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4つの状態変化の式が多すぎて、どれがどれだか覚えられない。
ΔU・ΔH・W・Q のうち、何を先に出せばいいのか分からない。
そんな悩みを解決します。
覚えるのは「何がゼロか」の4行だけ
10回中8回に登場(主5・従3)。実質すべての年で使う
可逆断熱変化 pV^γ = 一定 の3つの形
エントロピーとカルノーサイクルのT-S線図の読み方

単独で大問になるだけでなく、他の型の中でも部品として出てきます。土台にあたる型です。
この型は、覚える量を極限まで減らせます。
式を4つ×4項目=16個覚えるのではなく、1つの法則と4つのゼロから毎回導きます。
型別の全体像は学識の計算は「10の型」しか出ないを参照してください。
10回中8回に登場する
| 年度・ルート・問 | テーマ | 主/従 |
|---|---|---|
| R3 国試 問2 | 可逆断熱変化 pV^1.4 = 一定 | 主 |
| R5 国試 問2 | 蒸発のエントロピー・断熱膨張 | 主 |
| R6 国試 問2 | 逆カルノーサイクルの T-S 線図 | 主 |
| R3 検定 問2 | 定容加熱・可逆断熱膨張 | 主 |
| R5 検定 問2 | エントロピーの定義・等エントロピー膨張 | 主 |
| R5 国試 問1 | ヘリウム-酸素混合気の定容モル熱容量 | 従 |
| R3 検定 問1 | 窒素-水蒸気の冷却凝縮(顕熱計算) | 従 |
| R5 検定 問6(2) | 可逆カルノーサイクルと効率式(記述) | 従 |
なお検定の問6(4つから3つ選ぶ記述)では、純物質のp-V線図・カルノーサイクルと効率式・モル熱容量とマイヤーの関係が出ています。計算だけでなく記述でも問われるのがこの型の特徴です(→ 問6の記述問題)。
覚えるのはこの4行だけ
ΔU = Q − W
ΔU:内部エネルギー変化、Q:系が受け取った熱、W:系がした仕事
| 変化 | ゼロになるもの | 結果 |
|---|---|---|
| 等温(T一定) | ΔU = 0 (ΔH = 0) | Q = W 受け取った熱がそのまま仕事に |
| 定圧(p一定) | ── | Q = ΔH 受け取った熱=エンタルピー変化 |
| 定容(V一定) | W = 0 | Q = ΔU 受け取った熱がすべて内部エネルギーに |
| 断熱 | Q = 0 | ΔU = −W 仕事をした分だけ内部エネルギーが減る |
なぜ等温で ΔU = 0 なのか
理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まるからです。分子間力がないので、体積が変わっても内部エネルギーは変わりません。
同じ理由で ΔH = 0 にもなります(H = U + pV、理想気体なら pV = nRT で温度だけの関数)。
計算式(導けるが、書けたほうが速い)
| 変化 | W(系がした仕事) | Q | ΔU |
|---|---|---|---|
| 等温 | nRT ln(V₂/V₁) | =W | 0 |
| 定圧 | pΔV = nRΔT | nCpΔT | nCvΔT |
| 定容 | 0 | nCvΔT | =Q |
| 断熱 | −nCvΔT | 0 | nCvΔT |
ΔU = nCvΔT はどの変化でも成り立ちます。 理想気体なら内部エネルギーは温度だけの関数だからです。
同様に ΔH = nCpΔT もどの変化でも成り立ちます。
熱力学第一法則と4つの状態変化は熱力学第一法則と4つの状態変化で詳しく扱います。
可逆断熱変化 ── 10回中3回。3つの形を使い分ける
pV^γ = 一定
TV^(γ−1) = 一定
T p^((1−γ)/γ) = 一定 (= T^γ p^(1−γ) = 一定)
γ = Cp/Cv(比熱比)。単原子分子で 1.67、二原子分子(空気・N₂・O₂)で 1.40。
どれを使うか ── 与えられた量で選ぶ
| 与えられているもの | 使う形 |
|---|---|
| 圧力と体積 | pV^γ = 一定 |
| 温度と体積 | TV^(γ−1) = 一定 |
| 温度と圧力 | T p^((1−γ)/γ) = 一定 |
3つとも pV = nRT で行き来できます。 覚えるのが面倒なら pV^γ だけ覚えて、その場で変換しても構いません。
ミニ例題
空気(γ=1.40)を 100 kPa、300 K から 500 kPa まで可逆断熱圧縮した。到達温度は?
〔解答〕
T p^((1−γ)/γ) = 一定 より
T₂/T₁ = (p₂/p₁)^((γ−1)/γ) = 5^(0.4/1.4) = 5^0.2857
log 5^0.2857 = 0.2857 × 0.699 = 0.1997
10^0.1997 = 1.584
T₂ = 300 × 1.584 = 475 K(202℃)
断熱圧縮すると温度が上がる ── これが断熱圧縮による発火や圧縮機の多段化の理由です。
等温圧縮と断熱圧縮の比較(記述で問われる)
| 等温圧縮 | 断熱圧縮 | |
|---|---|---|
| 温度 | 一定 | 上がる |
| 同じ圧力比に必要な仕事 | 小さい | 大きい |
| p-V線図の傾き | 緩い(pV=一定) | 急(pV^γ=一定、γ>1) |
| 実現性 | 無限にゆっくり冷やす必要 | 速い圧縮に近い |
だから圧縮機は多段にして途中で冷却します。 等温圧縮に近づけて動力を減らすためです。
エントロピー ── 10回中2回
dS = δQ_rev / T
→ 可逆過程で系が受け取った熱を、そのときの絶対温度で割ったもの
よく使う3つの形
ΔS = ΔH / T
例:水の蒸発 ΔS = 40,700 / 373 = 109 J/(mol·K)
ΔS = nR ln(V₂/V₁) = −nR ln(p₂/p₁)
ΔS = nCp ln(T₂/T₁)
①はR5国試問2で「蒸発のエントロピー」として出ました。 潜熱を温度で割るだけです。
等エントロピー変化 = 可逆断熱変化
断熱(Q=0)かつ可逆なら、dS = δQ/T = 0。つまり ΔS = 0。
だから使う式は pV^γ = 一定。言い換えられているだけで、中身は同じ。
不可逆だとどうなるか
| 過程 | ΔS |
|---|---|
| 可逆断熱 | = 0 |
| 不可逆断熱 | > 0(増大する) |
| 孤立系全体 | ≧ 0(熱力学第二法則) |
実際の圧縮機・タービンは不可逆なので、エントロピーが増えます。その分だけ効率が落ちる。
エントロピーとカルノーサイクルはエントロピーとカルノーサイクルで扱います。
カルノーサイクルと T-S 線図 ── 10回中2回
① 等温膨張(高温 T_H で熱 Q_H を受け取る)
② 断熱膨張(温度が T_H → T_L へ)
③ 等温圧縮(低温 T_L で熱 Q_L を捨てる)
④ 断熱圧縮(温度が T_L → T_H へ)
T-S線図では長方形になる
これが T-S 線図を使う理由です。
- 等温変化 → 横線(Tが一定)
- 断熱可逆変化 → 縦線(Sが一定)
- → 4つ合わせて長方形
面積 = 熱量(T-S線図では ∫TdS = Q)
上辺の下の面積 = 受け取った熱 Q_H = T_H ΔS
下辺の下の面積 = 捨てた熱 Q_L = T_L ΔS
長方形の面積 = 正味の仕事 W = (T_H − T_L)ΔS
η = W / Q_H = (T_H − T_L) / T_H = 1 − T_L/T_H
絶対温度で計算します。 摂氏で計算すると全然違う値になります。
逆カルノー(冷凍サイクル)── R6国試問2
サイクルを逆回しにすると、仕事を加えて低温側から熱を汲み上げる装置になります。
冷凍機:COP = Q_L / W = T_L / (T_H − T_L)
ヒートポンプ:COP = Q_H / W = T_H / (T_H − T_L)
→ COP_HP = COP_冷凍 + 1
温度差が小さいほど COP は大きい。 だから冷凍機は、必要以上に低い温度を作らないほうが効率的です。
冷凍サイクルの詳細は型5|圧縮機動力と冷凍サイクル/冷凍サイクルとCOPで扱います。
Cp と Cv、マイヤーの関係 ── 従として何度も出る
Cp − Cv = R
γ = Cp / Cv
なぜ Cp のほうが大きいのか
定圧で加熱すると、気体は膨張して外に仕事をします。 その分だけ余分に熱が要る。
定容なら膨張しないので、加えた熱がすべて温度上昇に使われます。差がちょうど R。
分子の形で決まる値
| 分子 | Cv | Cp | γ |
|---|---|---|---|
| 単原子(He, Ar) | (3/2)R = 12.5 | (5/2)R = 20.8 | 1.67 |
| 二原子(N₂, O₂, 空気) | (5/2)R = 20.8 | (7/2)R = 29.1 | 1.40 |
| 多原子(CO₂ ほか) | 3R 程度 | 4R 程度 | 1.3程度 |
自由度の数だけ (1/2)R ずつ増えます。 単原子は並進3方向だけ、二原子は回転2方向が加わる。
混合気体の熱容量(R5国試問1)
Cv,mix = Σ(yᵢ × Cv,ᵢ)
ヘリウム40 mol%、酸素60 mol% の混合気体の定容モル熱容量は?
〔解答〕
Cv,mix = 0.40×12.5 + 0.60×20.8
= 5.0 + 12.5 = 17.5 J/(mol·K)
比熱とマイヤーの関係は比熱・マイヤーの関係・比熱比で扱います。
この型の練習のしかた
- 「何がゼロか」の4行を白紙に書く(30秒でできるように)
- ΔU = nCvΔT はどの変化でも成り立つを頭に入れる
- 可逆断熱の3つの形を、pV=nRT から導いてみる(1回やれば覚える)
- T-S線図でカルノーが長方形になることを図で描く
- 指数計算を対数表で1回(5^0.2857 のような形)
よくある失点
| 失点 | 対策 |
|---|---|
| 等温で Q = 0 と思う | 等温はΔU = 0。Q=0 は断熱 |
| 断熱変化で Cp を使う | ΔU にはいつでも Cv |
| カルノー効率を摂氏で計算 | 絶対温度(+273.15) |
| COPと熱効率を混同 | COPは1を超える。η = 1 − T_L/T_H とは別物 |
| γ を1.4固定で使う | 単原子は1.67。問題文の気体を確認 |
| 指数計算で手が止まる | log を取って掛けて逆引き |
暗記カードにするならこれだけ
等温:ΔU = 0 → Q = W
定圧:Q = ΔH
定容:W = 0 → Q = ΔU
断熱:Q = 0 → ΔU = −W
ΔU = nCvΔT(どの変化でも)
ΔH = nCpΔT(どの変化でも)
pV^γ = 一定/TV^(γ−1) = 一定/T p^((1−γ)/γ) = 一定
γ:単原子 1.67/二原子 1.40
ΔS = 0
dS = δQ_rev / T
相変化:ΔS = ΔH/T
等温:ΔS = nR ln(V₂/V₁)
不可逆断熱では ΔS > 0
T-S線図で長方形(等温=横線、断熱=縦線)
η = 1 − T_L/T_H(絶対温度)
冷凍 COP = T_L/(T_H−T_L)/ヒートポンプは +1
Cp − Cv = R(マイヤー)
差がRなのは定圧では膨張仕事の分だけ余分に熱が要るから
混合気体はモル分率で加重平均
まとめ
- 型4は10回中8回に登場(主5・従3)。土台にあたる型
- 覚えるのは「何がゼロか」の4行だけ
- ΔU = nCvΔT はどの変化でも成り立つ(定容変化専用ではない)
- 可逆断熱=等エントロピー。pV^γ = 一定の3つの形を使い分ける
- 断熱圧縮で温度が上がる ── 多段圧縮・中間冷却の理由
- T-S線図でカルノーは長方形。だから効率が温度だけで決まる
- COPは1を超える。熱効率と混同しない
- Cp − Cv = R の理由(膨張仕事)は記述でも出る
次は型1(理想気体・混合気体)です。10回中5回、「取り出し問題」の解き方が軸になります。→ 型1|理想気体と混合気体
型の全体像は計算10の型、学識全体の攻略は学識の出題マップへ。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に仕分けして独自に行ったものです。設問の要約と解法の解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。
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