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学識・型4|熱力学の状態変化は「何がゼロか」で9割決まる|等温・定圧・定容・断熱【甲種化学】

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困っている人
困っている人

4つの状態変化の式が多すぎて、どれがどれだか覚えられない。

ΔU・ΔH・W・Q のうち、何を先に出せばいいのか分からない。

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

覚えるのは「何がゼロか」の4行だけ

10回中8回に登場(主5・従3)。実質すべての年で使う

可逆断熱変化 pV^γ = 一定 の3つの形

エントロピーとカルノーサイクルのT-S線図の読み方

単独で大問になるだけでなく、他の型の中でも部品として出てきます。土台にあたる型です。

この型は、覚える量を極限まで減らせます。

熱力学第一法則 ΔU = Q − W と、各変化で何がゼロになるか。この2つだけ。

式を4つ×4項目=16個覚えるのではなく、1つの法則と4つのゼロから毎回導きます。

型別の全体像は学識の計算は「10の型」しか出ないを参照してください。

10回中8回に登場する

年度・ルート・問テーマ主/従
R3 国試 問2可逆断熱変化 pV^1.4 = 一定
R5 国試 問2蒸発のエントロピー・断熱膨張
R6 国試 問2逆カルノーサイクルの T-S 線図
R3 検定 問2定容加熱・可逆断熱膨張
R5 検定 問2エントロピーの定義・等エントロピー膨張
R5 国試 問1ヘリウム-酸素混合気の定容モル熱容量
R3 検定 問1窒素-水蒸気の冷却凝縮(顕熱計算)
R5 検定 問6(2)可逆カルノーサイクルと効率式(記述)

可逆断熱変化が3回、エントロピーが2回、カルノーが2回。 この3つで押さえられます。

なお検定の問6(4つから3つ選ぶ記述)では、純物質のp-V線図・カルノーサイクルと効率式・モル熱容量とマイヤーの関係が出ています。計算だけでなく記述でも問われるのがこの型の特徴です(→ 問6の記述問題)。

覚えるのはこの4行だけ

熱力学第一法則

ΔU = Q − W

ΔU:内部エネルギー変化、Q:系が受け取った熱、W:系がした仕事

変化ゼロになるもの結果
等温(T一定)ΔU = 0
(ΔH = 0)
Q = W 受け取った熱がそのまま仕事に
定圧(p一定)──Q = ΔH 受け取った熱=エンタルピー変化
定容(V一定)W = 0Q = ΔU 受け取った熱がすべて内部エネルギーに
断熱Q = 0ΔU = −W 仕事をした分だけ内部エネルギーが減る

この表が型4のすべてです。 問題文の「等温で」「断熱的に」を読んだ瞬間に、1つの項が消えます。

なぜ等温で ΔU = 0 なのか

理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まるからです。分子間力がないので、体積が変わっても内部エネルギーは変わりません。

同じ理由で ΔH = 0 にもなります(H = U + pV、理想気体なら pV = nRT で温度だけの関数)。

実在気体では成り立ちません。 分子間力があるので、等温膨張でも内部エネルギーが変わります(ジュール・トムソン効果)。→ 型2|実在気体

計算式(導けるが、書けたほうが速い)

変化W(系がした仕事)QΔU
等温nRT ln(V₂/V₁)=W0
定圧pΔV = nRΔTnCpΔTnCvΔT
定容0nCvΔT=Q
断熱−nCvΔT0nCvΔT

ΔU = nCvΔT はどの変化でも成り立ちます。 理想気体なら内部エネルギーは温度だけの関数だからです。

これは強力です。「定容変化でなくても Cv を使う」 ── ここで混乱する人がとても多い。

同様に ΔH = nCpΔT もどの変化でも成り立ちます。

熱力学第一法則と4つの状態変化は熱力学第一法則と4つの状態変化で詳しく扱います。

可逆断熱変化 ── 10回中3回。3つの形を使い分ける

ポアソンの式(3つは同値)

pV^γ = 一定

TV^(γ−1) = 一定

T p^((1−γ)/γ) = 一定 (= T^γ p^(1−γ) = 一定)

γ = Cp/Cv(比熱比)。単原子分子で 1.67、二原子分子(空気・N₂・O₂)で 1.40

R3国試問2で「pV^1.4 = 一定」と与えられていたのは、二原子分子だからです。

どれを使うか ── 与えられた量で選ぶ

与えられているもの使う形
圧力と体積pV^γ = 一定
温度と体積TV^(γ−1) = 一定
温度と圧力T p^((1−γ)/γ) = 一定

3つとも pV = nRT で行き来できます。 覚えるのが面倒なら pV^γ だけ覚えて、その場で変換しても構いません。

ミニ例題

空気(γ=1.40)を 100 kPa、300 K から 500 kPa まで可逆断熱圧縮した。到達温度は?

〔解答〕

T p^((1−γ)/γ) = 一定 より

T₂/T₁ = (p₂/p₁)^((γ−1)/γ) = 5^(0.4/1.4) = 5^0.2857

log 5^0.2857 = 0.2857 × 0.699 = 0.1997

10^0.1997 = 1.584

T₂ = 300 × 1.584 = 475 K(202℃)

指数計算も対数表で処理します。 log を取って掛けて、逆引き。型9のTNT換算とまったく同じ操作です。

断熱圧縮すると温度が上がる ── これが断熱圧縮による発火圧縮機の多段化の理由です。

等温圧縮と断熱圧縮の比較(記述で問われる)

等温圧縮断熱圧縮
温度一定上がる
同じ圧力比に必要な仕事小さい大きい
p-V線図の傾き緩い(pV=一定)(pV^γ=一定、γ>1)
実現性無限にゆっくり冷やす必要速い圧縮に近い

だから圧縮機は多段にして途中で冷却します。 等温圧縮に近づけて動力を減らすためです。

この話は型5|圧縮機の理論動力につながります。

エントロピー ── 10回中2回

定義

dS = δQ_rev / T

→ 可逆過程で系が受け取った熱を、そのときの絶対温度で割ったもの

よく使う3つの形

① 相変化(等温等圧)

ΔS = ΔH / T

例:水の蒸発 ΔS = 40,700 / 373 = 109 J/(mol·K)

② 理想気体の等温変化

ΔS = nR ln(V₂/V₁) = −nR ln(p₂/p₁)

③ 温度変化(定圧)

ΔS = nCp ln(T₂/T₁)

①はR5国試問2で「蒸発のエントロピー」として出ました。 潜熱を温度で割るだけです。

等エントロピー変化 = 可逆断熱変化

断熱(Q=0)かつ可逆なら、dS = δQ/T = 0。つまり ΔS = 0

「等エントロピー膨張」と書いてあったら、可逆断熱膨張のことです。 R5検定問2がこの形でした。

だから使う式は pV^γ = 一定。言い換えられているだけで、中身は同じ。

不可逆だとどうなるか

過程ΔS
可逆断熱= 0
不可逆断熱> 0(増大する)
孤立系全体≧ 0(熱力学第二法則)

実際の圧縮機・タービンは不可逆なので、エントロピーが増えます。その分だけ効率が落ちる

等エントロピー効率(断熱効率)は、理想の等エントロピー変化と実際の差として定義されます。実機の性能評価はここから来ています。

エントロピーとカルノーサイクルはエントロピーとカルノーサイクルで扱います。

カルノーサイクルと T-S 線図 ── 10回中2回

4つの過程

等温膨張(高温 T_H で熱 Q_H を受け取る)

断熱膨張(温度が T_H → T_L へ)

等温圧縮(低温 T_L で熱 Q_L を捨てる)

断熱圧縮(温度が T_L → T_H へ)

T-S線図では長方形になる

これが T-S 線図を使う理由です。

  • 等温変化 → 横線(Tが一定)
  • 断熱可逆変化 → 縦線(Sが一定)
  • → 4つ合わせて長方形
線図から読めること

面積 = 熱量(T-S線図では ∫TdS = Q)

上辺の下の面積 = 受け取った熱 Q_H = T_H ΔS

下辺の下の面積 = 捨てた熱 Q_L = T_L ΔS

長方形の面積 = 正味の仕事 W = (T_H − T_L)ΔS

だから効率が温度だけで決まります。 ΔS が約分で消えるからです。

熱効率

η = W / Q_H = (T_H − T_L) / T_H = 1 − T_L/T_H

絶対温度で計算します。 摂氏で計算すると全然違う値になります。

逆カルノー(冷凍サイクル)── R6国試問2

サイクルを逆回しにすると、仕事を加えて低温側から熱を汲み上げる装置になります。

成績係数(COP)

冷凍機:COP = Q_L / W = T_L / (T_H − T_L)

ヒートポンプ:COP = Q_H / W = T_H / (T_H − T_L)

COP_HP = COP_冷凍 + 1

COPは1を超えます。 熱効率とは違い、「汲み上げた熱/投入した仕事」なので。ここを効率と混同しないでください。

温度差が小さいほど COP は大きい。 だから冷凍機は、必要以上に低い温度を作らないほうが効率的です。

冷凍サイクルの詳細は型5|圧縮機動力と冷凍サイクル冷凍サイクルとCOPで扱います。

Cp と Cv、マイヤーの関係 ── 従として何度も出る

マイヤーの関係(理想気体)

Cp − Cv = R

γ = Cp / Cv

なぜ Cp のほうが大きいのか

定圧で加熱すると、気体は膨張して外に仕事をします。 その分だけ余分に熱が要る。

定容なら膨張しないので、加えた熱がすべて温度上昇に使われます。差がちょうど R

記述問題で「CpとCvはなぜRだけ違うか」がそのまま出ています(R6検定問6(1))。

分子の形で決まる値

分子CvCpγ
単原子(He, Ar)(3/2)R = 12.5(5/2)R = 20.81.67
二原子(N₂, O₂, 空気)(5/2)R = 20.8(7/2)R = 29.11.40
多原子(CO₂ ほか)3R 程度4R 程度1.3程度

自由度の数だけ (1/2)R ずつ増えます。 単原子は並進3方向だけ、二原子は回転2方向が加わる。

混合気体の熱容量(R5国試問1)

モル分率で加重平均

Cv,mix = Σ(yᵢ × Cv,ᵢ)

ヘリウム40 mol%、酸素60 mol% の混合気体の定容モル熱容量は?

〔解答〕

Cv,mix = 0.40×12.5 + 0.60×20.8

= 5.0 + 12.5 = 17.5 J/(mol·K)

質量分率ではなくモル分率です。モル熱容量なので当然ですが、ここを間違える人がいます。

比熱とマイヤーの関係は比熱・マイヤーの関係・比熱比で扱います。

この型の練習のしかた

  1. 「何がゼロか」の4行を白紙に書く(30秒でできるように)
  2. ΔU = nCvΔT はどの変化でも成り立つを頭に入れる
  3. 可逆断熱の3つの形を、pV=nRT から導いてみる(1回やれば覚える)
  4. T-S線図でカルノーが長方形になることを図で描く
  5. 指数計算を対数表で1回(5^0.2857 のような形)

①と②で型4の半分は取れます。 式を覚えるのではなく、消える項を見つける訓練です。

よくある失点

失点対策
等温で Q = 0 と思う等温はΔU = 0。Q=0 は断熱
断熱変化で Cp を使うΔU にはいつでも Cv
カルノー効率を摂氏で計算絶対温度(+273.15)
COPと熱効率を混同COPは1を超える。η = 1 − T_L/T_H とは別物
γ を1.4固定で使う単原子は1.67。問題文の気体を確認
指数計算で手が止まるlog を取って掛けて逆引き

暗記カードにするならこれだけ

何がゼロか(これが本体)

等温:ΔU = 0 → Q = W

定圧:Q = ΔH

定容:W = 0 → Q = ΔU

断熱:Q = 0 → ΔU = −W

いつでも成り立つ2つ

ΔU = nCvΔT(どの変化でも)

ΔH = nCpΔT(どの変化でも)

可逆断熱(=等エントロピー)

pV^γ = 一定TV^(γ−1) = 一定T p^((1−γ)/γ) = 一定

γ:単原子 1.67/二原子 1.40

ΔS = 0

エントロピー

dS = δQ_rev / T

相変化:ΔS = ΔH/T

等温:ΔS = nR ln(V₂/V₁)

不可逆断熱では ΔS > 0

カルノー

T-S線図で長方形(等温=横線、断熱=縦線)

η = 1 − T_L/T_H(絶対温度)

冷凍 COP = T_L/(T_H−T_L)/ヒートポンプは +1

熱容量

Cp − Cv = R(マイヤー)

差がRなのは定圧では膨張仕事の分だけ余分に熱が要るから

混合気体はモル分率で加重平均

まとめ

  • 型4は10回中8回に登場(主5・従3)。土台にあたる型
  • 覚えるのは「何がゼロか」の4行だけ
  • ΔU = nCvΔT はどの変化でも成り立つ(定容変化専用ではない)
  • 可逆断熱=等エントロピー。pV^γ = 一定の3つの形を使い分ける
  • 断熱圧縮で温度が上がる ── 多段圧縮・中間冷却の理由
  • T-S線図でカルノーは長方形。だから効率が温度だけで決まる
  • COPは1を超える。熱効率と混同しない
  • Cp − Cv = R の理由(膨張仕事)は記述でも出る

次は型1(理想気体・混合気体)です。10回中5回、「取り出し問題」の解き方が軸になります。→ 型1|理想気体と混合気体

型の全体像は計算10の型、学識全体の攻略は学識の出題マップへ。

出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に仕分けして独自に行ったものです。設問の要約と解法の解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。