動画解説はこちら|YouTube

電磁流量計の基礎知識|原理から選定・設置のノウハウまで完全解説

こんにちは。今回は、工場やプラントの流量測定における標準機「電磁流量計」について解説します。

基礎的な測定原理から、やっかいなスラリーや低導電率流体への最新対策、そして現場で明日から使える選定・設置のノウハウまでを網羅しました。

この記事を読めば、流体の性質に合わせた最適な機種選定と、トラブルを防ぐ正しい設置指示ができるようになります。

動画での解説はこちらをご覧ください。

1. 電磁流量計とは?その特徴とメリット

電磁流量計は、電気を通す「導電性液体」の流量を測定するための計器です。

水はもちろん、化学薬品や泥水まで幅広い液体の測定が可能です。口径のバリエーションも豊富で、2.5mmの微小な配管から、2mを超える大規模インフラまで対応できます。

最大のメリットは、温度、圧力、密度、粘度といった「物性変化の影響をほとんど受けない」という点です。

測定条件の変動が激しいプラントにおいて、非常に心強い特性を持っています。

2. 測定原理とシンプルな構造がもたらす強み

測定の原理は「ファラデーの電磁誘導の法則」に基づいています。

磁界の中を導電性を持つ流体が移動すると、その流速に比例した起電力(電圧)が発生します。

つまり、発生した電圧を測ることで、そのまま流体の速さを知ることができるのです。

このシンプルかつ直線的(リニア)な特性が、精度の高い測定を支えています。

構造も非常にシンプルで、主に以下の4つの要素から構成されています。

  • 測定管:磁気を通さない非磁性ステンレス製
  • ライニング:絶縁と耐食性のための内側コーティング
  • 電極:発生した起電力を検知する部品
  • 励磁コイル:磁界を発生させる部品

このように配管内に稼働部が一切ない構造により、以下の4つの大きなメリットが生まれます。

  1. 圧力損失ゼロ:配管内に障害物がないため、ポンプの動力費削減に貢献します。
  2. ワイドレンジアビリティ:微小流量から大流量まで直線的な特性でカバーします。
  3. メンテナンスフリー:摩耗する稼働部がなく、故障リスクが極めて低いです。
  4. 難測定流体への対応:スラリー液(泥状の液体)や強酸・強アルカリなどでも、適切な材質選定で測定可能です。

3. 電磁流量計の苦手なこと(制約事項)

メリットが多い一方で、いくつかの重要な制約もあります。

  • 導電率の制約:最も重要なポイントです。油、ガス、純水、蒸気など、電気を通さない流体は測定できません。通常、5マイクロジーメンス程度の導電率が必要です。
  • 直管長が必要:流速分布の影響を避けるため、前後に真っ直ぐな配管(直管部)が必要です。
  • 満水条件が必須:配管内が常に液体で満たされている必要があります。
  • 絶縁性付着物に弱い:電極に絶縁性の汚れが付着すると、信号が遮断され測定不能になるリスクがあります。

4. ノイズとの戦いから生まれた最新技術

電磁流量計の歴史は「ノイズとの戦い」でした。初期の方式では、ゼロ点の安定性や、スラリー内の固形物が電極にぶつかることで発生する「スラリーノイズ」が大きな課題でした。

これらの課題を克服するため、技術は以下のように進化してきました。

2周波励磁方式

現在の主流となっている画期的な技術です。

低周波(約6Hz)と高周波(約75Hz)をミックスした波形で磁界を作ります。

低周波成分でゼロ点の安定性を確保し、高周波成分でスラリーノイズの除去と高速応答を実現しました。

これにより、高濃度パルプ液などの安定測定が可能になりました。

容量式電磁流量計

電極が直接液体に触れない画期的な方式です。

セラミックパイプの外部からコンデンサの原理で信号を拾います。

純水などの超低導電率(0.01マイクロジーメンスレベル)に対応できるほか、電極が接液しないためスラリーの衝突ノイズが発生せず、絶縁被膜による信号遮断も防ぐことができます。

5. 失敗しない!材質選定の重要ポイント

流体の性質に合わせて、測定管の内側を守る「ライニング材」と信号を読み取る「電極材」を正しく選定することが不可欠です。

選定ミスは液漏れ事故に直結するため注意が必要です。

ライニング材の使い分け

  • PFA:化学プラントで最も一般的。耐薬品性、耐熱性に優れ、付着もしにくい万能選手です。
  • ポリウレタンゴム:土砂混じりの泥水など、摩耗が激しい流体に最適です。
  • セラミックス:過酷なスラリーや高温流体に使用する、最高レベルの耐久性を持つ材質です。

電極材の選び方

標準のSUS316L(ステンレス)は酸性の液体には不向きです。

流体の腐食性を考慮し、耐食表を確認して慎重に選定してください。

  • 硫酸、塩酸など:ハステロイC
  • 海水:チタン
  • 強力な塩酸、硫酸:タンタル
  • ほぼ全ての薬品に対応:白金イリジウム(高価)

6. トラブルを防ぐ正しい設置方法

適切な設置を行わなければ、いくら高性能な機器を選んでも正しい測定はできません。

直管長の確保

バルブやエルボ(曲がり管)による流れの乱れを整えるため、JIS基準に則り、流量計の上流側に口径の5倍(5D)以上、下流側に2倍(2D)以上の直管部を設けてください。

設計段階でのスペース確保が必須です。

満水維持と気泡対策

トラブル原因のナンバー1は、配管が満水になっていないことや気泡の混入です。配管の頂点部や、開放端へと流れ落ちる立ち下がり部分への設置は絶対に避けてください。

流量調整バルブの位置

バルブは必ず流量計の「下流側」に設置してください。上流で絞ると、キャビテーション(空洞現象)によって気泡が発生し、大きな測定誤差の原因になります。

7. よくあるトラブルとその対策

現場で起こりがちなトラブルと、その解決策を紹介します。

症状1:指示が出ない(ゼロのままなど) 原因として、絶縁性の付着物による信号遮断が疑われます。

根本的な解決策は「容量式」への変更ですが、既存設備の場合は、取り外して清掃できる交換可能電極や、超音波洗浄機能付きのものを選びます。

運用面で流速を上げて汚れを吹き飛ばすのも有効です。

症状2:指示値が変動する(ふらつく) 固形物が電極に当たるスラリーノイズが疑われます。

最新の「2周波励磁方式」への更新や、電極を配管内に突き出して壁面での衝突を避ける「突き出し電極」、硬度の高い「セラミックス測定管」の採用を組み合わせて対策します。

8. まとめ:最適な機器選定と設置のために

電磁流量計は、条件さえ合えばメンテナンスフリーで使える非常に優れた計器です。

技術革新によりスラリー等の難測定流体も克服されてきましたが、その性能をフルに発揮させるには「適切な材質選定」と「基本に忠実な設置ルール」が不可欠です。

  1. 導電性があるか確認する(無い場合は別の流量計を検討)
  2. 導電率が低い場合、または付着性が強い場合は「容量式」を選択
  3. 腐食性がある場合は「PFAライニング+耐食電極」を選択
  4. 摩耗性がある場合は「ウレタンゴム」や「セラミックス」を選択

このように流体の性質を正しく理解し、論理的に絞り込んでいくことが安定操業の鍵となります。

ぜひ、今回の知識を実務の計装設計やメンテナンスにお役立てください。