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多段圧縮の最適中間圧が √(p₁p₂) になる理由を説明できない。
COPと熱効率の違いがあいまいなまま覚えている。
そんな悩みを解決します。
学識では主役になっていない(10回中0回)── 優先度は正直に低い
ただし保安管理技術では毎年出る。捨てる型ではない
多段圧縮の最適中間圧 √(p₁p₂) を、式から導く
COPは1を超える ── 熱効率と混同しない

学識だけを見れば後回しでよい型です。ただし保安管理技術との重なりを考えると、押さえ方が変わります。
最初に、この型の位置づけをはっきりさせておきます。
学識の対策としては、優先度は最下位に近い。 型9・型6・型7・型3・型4・型1を先に固めてください。
ただし捨ててはいけません。 理由は次のとおりです。
① 保安管理技術の問6〜問8(圧縮機・ポンプ/流動・伝熱・分離)で毎年択一が出る
② 検定の問6の記述で「可逆カルノーサイクルと効率式」が出ている(R5検定)
③ 実務では冷凍設備・圧縮機の管理に直結する
だから「学識の計算対策としては後回し、保安管理技術の知識としては必須」という扱いになります。
保安管理技術側は保安管理技術の全体像、型別の全体像は計算10の型を参照してください。
圧縮機の理論動力 ── 3つの式
W = nRT ln(p₂/p₁)
最も仕事が小さい。ただし無限にゆっくり冷やす必要があり、現実には不可能
W = [γ/(γ−1)] × nRT₁ × [(p₂/p₁)^((γ−1)/γ) − 1]
最も仕事が大きい。速い圧縮はこれに近い
pV^m = 一定(1 < m < γ)
式は②のγをmに置き換える。実機はここに入る
なぜ等温圧縮のほうが仕事が小さいのか
断熱圧縮では温度が上がり、圧力も余計に上がるからです。
p-V線図で見ると、断熱線(pV^γ=一定)は等温線(pV=一定)より急な傾きになります。
等温:温度一定のまま圧力を上げる → 体積の減り方が緩やか
断熱:温度が上がるので、同じ圧力にするのにより多くの仕事が要る
「上がった温度の分だけ、余計に仕事をしている」と考えると分かりやすい。
断熱変化そのものは型4|熱力学の状態変化、圧縮機の実務はブロワー・圧縮機の選定を参照してください。
多段圧縮の最適中間圧 ── なぜ √(p₁p₂) か
この導出は理解しておいてください。 結論だけ覚えるより速く、記述でも使えます。
設定
1段目:p₁ → p_m
2段目:p_m → p₂
各段の仕事は (p出口/p入口)^((γ−1)/γ) に比例する
合計の仕事
W ∝ (p_m/p₁)^k + (p₂/p_m)^k (k = (γ−1)/γ)
この和を最小にする p_m を探します。
最小になる条件
2つの項の積は p_m によらず一定です。
(p_m/p₁)^k × (p₂/p_m)^k = (p₂/p₁)^k … p_m が消える
(p_m/p₁)^k = (p₂/p_m)^k
→ p_m/p₁ = p₂/p_m
→ p_m² = p₁p₂
→ p_m = √(p₁p₂)
つまり「各段の圧力比を等しくする」ということです。これが本質。
n段の場合
各段の圧力比を等しくする
各段の圧力比 = (p₂/p₁)^(1/n)
100 kPa から 8,000 kPa まで3段で圧縮するときの各段の圧力比は?
〔解答〕
全体の圧力比 = 8,000/100 = 80
各段 = 80^(1/3)
log 80 = 1.903 → ÷3 = 0.634 → 逆引き 4.31
→ 100 → 431 → 1,857 → 8,000 kPa
多段化のもう一つの理由
吐出温度を下げるためです。
1段で圧力比80まで圧縮すると、断熱圧縮の温度上昇は膨大になります。
1段(圧力比80):T₂ = 300 × 80^0.2857 = 300 × 3.42 = 1,026 K(753℃)
3段(各4.31):T₂ = 300 × 4.31^0.2857 = 300 × 1.52 = 456 K(183℃)
753℃では潤滑油が発火します。 これが多段化と中間冷却が必須である実務上の理由です。
冷凍サイクルとCOP ── 逆カルノーで上限を知る
R6国試問2で逆カルノーサイクルのT-S線図が出ました。
① 圧縮:冷媒蒸気を圧縮(動力を入れる)
② 凝縮:高温側で放熱して液化(Q_H を捨てる)
③ 膨張:膨張弁で減圧(等エンタルピー)
④ 蒸発:低温側で吸熱して気化(Q_L を汲み上げる)
COP(成績係数)
冷凍機:COP = Q_L / W(汲み上げた熱 ÷ 入れた仕事)
ヒートポンプ:COP = Q_H / W
エネルギー保存から Q_H = Q_L + W なので
→ COP_HP = COP_冷凍 + 1
逆カルノーが上限を与える
冷凍機:COP_max = T_L / (T_H − T_L)
ヒートポンプ:COP_max = T_H / (T_H − T_L)
絶対温度で計算する
−10℃の冷凍室から、30℃の外気へ熱を捨てる。理論最大COPは?
〔解答〕
T_L = 263 K、T_H = 303 K
COP = 263 / (303 − 263) = 263 / 40 = 6.6
実機はこの3〜5割程度です。圧縮の不可逆性、膨張弁での損失、熱交換の温度差などで落ちます。
温度差が小さいほどCOPは大きい
| 条件 | T_H − T_L | COP_max |
|---|---|---|
| −10℃ → 30℃ | 40 K | 6.6 |
| −40℃ → 30℃ | 70 K | 3.3 |
| −80℃ → 30℃ | 110 K | 1.8 |
実務的な意味:必要以上に低い温度を作らない。 設定温度を5℃上げるだけで消費電力が1割変わります。
膨張弁ではなぜ仕事を回収しないのか
理論的には膨張タービンで仕事を回収できますが、液が混ざった二相流ではタービンが壊れます。
だから通常は膨張弁で等エンタルピー膨張(絞り膨張)させます。その分だけ逆カルノーより効率が落ちる。
冷凍サイクルの詳細は冷凍サイクルとCOP、エントロピーとカルノーはエントロピーとカルノーサイクルで扱います。
記述で問われた形(R5検定 問6(2))
「可逆カルノーサイクルと効率式について述べよ」への解答例
可逆カルノーサイクルは、2つの等温変化と2つの断熱変化からなる可逆サイクルである。高温熱源 T_H から熱 Q_H を受け取り、低温熱源 T_L へ熱 Q_L を捨て、その差を仕事として取り出す。
T-S線図上では長方形となり、面積が正味の仕事に等しい。
熱効率は η = 1 − T_L/T_H で表され、作動流体の種類によらず2つの熱源の絶対温度だけで決まる。
これは同じ2つの熱源間で作動するあらゆる熱機関の効率の上限を与える。
「作動流体によらない」「上限を与える」の2点が採点の核です。
この型の練習のしかた
学識対策としては、優先度を下げて構いません。 ただし次の3つだけはやっておいてください。
- 多段圧縮の最適中間圧が √(p₁p₂) であることと、その理由(各段の圧力比を等しくする)
- COP = T_L/(T_H − T_L) と、COPが1を超える理由
- カルノー効率 η = 1 − T_L/T_H と、記述の答案例
よくある失点
| 失点 | 対策 |
|---|---|
| COPと熱効率を混同する | COPは1を超える。分母が仕事、分子が熱 |
| 摂氏で計算する | 絶対温度(+273.15) |
| 等温圧縮のほうが仕事が大きいと思う | 等温 < ポリトロープ < 断熱 |
| 多段の圧力比を等分(引き算)する | 等比(掛け算)。n乗根 |
| ヒートポンプのCOPを冷凍機と同じにする | +1 |
暗記カードにするならこれだけ
等温 W = nRT ln(p₂/p₁)(最小)
断熱 W = [γ/(γ−1)]nRT₁[(p₂/p₁)^((γ−1)/γ) − 1](最大)
等温 < ポリトロープ < 断熱
最適中間圧 p_m = √(p₁p₂)
理由:各段の圧力比を等しくすると仕事の和が最小
n段なら各段の圧力比 = (p₂/p₁)^(1/n)
もう一つの理由:吐出温度を下げる(油の発火防止)
COP_冷凍 = Q_L/W = T_L/(T_H−T_L)
COP_HP = COP_冷凍 + 1
COPは1を超える(熱効率とは別物)
温度差が小さいほどCOPは大きい
膨張弁は等エンタルピー膨張(仕事を回収しない)
η = 1 − T_L/T_H(絶対温度)
T-S線図で長方形
作動流体によらず、あらゆる熱機関の上限
まとめ
- 型5は学識では主役になった回がゼロ。優先度は正直に低い
- ただし保安管理技術の問6〜問8と検定の問6記述で出るので捨てない
- 等温 < ポリトロープ < 断熱(同じ圧力比に必要な仕事)
- 多段圧縮の最適中間圧 √(p₁p₂)。理由は各段の圧力比を等しくすること
- 多段化のもう一つの理由は吐出温度を下げる(1段だと750℃超)
- COPは1を超える。熱効率と混同しない
- COP = T_L/(T_H−T_L)。温度差が小さいほど大きい
- カルノー効率は作動流体によらない上限
次は型10(流動・伝熱・材料力学)です。5年間で出題ゼロでしたが、その意味を扱います。→ 型10|流動・伝熱・材料力学
型の全体像は計算10の型、学識全体の攻略は学識の出題マップへ。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に仕分けして独自に行ったものです。設問の要約と解法の解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。
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