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「あの配管、揺れていないか」。巡回でそう気づいたとき、すぐにサポートを足したり、Uボルトを締め直したりしたくなります。ところが、配管振動には原因の違う型がいくつもあり、型によって効く対策がまったく違います。支持を増やすと止まる振動もあれば、支持を増やしても止まらない振動、支持を増やしたせいで熱膨張の逃げ場がなくなる場合もあります。
配管は細く長く、サポートの間隔は管径の20〜80倍ほどもあります。軸と直角の方向に曲がりやすく、本質的に揺れやすい構造物です。そのうえ、ポンプや圧縮機、弁、流れそのものが、揺らす力を配管に送り込んでいます。
この記事では、運転中に定常的に続く振動を扱います。弁の急閉やポンプ停止で一度だけ走る圧力波(ウォータハンマ)は過渡現象なので、ポンプ停止時のウォーターハンマで扱います。
この記事の結論
- 揺れている配管で最初に確かめるのは「何Hzで、何につられて揺れているか」です。支持を足すのは原因の型を決めてからにします。
- ただしその前に、小口径の枝管の付け根、計器配管の継手、ねじ部ににじみや割れがないかを見ます。振動で最初に割れるのはここです。
- 振動の周波数は、近くの回転機の回転周波数N(回転数rpm÷60)を物差しにして「その何倍か」で読みます。
- 回転数や流量を変えて、周波数がついてくるか、動かないかを見ます。動かないなら、配管や管内の気柱の固有振動数での共振、または自励振動を疑います。
- 気柱共振は管長と音速で決まるので、サポートを増やしても治りません。自励振動は固有振動数をずらしても、新しい固有振動数でまた揺れます。
目次
- 1. まず結論:最初に確かめるのは「何Hzで、何につられて揺れているか」
- 2. 振動を放置すると何が起きるか ― 割れるのは細い枝の付け根
- 3. 配管を揺らす力の入口 ― 強制振動・流体励起振動・自励振動
- 4. 周波数で切り分ける ― 回転周波数Nを物差しにする
- 5. 気柱共振 ― 管長と音速で決まるから、サポートでは治らない
- 6. 計算例 ― 往復動圧縮機の吐出配管は共振しないか
- 7. 渦・自励振動・キャビテーションを見分ける
- 8. 対策は型で決まる ― 支持を足してよい振動、足しても効かない振動
- 9. 設計ノート ― 振動を設計段階で潰す
- 10. レビューで聞く5問
- 11. 製造・保全で確認する5点
- まとめ
- 関連記事
- 参考文献
1. まず結論:最初に確かめるのは「何Hzで、何につられて揺れているか」
振動の原因を切り分けるときに頼りになるのは、振幅の大きさよりも周波数です。配管を揺らしているものは、たいてい自分の周波数を持っています。ポンプの軸は毎秒の回転数で回り、羽根車の羽根は毎秒「羽根枚数×回転数」回ずつ舌部を通り過ぎ、往復動圧縮機は1回転ごとに決まった回数だけガスを押し出します。配管の振動の周波数がそのどれと一致するかを見れば、揺らしている源の見当がつきます。
現場で確かめる順番は次のとおりです。
| 順番 | 確かめること | 分かること |
| 1 | 漏れ、にじみ、小口径の枝管の付け根や計器配管の割れ、支持の外れ | すぐに止める必要があるか |
| 2 | 振動の周波数と振幅(振動計・周波数分析) | 近くの回転機のNの何倍か、Nと無関係か |
| 3 | 回転数・流量・圧力を変えたときの周波数の動き | 源につられた強制振動か、固有振動数での共振・自励振動か |
| 4 | 圧力計の指示が同じ周波数で揺れているか | 管内の圧力脈動が揺らしているか |
| 5 | どこが、どの方向に大きく揺れているか | 曲がり・分岐・弁・細い枝のどこが弱点か |
「揺れているから支持を足す」は、手順3まで進んでから判断します。 型を決めずに支持を足すと、止まらないうえに熱膨張を拘束して別のトラブルを生むことがあります。
2. 振動を放置すると何が起きるか ― 割れるのは細い枝の付け根
配管振動で主に問題になるのは、繰り返しの応力による疲労破壊です。振動の応力は材料の降伏点よりずっと低くても、回数が積み重なると割れます。10 Hzの振動でも1年間で約3.2×10⁸回になります。き裂は目に見えないうちに育ち、やがて肉厚を貫通して漏れ、最後は破断に至ります。
疲労で効くのは、主に応力の振れ幅(応力振幅)です。そして応力は、形や寸法が急に変わる所に集中します。配管では次の場所がそれに当たります。
- ドレン・ベント・圧力計・サンプル採取口などの小口径の枝管の付け根
- 計器配管の継手、ねじ込み部
- 溶接の止端部、シューやサポートを溶接した部分
- 容器や機器のノズルの付け根
化学プラントの安全設計の教科書も、小口径の枝管の付け根や計器配管の継手、ねじ部は振動に対する「ウィークポイント」だと注意しています。主管がわずかに揺れているだけでも、先端に弁や計器を載せた細い枝は、自分の固有振動数で大きく振られることがあります。弁のような重い物が枝の先に付くと、その枝の固有振動数は下がり、低い周波数の揺れと共振しやすくなります。

振動が起こすのは割れだけではありません。
- サポートやUボルトの接触部の摩耗、ボルトやナットの緩み
- フランジの締付けが緩んだことによる漏れ
- 圧力計の指針の振れ、計器の誤動作
- 騒音と、運転する人の不安
振動する配管を点検するときは、揺れの大きい直管の中央より先に、小口径の枝管の付け根と溶接部を見ます。 往復動圧縮機でも、吸込スナッバのパージ弁のような小口径配管の亀裂がしばしば起きると往復動圧縮機の異常と弁の保全で紹介しています。
3. 配管を揺らす力の入口 ― 強制振動・流体励起振動・自励振動
配管を揺らす力は、どこから来るかで大きく3つに分けられます。
| 型 | 何が揺らしているか | 周波数は何で決まるか | 例 |
| 強制振動(機械からの伝達) | 回転機の不釣合い・心ずれの振動が、ノズルや架台を通って伝わる | 回転周波数Nとその整数倍 | ポンプ、送風機、圧縮機、同じ架台の別の配管 |
| 強制振動(流体から) | 管内の圧力脈動や、液と気体が交互に来る流れが、曲がりや分岐を押す | 源の周波数(翼通過、往復動の行程)、または不規則 | 往復動圧縮機・ポンプの脈動、遠心機の翼通過、スラグ流 |
| 流体励起振動 | 振動成分のない流れが、物体の後ろに渦を作ったり、くぼみで圧力波を作ったりする | 流速と形で決まる(流速に比例) | 温度計ウェルのカルマン渦、安全弁管台のキャビティトーン、ベローズ |
| 自励振動 | 流れと物体の動きがかみ合い、物体が自分で振動を育てる | 必ずその物体の固有振動数 | 微開の減圧弁、全開近くのバタフライ弁のフラッタ |
どの型でも、揺らす周波数が配管の固有振動数(もっとも揺れやすい振動数)と一致すると、振幅が大きく膨らみます。これが共振です。配管には構造としての固有振動数のほかに、管内の気体や液体の柱が持つ気柱の固有振動数もあります。圧力脈動の周波数が気柱の固有振動数と一致すると、管内の圧力の振れ幅そのものが増幅されます(気柱共振、5章)。
圧力脈動は曲がりと分岐で力になる
圧力脈動がなぜ配管を揺らすのかは、直感的に分かりにくいところです。
管内の圧力は、エルボやティー、端の閉止部には「管の断面積×圧力」の力で外向きに押しています。直管の途中では前後の押す力が釣り合っていますが、流れの向きが変わる所では釣り合わずに残ります。圧力が場所によらず一様に上下するだけなら、両端のエルボを押す力は同時に増減して打ち消し合います。ところが圧力脈動は音速で管内を伝わるので、ある瞬間には一方のエルボが高い圧力に、もう一方が低い圧力にさらされます。その差が配管全体を左右に押す力になり、半周期後には向きが逆になります。

プロセス機器構造設計の教科書は、2つのエルボの間の長さが波長の半分(λ/2、3λ/2、…)のときにこの力が最大の「2×断面積×圧力振幅」になり、波長の整数倍のときに0になることを示しています。たとえば内径約154 mm(150A Sch40)の配管で、平均圧力5 MPaに対して脈動率(圧力の全振幅÷平均圧力)が5%なら、圧力振幅は0.125 MPaで、最大の起振力は約4.7 kNです。500 kg近い重さに相当する力が、毎秒何十回も向きを変えて曲がりを押すことになります。
同じ教科書は、流れの向きが変わることによる運動量の力と比べても、特殊な場合を除けば圧力変動による力のほうが圧倒的に大きいとしています。脈動のある配管で曲がりと分岐の近くを確実に支持するのはこのためです。
気液二相流のスラグ流やプラグ流も、液の塊と気体が交互に曲がりを通過するたびに、壁を押す運動量が大きく変わるので、配管を揺らします。液と気体では密度が約1,000倍違うので力は大きく、しかも液と気体の間隔は規則正しくないので、振動は不規則になります。流動様式の考え方は二相流・スラリー配管の設計入門を参照してください。
4. 周波数で切り分ける ― 回転周波数Nを物差しにする
周波数を読むときは、近くの回転機の回転周波数N(回転数rpm÷60、単位Hz)を基準にします。4極電動機で回る1,450 rpmのポンプなら、N=約24.2 Hzです。
| 源 | 周波数の目安 | 見分けるポイント |
| 回転機の不釣合い(アンバランス) | N | 回転数についてくる |
| 心ずれ(ミスアライメント) | N、2N など整数倍 | 回転数についてくる。機械の軸方向の振動も増える |
| 遠心ポンプ・送風機・圧縮機の翼通過による脈動 | Z×N(Z:羽根枚数)とその整数倍 | 圧力計も同じ周波数で揺れる |
| 往復動圧縮機・ポンプの脈動 | m×n×a×N(m:次数、n:単動1・複動2、a:シリンダ数) | 低い周波数で大振幅。複数の倍数が並ぶ |
| ターボ機械のサージング | 0.1〜10 Hz程度 | Nと無関係。圧力・流量・電流が同じ周期で揺れる |
| カルマン渦 | St×U÷d(St:ストローハル数、U:流速、d:円柱の径) | 流速に比例して動く |
| キャビテーション | 数百Hz以上 | 広い帯域で「ざらざら」鳴る。圧力条件で変わる |
| 気液二相流(スラグ流) | 不規則 | 決まった周波数を持たない |
| 構造の共振・気柱共振・自励振動 | 配管や気柱の固有振動数 | 運転条件を変えても周波数が動かない |
数式の出典は、化学装置便覧(改訂二版)の起振源の表と、配管設計実用ノートの強制振動の節です。サージングとキャビテーションの周波数帯は、便覧の1980年代末の目安です。
表を使うときは、1つの成分で原因を断定しないことが大切です。N の成分は不釣合いだけでなく心ずれや軸の曲がりでも出ますし、配管の固有振動数がたまたまNに近ければ、小さな不釣合いでも大きく揺れます。周波数表は原因候補を減らすための道具です。
回転数や流量を変えて、ついてくるか見る
切り分けにもっとも効くのは、運転条件を少し変えてみることです。

- 回転数を変えると周波数が一緒に動く:回転機の振動か、翼通過・往復動の脈動が源。強制振動です
- 流量(流速)を変えると周波数が動く:渦による流体励起振動を疑います
- 何を変えても周波数が動かない:配管の構造の固有振動数、気柱の固有振動数、または自励振動です
3つ目の「動かない」が要注意です。共振しているか、自励振動が起きていることを示しています。渦の振動でも、共振の近くでは渦の周波数が構造の固有振動数に引き込まれ、流速を少し変えても周波数が動かなくなる「ロックイン」が起きることがあります。
運転条件を変えられないときは、起動・停止や負荷変更のときの記録を振り返ります。圧力計が振動と同じ周期で揺れていれば、管内の圧力脈動が関わっています。
機械本体の振動の読み方は、ポンプの振動と遠心圧縮機の振動と異常で詳しく説明しています。配管側で見るべきなのは、機械本体の振動と配管の振動が同じ周波数か、配管のほうが大きいかです。機械本体より配管のほうが大きく揺れているなら、配管側の共振や脈動を疑います。
5. 気柱共振 ― 管長と音速で決まるから、サポートでは治らない
脈動が配管の中を伝わると、管の端で反射します。端が閉じていても開いていても反射は起きます。管の長さと波長(音速÷周波数)がある関係になると、行きの波と帰りの波がそろって、その場に留まった大きな波(定在波)ができます。これが気柱共振です。フルートや尺八が特定の音で鳴るのと同じ現象です。
一様な断面のまっすぐな管の気柱の固有振動数は、次の式で求められます。
f = α × C ÷ (2L)
- f:気柱の固有振動数[Hz]
- C:管内の流体の音速[m/s]
- L:管の長さ[m](開いた端の外側に節ができるので、開いた端1つにつき管の内半径の0.6倍程度を足して補正する。資料によっては0.8〜1.7倍)
- α:端の条件で決まる係数。両端が閉じている、または両端が開いているときは1、2、3…。一方が閉じ、他方が開いているときは1/2、3/2、5/2…
効くのは管の長さと音速だけで、サポートの数も配管の剛性も式に入りません。 気柱共振が疑われるのに支持の追加ばかりしても治らないのは、このためです。

実際の配管で「閉じた端」「開いた端」にあたるのは、次のような所です。
- 閉じた端(流量の変動が0とみなせる所):往復動圧縮機のシリンダとの取合い、閉止フランジ、絞った弁、オリフィス
- 開いた端(圧力の変動が0とみなせる所):大きなタンクや容器との接続部、大気への出口、径が2倍以上ある管や機器との接続部
閉じた端は圧力変動の腹(振れ幅が最大)、開いた端は節(振れ幅が0)になります。圧力計で脈動を測るときは、測る位置によって見える振れ幅が大きく変わることにも注意します。
音速は流体と温度で変わります。理想気体の音速は√(κRT/M)(κ:比熱比、R:気体定数、T:絶対温度、M:モル質量)なので、温度が上がる、または軽いガスに変わると音速は上がり、気柱の固有振動数も上がります。液体の音速は、管の壁が弾性で膨らむぶん、液体単独の値より小さくなります。運転温度やガス組成が変わる配管では、音速の幅を見込んで固有振動数を計算します。
6. 計算例 ― 往復動圧縮機の吐出配管は共振しないか
条件:複動・1シリンダの往復動圧縮機が360 rpmで回っています。吐出はシリンダから長さ12 mの配管で大きな脈動防止タンク(スナッバ)へつながっています。ガスは窒素で、配管内の温度は約100 ℃とします。
- 脈動の周波数:N=360÷60=6 Hz、n=2(複動)、a=1なので、m×n×a×N=12 Hz、24 Hz、36 Hz、48 Hz、…と並びます。
- 音速:√(κRT/M)=√(1.4×8.314×373÷0.028)≒394 m/s。
- 端の条件:シリンダ側は閉じた端、タンク側は開いた端なので、α=1/2、3/2、5/2、…。
- 気柱の固有振動数:f=α×394÷(2×12)=8.2 Hz、24.6 Hz、41.0 Hz、…。開いた端の補正(150Aなら内半径の0.6倍で約0.05 m)は、ここでは小さいので省きます。
- 判断:2次の気柱の固有振動数24.6 Hzが、脈動の2次成分24 Hzとほぼ一致しています。 気柱共振で圧力脈動が増幅されるおそれが高い配置です。
さらに、ガス温度が40 ℃まで下がると音速は約361 m/sになり、2次の固有振動数は約22.5 Hzへ下がります。運転条件によって、共振点が脈動の周波数の近くを行き来することが分かります。
対策の候補は次のとおりです。
- 配管の長さを変えて、固有振動数を脈動の各成分から離す。ただし、高い次数の成分もあるので、どの次数まで離すかは脈動解析で確かめる
- タンクの入口に、開口比(穴の面積÷管の断面積)1/4程度のオリフィスを入れる。1970年代の設計書は、往復動圧縮機のような低周波で大振幅の脈動に対し、この程度の開口比で反射の少ない条件に近づくとしている
- 脈動防止タンクをできるだけシリンダの近くに置き、容量を見直す
オリフィスは、共振しているときに圧力振幅の節に入れると共振を崩せますが、共振していない配管に入れても脈動はほとんど減りません。 圧力損失も増えるので、共振の有無を確かめてから使います。圧縮機では、シリンダの弁室の容積ぶんを管長に足して補正します。実機の脈動は、メーカーの脈動解析で確認してください。往復動と遠心の脈動の違いは圧縮機の種類と選び方にまとめています。
7. 渦・自励振動・キャビテーションを見分ける
回転機の周波数と合わない振動は、流れそのものが作っていることが多くあります。
カルマン渦 ― 温度計ウェルが折れる
流れの中に突き出た円柱(温度計ウェル、計器の挿入管など)の後ろには、左右交互に渦ができます。これがカルマン渦で、渦がはがれるたびに円柱は流れと直角の方向に押されます。渦の周波数は流速に比例し、円柱の径に反比例します。円柱1本のストローハル数Stは、条件によって変わりますがおよそ0.2です。渦の周波数がウェルの固有振動数に近づくと共振して、根元から折れることがあります。 流速を上げる改造をしたときや、細く長いウェルに替えたときは、渦との共振を確認します。
キャビティトーン ― 管台の奥で鳴る
主管から枝分かれした安全弁の入口管台のように、流れの横に行き止まりのくぼみがあると、入口の角で渦ができ、その渦が反対側の角に当たって圧力波を出します。圧力波が管台の奥(弁体)で反射し、管台の長さが波長の1/4と一致すると気柱共振を起こし、激しい騒音と振動になります。蒸気配管の安全弁管台の圧力脈動が、下流の機器を損傷させた例も報告されています。対策は、管台の入口に大きな丸みやテーパを付けて渦をできにくくすることや、管台の長さを変えることです。
自励振動 ― 固有振動数を変えても止まらない
微開の減圧弁の弁体、全開近くのバタフライ弁の弁板などは、流れを受けて少し動くと、その動きで流れの力が変わり、さらに動きが大きくなる、という循環で自分から振動を育てます。これが自励振動です。
自励振動の最大の特徴は、必ずその系の固有振動数で揺れることです。支持を足して固有振動数を変えても、変えた先の新しい固有振動数でまた揺れます。剛性を上げれば振幅は抑えられますが、振動そのものはなくなりません。対策の本筋は、自励振動の起きない形や開度にすることです。弁を微開で使い続けている、流量に対して弁が大きすぎる、という運転条件を先に疑います。振動は流れと直角の方向に出ることが多いのも手がかりになります。
キャビテーション・フラッシング ― 絞りの下流の高い周波数
調節弁や減圧オリフィスで液を大きく絞ると、縮流部で圧力が蒸気圧を下回って気泡ができます。下流で圧力が戻って気泡がつぶれるのがキャビテーション、下流の圧力も蒸気圧より低くて気液が混ざったまま流れるのがフラッシングです。キャビテーションは数百Hz以上の高い周波数の振動と騒音を出します。絞りの下流の激しい乱れや高速の流れも、小口径の配管や、口径の割に肉厚の薄い配管に高い周波数の振動を起こしやすいとされています。絞りの下流は振動と侵食(エロージョン)が同時に進む場所なので、点検の重点箇所にします。
調節弁の教科書は、異音・振動の要因としてキャビテーション、微小開度での圧力変動、弁内の急拡大部での共鳴などを挙げ、多段減圧のトリムやケージ形トリムへの変更、使用開度を上げるための弁容量の縮小を対策に挙げています。弁側の判定と対策は調節弁の選定とサイジングと調節弁のトラブルと保全、ポンプ内部のキャビテーションはポンプのキャビテーションとはを参照してください。
8. 対策は型で決まる ― 支持を足してよい振動、足しても効かない振動
型ごとに、効く対策と効かない対策をまとめます。
| 型 | 対策の向き | 効かない・逆効果になりやすい対策 |
| 機械からの伝達(強制振動) | 源の不釣合い・心ずれを直す。機械と配管の間で振動を絶縁する | 配管だけを固くして、機械のノズル荷重を増やす |
| 構造の共振 | 支持を足して固有振動数を上げ、源の周波数から離す(離調) | 支持位置を決めずに「とりあえず1本」足す |
| 圧力脈動 | 脈動防止タンク、オリフィス。曲がり・分岐の近くを確実に支持する | 源の脈動を減らさずに支持だけで押さえ込む |
| 気柱共振 | 管の長さや気柱の形(タンク、分岐)を変える。節にオリフィス | サポートの追加(式に入らない) |
| 渦・キャビティトーン | 突起やくぼみの形・寸法を変えて、共振しない形にする | 流速を変えずに支持だけ変える |
| 自励振動 | 自励振動の起きない形・開度にする。剛性を上げて振幅を抑える | 固有振動数だけをずらす |
支持を足すときにも注意があります。
- 支持を足すと、熱膨張の逃げ場がなくなることがあります。 高温配管では、熱移動の少ない位置を選ぶか、ばね式の防振器を使います。柔らかすぎる配管が振れやすいことは配管フレキシビリティ、支持の種類は配管サポートの選び方で説明しています
- 架台や基礎が弱いと、支持部が疲労で壊れます。 起振力の大きい配管は、剛性のある架台やコンクリート基礎の上で支持します
- Uボルトのように接触部の少ない固定は、摩耗が大きいので避けます
- 機械と配管の間にフレキシブルホースやベローズを入れて振動を絶縁するなら、その先の配管を固定しないと、配管がかえって振れやすくなることがあります
- 機械をゴムやばねで防振すると、機械自体の振動はむしろ大きくなり、配管に与える力も大きくなる場合があります
9. 設計ノート ― 振動を設計段階で潰す
振動は、運転に入ってから対策すると大がかりになります。設計段階では次の順で考えます。
- 起振源と起振力を把握する。 往復動機械、高速回転機械、圧力脈動、サージング、渦など、つながる機械と流れから周波数を洗い出す。起振力の小さい機械や、簡単に起振力を減らせる対策があれば先に採る
- 配管の固有振動数と気柱の固有振動数を、起振源の周波数と一致させない。 脈動が源になる配管では、両方を計算する
- 全体として成り立つか確かめる。 曲がりは固有振動数を下げるので固定したいが、熱膨張のために固定できない場合もある。分解・保全の作業性も含めて決める
支持の配置では、次の点を押さえます。
- 支持のスパンは、配管の固有振動数が起振力の周波数と一致しないように決める
- 弁などの重い付属品が付いた所は、その近くで支持する
- 曲がりのように直接の起振力を受ける所、分岐のように壊れやすい所を適切に支持する
- 小口径の分岐管には、付け根にリブ(ガセット)を付けて折損を防ぐ。化学装置便覧は、呼び径1/2B以下の分岐管と振動配管の分岐管にガセットを付けることを挙げている
過去に振動トラブルがあった配管と同じ型の配管では、振動が出たときにすぐ支持を追加できるよう、埋込み金物の位置を設計に入れておく方法もあります。
振動の大きさの評価には、1970年代に米国のSouthwest Research Institute(SwRI)が往復動圧縮機・ポンプの配管用に作った、周波数と振動の両振幅で判定する基準がよく引用されます。判定の線は周波数によって違い、同じ振幅でも周波数が高いほど厳しく判定されます。案件で使う判定基準と版は、社内基準や顧客仕様で確かめてください。
10. レビューで聞く5問
- この配管につながる機械の回転周波数、翼通過周波数、往復動の脈動周波数を一覧にしたか
- 脈動のある配管で、気柱の固有振動数を音速の幅(温度・ガス組成の変化)を含めて計算したか
- 支持のスパンを、構造の固有振動数が起振源の周波数と重ならないように決めたか
- 弁や計器を載せた小口径の枝管の付け根に、ガセットと弁の近くの支持を指示したか
- 振動対策の支持が、熱膨張の逃げ場をなくしていないか、応力解析で確かめたか
11. 製造・保全で確認する5点
- 揺れを見つけたら、まず小口径の枝管の付け根、計器配管の継手、ねじ部、溶接部のにじみと割れを見る
- 振動の周波数と振幅を測り、近くの回転機のNの何倍かを確かめる。圧力計の振れも同時に記録する
- 回転数・流量・圧力を変えたときに、周波数がついてくるか、動かないかを記録する
- サポートやUボルトの摩耗、ボルト・ナットの緩み、支持の外れを見る
- 振動対策をした後は、同じ運転条件で測り直し、対策前と比べる。改造や増設のあとにも測る
まとめ
- 揺れている配管で最初に確かめるのは、漏れと小口径の付け根の割れ、次に「何Hzで、何につられて揺れているか」です。
- 周波数は回転周波数Nを物差しにして読みます。 N・2Nは回転機、Z×Nは翼通過、m×n×a×Nは往復動の脈動、流速に比例するなら渦、数百Hz以上の広い帯域ならキャビテーションを疑います。
- 運転条件を変えても周波数が動かないなら、構造や気柱の固有振動数での共振、または自励振動です。
- 圧力脈動は、曲がりと分岐で配管を押す力になります。 脈動のある配管は曲がりと分岐の近くを確実に支持し、源の脈動をタンクやオリフィスで減らします。
- 気柱共振は管長と音速で決まり、サポートでは治りません。自励振動は固有振動数をずらしても止まりません。 型を決めてから対策を選びます。
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- ポンプの振動|測定位置・停止基準・原因の見分け方
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参考文献
- 西野悠司『「配管設計」実用ノート』日刊工業新聞社, 第8章「配管振動に対処する」(8.1〜8.5、8.7、図8.3.2、図8.4.2、図8.5.6) Amazonで見る
- 西野悠司『そうか!わかった!プラント配管の原理としくみ』日刊工業新聞社, 第5章「配管振動と疲労」(表5-1「配管振動に対処する」) Amazonで見る
- 化学工学協会編『プロセス機器構造設計シリーズ3 配管』丸善, 第5章「配管の振動」(5・1〜5・5、式(5・3)(5・4)(5・7)、図5・23)
- 化学工学会編『化学装置便覧 改訂二版』丸善, 13・4・2「管系の振動」(表13・18、表13・19、図13・16、図13・18)、表13・20 Amazonで見る
- 化学工学協会編『化学プラント安全対策技術2 化学プラントの安全設計』4・6「振動および騒音」
- 化学工学協会編『化学プラント建設技術(中)』第8章「化学プラントの配管工事」
- 山武調節弁ハンドブック編纂委員会編『工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック 改訂第2版』日本工業出版, 第11章(表11.4「異音・振動の要因と対策」) Amazonで見る
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