作るには、整った流れ(整流)が必要です。通常、流量計の上流側に配管内径の10倍、下流側に5倍の真っ直ぐな配管(直管部)が求められます。直前にバルブなどがある場合はさらに長い距離が必要になるため、設置スペースの検討が重要です。

弱点を克服する最新技術

近年では、これらの弱点を克服する技術進化が進んでいます。

振動対策

ダブルセンサーや高度な信号処理技術が導入されています。2つのセンサーを使ったノイズキャンセルや、周波数解析によるノイズのデジタル分離により、耐震性は飛躍的に向上しています。

マルチバリアブル化

蒸気やガスは温度や圧力によって密度が変わります。そこで、温度センサーを内蔵したモデルが登場しました。1台で流速と温度を測り、内蔵された計算機で質量流量を直接出力できます。外付けの温度計などが不要になり、配管工事が劇的にシンプルになります。

蒸気測定における圧倒的な強み

渦流量計が最も活躍するのは「蒸気」の測定です。工場のユーティリティやボイラー出口において、まさに王者と言える存在です。

高温高圧に強く、温度補正機能を使えば飽和蒸気の質量管理が1台で完結します。導圧管の凍結対策やドレン抜きの作業から解放される点は、現場の担当者にとって最大の恩恵です。

ある化学プラントでは、オリフィスから渦流量計へ切り替えた結果、設置や保全を含めたトータルコストを約7分の1に圧縮し、漏れのリスク箇所を30箇所から3箇所へ激減させることに成功した事例もあります。

失敗しないためのサイジング(口径選定)

最後に、導入において最も重要なサイジングのポイントをお伝えします。

「配管の太さ=流量計の口径」という安易な選定は避けてください。 低流速でのカットオフ(測定不能)を防ぐため、配管よりも1から2ランク小さい口径を選んで、流量計内での流速を意図的に稼ぐのが鉄則です。また、ガスケットが配管内にはみ出さないようにすることや、液体測定時のキャビテーション(気泡の発生)防止にも注意が必要です。

まとめ

渦流量計は、物理法則に基づいた低コストかつ高精度な、現代の標準的な流量計です。振動や低流速といった弱点も、最新の技術と適切なサイジングによって十分に克服可能です。特に蒸気の測定ラインにおいては、最適な選択肢となるでしょう。現場改善の強力なツールとして、ぜひ活用をご検討ください。