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4〜20 mA と計装信号|なぜ 0 でなく 4 から始まるのか、空気式 20〜100 kPa、断線はどう分かるか

4〜20 mA と計装信号のアイキャッチ

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現場の伝送器から計器室へ、計器室から調節弁へ送られる信号は、世界中どこでも 4〜20 mA の直流電流です。測定範囲の 0% が 4 mA、100% が 20 mA に対応します。

0 mA からではなく 4 mA から始めるのは、「値がゼロ」と「線が切れた」を区別するためです。0 mA が流れてきたら、それは測定値ではなく断線や電源喪失の合図です。

この記事では、4〜20 mA と空気式の 20〜100 kPa がどう決まったか、4 mA の底上げに何の意味があるか、計器室の中で電流をどう分けているか、そしてノイズから信号を守る配線の常識を説明します。

この記事の結論

  • 電流信号は 4〜20 mA、空気信号は 20〜100 kPa が統一規格。メーカーが違う機器を自由につなげる
  • 0〜4 mA を空けておく「底上げ」には、断線の検知・立ち上がりの直線性・2線式(電源と信号の兼用) の3つの意味がある
  • 4〜20 mA は 250 Ω の抵抗で 1〜5 V に変わり、計器室の中では電圧で分配される
  • 空気式は伝送の遅れがあり、伝送距離は 100 m 以内が目安。電気式は数 km まで送れる
  • 信号線は動力線から離し、ツイストペア(撚り線)とシールドでノイズを防ぐ
  • 4〜20 mA の上にデジタル信号を重ねる HART 通信で、現場に行かずに伝送器の状態を読める

1. 統一信号はどう決まったか|空気式 20〜100 kPa、電気式 4〜20 mA

計装が始まった頃、信号の規格はメーカーごとにばらばらでした。異なる会社の伝送器と調節計をつなぐには、いちいち変換器が必要でした。

空気式の信号は、1950 年代に米国で 3〜15 psi に統一され、日本では長く 0.2〜1.0 kg/cm² が使われました。計量法の改訂で SI 単位に変わり、1999 年から 20〜100 kPa になっています。米国の 3〜15 psi は 20.69〜103.45 kPa なので、少しの微調整で相互に接続できます。

電気式の信号は、1970 年の国際電気標準会議(IEC)の勧告で 4〜20 mA の直流電流に統一されました。これで異なるメーカーの機器が自由に接続できるようになり、計装の発展を大きく後押ししました。

空気式電気式
統一信号20〜100 kPa(旧 0.2〜1.0 kg/cm²、米 3〜15 psi)4〜20 mA 直流、盤内は 1〜5 V
伝送の速さ遅い(空気は圧縮性)速い
伝送距離100 m 以内が目安(50〜200 m)数 km
防爆本質的に安全防爆対策が要る
ノイズ影響なし対策が要る
故障のしかた徐々に機能低下(汚れ、摩耗)突然(断線、短絡、接触不良)
保守空気源の質に依存、毎年の分解掃除数年ごとの校正、ヒューズ交換

今は電気式が主流ですが、空気式の調節弁を動かすには最後は空気が要ります。電気信号を空気圧に変える「電空ポジショナ」が調節弁に付いているのはそのためです。

2. なぜ 0 mA ではなく 4 mA から始まるのか

測定値 0% を 0 mA にせず 4 mA に置くことを「底上げ」や「バイアス」と呼びます。教科書はこの底上げに3つの意味があると説明しています。

測定値と統一信号の対応
測定値と統一信号の対応
  1. 信号途絶と測定値ゼロの判別:0 mA が流れてきたら、それは「値がゼロ」ではなく「線が切れた」か「電源が落ちた」。DCS はこれを検知して警報を出せる
  2. 立ち上がりの直線性:電子回路は 0 付近の出力が直線になりにくい。4 mA から使えば、0% 付近でも正確に送れる
  3. 2線式伝送:伝送器は 4 mA 以下の電流で自分の回路を動かせる。つまり 2本の電線で電源と信号を兼ねられる。現場の伝送器に電源線が別に来ていないのはこのため

3つ目が最も実務に効きます。現場の差圧伝送器を見ると、電線は2本しかつながっていません。計器室側から 24 V を送り、伝送器はその電流を 4〜20 mA の範囲で「絞る」ことで値を伝えています。

現場で 0 mA、つまり DCS の表示が測定範囲の下限を突き抜けたときは、計器の故障より先に、電線の断線・端子の緩み・電源の喪失を疑うのが順序です。

3. 計器室の中では電流を電圧に変えて分ける

4〜20 mA の電流は、計器室に入ると 250 Ω の抵抗を通ります。オームの法則で、電流 × 抵抗 が電圧になります。

4 mA × 250 Ω = 1 V、20 mA × 250 Ω = 5 V

つまり 4〜20 mA は 250 Ω で 1〜5 V に変わります。この 250 Ω は精度が要求され、±0.1% の抵抗が使われます。

電圧にする理由は、分配しやすいからです。1つの信号を調節計・記録計・警報設定器に分けたいとき、電流のまま直列に抵抗を並べると、1つの抵抗が外れただけで全部の機器の信号がゼロになります。電圧なら並列につなぐだけで、1台外しても他に影響しません。

この役目を担うのが「ディストリビュータ」です。ディストリビュータは、現場の 2 線式伝送器に 24 V を供給し、電流を 1〜5 V に変え、さらに現場と計器室の回路を電気的に絶縁して、現場側の水の侵入や絶縁低下が他のループへ波及するのを防ぎます。

4. 空気式は遅れ、電気式は突然壊れる

空気式の信号は、空気が圧縮性のため伝送に時間遅れがあります。教科書は伝送距離を 100 m 以内にするのが望ましいとしています。一方で、ノイズや落雷の影響を受けず、防爆の配慮も要らず、故障は「徐々に」現れます。

電気式は応答が速く、DCS との接続も容易ですが、断線・短絡・接触不良で突然壊れます。だからこそ 4 mA の底上げで断線を検知し、無停電電源で電源喪失を防ぐ設計が要ります。

現場の指示調節計や、計器室から遠い小さな設備では、今でも空気式が残っていることがあります。両方の性質を知っておくと、どちらのトラブルかを切り分けやすくなります。

5. 信号をノイズから守る配線の常識

4〜20 mA は電流なので電圧信号よりノイズに強いのですが、それでも動力線の近くを通すと影響を受けます。ノイズには、動力線の大電流が作る磁界による「電磁誘導ノイズ」と、動力線の電圧変化やリレー接点のスパークによる「静電結合ノイズ」があります。

教科書がまとめている対策は次の3段階です。

  1. 離す:動力用モータや大型変圧器から信号線を離す。動力線と信号線を同じ束にしない。どうしても近づくときは直交させ、平行に走らせない。同じダクトに入れるなら金属ダクトを接地し、間を鉄板で仕切る
  2. 接地を分ける:動力用と信号用の接地を別々にし、アース棒の位置も離す
  3. ケーブルで防ぐ:信号線にはツイストペア(撚り線)を使う。撚ってあると、隣り合う線に入るノイズが互いに打ち消し合う。シールド線はどちらか一方の端で一点接地する(受信計側。熱電対は熱電対側)

現場で信号線を延長したり仮設したりするとき、動力線と一緒に束ねるのは禁物です。指示が周期的に揺れる、モータの起動と同時に振れる、といった症状はノイズを疑います。

6. 4〜20 mA の上にデジタル信号を重ねる|HART 通信

現代の伝送器の多くは、4〜20 mA の電流信号の上に小さなデジタル信号を重ねて通信します。代表が HART 通信です。

HART では、測定値だけでなく、伝送器の内部温度、自己診断の結果、ポジショナの弁開度、設定範囲などを読み書きできます。現場に行かずに計器室からレンジを変えたり、ハンドヘルドの通信器を信号線につないでループテストをしたりできます。

ただし、デジタル信号は更新が遅いので、制御そのものは 4〜20 mA のアナログ信号で行い、デジタルは監視と設定に使うのが基本です。

一対の線に複数の機器をつなぐ「フィールドバス」という完全デジタルの方式もあります。配線を減らせる利点がありますが、この記事の範囲では「そういう方式もある」と知っておけば十分です。

7. 現場で見る場所|信号のトラブルを切り分ける

信号が疑わしいとき、見る場所を順に並べます。

  1. DCS の表示:下限を突き抜けて「バッド」や「断線」の表示になっていないか。4 mA 未満は信号途絶の合図
  2. 伝送器の端子箱:電線の緩み、水の侵入、腐食。2本の線の極性
  3. 計器室の端子台・ディストリビュータ:ヒューズ、電源ランプ、1〜5 V の分岐先
  4. 信号線のルート:動力線と同じ束になっていないか、最近工事で動かしていないか

伝送器のゼロ調整を回して 4 mA ちょうどが計器室で 1 V として受かるか確かめる作業を「ループチェック」と呼びます。精度と校正の記事で扱います。

8. 先輩に聞かれたら答えられる3問

  1. 測定値 50% のとき、電流は何 mA、空気圧は何 kPa ですか。
  2. DCS の表示が範囲の下限を突き抜けました。最初に疑うのは何ですか。
  3. 4〜20 mA を 1〜5 V にするには、何 Ω の抵抗を使いますか。

答えは順に、12 mA と 60 kPa、断線・端子の緩み・電源の喪失、250 Ω です。

まとめ

計装の統一信号は電気式が 4〜20 mA、空気式が 20〜100 kPa で、異なるメーカーの機器をつなぐために国際的に決められました。4 mA から始める底上げには、断線の検知、立ち上がりの直線性、2線式伝送の3つの意味があり、現場の伝送器に電線が2本しかないのはこのためです。

計器室では 250 Ω で 1〜5 V に変えて分配し、動力線から離したツイストペアでノイズを防ぎます。空気式は伝送が遅く徐々に壊れ、電気式は速いが突然壊れる。この性質の違いを知っておくと、指示のトラブルをどこから疑うかが決まります。

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参考文献

  • 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 1.4「伝送信号の使い分けとノイズ対策」、1.5「ループの構成方法」、【解説】HART通信とは、表8.1「空気式と電子式の比較」  Amazonで見る
  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』, 11.8.5「伝送部」  最新版をAmazonで見る
  • 横河電機編『計装メーカが書いた フィールド機器・虎の巻』工業技術社, Ⅰ 1.5「通信の変遷」
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