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電磁流量計は、磁界の中を導電性の液体が流れると、流速に比例した電圧(起電力)が生じる現象を使った流量計です。原理は発電機と同じで、19 世紀にファラデーがテムズ川の流速を測ろうとして失敗した逸話が残っています。
配管の中に何もなく、圧力損失がなく、密度や粘度の影響を受けず、耐食性の材料を選べる。化学プラントで多用される理由はここにあります。ただし導電性の液体しか測れません。気体、蒸気、油のような非導電性の液体には使えません。
この記事では、原理と長所、なぜ気体と油が測れないか、ゼロ点を安定させた技術、そしてメーカーの実務書がまとめた「精度に影響する4つのこと」(直管長、導電率、付着、気泡)とトラブル事例を説明します。
この記事の結論
- 原理は発電機と同じ。磁界の中を導電性液体が流れると、流速に比例した起電力が電極に現れる
- 管内に障害物がなく 圧損ゼロ、密度・粘度の影響なし、耐食ライニングを選べる、スラリーも測れる
- 導電性液体に限る。気体・蒸気・油・超純水は測れない。容量型電極でアルコールや脱イオン水は測れるようになった
- 直管部は上流 5D 程度と短い。ただし上流 5D 以内の弁は全開で使う。開度で誤差の正負が変わる
- 付着の不具合の 8〜9 割は絶縁物の付着。電極が絶縁物で覆われると出力が消える
- 気泡は、均一に分散していれば体積流量として測れるが、片寄ると出力が高くも低くもなる
1. 原理と長所
図で描くと、非磁性のステンレス管の外側に励磁コイルがあり、管の内側に絶縁ライニング、管壁に一対の電極があります。コイルが作る磁界の中を導電性の液体が流れると、流れと磁界の両方に直角の方向に、流速に比例した起電力が生じます。電極がそれを拾い、変換器が流量に換算します。

連載記事は、電磁流量計の特長を9つ挙げています。
- 管内に障害物がない:圧力損失ゼロ(口径 10 mm 以下は内部で絞るので圧損あり)、スラリーも測れる、構造が簡単で故障しにくい、清掃・保守が楽
- 耐食性・耐磨耗性がよい:接液部をフッ素樹脂、ゴム、セラミックなどから選べる
- 密度・粘度の影響を受けない:流量信号は体積流量に直線的に比例
- 測定できる流量範囲が広い:フルスケールは変換器で自由に変えられ、流量ゼロ付近まで信号が出る。口径は 2.5 mm から 2000 mm 超まで
- 高精度:以前はフルスケールの 1% 程度、現在は指示値の 0.5% が普通
- 必要直管長が短い:上流に口径の 5 倍程度
- 応答が速い:質量や熱容量が介在しない
- 付着性異物に強い:付着物の導電率が液と同じなら誤差を生じない
- 逆方向の流れも測れる:構造が上下流対称
国内の流量計の形式別シェアで 20% を占める(連載記事の時点)のは、この特長のためです。
2. なぜ気体と油は測れないか
起電力が生じるには、流体そのものが電気を通す必要があります。導電性のない気体・蒸気・油では、電極に電圧が現れません。これが電磁流量計の唯一にして最大の制約です。

導電率の下限は、技術の進歩で下がってきました。かつては数 μS/cm が下限でしたが、絶縁性パイプの外側に電極を置いて静電容量を介して起電力を取り出す「容量型電極」の開発で、下限をさらに数十分の一まで下げられるようになりました。アルコールや脱イオン水は測れるようになっています。ただし油や超純水のように導電性がまったくないものは、今も測れません。
気体・蒸気・油の流量には、差圧式、渦式、コリオリ式などを使います。
3. ゼロ点を安定させた技術
かつての電磁流量計の最大の弱点は、ゼロ点の不安定でした。流れによる起電力は数 μV から数 mV と微弱で、商用電源につながった励磁コイルからの誘導ノイズが信号線に入り込むためです。

これを根本的に解決したのが低周波励振方式です。直流で断続的に磁界を作り、磁界があるときの信号から、磁界がないときの信号(=ノイズ)を差し引きます。すると流量成分だけが残ります。励振周波数は商用周波数の 1/4〜1/8 が一般的で、遅くするほどゼロ点は安定し、代わりに応答は遅くなります。
4. 精度に影響する4つのこと
メーカーの実務書は、精度への影響を直管長・導電率・付着・粘度・気泡・二相流の順に整理しています。現場で効くものを4つに絞ります。

4.1 直管長と上流の弁
上流の直管長が基準に満たないときの誤差は、定量的に定められていません(つまり補正できません)。実務書は 90° ベンドの下流での試験例を示し、約 5D 下流ではほぼ軸対称の流れになるとしています。
上流・下流の配管の影響の表を要約します。
| 位置 | 配管要素 | 影響 |
| 上流 | 急収縮管 | 流出する流れは軸対称になるので、直管の一部とみなしてよい |
| 上流 | 曲管 | 直後は偏流・旋回流。約 5D 下流でほぼ軸対称。5D 以上下流なら誤差少 |
| 上流 | バルブ | 仕切弁を 5D 以内に置くと、開度によって誤差の大きさが変わり、締切方向と電極の相対関係で誤差の正負が変わる。だから流量計上流の弁は全開で使う。全開で使えないなら電極軸を締切方向から 45° に |
| 下流 | バルブ | ちょう形弁を直結すると開度で大きな誤差。弁体が流量計の中に入らないように。仕切弁なら誤差なし |
「流量計の上流の弁で流量を絞る」配管は、電磁流量計では避けます。
4.2 導電率
原理上、起電力は導電率に依存しません。ただし導電率が下限を割ると信号が取れません。測る液が変わったとき、希釈で導電率が下がったときは要注意です。
4.3 付着
実務書は「付着の不具合の中で最も多いケース(約 8〜9 割)は絶縁物付着」としています。排水の油分が電極表面を覆う、バッチ運転で流体が停止・空になって固化し電極に付着する、といった例です。電極が完全に絶縁物で覆われると、起電力が検出できず出力が消えます。
対策は、ライニング表面を鏡面にする、電極を突き出した形状にして自己洗浄させる、口径を1サイズ下げて流速を上げる、そして根本的には接液電極のない容量式に替えることです。暫定的にはアルコールなどで洗い落とします。
4.4 気泡
気泡が均一に分散していれば、気泡分を含めた体積流量が出力されます。問題は不均一なときです。実務書の図では、低粘度の液で気泡が管の上側に偏ると、電極の位置と磁界の分布の関係で、出力が実際より高くなることも低くなることもあります。気泡が入る配管では、流量計を気泡が偏らない位置(立ち上がりの縦配管など)に置くのが基本です。
5. トラブル事例
- 電極の樹脂被覆:連載記事の最終回は、電磁流量計は電極が樹脂など絶縁物で覆われると動作しないと述べ、こうした用途には電極が管内壁に露出しない容量型が威力を発揮するとしています
- ガスケット材質の選定ミス:塩ビ配管のフランジに充填剤入りテフロンガスケットを使い、塩ビフランジの強度不足で締付軸力が取れずに漏れた例。強腐食性の液が漏れて測定管を腐食させることも
- 魚が入る:火力発電所の海への放流路に付けた大口径電磁流量計の記録に、時折大きなスパイクが現れた。周囲の電気ノイズを調べても異常なし。試しに小さな水槽を付けて金魚を放すと、金魚が流量計に潜り込むたびにスパイクが出た。稚魚のうちにスクリーンを通り抜けて上流側で成魚になっていた
最後の例は笑い話のようですが、「センサは正常、原因はシステムか環境にある」というトラブルの典型です。
6. 現場で見る場所
- 上流の弁の開度:5D 以内に弁があれば全開か
- 接地:電磁流量計は液と変換器の電位を合わせる接地(アースリング)が要る。接地が外れると指示が振れる
- 満水か:管内が満水でないと正しく測れない。ポンプ停止後の再起動時や、配管の頂部に置かれた流量計
- 付着:バッチの合間に液が固化する系では、電極の清掃周期
- 導電率:液の希釈や交換で導電率が変わっていないか
7. 先輩に聞かれたら答えられる3問
- 電磁流量計で測れない流体は何ですか。
- 電磁流量計の上流 5D 以内に仕切弁があるとき、どう使いますか。
- 付着による不具合の大半は、何の付着ですか。
答えは順に、気体・蒸気・油や超純水などの非導電性液体/全開で使う/絶縁物、です。
まとめ
電磁流量計は発電機と同じ原理で、管内に障害物がなく、圧損ゼロ、密度・粘度の影響なし、耐食材料を選べます。導電性液体に限るのが唯一の制約で、容量型電極で下限は下がりましたが、油や超純水は今も測れません。
精度に効くのは直管長と上流の弁(5D 以内なら全開)、導電率、絶縁物の付着、気泡の偏りです。トラブルはセンサより配管や環境に原因があることが多く、接地と満水、上流の弁、電極の付着から確認してください。
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参考文献
- 佐鳥聡夫「流量のお話 第3回 電磁流量計」MS TODAY, 2001年9月号
- 横河電機編『計装メーカが書いた フィールド機器・虎の巻』工業技術社, Ⅲ「電磁流量計」10「精度におよぼす影響」、11「代表的トラブルと対策」 Amazonで見る
- 佐鳥聡夫「流量のお話 第12回 流量計のトラブル」MS TODAY, 2002年6月号
- 佐鳥聡夫「現場計器の”不思議な”トラブルシューティング 第3回 流量計(その2)」計装, Vol.41 No.5 (1998)
設備技術は、回転機械・静機器・配管・計装・設備信頼性の12の記事マップで案内しています。
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