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保安管理技術|腐食と防食の出題|「貴と卑、どちらが溶けるか」が4回問われた【甲種化学】

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困っている人
困っている人

腐食の種類が多すぎて、どれがどの条件で起きるのか整理できない。

異種金属接触腐食で、どちらの金属が溶けるのかいつも自信がない。

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

10年で45記述(国試20・検定25)。両ルートで出る

異種金属接触で溶けるのは「卑」のほう ── 4回問われた

SCCは「材料×環境」の組合せで決まる。材料を替えれば防げる

腐食しろは全面腐食にしか効かない

国試の問3は5年すべてここ。note版の教材が「材料」と書いていた枠は、実データでは腐食でした。

最初に集計結果です。

国家試験技術検定
該当する問問3(5年連続)問4(5年連続)──
記述数202545

国試の問3は「材料の劣化・腐食と防食」です。材料そのもの(熱処理・鋼種)ではありません。

材料そのものは検定の問3で出ます(→ 高圧装置用材料と熱処理)。

実務側の記事は腐食のメカニズム耐食材料の選定環境制御による防食配管の腐食にあります。

最頻出 ── 異種金属接触腐食で溶けるのはどちらか(4回)

年度・問誤りの記述正しくは
R2検定問4ロ炭素鋼と亜鉛が接触すると炭素鋼が腐食亜鉛(卑)が腐食
R3検定問4ロ貴に卑を接触させると貴(プラス側)が促進卑(マイナス側)が促進
R4国試問3イ(同系統)──
R6検定問4ロ(同系統)──

4回とも「貴と卑を逆にする」だけです。ここは絶対に落とせません。

原理 ── 電位の低いほうが溶ける

ガルバニック腐食(異種金属接触腐食)

2つの金属を電解質中で接触させると電池ができる

電位が低い(卑)ほう = アノード = 溶ける

電位が高い(貴)ほう = カソード = 溶けない(守られる)

腐食電位列(海水中、卑 → 貴)

腐食電位列 ── 溶けるのは卑のほう|10年で4回問われた最頻出論点
覚える順

Mg < Zn < Al < 炭素鋼 < 鋳鉄 < ステンレス鋼(活性)

< 鉛 < 錫 < 黄銅 < 銅 < ステンレス鋼(不動態)< チタン < 白金・金

左(卑)ほど溶けやすい。 Mg・Zn・Al が犠牲陽極に使われるのはこのためです。

だから亜鉛めっきが成立する

トタン(亜鉛めっき鋼板)

亜鉛は鉄より

→ 傷がついて鉄が露出しても、亜鉛が優先的に溶けて鉄を守る

犠牲防食

ブリキ(錫めっき鋼板)は逆

錫は鉄より

→ 傷がつくと、鉄のほうが優先的に溶ける

→ めっきが破れたら急速に腐食する

だから缶詰は内面が無傷であることが前提です。凹んだ缶が危ないのはこの理由もあります。

電気防食と犠牲陽極

面積比が効く

危険な組合せ

卑の面積が小さく、貴の面積が大きい → 卑に電流が集中 → 急速に穴があく

例:ステンレス配管に炭素鋼のボルトを使う

逆(卑が大きく貴が小さい)なら、腐食は分散されて緩やかです。

ボルト・ナット・ガスケットの材質選定でこれが問題になります。 小さい部品ほど貴側にすべき。

応力腐食割れ(SCC)── 3条件がそろったときだけ起きる

SCCの3条件(すべて必要)

特定の材料

特定の環境

引張応力

1つでも欠ければ起きません。 だから対策も3方向から打てます。

出た誤り記述① 圧縮応力(令和2年度 国試 問3ロ)

応力腐食割れは、圧縮応力が高い部分に発生しやすい。

× 引張応力を受けているときに生じる。

だからショットピーニングで表面に圧縮残留応力を与えると、SCC対策になります。

溶接部が危ないのは、引張の残留応力があるからです。応力除去焼なまし(PWHT)が有効。

出た誤り記述② フェライト系も割れる(令和3年度 国試 問3ロ)

オーステナイト系およびフェライト系ステンレス鋼は、高温海水環境で塩素イオンに起因する応力腐食割れが生じやすい。

× フェライト系では起こりにくい。

材料塩化物SCC備考
オーステナイト系(SUS304・316)起こりやすい最も注意が必要
フェライト系(SUS430)起こりにくい──
二相ステンレス起こりにくい強度も高い
炭素鋼起こらない(塩化物では)アルカリ・硝酸塩では起きる

「オーステナイト系は塩化物に弱い」が最重要です。海岸のプラントで保温材の下から割れる(外面SCC)事例が多い。

材料と環境の組合せ(これがSCCの本質)

材料SCCを起こす環境
オーステナイト系ステンレス鋼塩化物(+高温)
炭素鋼アルカリ(苛性ぜい化)/硝酸塩/液体アンモニア
黄銅アンモニア(時期割れ)
高強度鋼硫化水素(SSC:硫化物応力腐食割れ)
チタンメタノール/赤煙硝酸

令和3年度 検定 問4ハで「金属の種類ごとに環境が限定される」が正しい記述として出ています。

だから材料を替えれば防げます。 これがSCC対策の最も確実な方法。

水素脆化型のSCC(令和2年度 検定 問4ハ・正しい記述)

応力腐食割れには、腐食によって生じた水素が金属内部に侵入する結果、引張応力下で脆化を生じて割れるタイプがある。このタイプは高張力鋼のような強度の高い特定の材料に起こりやすい。

硫化物応力腐食割れ(SSC)

硫化水素環境で発生

腐食で発生した水素が鋼中に侵入

硬さが高いほど起こりやすい

→ 対策は硬さの制限(HRC 22以下など、NACE MR0175)

SSCは「強い材料ほど危ない」という、直感に反する現象です。

だから溶接部の硬さ管理が重要になります。溶接で硬化した部分が割れる。

腐食のメカニズム溶接による硬化

局部腐食 ── 腐食しろでは防げない

出た誤り記述(令和2年度 検定 問4ホ)

腐食しろを付加することは、侵食速度が大きい局部腐食の対策として最適の方法である。

× 局部腐食には有効ではない。

なぜ効かないか

全面腐食:均一に薄くなる → 厚みを足せば寿命が延びる

局部腐食一点だけが急速に深くなる → 厚みを足しても、その点が早く貫通する

腐食しろは全面腐食向けの対策です。局部腐食には材料変更か環境制御で対応します。

局部腐食の種類

種類起きる条件特徴
孔食(ピッチング)塩化物イオン+不動態皮膜小さな穴が深く進む
すきま腐食すきま部の酸素濃淡ガスケット下・堆積物下
粒界腐食鋭敏化(500〜800℃)溶接熱影響部
異種金属接触腐食電位差+電解質卑側が溶ける
エロージョン・コロージョン高流速+乱れエルボ・オリフィス下流

孔食と塩化物イオン(正しい記述として出題)

令和3年度 国試 問3ハ

ステンレス鋼の孔食が塩化物イオンを含む環境で起こるのは、塩化物イオンが不動態皮膜を局所的に破壊するためである。

令和6年度 問3イでは、これを「発生することはない」と裏返した誤りが出ています。

孔食が進行する仕組み(自己触媒的)

① 塩化物イオンが不動態皮膜を局所的に破る

② その部分がアノード(溶ける側)になる

③ 金属イオンが加水分解して穴の中が酸性化

④ 酸性になるとますます溶ける → 加速する

穴が深いほど中の環境が悪化するので、いったん始まると止まりません。

対策は Mo 添加(SUS316)。Mo が不動態皮膜の再生を助けます。

PREN(耐孔食指数)= %Cr + 3.3×%Mo + 16×%N という指標があります。

ステンレス鋼の選び方

粒界腐食の対策(正しい記述として2回出題)

令和2年度 国試 問3イ・令和5年度 問3ニ

溶接熱影響部に生じる粒界腐食を発生しにくくするために、炭素量の少ない材料を使用した。

SUS304L の存在理由です。→ SUS316と304Lの違い

全面腐食と不動態 ── 濃度で挙動が変わる

溶存酸素があれば炭素鋼は腐食する(2回出題)

正しい記述(令和2年度 検定 問4イ)

中性の水溶液において、溶存酸素が存在すると炭素鋼の腐食が進行する。

誤り記述(令和3年度 検定 問4ホ)

炭素鋼とステンレス鋼を接触させて中性の食塩水中に入れたとき、溶存酸素が存在しても炭素鋼は腐食しない

×

腐食反応の組み立て

アノード(陽極):Fe → Fe²⁺ + 2e⁻(金属が溶ける

カソード(陰極)

 中性・アルカリ性 → O₂ + 2H₂O + 4e⁻ → 4OH⁻(溶存酸素が電子を受け取る)

 酸性 → 2H⁺ + 2e⁻ → H₂(水素イオンが受け取る)

カソード反応がなければ腐食は進みません。 中性域では溶存酸素がその役目を担います。

だから脱酸素が最も基本的な防食です。ボイラ給水の脱気、密閉系の窒素シール。

ヘンリーの法則(溶存酸素)環境制御による防食

硫酸の濃度で挙動が変わる(令和2年度 国試 問3ハ・正しい記述)

18Cr-8Ni ステンレス鋼は、不動態皮膜が溶解する塩酸中・希硫酸中では腐食するが、不動態皮膜が安定な濃硫酸中では腐食しない

濃いほうが安全という、直感に反する例です。

なぜ濃硫酸では腐食しないか

濃硫酸は強い酸化性を持つ

→ 表面に不動態皮膜を作らせる

→ 保護される

だから濃硫酸は炭素鋼のタンクでも貯蔵できます。 ただし希釈されると急激に腐食する。

「濃硫酸タンクに水が入って穴があいた」という事故は実際に起きています。

硝酸も同じで、濃硝酸は鉄・アルミを不動態化させます。

高温での劣化 ── 水素侵食が3回出た

水素侵食(3回出題)

正しい記述(令和2年度 検定 問4ニ)

高温高圧の水素ガス環境で、水素が鋼中の炭化物(セメンタイト)と反応して生成したメタンガス結晶粒界に蓄積し、その圧力で多数の微細なき裂を生じて鋼の機械的性質を低下させる現象。

メカニズム

① 水素原子が鋼中に侵入

Fe₃C + 4H → 3Fe + CH₄(炭化物を分解)

メタンは鋼中を拡散できないので粒界に溜まる

④ 内圧で粒界にき裂ができる

不可逆(元に戻らない)

水素脆化とは別の現象です。水素脆化は可逆(水素が抜ければ回復)、水素侵食は不可逆。

水素脆化水素侵食
温度域常温付近高温(200℃以上)
機構水素原子が格子に侵入炭化物と反応してメタン生成
可逆性可逆(脱水素で回復)不可逆
対策硬さ制限・脱水素処理Cr-Mo鋼の使用

対策は Cr・Mo の添加です。安定な炭化物を作り、水素と反応させない。

ネルソン線図で、温度と水素分圧から使用可能な鋼種を選びます。

材料の劣化Cr-Mo鋼

Cr-Mo鋼の焼戻し脆化(令和2年度 国試 問3ニ・正しい記述)

Cr-Mo鋼は高温クリープ特性が優れているため高温の反応器などに使用されるが、不純物の偏析に起因する焼戻し脆化の感受性が高い。

水素侵食対策で使うCr-Mo鋼に、別の弱点があるという構図です。

起動・停止時の低温で脆性破壊するリスクがあるため、昇温降温の管理が必要になります。

高温ガス腐食とバナジウムアタック

正しい記述(令和3年度 検定 問4ニ)

高温ガス腐食には、高温のガスが金属と反応して生じる腐食のほか、高温のガスによって生じる付着物による腐食も含まれる。

バナジウムアタック(令和3年度 検定 問4イ)

重油中のバナジウムが燃焼して V₂O₅ になる

V₂O₅ の融点は約690℃と低い

→ 溶けて金属表面に付着し、酸化皮膜を溶かす

対策:CaO・MgO を添加して融点を上げる

付着物の融点を上げて、溶けないようにするという対策です。

ガスタービン・ボイラの高温部で問題になります。

クロムモリブデン鋼の耐酸化性(令和3年度 国試 問3ニ・正しい記述)

クロムモリブデン鋼は、クロムの酸化物皮膜を生成し、皮膜は緻密で保護性があるので、炭素鋼に比べて耐酸化性に優れている。

Cr₂O₃ の皮膜が緻密なのがポイントです。鉄の酸化物(スケール)は多孔質で保護性がありません。

この分野の対策

  1. 貴と卑、溶けるのは卑(4回出た。腐食電位列を書けるように)
  2. SCCの3条件材料×環境の組合せ
  3. 腐食しろは全面腐食にしか効かない
  4. 水素脆化と水素侵食の違い(可逆/不可逆)

①だけで誤りの3分の1以上が切れます。

読み方の手順

  1. 金属名が2つ出てきたら電位を比べる(卑が溶ける)
  2. SCCが出たら材料と環境の組合せを確認
  3. 「〜しない」「〜ことはない」を疑う
  4. 濃度・温度の条件に注意(濃硫酸は腐食しない等)

よくある失点

失点対策
貴と卑を逆にする卑(電位が低い)が溶ける
SCCが圧縮応力で起きると思う引張応力
フェライト系も塩化物SCCを起こすと思うオーステナイト系だけ
腐食しろが局部腐食に効くと思う全面腐食向け
水素脆化と水素侵食を混同常温・可逆/高温・不可逆
濃硫酸で腐食すると思う不動態化して腐食しない

暗記カードにするならこれだけ

異種金属接触(4回出た)

卑(電位が低い)が溶ける

電位列:Mg < Zn < Al < 鋼 < ステンレス < 銅 < チタン

亜鉛めっき=犠牲防食錫めっき=傷がつくと鉄が溶ける

卑の面積が小さいと危険(ステンレス配管に炭素鋼ボルト)

SCC

3条件:特定の材料 × 特定の環境 × 引張応力

オーステナイト系×塩化物/炭素鋼×アルカリ・硝酸塩/黄銅×アンモニア/高強度鋼×H₂S

フェライト系は塩化物SCCを起こしにくい

対策:材料変更・応力除去(PWHT)・圧縮残留応力

局部腐食

腐食しろは全面腐食にしか効かない

孔食=塩化物イオンが不動態皮膜を破る(対策はMo添加)

粒界腐食=鋭敏化(対策は低炭素化・Ti/Nb安定化)

高温・その他

水素侵食=メタン生成=不可逆(対策はCr-Mo鋼)

水素脆化=常温・可逆

Cr-Mo鋼は焼戻し脆化に注意

バナジウムアタック=V₂O₅(融点690℃)→ CaO・MgO添加

中性では溶存酸素がカソード反応を担う

濃硫酸ではステンレスは不動態化して腐食しない

まとめ

  • 国試の問3・検定の問4がここ。10年で45記述
  • 異種金属接触で溶けるのは卑(4回すり替えられた)
  • SCCは引張応力で起きる。圧縮応力ではない
  • SCCは材料×環境の組合せ。フェライト系は塩化物SCCを起こしにくい
  • 腐食しろは全面腐食にしか効かない
  • 孔食は塩化物が不動態皮膜を局所的に破ることから始まる
  • 水素侵食は不可逆(メタン生成)。水素脆化とは別物
  • 中性では溶存酸素がカソード反応を担う。だから脱酸素が基本
  • 濃硫酸ではステンレスは不動態化して腐食しない

次は防爆と静電気です。危険場所の区分と防爆構造の対応を扱います。→ 防爆と静電気の出題

実務側は腐食のメカニズム耐食材料の選定環境制御による防食、材料そのものは高圧装置用材料と熱処理ステンレス鋼の選び方へ。

出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計150問671記述を筆者が1記述ずつ分解して独自に行ったものです。設問の要約と解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。