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学識・型5|圧縮機の理論動力と冷凍サイクル|多段圧縮の最適中間圧はなぜ√(p₁p₂)か【甲種化学】

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困っている人
困っている人

多段圧縮の最適中間圧が √(p₁p₂) になる理由を説明できない。

COPと熱効率の違いがあいまいなまま覚えている。

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

学識では主役になっていない(10回中0回)── 優先度は正直に低い

ただし保安管理技術では毎年出る。捨てる型ではない

多段圧縮の最適中間圧 √(p₁p₂) を、式から導く

COPは1を超える ── 熱効率と混同しない

学識だけを見れば後回しでよい型です。ただし保安管理技術との重なりを考えると、押さえ方が変わります。

最初に、この型の位置づけをはっきりさせておきます。

学識の60大問で、型5が主役になった回はゼロ。 従として1回(R6国試問2の逆カルノー)だけです。

学識の対策としては、優先度は最下位に近い。 型9・型6・型7・型3・型4・型1を先に固めてください。

ただし捨ててはいけません。 理由は次のとおりです。

この型を捨てられない理由

保安管理技術の問6〜問8(圧縮機・ポンプ/流動・伝熱・分離)で毎年択一が出る

② 検定の問6の記述で「可逆カルノーサイクルと効率式」が出ている(R5検定)

③ 実務では冷凍設備・圧縮機の管理に直結する

だから「学識の計算対策としては後回し、保安管理技術の知識としては必須」という扱いになります。

保安管理技術側は保安管理技術の全体像、型別の全体像は計算10の型を参照してください。

圧縮機の理論動力 ── 3つの式

① 等温圧縮

W = nRT ln(p₂/p₁)

最も仕事が小さい。ただし無限にゆっくり冷やす必要があり、現実には不可能

② 断熱(等エントロピー)圧縮

W = [γ/(γ−1)] × nRT₁ × [(p₂/p₁)^((γ−1)/γ) − 1]

最も仕事が大きい。速い圧縮はこれに近い

③ ポリトロープ圧縮(実際)

pV^m = 一定(1 < m < γ)

式は②のγをmに置き換える。実機はここに入る

等温 < ポリトロープ < 断熱。この大小関係が問われます。

なぜ等温圧縮のほうが仕事が小さいのか

断熱圧縮では温度が上がり、圧力も余計に上がるからです。

p-V線図で見ると、断熱線(pV^γ=一定)は等温線(pV=一定)より急な傾きになります。

同じ圧力比まで圧縮するとき

等温:温度一定のまま圧力を上げる → 体積の減り方が緩やか

断熱:温度が上がるので、同じ圧力にするのにより多くの仕事が要る

「上がった温度の分だけ、余計に仕事をしている」と考えると分かりやすい。

だから実機は圧縮しながら冷やす(水冷ジャケット)か、途中で冷やす(中間冷却器)ことで等温圧縮に近づけます。

断熱変化そのものは型4|熱力学の状態変化、圧縮機の実務はブロワー・圧縮機の選定を参照してください。

多段圧縮の最適中間圧 ── なぜ √(p₁p₂) か

この導出は理解しておいてください。 結論だけ覚えるより速く、記述でも使えます。

設定

2段圧縮で、中間冷却により各段の入口温度を同じ T₁ に戻す

1段目:p₁ → p_m

2段目:p_m → p₂

各段の仕事は (p出口/p入口)^((γ−1)/γ) に比例する

合計の仕事

比例部分だけ書くと

W ∝ (p_m/p₁)^k + (p₂/p_m)^k  (k = (γ−1)/γ)

この和を最小にする p_m を探します。

最小になる条件

2つの項のは p_m によらず一定です。

積を計算すると

(p_m/p₁)^k × (p₂/p_m)^k = (p₂/p₁)^k … p_m が消える

積が一定の2つの正の数は、等しいときに和が最小になります(相加相乗平均の関係)。

だから

(p_m/p₁)^k = (p₂/p_m)^k

p_m/p₁ = p₂/p_m

→ p_m² = p₁p₂

p_m = √(p₁p₂)

つまり「各段の圧力比を等しくする」ということです。これが本質。

n段の場合

一般化

各段の圧力比を等しくする

各段の圧力比 = (p₂/p₁)^(1/n)

100 kPa から 8,000 kPa まで3段で圧縮するときの各段の圧力比は?

〔解答〕

全体の圧力比 = 8,000/100 = 80

各段 = 80^(1/3)

log 80 = 1.903 → ÷3 = 0.634 → 逆引き 4.31

→ 100 → 431 → 1,857 → 8,000 kPa

立方根も対数表で処理します。 log を取って3で割って逆引き ── TNT換算と同じ操作です(→ 型9)。

多段化のもう一つの理由

吐出温度を下げるためです。

1段で圧力比80まで圧縮すると、断熱圧縮の温度上昇は膨大になります。

γ=1.4、入口300 K のとき

1段(圧力比80):T₂ = 300 × 80^0.2857 = 300 × 3.42 = 1,026 K(753℃)

3段(各4.31):T₂ = 300 × 4.31^0.2857 = 300 × 1.52 = 456 K(183℃)

753℃では潤滑油が発火します。 これが多段化と中間冷却が必須である実務上の理由です。

圧縮機の油の炭化・発火は自然発火の典型的な事例です。特に酸素圧縮機では致命的になります。

冷凍サイクルとCOP ── 逆カルノーで上限を知る

R6国試問2で逆カルノーサイクルのT-S線図が出ました。

冷凍サイクルの4過程(蒸気圧縮式)

圧縮:冷媒蒸気を圧縮(動力を入れる)

凝縮:高温側で放熱して液化(Q_H を捨てる)

膨張:膨張弁で減圧(等エンタルピー)

蒸発:低温側で吸熱して気化(Q_L を汲み上げる

COP(成績係数)

定義

冷凍機:COP = Q_L / W(汲み上げた熱 ÷ 入れた仕事)

ヒートポンプ:COP = Q_H / W

エネルギー保存から Q_H = Q_L + W なので

COP_HP = COP_冷凍 + 1

COPは1を超えます。 「効率」ではなく「汲み上げ倍率」だからです。熱効率(η ≦ 1)と混同しないでください。

逆カルノーが上限を与える

理論上の最大COP

冷凍機:COP_max = T_L / (T_H − T_L)

ヒートポンプ:COP_max = T_H / (T_H − T_L)

絶対温度で計算する

−10℃の冷凍室から、30℃の外気へ熱を捨てる。理論最大COPは?

〔解答〕

T_L = 263 K、T_H = 303 K

COP = 263 / (303 − 263) = 263 / 40 = 6.6

実機はこの3〜5割程度です。圧縮の不可逆性、膨張弁での損失、熱交換の温度差などで落ちます。

温度差が小さいほどCOPは大きい

条件T_H − T_LCOP_max
−10℃ → 30℃40 K6.6
−40℃ → 30℃70 K3.3
−80℃ → 30℃110 K1.8

深冷になるほど急激に効率が落ちます。 だから超低温は多段(カスケード)にする。

実務的な意味:必要以上に低い温度を作らない。 設定温度を5℃上げるだけで消費電力が1割変わります。

膨張弁ではなぜ仕事を回収しないのか

理論的には膨張タービンで仕事を回収できますが、液が混ざった二相流ではタービンが壊れます

だから通常は膨張弁で等エンタルピー膨張(絞り膨張)させます。その分だけ逆カルノーより効率が落ちる

大型の空気分離装置などでは、実際に膨張タービンを使って回収しています。規模で経済性が変わる話です。

冷凍サイクルの詳細は冷凍サイクルとCOP、エントロピーとカルノーはエントロピーとカルノーサイクルで扱います。

記述で問われた形(R5検定 問6(2))

「可逆カルノーサイクルと効率式について述べよ」への解答例

可逆カルノーサイクルは、2つの等温変化と2つの断熱変化からなる可逆サイクルである。高温熱源 T_H から熱 Q_H を受け取り、低温熱源 T_L へ熱 Q_L を捨て、その差を仕事として取り出す。

T-S線図上では長方形となり、面積が正味の仕事に等しい。

熱効率は η = 1 − T_L/T_H で表され、作動流体の種類によらず2つの熱源の絶対温度だけで決まる

これは同じ2つの熱源間で作動するあらゆる熱機関の効率の上限を与える。

「作動流体によらない」「上限を与える」の2点が採点の核です。

カルノーサイクルの価値は、具体的な装置ではなく理論的な上限を示すことにあります。

この型の練習のしかた

学識対策としては、優先度を下げて構いません。 ただし次の3つだけはやっておいてください。

  1. 多段圧縮の最適中間圧が √(p₁p₂) であることと、その理由(各段の圧力比を等しくする)
  2. COP = T_L/(T_H − T_L) と、COPが1を超える理由
  3. カルノー効率 η = 1 − T_L/T_H と、記述の答案例

3つとも「なぜそうなるか」まで押さえてください。 計算で出なくても記述で出ます。

よくある失点

失点対策
COPと熱効率を混同するCOPは1を超える。分母が仕事、分子が熱
摂氏で計算する絶対温度(+273.15)
等温圧縮のほうが仕事が大きいと思う等温 < ポリトロープ < 断熱
多段の圧力比を等分(引き算)する等比(掛け算)。n乗根
ヒートポンプのCOPを冷凍機と同じにする+1

暗記カードにするならこれだけ

圧縮動力

等温 W = nRT ln(p₂/p₁)(最小)

断熱 W = [γ/(γ−1)]nRT₁[(p₂/p₁)^((γ−1)/γ) − 1](最大)

等温 < ポリトロープ < 断熱

多段圧縮

最適中間圧 p_m = √(p₁p₂)

理由:各段の圧力比を等しくすると仕事の和が最小

n段なら各段の圧力比 = (p₂/p₁)^(1/n)

もう一つの理由:吐出温度を下げる(油の発火防止)

冷凍サイクル

COP_冷凍 = Q_L/W = T_L/(T_H−T_L)

COP_HP = COP_冷凍 + 1

COPは1を超える(熱効率とは別物)

温度差が小さいほどCOPは大きい

膨張弁は等エンタルピー膨張(仕事を回収しない)

カルノー

η = 1 − T_L/T_H(絶対温度)

T-S線図で長方形

作動流体によらず、あらゆる熱機関の上限

まとめ

  • 型5は学識では主役になった回がゼロ。優先度は正直に低い
  • ただし保安管理技術の問6〜問8検定の問6記述で出るので捨てない
  • 等温 < ポリトロープ < 断熱(同じ圧力比に必要な仕事)
  • 多段圧縮の最適中間圧 √(p₁p₂)。理由は各段の圧力比を等しくすること
  • 多段化のもう一つの理由は吐出温度を下げる(1段だと750℃超)
  • COPは1を超える。熱効率と混同しない
  • COP = T_L/(T_H−T_L)。温度差が小さいほど大きい
  • カルノー効率は作動流体によらない上限

次は型10(流動・伝熱・材料力学)です。5年間で出題ゼロでしたが、その意味を扱います。→ 型10|流動・伝熱・材料力学

型の全体像は計算10の型、学識全体の攻略は学識の出題マップへ。

出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に仕分けして独自に行ったものです。設問の要約と解法の解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。